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空き家

親族間の不動産売買の適正価格|みなし贈与の線

公開 更新

執筆
株式会社リアテクス リアテクス編集部
監修
株式会社リアテクス 取締役COO 薩摩 賢幸
親族間の不動産売買の適正価格|みなし贈与の線

「親から家を安く買いたいが、いくらなら税務署に贈与とみなされないのかが分からない」。価格の下限は「時価の何割」という一律の数字では決まらず、どの資料で時価を出したか、なぜその価格にしたかを説明できるかで分かれます。差額が大きければ、買主に贈与税がかかります。

当社は買主として直接買い取ります。親族の方へ売る形の売買では、当社は買主になりませんので、価格の根拠に使える査定書をお出しする立場にとどまります。この家が買い取れるかどうかだけ、先に聞く(無料)

目次(12章)

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親から実家を買い取る、兄から持分を買い取るといった売買では、いくらで取引するかを当事者が自由に決められます。ただし価格が時価より著しく低いと、その差額は買主が親から無償で受け取ったものとして扱われ、買主に贈与税がかかります。どこからが「著しく低い」のかは条文に金額で書かれておらず、資料の揃え方で結論が変わる領域です。

親族間の不動産売買の適正価格の要点を、定義・この記事でわかること・よくある質問の順に短くまとめた動画です。

親族間の不動産売買で適正価格が問題になる仕組み

価格が問題になるのは、相続税法第7条が「著しく低い価額の対価で財産の譲渡を受けた場合」に、時価との差額を贈与とみなすと定めているためです。売買契約そのものは有効に成立し、無効になるわけではありません。課税の場面だけで、実際の代金とは別の金額が持ち出されます。

契約の自由と、課税の世界の価格は別に動く

親が子に1,000万円の家を300万円で売る契約を結んでも、民法の上ではその契約は有効で、登記も移せます。買った側が代金を払い、売った側が引き渡せば、取引としては完結します。ここで止まらないのが税の話で、税務署は取引の当事者の合意そのものではなく、その財産の時価を基準に課税します。差額の700万円について、子が親から700万円をもらったのと経済的に同じだと見るわけです。

この構造を知らずに、親子なのだから安くてもいいだろうと考えて登記まで済ませてしまう例があります。登記は法務局が形式を見て受け付けるので、価格が安いという理由で止まることはありません。問題が表に出るのは、登記の情報が市区町村や税務署に回り、後から「お尋ね」の書面が届いた段階です。契約から1年以上たってから連絡が来ることもあり、その時点では価格を後から直すことができません。

みなし贈与になると、誰に、いくらの税がかかるのか

課税されるのは買った側、つまり安く買えた方です。売った親ではありません。差額が贈与されたものとみなされ、その年に受けた他の贈与と合算して贈与税が計算されます。暦年課税の基礎控除は年110万円で、これを超える部分に税率がかかります。直系尊属から18歳以上の子や孫への贈与には特例税率が適用され、一般の税率より低く設定されています(相続税法第7条に関する取扱い・国税庁タックスアンサー)。

差額が700万円で、他に贈与を受けていない場合、基礎控除を引いた590万円が課税価格になります。国税庁が公表する贈与税の速算表のうち特例税率の欄では、課税価格600万円以下の区分が税率20%・控除額30万円と定められているので、590万円はこの区分に当たり、税額は88万円になります。300万円で買ったつもりが、翌年に88万円の納税が別に発生する、という形になります。安く買ったこと自体が禁じられているのではなく、安く買った分に対して税が付いてくる、という理解が実態に近いところです。

みなし贈与の仕組みと課税条件

項目金額・条件税務上の扱い
実際の売買代金300万円民法上は有効に成立し登記も移せる
税務上の時価1,000万円税務署が課税の基準とする金額
みなし贈与額700万円買った側がもらったとみなされる差額
基礎控除年110万円この額を超える部分に贈与税がかかる
特例税率18歳以上の子や孫直系尊属からの贈与で一般より低い税率

売った側にも、譲渡所得の計算で別の論点が残る

売主の側は、実際に受け取った代金を基準に譲渡所得を計算するのが原則です。ただし個人から法人へ著しく低い価額で譲渡した場合には、時価で譲渡したものとみなす規定が所得税法にあり、個人間とは扱いが違います。親族が設立した法人へ売る形を取るときは、この点が先に問題になります。

個人間で売る場合でも、売った価格が取得費を下回って譲渡損が出たときには注意が要ります。個人に対して時価の2分の1未満の対価で譲渡した場合、その譲渡損はなかったものとみなされる規定があり、他の譲渡益と相殺できません。安く売れば売主の税が減る、という単純な話にはならないということです。

親族間売買が使われる場面と、不動産の適正価格を外したときの帰結

この形が選ばれるのは、住宅ローンの返済が続かなくなった家を親が買い取る場面、相続の前に実家の名義を子へ移しておきたい場面、共有になっている持分を一人に集める場面の3つが目立ちます。どの場面でも、価格の根拠を残さずに進めると後から税で崩れます。

親族間売買が選ばれる場面と動かせない条件

親族間売買が選ばれる場面価格を決める際の条件と注意点
ローンの返済が苦しい家残債を消せる金額であること(下回ると抵当権が外せない)
相続前の名義の移転価格の根拠を残すこと(残さないと後から税で崩れる)
共有持分を一人に集める価格の根拠を残すこと(残さないと後から税で崩れる)

不動産の親族間売買とは何を指すのか

不動産の親族間売買とは、親子、兄弟姉妹、祖父母と孫、夫婦といった親族どうしで不動産を売り買いすることを指す通称です。法律にこの名前の制度があるわけではなく、税務や金融の実務でこう呼ばれています。どこまでを親族とするかも、場面ごとに違います。民法第725条は、六親等内の血族、配偶者、三親等内の姻族を親族と定めていますが、税の特例が使えるかどうかの判定では、この範囲とは別の線が引かれていることがあります。

たとえば譲渡所得の3,000万円特別控除では、配偶者、直系血族、生計を一にする親族などへの譲渡が除外されます。金融機関が住宅ローンの審査で「親族間売買」として扱う範囲は、さらに金融機関ごとの内規で決まっており、二親等までとするところもあれば、同居の有無で判断するところもあります。自分の取引がどの線に当たるかは、税の話と融資の話を別々に確かめる必要があります。

住宅ローンの返済が苦しい家を、親が買い取る場合

返済が滞りかけた家を親が買い取り、その後は親に家賃を払って住み続ける、という組み方があります。競売を避ける手段として検討されるもので、住み続けられる点が選ばれる理由です。ここでの価格は、ローンの残債を消せる金額であることがまず求められ、その金額が時価とかけ離れていないかが次の論点になります。残債が時価を上回っていれば、そもそも抵当権を外せず売買が成立しません。

返済が止まってからの時間の経過で選べる手が変わるため、「住宅ローンが払えない」の記事にある滞納からの流れと突き合わせて、いまどの段階かを先に確かめてください。金融機関が競売の申立てに動いた後では、親族への売却も債権者の同意が要る話になります。

相続の前に、実家の名義を子へ移しておく場合

親が元気なうちに名義を移しておきたいという相談は多くあります。贈与ではなく売買の形にするのは、贈与税より譲渡所得税の方が安く収まる場合があるためです。ただし代金の授受が実際になければ、売買の体裁を取っていても贈与と扱われます。振込の記録が残っているか、分割払いなら約定どおりに支払われているかが確認されます。

親が認知症と診断されている場合、この売買自体ができません。意思能力を欠いた状態での契約は無効になり得るため、成年後見人を立てる手順を踏むことになります。「親が認知症で家を売る方法」の記事に、後見が必要になる範囲と例外を書いています。

共有になっている持分を、一人に集める場合

相続で兄弟が共有名義になった家を、住んでいる一人が他の兄弟から買い取る形です。この場合、対象は建物や土地の全部ではなく持分になるため、価格の出し方が一段複雑になります。全体の時価に持分割合を掛けた金額が出発点ですが、持分だけを市場で売れば全体の価格に持分割合を掛けた額より低くなるのが通常で、そこをどう見るかで兄弟間の話がこじれます。

まとまらないまま時間だけが過ぎる例も少なくありません。「共有物分割請求とは」の記事に、話がまとまらなかった場合の3つの結末を置いています。

「親族間売買が使われる場面と、不動産の適正価格を外したときの帰結」について、そのまま聞けます。

親族間の不動産売買の適正価格は相場の80%が線か

「相場の80%」は法令の基準ではなく、相続税法第7条が「著しく低い価額」としか定めていないため、過去に争われた水準が目安として広まったものです。何を基準の100%に置くかで、同じ80%でも金額は変わります。

時価と路線価の割合の関係

  • 公示価格水準(時価)100%
  • 路線価水準(相続税評価額)約80%

1. 「著しく低い価額」に金額の基準は書かれていない

相続税法第7条は、著しく低い価額の対価で財産の譲渡を受けた場合に、その財産の時価と対価との差額を贈与により取得したものとみなすと定めています。この「著しく低い」がいくらなのかは、条文にも施行令にも金額や割合で書かれていません。個々の事案ごとに、社会通念に照らして判断するという構造になっています。

割合で一律に切れないのは、不動産の時価そのものが幅を持つためです。同じ土地でも、国土交通省が公表する地価公示の価格を基にした評価、国税庁が公表する相続税路線価を基にした評価、実際の取引事例から導く評価で、それぞれ違う数字が出ます。80%という数字を持ち出すときには、何の80%なのかを先に決めないと議論が噛み合いません。

2. 相続税評価額のおよそ80%が争われた裁判例がある

親族間売買の価格でよく引用されるのが、東京地裁平成19年8月23日判決です。この事案では、相続税評価額と同水準か、それをやや下回る程度の価格での親族間の譲渡について、相続税法第7条の「著しく低い価額」に当たるかが争われました。判決は、相続税評価額と同程度の価格やそれ以上の価格であれば、原則として著しく低い価額には当たらないという判断の枠組みを示しています。事件の全文は、裁判所の裁判例検索で裁判年月日を「平成19年8月23日」と指定して探せます(裁判例検索・裁判所)。ただしこれは一つの地方裁判所の判断で、最高裁が一般の基準を示したものではありません。個々の事案では、物件の性質や当事者の事情を含めて判断されます。

ここから、相続税評価額を下回らない価格であれば争いになりにくい、という実務上の目安が生まれました。相続税評価額は、土地については路線価方式または倍率方式で計算され、その路線価は国税庁が公示価格のおよそ80%を目安に定めています。つまり「時価の80%」という言い方は、公示価格水準の時価に対して路線価水準がおよそ80%である、という関係を指していることが多いということです。

著しく低い価額と判断される基準の目安

  • 公示価格

    評価の基準となる100%の水準

  • 相続税路線価

    公示価格のおよそ80%の水準

  • 実際の取引事例

    実勢価格。地域により路線価とずれが生じる

3. 「80%なら安全」と読み替えると外れる

この目安を、実勢価格の80%なら大丈夫という意味に読み替えると危ない場面があります。国税庁が公示価格のおよそ80%を目安に定めているのは路線価の側で、実勢の取引価格に80%を掛けた数字ではありません。実勢価格が路線価水準を大きく上回る地域では、実勢価格の80%が相続税評価額をさらに上回ることもあれば、下回ることもあります。逆に、需要の薄い地域では実勢の取引価格が相続税評価額を下回っていることもあり、その場合に相続税評価額で売れば、かえって買主が高く買わされる形になります。

判断の材料になるのは割合ではなく、その価格を選んだ理由を資料で説明できるかどうかです。近隣の成約事例が3件あってその平均から導いた、不動産会社2社の査定の低い方を採った、といった説明が残っていれば、割合の議論に入る前に根拠が立ちます。

4. 0円や100万円といった名目だけの価格は、別の問題になる

実質的にただであげるのと変わらない価格を付けた場合は、著しく低い価額かどうかの議論以前に、売買ではなく贈与そのものと認定される可能性があります。代金の授受が実際になければなおさらです。不動産をただであげたいという相談は多いのですが、無償で渡せば受け取った側に贈与税がかかるのが原則で、評価の基準は相続税評価額になります。

無償で渡す場合でも、名義を移す登記の費用を誰が負担するか、翌年以降の固定資産税を誰が払うかは、渡す前に書面で決めておくことになります。その年の1月1日時点の所有者に、固定資産税が課されるためです。

時価の半分にも満たない金額しか出せない事情があるなら、売買の形にこだわらず、相続時精算課税制度を使った贈与と、どちらの税が軽く収まるかを並べて比べる方が早いことがあります。個人に対して時価の2分の1に満たない対価で譲渡すると、譲渡損が出ても所得税法上はその損が無かったものとみなされるため、安く売っても売主の税が減るとは限りません。どちらが有利かは財産の総額と相続人の数で変わるので、税理士に試算してもらう領域です。

不動産の時価をどう出すかで、親族間の適正価格の下限が動く

基準にする資料は、相続税評価額、公示価格・基準地価、不動産会社の査定額、成約事例の4つがあり、この順に金額が上がる傾向があります。どれを採るかを先に決め、その理由を書き残すのが実務の形です。

時価の基準となる資料の選び方

  • 相続税評価額

    金額が最も低い傾向。実勢とのずれに注意

  • 公示価格・基準地価

    補正の過程を紙に残し恣意を防ぐ

  • 不動産会社の査定額

    複数社に依頼し、書面で根拠を残す

  • 成約事例

    金額が最も高い傾向。実勢に近い水準

1. 相続税評価額を基準にする

土地は路線価方式または倍率方式、建物は固定資産税評価額がそのまま相続税評価額になります。路線価は国税庁が毎年7月に公表し、その年の1月1日時点の価格です。この方法の利点は、誰が計算しても同じ数字に近づくこと、そして「親族間の不動産売買の適正価格は相場の80%が線か」の節で触れた東京地裁平成19年8月23日判決の枠組みと直接つながっていることです。

弱点は、実勢とのずれが大きい地域があることです。人口が減り続けている地域では、路線価が実際の成約価格より高いままになっていることがあり、その価格で売買すれば買主が損をします。逆に再開発が進んだ地域では、路線価が実勢に追いついておらず、相続税評価額で売ると差額が大きくなります。

2. 公示価格・基準地価を基準にする

国土交通省の地価公示と都道府県の地価調査は、標準地・基準地の1平方メートルあたりの価格を公表しています。対象地そのものの価格ではないため、近い標準地を選び、駅距離や道路付け、地積の違いを補正して使います。この補正を自分で行うと恣意が入るので、補正の過程を紙に残しておくことが必要です。

取引価格の実例そのものを見たい場合は、国土交通省の不動産情報ライブラリで、成約価格の帯を地域ごとに調べられます(不動産情報ライブラリ・国土交通省)。ここで出てくるのは実際に取引された価格なので、路線価より実勢に近い水準が分かります。

3. 不動産会社の査定額を基準にする

複数社に査定を依頼し、その金額を根拠にする方法です。書面で出してもらえば、価格の根拠として残ります。ただし査定額は「この価格なら売れるだろう」という見込みであって、その金額で売れることを保証するものではありません。仲介の査定額は、売り出してから成約するまでに下がることが普通にあります。

査定額の性質については「空き家の査定」の記事に、買取と仲介で金額が違う理由を書いています。親族間売買の価格の根拠として使うなら、高い方ではなく複数社の中央あたり、または低い方を採る方が、後の説明がしやすくなります。高い査定額を取ってきて、それより大幅に安い価格で売れば、差額を自分で作り出したことになるためです。

4. 実際の成約事例を基準にする

同じマンションの同じ間取りが3か月前にいくらで成約したか、隣の区画の土地が去年いくらで売れたかといった、実際の取引の記録です。最も説得力がありますが、同じ条件の事例が近くにあるとは限りません。戸建てや再建築不可の土地では、比較できる事例がそもそも見つからないことの方が多くなります。

比較できる事例が無い物件では、複数の方法で出した数字を並べ、その中から選んだ理由を書いておくのが現実的な形です。1つの資料だけで決めると、後でその資料の弱点を突かれたときに他の説明が残りません。

不動産の時価を出す4つの基準と特徴

時価の基準入手先特徴と弱点
相続税評価額国税庁(路線価図)など誰が計算しても同じ数字に近づくが、実勢とのずれが大きい
公示価格・基準地価国土交通省・都道府県対象地ではないため補正が必要。補正の過程を紙に残す
成約事例不動産情報ライブラリ実際に取引された価格であり、路線価より実勢に近い
不動産会社の査定額不動産会社複数社に依頼し、書面で出してもらえば価格の根拠になる

5. 建物の価値をどう見るか

築年数の古い家では、建物の価値をゼロとして土地の値段だけで売買することがあります。この扱い自体は珍しいものではありませんが、まだ人が住んでいる家、あるいは貸せば賃料が取れる家で建物をゼロと置くと、その分だけ価格を下げたことになります。逆に、雨漏りやシロアリの被害が出ている家で、建物に固定資産税評価額どおりの値を付ければ、買主が高く買わされます。

建物の状態と価格の関係は「雨漏り・シロアリの家を売却する」の記事に整理しています。傷んだ家を親族に売るときは、修繕にいくらかかるかの見積りを取り、その金額を差し引いた根拠を残すと説明が立ちます。

価格の低さ以外で、贈与とみなされてしまう5つの動き方

税務署が問題にするのは、価格そのものの低さだけではありません。代金が実際に動いているか、価格の根拠が残っているか、取引の前後で当事者の資金がどう動いたかが合わせて見られます。

価格以外で贈与とみなされる動き方

  • 代金が1円も動いていない

    売買そのものが無かったと見られる

  • 支払いが途中で止まる

    分割払いが1年目で止まれば実質的に贈与

  • 返済期間が平均余命を超える

    親の平均余命を大きく超える設定は贈与

  • 返済の実績がない借入

    親からの借入で返済実績がないと贈与

1. 代金が実際に支払われていない

契約書に1,000万円と書き、登記も移したのに、実際には1円も動いていないという形です。これは価格が低いかどうかの問題ではなく、売買そのものが無かったと見られます。代金の授受は、現金の手渡しではなく銀行振込で行い、双方の通帳に記録を残すのが基本の形です。

分割払いにする場合は、返済の期間、回数、利率を契約書に書き、約定どおりに払い続ける必要があります。取り決めはあるのに1年目で支払いが止まっている、返済期間が親の平均余命を大きく超えているといった場合、実質的に贈与だと見られます。無利息の分割払いにすると、利息相当分が贈与とされることもあります。

2. 価格を決めた資料が何も残っていない

いくらで売るかを電話で決め、契約書に金額だけを書いた、という取引です。後から税務署に「この価格はどう決めましたか」と聞かれても、答える材料がありません。逆に、査定書が2通と路線価の計算メモが残っていれば、その価格を選んだ経緯を説明できます。

資料は、契約の日より前の日付のものである必要があります。問い合わせが来てから慌てて査定を取っても、契約時にその価格を根拠にしたという説明にはなりません。

3. 買主に、代金を払える資金の裏づけがない

収入のない子が、親から2,000万円の家を買ったとします。その2,000万円をどこから用意したかが問われます。親から借りた形にしているなら、借用書の有無、返済の実態、利率が見られます。返済の実績がない借入は、贈与と扱われます。

親からの借入を使う場合、返済の原資がある人でないと形が保ちません。年収300万円の子が親から2,000万円を借り、月2万円ずつ返す約束をしても、完済まで80年以上かかるため、返す意思があったと説明するのが難しくなります。

4. 売買の直後に、代金が売主から買主へ戻っている

子が親に1,000万円を払い、その1週間後に親から子へ1,000万円が振り込まれている、という動き方です。往復させた形跡があれば、代金の授受は形だけだったと判断されます。通帳の記録は残るので、時期をずらしても不自然な動きは見えます。

親が受け取った代金を、そのまま子の住宅の頭金として渡すつもりなら、売買とは別の贈与として扱い、贈与税の申告をする方が筋が通ります。制度をまたいで隠すより、それぞれの枠で処理する方が結果的に安く済むこともあります。

5. 名義を移した後も、家の費用を売った側が払い続けている

登記は子の名義に移したのに、固定資産税の納税通知書は親の口座から引き落とされたまま、火災保険の契約者も親のまま、修繕が必要になれば親が払う。この状態が続いていると、所有者が動いたのは書面の上だけで、実態は親が持ち続けていると見られます。確かめられるのは登記簿の名義ではなく、誰が費用を負担し、誰がその家を使っているかです。

名義を移したら、固定資産税の納付先、火災保険の契約者、水道光熱費の名義も順に買主へ切り替えます。親が住み続ける形にするなら、賃貸借にして家賃を振り込むか、無償で住まわせる約束であることを書面にしておきます。無償で住み続けたうえに費用まで親が払っていれば、売買があったこと自体を説明しにくくなります。

親族間の不動産売買で使えない特例と、適正価格以外のデメリット

実家の居間でテーブルを囲んで座り、うなずき合っている家族の肩越しの後ろ姿

価格を正しく決めても、親族間だという理由だけで使えなくなる特例があります。3,000万円特別控除、住宅ローン控除、住宅取得等資金の贈与の非課税が、代表的なものです。

親族間と親族外での使える特例の比較

観点親族間に売る場合親族外に売る場合
3,000万円特別控除使えない(直系血族等への譲渡)要件を満たせば使える
住宅ローン控除使えない(生計を一にする親族等)要件を満たせば使える
住宅取得等資金の贈与の非課税適用対象外要件を満たせば使える
譲渡損失の繰越控除使えない要件を満たせば使える

1. 3,000万円特別控除は、親族間の譲渡では使えない

自分が住んでいた家を売ったときの3,000万円特別控除は、譲渡の相手が配偶者、直系血族、生計を一にする親族、その他特別の関係がある者である場合には適用されません(マイホームを売ったときの特例・国税庁)。親から子、祖父母から孫への譲渡は直系血族に当たるため、この控除は使えないということです。

相続した空き家を売ったときの3,000万円控除についても、同様に特別の関係がある者への譲渡は除かれます。相続した実家を、兄弟のうちの一人が他の兄弟から持分を買い取る形にすると、売った側はこの控除を使えません。空き家の控除の要件は「空き家3000万円控除の条件」の記事に7つの欄で整理していますので、親族外に売る場合と手取りを比べてみてください。

2. 住宅ローン控除も、生計を一にする親族からの取得では使えない

住宅を取得した人が受けられる住宅借入金等特別控除は、取得の相手が生計を一にする親族や特別の関係がある者である場合、対象になりません。親から家を買って自分で住む形にしても、この控除は付きません。国税庁の案内では、控除を受けられる期間は新築や買取再販の住宅で最長13年、それ以外の既存住宅で10年とされ、控除額はその年の年末時点の住宅ローン残高に0.7%を掛けた額です。残高には住宅の区分ごとに上限が置かれているため、差し引かれる額は取得した住宅の種類で変わります。生計を一にする親族から買う形では、この控除を一度も受けられません。

住宅取得等資金の贈与の非課税制度も、取得の相手が一定の親族である場合には適用対象外です。親から資金をもらって、その親から家を買う、という組み合わせは成立しません。

3. 譲渡損失の繰越控除も使えない

自宅を売って損が出たときに、その損失を他の所得と通算し、翌年以降に繰り越す特例があります。これも譲渡の相手が特別の関係がある者である場合は使えません。買った値段より安く売って損が出ても、その損を給与所得と相殺することができない、ということです。

これらの特例が一通り使えないため、親族間で売買すると、親族外に売った場合より税負担の総額が大きくなる場合があります。安く売れば贈与税、時価で売れば譲渡所得税が控除なしでかかる、という挟まれ方になります。

4. 住宅ローンを組めないことが、実務上いちばん大きな壁になる

金融機関の多くは、親族間売買への融資を扱っていません。理由は、売買の実態が確認しにくいこと、価格が恣意的に決められること、そして資金の使途が住宅の取得以外に流れる懸念があることです。取り扱う金融機関でも、通常より多くの資料を求められ、審査に時間がかかります。

融資が使えなければ、現金で払える金額でしか取引できません。親が実家を子に売る話が、この一点で止まることがよくあります。手元の現金で足りないなら、親族外への売却を含めて出口を組み直すことになり、そのときの選択肢は「空き家の引き取り先を比較」の記事に4つの出口として並べています。

5. 他の相続人との間で、後から揉める

親が子の一人に安く売ると、他の子から見れば実質的な生前贈与に見えます。相続が始まったときに、特別受益として持ち戻しを主張される余地が生まれます。時価で売っていれば持ち戻しの対象にはなりにくいのですが、安い価格で売った差額は贈与と同じだと見られます。

売買の前に、他の相続人に価格と根拠を伝えておくかどうかで、後の展開が変わります。「実家の売却に兄弟が反対」の記事に、話がこじれたときに進む4段階を書いています。

「親族間の不動産売買で使えない特例と、適正価格以外のデメリット」について、そのまま聞けます。

いくらで売るかを決め、契約と申告まで進める6つの手順

最初にすることは、相続税評価額と実勢の成約事例の両方を出し、その幅を見ることです。幅が狭ければ価格は自動的に決まり、広ければどちらを採るかの判断が要ります。

評価額と実勢水準の幅による価格の決め方

観点実勢が評価額を上回る地域実勢が評価額を下回る地域
価格の幅の例評価額1,000万円・実勢1,300万円評価額800万円・実勢500万円
評価額で売った場合裁判例の枠組みに収まり説明が立つ買主が高く買う形になる
評価額を下回った場合裁判例の枠組みから外れる方向に動く実勢に合わせて下回る判断になる

1. 相続税評価額を計算し、下限の目安を置く

国税庁の路線価図で、対象地の前面道路の路線価を調べます。路線価に地積を掛け、奥行や間口による補正を加えたものが土地の評価額です。倍率地域であれば、固定資産税評価額に定められた倍率を掛けます。建物は固定資産税評価額がそのまま相続税評価額になるので、納税通知書の課税明細書で確認できます。

補正の計算は専門的になるので、正確な金額が要る場合は税理士に依頼することになります。目安として自分で出す段階では、国税庁の路線価図に載っている素の路線価に地積を掛けた金額を置き、そこから±10%の幅で見ておけば、話の出発点としては足ります。

2. 成約事例から、実勢の水準を出す

不動産情報ライブラリで、同じ市区町村・同じ最寄り駅の取引事例を調べます。土地の面積、建物の構造と築年、取引時期を絞り、近い条件の事例を3件以上集めます。1平方メートルあたりの単価に直して比べると、対象地の水準が見えます。

事例が3件集まらない地域では、範囲を広げるより、不動産会社の査定を2社から取る方が確かです。査定は無料で受けられるのが通常で、書面で出してもらえば根拠の資料として使えます。国土交通省の不動産情報ライブラリに出てくる価格は、取引をした当事者への調査に基づくもので、面積や築年が丸めて公表されています。対象の物件とまったく同じ条件の数字ではないので、単価の幅として読んでください。

3. 2つの数字の幅を見て、採る価格を決める

相続税評価額が1,000万円、実勢の成約水準が1,300万円だったとします。この場合、1,000万円を下回る価格を付ければ、「親族間の不動産売買の適正価格は相場の80%が線か」の節で触れた東京地裁平成19年8月23日判決の枠組みから外れる方向に動きます。1,000万円から1,300万円の間であれば、どちらの根拠でも説明が立ちます。

実勢が相続税評価額を下回る地域では、判断が逆になります。相続税評価額が800万円で、実際の成約が500万円前後という地域は珍しくありません。この場合に800万円で売れば、買主が市場より高く買う形になります。実勢の500万円で売ることに合理性があるなら、その根拠となる事例を揃えて残しておきます。

適正価格を決めて申告するまでの手順

  1. 1

    相続税評価額を出す

    路線価に地積を掛け、価格の下限の目安を置く。

  2. 2

    実勢の水準を出す

    近い条件の成約事例を3件以上集めて比べる。

  3. 3

    採る価格を決める

    2つの数字の幅を見て、説明が立つ金額を選ぶ。

4. 価格の根拠を、書面の形で保存する

査定書、路線価図の写し、成約事例の一覧、建物の修繕見積り。これらを契約日より前の日付で揃え、契約書と一緒に保管します。電子データだけでなく、紙で残しておく方が後の説明がしやすくなります。保存の期間は、相続税法第36条が贈与税の更正や決定をできる期間を原則6年、偽りその他不正の行為があった場合は7年と定めているためで、後から問われうる最長の期間に合わせると、少なくとも7年は置いておくことになります。書面は、売主と買主の双方が同じ一式を持っておきます。

価格を決めた経緯を1枚のメモにまとめておくのも有効です。どの資料を見て、なぜその金額にしたかを、日付入りで数行書いておきます。数年後に自分でも思い出せなくなるためです。

5. 売買契約書を作り、代金を振込で動かす

契約書には、物件の表示、代金の額、支払いの時期と方法、引渡しの時期、公租公課の負担の区分、契約不適合責任の取り決めを書きます。親族間だからと省略すると、後で認識が食い違ったときに戻る場所がありません。売買契約書には印紙税がかかり、記載金額に応じた収入印紙を貼ります。

代金は、契約書に書いた期日に銀行振込で動かします。同じ日に、司法書士へ所有権移転登記を依頼します。代金の支払いと登記の申請を同じ日に行うのが、通常の取引の形です。

6. 翌年の確定申告と、贈与税の申告を確かめる

売った側は、譲渡益が出ていれば譲渡所得の確定申告をします。国税庁の案内では、取得費が分からないときに売却価格の5%を概算の取得費とする取扱いが認められているため、購入時の契約書が残っていない古い家では、売却価格のほとんどが利益として扱われます。長期譲渡所得の税率は、所得税15%と住民税5%に復興特別所得税(所得税額の2.1%)が加わって、合計20.315%です。

買った側は、みなし贈与に当たる差額があれば贈与税の申告が必要です。申告の期限は、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までで、譲渡所得の申告期間とは開始日が違います。差額があるかどうかの判断が自分でつかないときは、申告期限の前に税務署または税理士に相談してください。

登記・印紙・税金・報酬で、いくら出ていくかを積み上げる

木目の机の上に置かれた革製のペンケースと万年筆

かかる費用は、登記の費用、印紙代、税金、専門家への報酬の4つに分かれます。仲介を通さなければ仲介手数料は発生しませんが、その分を別の費用で埋めることになるのが実情です。

売主と買主にかかる費用の内訳

観点売主にかかる費用買主にかかる費用
税金譲渡所得税と住民税(利益が出た場合)所有権移転登記の登録免許税
印紙代売買契約書に貼る収入印紙売買契約書に貼る収入印紙
司法書士への報酬抵当権の抹消や住所変更の登記所有権移転登記

1. 所有権移転登記の登録免許税と、司法書士の報酬

土地と建物の所有権移転登記には登録免許税がかかります。売買による移転の本則の税率は、固定資産税評価額の1000分の20です。評価額1,000万円の建物なら、この税率で20万円になります。土地の売買による移転については租税特別措置法第72条に軽減の規定があり、適用される期間内であれば1000分の15です。この軽減は期限ごとに延長されるかどうかが変わるので、申請する月の税率を法務局か司法書士に確かめてください。

司法書士への報酬は、物件の数と登記の内容で変わります。抵当権の抹消や住所変更の登記が同時に必要なら、その分が加算されます。見積りを先に取っておくと、決済日に用意する現金の額が読めます。

2. 売買契約書の印紙税

契約書に記載した金額に応じて、収入印紙を貼ります。記載金額が1,000万円を超え5,000万円以下の場合、本則は2万円ですが、不動産の譲渡に関する契約書には租税特別措置法第91条の軽減があり、適用される期間内であれば1万円です。この軽減も期限ごとに延長の有無が変わるため、契約する月に有効かどうかを国税庁の案内で確かめてください。契約書を2通作って双方が1通ずつ持つなら、印紙も2枚必要です。

印紙を貼らなくても契約自体は有効ですが、過怠税の対象になります。1通だけ作って一方がコピーを持つ形にすれば印紙は1枚で済みますが、原本を持たない側に不利が出るので、取引の性質に応じて決めてください。

3. 譲渡所得税と住民税

売った側に利益が出れば課税されます。親族間の譲渡では3,000万円控除が使えないため、利益の全額が課税の対象です。租税特別措置法第31条の長期譲渡所得に当たる所有期間5年超なら税率は20.315%、第32条の短期譲渡所得に当たる5年以下なら39.63%です(いずれも住民税と復興特別所得税を含みます)。相続した不動産は、亡くなった方の取得の日を引き継ぐため、相続の翌年に売っても長期になるのが通常です。

利益は、売った金額から取得費と譲渡費用を引いて計算します。譲渡費用に入るのは、売却のために直接かかった費用です。親族間売買で仲介を通さない場合、譲渡費用として引ける項目が少なくなるため、利益がその分大きく出ます。

4. 買った側にかかる不動産取得税と、翌年からの固定資産税

不動産を取得すると、都道府県から不動産取得税が課されます。標準税率は地方税法第73条の15で100分の4と定められていますが、土地と住宅の取得については附則の特例で3%に下げられており、この特例は2027年3月31日までの取得が対象です(出典を確かめた2026年10月1日時点)。宅地の課税標準を2分の1にする特例も、同じ日までとされています(地方税法・e-Gov法令検索)。取得から数か月後に納税通知書が届くので、決済の時点で現金を使い切らないようにしてください。

翌年からは固定資産税と都市計画税が買主に課されます。1月1日の所有者に課税されるため、年の途中で引き渡す場合は日割りで精算するのが慣行ですが、これは当事者間の取り決めであって法律上の義務ではありません。契約書に精算の方法を書いておきます。

5. 税理士・司法書士に払う報酬

価格の妥当性について税理士に意見をもらう場合、報酬が発生します。不動産鑑定士に鑑定評価書を作ってもらう場合は、さらに大きな金額になります。鑑定評価書は価格の根拠として最も強いものですが、費用が数十万円になることもあり、物件の価格帯によっては割に合いません。

判断の目安は、差額が問題になったときに課される贈与税の見込み額です。その額が鑑定の費用を大きく上回るなら、鑑定を取る意味があります。数百万円の物件で、差額が出ても贈与税が数十万円に収まる見込みなら、査定書2通で足りることが多いところです。

6. 仲介を入れる場合の手数料と、入れる意味

親族間売買でも、不動産会社に仲介を依頼できます。手数料は宅地建物取引業法第46条に基づく国土交通大臣の告示で上限が定められており、売買代金が400万円を超える取引では、代金の3%に6万円を加えた額と消費税が上限になります。当事者どうしで話がついている取引に手数料を払うことに抵抗を感じる方もいますが、契約書の作成、重要事項説明、決済の段取りを任せられる点で選ばれます。

親族間売買を専門に扱う会社もあり、住宅ローンを取り扱う金融機関との窓口を持っている場合があります。融資が必要な取引では、この点が決め手になることがあります。費用の全体像は「不動産売却の費用一覧」の記事に項目別で並べています。

親族間の不動産売買を成功させるポイントと、進める順番

リビングのテーブルを囲んで、家族がこれからの手順について話し合っている

進める順番を間違えなければ、この取引は難しいものではありません。価格を決める前に資金の目処を立てること、契約の前に他の相続人に話を通すこと、この2つを先に置くのが要点です。

親族間売買を成功させる進行手順

  1. 価格を決める前

    資金の目処を立てる

    融資や現金の額を確認。払えなければ別の方法を検討する。

  2. 売買契約の前

    他の相続人へ説明する

    売買の予定と価格の根拠を伝え、同意を書面に残す。

  3. 名義が亡くなった方のままの時

    先に相続登記を済ませる

    親の名義に移さないと売主になれないため、先に登記を行う。

1. 買う側の資金を、価格を決める前に確かめる

いくらなら払えるかが決まっていないまま価格の話を始めると、後で振り出しに戻ります。現金がいくらあるか、融資が使えるか、親からの借入をどう組むかを先に整理します。融資を使う予定なら、親族間売買を扱う金融機関があるかを、価格の相談より前に確認してください。

融資が使えないと分かった時点で、取引の形そのものを考え直すことになります。現金で払える金額が時価を大きく下回るなら、その差額は贈与税の対象になるので、無理に売買の形にせず別の方法を検討する方が早いこともあります。

2. 他の相続人に、売買の予定と価格の根拠を伝える

親が子の一人に売る場合、他の子に事前に伝えておきます。伝えないまま登記が動くと、後から知った側が不信を持ちます。価格をどう決めたか、なぜその子が買うことになったかを説明できれば、相続の場面での争いを減らせます。

全員の同意を取る義務があるわけではありませんが、同意があることを書面に残しておけば、後の特別受益の主張に対する材料になります。逆に、反対されている状態で強行すると、相続の開始後に訴訟になる可能性が残ります。

3. 名義が亡くなった方のままなら、先に相続登記を済ませる

親から買う予定の家の名義が、まだ祖父のままになっていたという例があります。この形のままでは、親が売主になれません。先に相続登記を入れて、親の名義に移しておくことになります。相続登記の申請は2024年4月1日から義務になり、期限は相続で不動産を取得したことを知った日から3年です。2024年4月1日より前に取得を知っていた方も対象で、その場合は施行日から3年後の2027年3月31日が期限になります。施行日以後に知った場合は、知った日から3年で数えます(相続登記の申請義務化・法務省)。

戸籍の収集と遺産分割協議に数か月かかることがあります。売買の日程を先に決めてしまうと間に合わないので、登記が済む見込みの時期から逆算してください。数次相続で相続人が増えている場合は、さらに時間がかかります。

4. 価格の根拠を2種類以上そろえる

査定書1通だけで決めるより、路線価による計算と査定書の両方を揃えた方が説明が強くなります。2つの数字が近ければ、その帯の中で決めた価格は動かしにくくなります。大きく離れていれば、離れている理由を書いておきます。

根拠の資料は、買う側と売る側の両方が同じものを持っておきます。片方しか持っていないと、後から一方が「聞いていない」と言い出す余地が残ります。

5. 契約書に、通常の売買と同じ項目を書く

親族間でも、契約不適合責任をどう扱うかを決めておきます。築年数の古い家では、売主が責任を負わないとする特約を付けるのが通常です。この特約を付けるなら、建物の状態をどこまで買主が確認したかを契約書に書いておきます。

引渡しの時期、残置物を誰が処分するか、鍵の引渡しをいつ行うかも、書いておかないと後で揉めます。親族だから言わなくても分かる、と考えて省いた項目が、数年後の火種になります。

6. 申告の予定を、売買の日程と一緒に書き込む

売った翌年の2月16日から3月15日が譲渡所得の申告期間、贈与税の申告は2月1日から3月15日です。売買の日程を決める段階で、この期間をカレンダーに書き込んでおきます。12月に引き渡すか1月に引き渡すかで、申告の年が1年ずれます。

1月1日の所有者に固定資産税が課されるため、12月31日までに登記を移せば、翌年度の固定資産税は買主に課されます。この違いも日程の判断材料になります。

なお、この記事の税務・法務に関する記載は一般的な情報提供であり、個別の事案についての判断ではありません。適用の可否や具体的な税額については、税務署または税理士、登記については司法書士、境界や隣地との権利関係については弁護士や土地家屋調査士など、それぞれの専門家にご確認ください。当社は不動産の買主であり、税務や法律の代理はできません。

「親族間の不動産売買を成功させるポイントと、進める順番」について、そのまま聞けます。

親族間の不動産売買の適正価格で当社が関われる範囲と、買い取る場合

当社が買い取る条件・買い取れない条件と、実際の買取事例は「当社の買取基準」にまとめています。

「親族間の不動産売買の適正価格で当社が関われる範囲と、買い取る場合」について、そのまま聞けます。

親族間の不動産売買の適正価格について、先に確かめる3つ

  • 価格の下限は、相続税評価額を1つの基準に置いて考えます。 相続税評価額と同程度かそれ以上の価格であれば、著しく低い価額に当たらないという枠組みが、実務でよく引かれる東京地裁平成19年8月23日判決(裁判所の裁判例検索で裁判年月日から探せます)で示されていますが、地方裁判所の一事例であり、事案によって判断は動きます。ただし実勢が評価額を下回る地域では、この基準で売ると買主が高く買う形になります。
  • 価格を決めた資料を、契約日より前の日付で残してください。 査定書、路線価の計算、成約事例のいずれか2種類以上を揃え、なぜその価格にしたかを数行のメモにして保管します。後から取り寄せた資料は、契約時の根拠にはなりません。
  • 3,000万円控除も住宅ローン控除も、親族間の譲渡では使えません。 直系血族や生計を一にする親族への譲渡は特例の対象から外れます。親族外に売った場合の手取りと並べて、どちらが有利かを先に計算してください。

親族の方へお売りになる場合、当社は買主になりませんので、お出しできるのは価格の根拠に使う査定額だけです。親族間でまとまらなかった場合には、残置物のある家も現況のまま当社が買い取りますが、価格は仲介での成約想定より低くなります。

査定は無料・売却の義務なし
0120-996-748受付時間10:00〜19:00(水・日曜定休)

通話料無料・全国対応

この先は、当社の買取窓口「買取くん」のページです(運営は同じ株式会社リアテクスです)。

親族間の不動産売買と適正価格について、よくある質問

Q1. 親族間での売買で3000万円控除は適用されないのですか

適用されません。自分が住んでいた家を売ったときの3,000万円特別控除も、相続した空き家を売ったときの3,000万円控除も、譲渡の相手が配偶者、直系血族、生計を一にする親族、その他特別の関係がある者である場合は対象から除かれます。親から子、祖父母から孫への譲渡は直系血族に当たるため、いずれの控除も使えません。 兄弟姉妹の場合は直系血族ではありませんが、生計を一にしているかどうかで判定が変わるので、税務署または税理士にご確認ください。

Q2. 不動産を親族間で売買するとどうなりますか

売買契約そのものは有効に成立し、登記も移せます。ただし価格が時価より著しく低ければ、その差額が買主への贈与とみなされ、買主に贈与税がかかります。あわせて、3,000万円控除・住宅ローン控除・譲渡損失の繰越控除といった特例が使えなくなります。 住宅ローンを扱わない金融機関が多いため、現金で払える金額でしか取引できないことも実務上の制約になります。

Q3. 家をタダであげますと言ったら贈与税はかかりますか

かかります。ただで渡した側ではなく、受け取った側に贈与税が課され、税額の基になるのは相続税評価額です。買い手がつかない家であっても、その理由で評価額がゼロになるわけではありません。 法人に渡す場合は扱いが変わり、渡した側に時価で売ったとみなす課税が生じることがあります。名義を動かす前に、登記費用をどちらが出すか、翌年以降の固定資産税を誰が払うかまで、書面にしておいてください。

Q4. 贈与された不動産の評価額はいくらになりますか

評価の基になるのは相続税評価額です。市街地の土地なら、国税庁の路線価図に載る1平方メートルあたりの価格に地積を掛け、奥行や間口の補正を入れて出します。路線価の付いていない地域では、固定資産税評価額に国税庁が定めた倍率を掛けます。国税庁は路線価を公示価格のおよそ80%を目安に定めているため、市場の売買価格より低い数字が出るのが通常です。 家屋は、固定資産税の課税明細書に載っている価格がそのまま使われます。補正の要る土地は、税理士に計算を頼んでください。

Q5. 土地は評価額より高く売れることがありますか

あります。固定資産税評価額は公示価格のおよそ70%、相続税路線価はおよそ80%の水準に設定されているため、市場での取引価格がこれらを上回るのは珍しいことではありません。逆に、人口が減り続けている地域では、実際の成約価格が相続税評価額を下回っていることもあります。 どちらの状態かは、国土交通省の不動産情報ライブラリで同じ地域の取引事例を調べれば見えます。親族間の価格を決める前に、この確認を先にしてください。

Q6. 親族間売買を、専門の業者に頼むべきでしょうか

住宅ローンを使う予定があるなら、親族間売買を扱う金融機関との窓口を持っている会社に相談する意味があります。現金で完結する取引で、価格の根拠も揃えられるなら、司法書士に登記を依頼するだけで進められることもあります。判断の目安は、差額が問題になったときに課される贈与税の見込み額と、専門家に払う報酬の大小です。 見込み額が報酬を大きく上回るなら、税理士に価格の意見をもらう方が結果的に安く済みます。

当社の見方

ご相談でよくあるのが、親族の方との価格の話が先に進んでしまってから、当社に査定だけを求めてこられる形です。すでに口頭で金額を約束していて、その金額を裏づける書面が欲しい、という順番になっています。この順番だと、当社がお出しした金額が約束の金額と離れていた場合に、かえって話がやりにくくなります。金額を口にする前に、市場での水準を先に見ておく方が動きやすいところです。

もう1つ多いのが、親族間で売る方向で進めていたものの、住宅ローンが通らずに止まってしまったというご相談です。この段階では、買う予定だった親族の方の資金で払える額が時価を大きく下回っていることがほとんどで、その差額をそのまま贈与税で払うくらいなら、親族外へ売って現金を分けた方が手取りが多いという結論になる場合があります。たとえば時価1,300万円の家を、親族の方が用意できる700万円で売れば、差額の600万円が贈与とみなされる帯に入ります。基礎控除110万円を引いた490万円に特例税率の20%を掛け、控除額30万円を差し引いた68万円が、贈与税の見込みになります。当社がお出しできるのは買取の価格と決済の日程だけで、この税額の最終的な判断は税理士の領分です。買取の金額と、親族の方へ売った場合の手取りから税を引いた額を、同じ紙に並べてからお決めください。

当社が買い取る物件・お断りする物件と、買取価格の決まり方は、当社の買取事例76件の内訳とあわせて当社の買取基準にまとめています。

この記事について

執筆・編集
リアテクス編集部株式会社リアテクス当社(宅地建物取引業 東京都知事(1)第107888号)は物件を直接買い取る買主の立場から、売却を検討する方の判断材料となる記事を企画・編集しています。
監修
薩摩 賢幸薩摩 賢幸株式会社リアテクス 取締役COOこの区分の監修を担当しています。記事の公開判断は当社が行っています(代表が定めた手順による)。確認・公開判断:薩摩 賢幸(株式会社リアテクス 取締役COO)
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