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空き家

成年後見の不動産売却に許可が必要な範囲|居住用の判断

公開 更新

執筆
株式会社リアテクス リアテクス編集部
監修
株式会社リアテクス 執行役員 鶴野 博之(宅地建物取引士(東京)第257503号)
成年後見の不動産売却に許可が必要な範囲|居住用の判断

「施設に入った親の実家を売りたいが、成年後見人になったあと家庭裁判所の許可がどこまで必要なのか分からない」。許可が必要なのは本人が居住の用に供する建物とその敷地で、賃貸中の物件や本人が住んだことのない相続不動産は対象外です。ただし後見監督人が選任されていれば、居住用でなくてもその同意が要ります。

当社は家庭裁判所の許可を条件とする契約に応じ、許可が出なければ違約金なしで契約を効力のないまま終わらせますが、買取価格は仲介での成約想定額より低くなります。この家が買い取れるかどうかだけ、先に聞く(無料)

目次(9章)

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成年後見人が本人の不動産を売るとき、家庭裁判所の許可が必要なのは、本人が居住の用に供する建物とその敷地に限られます。人に貸している物件や、本人が一度も住んだことのない相続不動産は、許可なしで売れます。ただし居住用に当たるかどうかは住民票の位置だけでは決まらず、施設に移って空き家になった実家も、本人が帰る見込みが残っていれば居住用として扱われます。許可を得ないまま売った契約は無効で、代金を受け取っても所有権は動きません。

成年後見の不動産売却に許可が必要な範囲の要点を、定義・この記事でわかること・よくある質問の順に短くまとめた動画です。

成年後見で不動産を売却するとき、家庭裁判所の許可が要る範囲

家族が実家の居間で向かい合って座り、家の売却について話し合っている

成年後見人に選任されても本人の不動産を自由に処分できるわけではなく、逆にすべての不動産について家庭裁判所の許可が要るわけでもありません。分かれ目は、その不動産が本人の居住の用に供されているかどうかの一点に絞られます。

許可が要るのは、居住用不動産の処分に限られる

民法第859条の3は、成年後見人が本人に代わってその居住の用に供する建物またはその敷地について、売却、賃貸、賃貸借の解除、抵当権の設定その他これらに準ずる処分をするには、家庭裁判所の許可を得なければならないと定めています(民法(e-Gov法令検索))。対象は建物と敷地の両方で、建物だけを売る場合も、底地だけを売る場合も含まれます。売買に限らず、人に貸す、借家契約を解除する、担保に入れるといった行為も同じ枠に入ります。

条文に挙がっていない不動産、たとえば本人が第三者に賃貸している収益物件、本人が親から相続して一度も住んでいない家、山林や遠方の原野などの売却には、この許可は要りません。許可が要らないことと、後見人の判断だけで売ってよいことは別の話です。

居住用と非居住用での許可の要否

観点居住用不動産非居住用不動産
家庭裁判所の許可必要不要
該当する物件の例本人が居住する建物や敷地収益物件、山林、未居住の相続家屋
対象となる行為売却、賃貸、契約解除、担保設定など売却など
後見人の判断だけで売れるか売れない(許可が必要)売れない(許可不要でも自由ではない)

許可を得ずに売った契約は無効になる

許可の必要な居住用不動産を許可なしに売った場合、その売買契約は無効と解されています。無効ですから、代金を受け取っていても所有権は買主に移りません。所有権移転登記の申請では家庭裁判所の許可を証する審判書の謄本を添えることになるため、実際には法務局の段階で申請が通りません。あとから許可を取って有効にできる仕組みは用意されていないので、居住用かどうかで迷う物件は、許可を得る側へ寄せて進めるのが安全です。

売主側に残る損害も具体的です。契約が無効になれば代金を返すことになり、買主が支出した測量費や登記費用の負担をめぐって争いが起こる余地もあります。後見人としての行為が本人の利益に反すると判断されれば、家庭裁判所が後見人を解任することもあります。

許可が要らない不動産でも、後見人の裁量で売れるわけではない

成年後見人は本人の財産を本人のために管理する立場で、民法第858条は本人の心身の状態と生活の状況に配慮する義務を定めています。売る理由が本人の側にない処分、つまり相続人の都合、介護している家族の資金需要、遠方の管理が面倒だという後見人の事情は、この義務に照らして説明が立ちません。

後見監督人が選任されている場合、後見人が本人に代わって民法第13条第1項各号に挙げられた行為をするには、後見監督人の同意を得なければなりません(民法第864条)。不動産の処分は同項第3号の「不動産又は重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為」に当たるため、居住用でない不動産の売却でも、この同意は省けません。同意を得ないまましたときは、本人または後見人が後からその行為を取り消せます(民法第865条第1項)。同意を求める相手は家庭裁判所ではなく監督人本人なので、選任されているかどうかを最初に確かめてください。

本人の判断能力がまだ残っていて、後見を開始するかどうかそのものを迷っている段階なら、後見を使わずに本人が売主になる道が残っています。その線引きは「親が認知症で家を売る方法」の記事に整理しました。

後見人・保佐人・任意後見人で、不動産売却に要る許可と同意が変わる

法定後見には3つの類型があり、本人が元気なうちに任意後見契約を結んでいた場合はさらに別の手続になります。誰が売主として署名できるのかが類型で変わるため、許可の話より先にここを固めます。

後見・保佐・補助で、本人に代わって売れるかが違う

成年後見人には、本人の財産に関する法律行為についての包括的な代理権があります(民法第859条第1項)。保佐人と補助人はこれと違い、家庭裁判所が特定の法律行為について代理権を付与する審判をしていなければ、本人に代わって不動産を売ることができません。

保佐が開始すると、本人が民法第13条第1項に挙げられた行為をするには保佐人の同意が必要になります。不動産の処分は同項第3号の「不動産又は重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為」としてここに入るため、代理権が付与されていない保佐では、本人が売主として署名し、保佐人が同意する形になります。同意を得ないまま本人がした売買は、本人または保佐人が取り消せます(民法第13条第4項)。補助ではこの同意権が当然に付くわけではなく、家庭裁判所が同意を要する行為を定める審判をした範囲でだけ、補助人の同意が必要になります(民法第17条第1項)。その審判に不動産の処分が入っていない補助であれば、本人が自分の判断で契約する形になるので、登記事項証明書で同意権と代理権のどちらが付いているかを確かめてください。

保佐人や補助人が付与された代理権に基づいて居住用不動産を処分する場合も、家庭裁判所の許可が必要です(民法第876条の5第2項、第876条の10第1項が第859条の3を準用)。類型が変わっても、居住用という線引きと許可の要求は共通します。

4つの法定・任意後見類型の権限の違い

  • 成年後見人の場合

    包括的な代理権があり、本人に代わって売却できる

  • 保佐人・補助人の場合

    代理権付与の審判がなければ本人に代わって売れない

  • 本人が売主になる場合(保佐)

    保佐人の同意がなければ不動産を処分できない

  • 居住用不動産の許可

    類型が変わっても居住用であれば共通して許可が必要

任意後見には、居住用不動産の許可という手続がない

本人が判断能力のあるうちに公正証書で任意後見契約を結んでいた場合、家庭裁判所が任意後見監督人を選任した時点で契約の効力が生じます。任意後見人の権限は契約の代理権目録に書かれた範囲に限られ、居住用不動産の処分について家庭裁判所の許可を求める規定は置かれていません。代理権目録に不動産の処分が入っていなければそもそも売れませんし、居住用不動産の処分には任意後見監督人の書面による同意を要すると契約で定めている例も多いので、公正証書の写しを先に読んでください。

どの類型でどの権限が登記されているかは、法務局が発行する後見登記等の登記事項証明書で確認できます(成年後見制度・成年後見登記制度(法務省))。

類型ごとに、売る根拠と要る手続を並べる

類型本人に代わって売る根拠居住用不動産の処分に要る手続
後見選任の審判にともなう包括的な代理権家庭裁判所の許可
保佐代理権付与の審判で定められた範囲家庭裁判所の許可(第859条の3を準用)
補助代理権付与の審判で定められた範囲家庭裁判所の許可(第859条の3を準用)
任意後見任意後見契約の代理権目録に書かれた範囲契約の定めによる(家裁の許可の制度はない)

表の最後の行を除けば、居住用不動産の処分には家庭裁判所の許可が共通して要ります。後見監督人・保佐監督人・補助監督人が選任されている場合は、許可とは別に監督人の同意も必要になり、こちらは居住用でない不動産の売却にもかかります。

「後見人・保佐人・任意後見人で、不動産売却に要る許可と同意が変わる」について、そのまま聞けます。

居住用不動産に当たるかどうかで、売却の許可の要否が分かれる

庭木の手入れが行き届いた空き家の外観と周囲の住宅街の風景

判断が割れるのは、本人が施設や病院に移って実家が空き家になっている場合です。家庭裁判所の実務では、現に寝起きしている建物だけでなく、本人が生活の本拠として使っていて将来戻る可能性が残る建物も居住用として扱われます。空き家になって何年経ったかという数字ひとつで割り切れる話ではありません。

1. いま本人が住んでいる家は、住民票の位置に関わらず居住用

本人が現に生活している建物とその敷地は、住民票がどこにあっても居住用です。子の家に住民票を移したまま実家で暮らしている場合も、実家の側が居住用に当たります。同居している親族がいるかどうかも結論を変えません。確かめるのは登録上の住所ではなく、寝起きと食事の場所がどこかという事実です。

2. 施設に入って空き家になった実家は、帰る見込みで分かれる

短期の入所やリハビリ目的の入院で、家財も仏壇もそのまま残り、本人が帰りたいと言っている場合は、居住用として扱われる方向に傾きます。逆に終身利用を前提とした施設に入り、医師の見込みからも在宅復帰が想定されない場合は、居住用から外れる判断もあり得ます。それでも、他に本人が住める場所がないのであれば、施設との契約が続くかどうかが不確かな以上、居住用として扱う運用が少なくありません。

施設入所後の実家が居住用となる条件

  1. 1

    帰宅を希望しているか

    短期入所やリハビリ目的で本人が帰宅を望むなら、居住用として扱われやすい。

  2. 2

    在宅復帰が見込めるか

    終身利用の施設で医師も復帰を想定しない場合は、居住用から外れる余地がある。

  3. 3

    他に住める場所があるか

    帰る見込みがなくても他に住む場所がなければ、居住用として扱う運用が多い。

3. 住民票を移していても、居住用から外れるとは限らない

施設入所にあわせて住所を施設に移す例は多いものの、住民票の移動は形式に過ぎず、それだけで許可が不要になるわけではありません。反対に、何年も前に転居して住民票だけが残っている家は、生活の本拠ではないため居住用に当たらないと判断される余地があります。どちらの向きでも、住民票は判断材料の一つにとどまります。

4. 賃貸中の物件や、本人が住んだことのない相続不動産は原則として対象外

物件の状況居住用として扱われるか家庭裁判所に示す材料
本人が現に生活している建物と敷地当たる現況の写真、後見人の面会記録
施設入所中で家財が残り、帰る意向がある実家当たる入所契約書、本人の意向、診断書
終身利用を前提とする施設に入り、帰る見込みがない実家判断が分かれる入所契約書、診断書、家裁への事前照会
本人が相続し、一度も住んでいない家当たらない登記事項証明書、相続の経緯
第三者に貸している賃貸物件当たらない賃貸借契約書、賃料の入金記録

判断が分かれる行に自分の物件が当てはまるときは、後見人の判断で非居住用と決めてしまわないでください。無効になったときに戻せないのは、売った側ではなく本人の財産です。

5. 迷う場合は、許可を申し立てる側に寄せる

許可が不要な物件について申立てをしても、本人に生じる不利益はほとんどありません。手続が1つ増え、申立書と添付書類をそろえる手間と、審理を待つ期間が加わるだけです。管轄の家庭裁判所の書記官に事前に照会すれば、その物件について申立てが必要かどうかの目安を教えてもらえることもあります。買主との契約を許可を条件とする形にしておけば、判断が変わったときの手戻りも小さくなります。

家庭裁判所の許可が出る場合と、不許可になる場合

許可の判断は、本人の財産を減らす処分に見合う理由が本人の側にあるかどうかで決まります。書類がそろっていても、理由が家族の側にしかない売却は通りません(裁判所(家事事件の手続案内))。

1. 売る必要性を、本人の収支から説明できるか

いちばん重く見られるのがここです。施設の月額費用と本人の年金・預貯金を並べ、いつ資金が尽きるかを数字で示せると、必要性の説明が立ちます。医療費や介護用品の支出、自宅にかかり続ける固定資産税・火災保険・草刈り・通水の費用も、本人の財産を減らす要因として書けます。

建物の老朽化が進み、屋根や外壁の一部が落ちて近隣に損害を与えかねない状態であれば、危険の除去も理由になります。保有を続けた場合の年間の支出と、売って施設費用に充てた場合を比べる材料は「空き家の固定資産税を払い続ける損益分岐点」の記事にまとめています。

売却を裏付ける収支の比較

  • 手元にある資金収入と資産(万円)
  • 施設への支払い入居の費用(万円)
  • 家の維持コスト保有の費用(万円)

2. 価格が妥当だと示せるか

複数の査定を取り、近隣で実際に成約した価格の水準と並べて説明します。買取の価格が仲介での成約想定額より低くなる場合は、なぜ低いのかを書面にしてください。残置物の処分費、雨漏りや傷みの補修、再建築ができない土地であること、境界が未確定であること、売れるまで保有する間の税金といった要素は、価格の内訳として説明できます。安いこと自体が不許可の理由になるのではなく、根拠を示せない安値が問題になります。

売却許可の審査で重視される3つの観点

  • 資金の枯渇時期を示す

    施設の月額費用と本人の年金・預貯金を並べて説明する

  • 継続的な支出を挙げる

    医療費や自宅の固定資産税・維持費を財産が減る要因とする

  • 危険の除去を理由にする

    建物の老朽化で近隣に損害を与えるおそれがある場合

3. 本人の意向と、売った後の住まいが整理されているか

後見人が本人に面会して意向を聞き取り、その内容を申立書に書きます。本人が帰宅を強く望んでいる場合、家庭裁判所は慎重になり、家庭裁判所調査官が本人や施設から事情を聞くこともあります。売った後に本人の戻る場所がなくなる形は、そのまま不許可の理由になり得ます。施設の入所契約が終身のものか、期間の定めがあって更新されない可能性があるのかも、ここで確かめる点です。

4. 代金の受け取りと使い道が、本人の財産として管理されるか

代金は本人名義の口座で受け取ります。後見人個人の口座を経由させる形は、それだけで疑いを招きます。家族への貸付けや贈与、相続税の対策としての支出は本人の利益にならないため、使い道として書けません。後見制度支援信託や支援預金を利用している場合は、入金の予定を家庭裁判所と金融機関に事前に伝え、手続の順番を確認しておきます。

5. 不許可や差し戻しになりやすい形

  • 後見人自身や、その配偶者・子が買主になる場合:利益が相反するため、特別代理人の選任が必要です(民法第860条が第826条を準用)。後見監督人が選任されているときは、監督人が本人を代表します(民法第851条第4号)。
  • 売る理由が本人の側にない場合:相続の準備、共有者の資金需要、管理の手間だけを理由にした申立ては通りません。
  • 査定が1社だけで、価格の根拠が薄い場合:追加の資料を求められ、決済の日程が後ろにずれます。
  • 契約を先に確定させ、許可を後から取ろうとした場合:許可が出なければ契約は成立せず、違約金の条項が残っていると本人が負担を負います。

「家庭裁判所の許可が出る場合と、不許可になる場合」について、そのまま聞けます。

成年後見人が不動産の売却許可を申し立てるまでの手順

申立ての書類は、家庭裁判所に行けばそろうものではありません。法務局と市区町村、施設、買主から集めた資料を後見人が束ねる作業になります。順番を間違えると、契約を結び直すところから戻ることになります。

1. 後見登記の登記事項証明書で、自分の権限と監督人の有無を確かめる

後見登記等の登記事項証明書には、本人と後見人の氏名、後見人の権限の範囲、後見監督人が選任されているかどうかが記載されます。東京法務局後見登録課への郵送請求と、全国の法務局の窓口での請求ができます。売買契約のときも決済のときも提出を求められる書類なので、発行日が新しいものを複数部そろえておくと二度手間になりません。

売却許可を申し立てるまでの手順

  1. 準備開始時

    権限と監督人の確認

    登記事項証明書で自身の権限範囲と監督人の有無を把握する

  2. 物件調査時

    名義と売却範囲の確定

    本人の持分や未登記部分を確認し、必要なら相続登記を行う

  3. 価格決定時

    複数査定の取得

    仲介と買取の両方の査定を取り、価格の根拠を書面化する

  4. 契約時

    条件付き売買契約の締結

    家庭裁判所の許可を条件とした売買契約を結ぶ

  5. 申立て時

    売却許可の申立て

    集めた資料と契約書を束ねて家庭裁判所に提出する

2. 名義と、売る範囲を確定させる

登記事項証明書で名義を確かめ、本人の持分が一部だけなら他の共有者の意思も必要になります。共有者が先に亡くなっていて相続登記が済んでいない場合の進め方は「共有名義人が死亡したとき」の記事に書いています。未登記の増築部分、境界標の有無、進入路が私道なら持分や通行の承諾も、この段階で確かめます。

本人が相続人として取得した不動産の登記が済んでいない場合は、後見人が本人を代理して相続登記を申請します。相続登記は2024年4月1日以降、義務になっています。取得を知った日から3年が申請の期限で、施行日より前に知っていた分は2027年3月31日までです(相続登記の申請義務化について(法務省))。義務である以前に、名義が動いていない不動産は決済日に所有権を移せません。

申立て前に確定させる名義と範囲

  • 共有者の意思確認

    登記事項証明書で確認し、本人の持分が一部なら必要になる

  • 物理的状況と権利の確認

    未登記の増築部分、境界標の有無、私道の通行承諾を確かめる

  • 相続登記の代理申請

    決済日に所有権を移すため、未登記なら後見人が申請する

3. 査定を複数取り、価格の根拠を書面でそろえる

仲介で売り出した場合の想定額と、買取の価格は性質が違うため、両方を取って家庭裁判所に出す形が説明しやすくなります。買取の価格については、土地の評価からいくら引かれているのかを内訳で示してもらってください。解体費、残置物の処分費、補修費、再販までの保有費のどれが何円分なのかが書かれていれば、価格の妥当性の説明にそのまま使えます。

4. 家庭裁判所の許可を条件とする売買契約を結ぶ

許可が出る前に無条件の契約を結ぶと、許可が下りなかったときに本人が違約の責任を負う形になりかねません。許可が得られない場合には契約の効力が生じず、手付や違約金の授受もなく終わる条項を入れます。いつまでに許可が得られなければ契約を解く、という期限も決めておきます。契約の時点で金銭を動かさない、あるいは預り金として扱うという整理にしておくと、資金の返還で争う余地が減ります。

5. 申立書と添付書類をそろえて提出する

書類どこで用意するか家庭裁判所が見る点
居住用不動産処分許可の申立書家庭裁判所の書式処分の理由と代金の使い道
不動産の登記事項証明書法務局名義、持分、担保の有無
固定資産評価証明書または課税明細書市区町村評価額と売却価格の対比
売買契約書の案と重要事項説明書の案買主価格、決済日、条件の書き方
査定書(複数社)不動産会社価格の根拠と内訳
本人の収支・財産の一覧、施設の入所契約書と費用明細後見人が作成、施設売る必要性の裏付け

審理を長引かせるのは、査定が1社だけで追加の資料を求められる場合、本人の意向に疑義があって家庭裁判所調査官の調査が入る場合、添付書類に不足があって補正を待つ場合です。書式は後見開始の審判をした家庭裁判所のものを使い、追加で求められそうな資料(診断書の写し、施設の費用明細、本人との面会記録)は、求められてから集めるのではなく提出時に添えておくと止まりません。後見人が遠方に住んでいて現地に行きにくい場合の段取りは「遠方の実家を行かずに売却する方法」の記事に書いています。

許可が出てから決済・登記までの手順と、売却後の報告

許可の審判が出ても、それは手続の途中の通過点です。審判で許可された内容の範囲を外れると、もう一度申立てからやり直すことになります。

1. 審判書の謄本を受け取り、決済日を決める

審判書には、相手方や価格といった処分の内容が特定されて記載されます。許可を得た後に価格を下げる、買主を変える、売る範囲を変えるという変更が生じれば、あらためて許可を得る必要が出てきます。価格が動く余地のある交渉は、申立ての前に終わらせてください。 本人が亡くなれば後見は終了し、後見人は代理できなくなるため、契約から決済までを長く空ける日程も避けたいところです。

許可の審判から売却後の報告までの手順

  1. 許可の審判後

    審判書受領と日程調整

    審判書の内容を確認し、契約から間を空けずに決済日を決める

  2. 決済当日

    代金決済と所有権移転登記

    書類確認後に代金を受け取り、同日に登記を申請する

  3. 決済後速やかに

    家庭裁判所への報告

    本人名義の口座で代金を受け取り、費用と残額を報告する

  4. 売却の翌年

    譲渡所得の確定申告

    本人を納税者として申告し、要件を満たせば特別控除を使う

2. 代金の支払いと所有権移転登記を同じ日に行う

決済の場では、登記識別情報または権利証、後見登記等の登記事項証明書、許可の審判書の謄本、後見人の印鑑証明書、固定資産評価証明書を用います。抵当権が残っている場合は、抹消の書類が決済日にそろうかどうかを金融機関に先に確かめます。司法書士が書類を確認したうえで代金が動き、同じ日に登記を申請する流れになります。

3. 代金を本人名義の口座で受け取り、家庭裁判所に報告する

入金の記録と、売却にかかった費用の領収書を残します。後見事務の報告では、売却の経緯、入金額、そこから支払った仲介手数料や登記費用、残った金額の保管先を書きます。支援信託や支援預金を使っている場合は、入金後に追加で手続が必要になることがあるため、金融機関の指定する書式を早めに取り寄せてください。

4. 譲渡所得の申告は、本人を納税者として行う

売ったのは本人の不動産なので、譲渡所得の申告も本人の名義で行い、後見人がこれを代理します。本人が住んでいた家屋とその敷地であれば、居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除が使える可能性があります。住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること、といった要件があるため、施設入所から年月が経つと使えなくなります(マイホームを売ったときの特例(国税庁))。施設に移った時期は、許可の要否と税の期限の両方に効きます。

なお、この記事の税務・法務に関する記載は一般的な情報提供であり、個別の事案についての判断ではありません。適用の可否や具体的な税額については、税務署または税理士、登記については司法書士、境界や隣地との権利関係については弁護士や土地家屋調査士など、それぞれの専門家にご確認ください。当社は不動産の買主であり、税務や法律の代理はできません。

「許可が出てから決済・登記までの手順と、売却後の報告」について、そのまま聞けます。

当社が成年後見人から不動産を買い取る場合の条件と、許可前の契約の扱い

当社が買い取る条件・買い取れない条件と、実際の買取事例は「当社の買取基準」にまとめています。

「当社が成年後見人から不動産を買い取る場合の条件と、許可前の契約の扱い」について、そのまま聞けます。

成年後見の不動産売却と許可で、先に確かめる3点と当社の条件

  • 許可が要るのは居住用不動産だけで、許可なく売れば契約は無効です。 民法第859条の3の対象は、本人が居住の用に供する建物とその敷地です。賃貸中の物件や本人が住んだことのない相続不動産は許可の対象外ですが、後見監督人が選任されていれば、そちらには監督人の同意が要ります。
  • 施設に入った実家が居住用に当たるかは、住民票では決まりません。 家財が残っているか、入所契約が終身を前提としているか、本人が帰りたいと言っているか、他に住む場所があるかで判断が分かれます。迷うなら管轄の家庭裁判所に照会し、許可を申し立てる側に寄せた方が手戻りが小さくなります。
  • 許可の審判は、必要性と価格の根拠がそろってから出ます。 施設費用と本人の収支を並べた資料、複数社の査定、価格の内訳、代金を本人名義で管理する段取りを用意します。売買契約は許可を条件にして結び、審判書の謄本を受け取ってから決済日を入れます。

以上の3点を押さえたうえで当社にご相談いただく場合、家財が残ったままの家を現況で買い取り、許可の審判を待つ日程にも合わせますが、そのかわり価格は仲介での成約想定額より低くなります。本人の持分以外の共有者の意思が確認できない物件と、進入路の通行の権利がない物件は、価格を下げてもお引き受けできません。

査定は無料・売却の義務なし
0120-996-748受付時間10:00〜19:00(水・日曜定休)

通話料無料・全国対応

この先は、当社の買取窓口「買取くん」のページです(運営は同じ株式会社リアテクスです)。

成年後見の不動産売却と許可について、よくある質問

Q1. 施設に入っている親の家は、必ず家庭裁判所の許可が必要ですか

必ずではありませんが、必要になる場合が多くを占めます。家財が残り、本人が帰りたいと話し、他に住む場所がないのであれば、空き家の状態でも居住の用に供する建物として扱われます。終身利用を前提とする施設に入って在宅復帰が想定されない場合は、居住用から外れる判断もあり得ます。後見人の側で非居住用と決めてしまわず、入所契約書と診断書を持って家庭裁判所に照会してください。

Q2. 許可を得ずに売ってしまった場合、あとから許可を取れますか

あとから許可を取って有効にする仕組みは用意されていません。契約は無効のままなので、代金を返し、登記が動いていれば元に戻す作業が生じます。実際には所有権移転登記の申請に許可の審判書の謄本が要るため、法務局の段階で申請が止まります。契約の前に居住用かどうかを確かめ、許可を条件とする条項を入れておくことが唯一の予防です。

Q3. 成年後見人の選任から売却までに、どれくらい時間がかかりますか

後見開始の申立てから選任の審判までと、居住用不動産処分許可の申立てから審判までの、二つの期間が積み上がります。このうち後見人の側で短くできるのは準備の部分です。医師に診断書を書いてもらう期間、戸籍と登記事項証明書を郵送で集める期間、査定を複数社から取る期間は、いずれも申立ての前に終わらせられます。逆に、契約を結んでから査定を1社しか出していないことに気づく、相続登記が済んでいないことに気づくという順番だと、待ち時間がそのまま延びます。

Q4. 買取価格が仲介の想定より低くても、家庭裁判所の許可は出ますか

金額が低いこと自体で不許可になるわけではなく、なぜその金額なのかを説明できるかどうかで分かれます。残置物の処分費、雨漏りの補修費、再建築ができないこと、境界が未確定であることが価格にいくら反映されているのかを内訳で示せば、判断の材料になります。査定を1社だけで出すと根拠が弱くなるので、仲介の査定と買取の価格を並べて提出してください。

Q5. 後見人である私が、親の家を自分で買い取ることはできますか

利益が相反する行為に当たるため、後見人が本人を代理して自分に売ることはできません。後見監督人が選任されていれば監督人が本人を代表し(民法第851条第4号)、いない場合は特別代理人の選任を家庭裁判所に申し立てます(民法第860条が第826条を準用)。そのうえで居住用であれば処分の許可も必要で、価格の妥当性はより厳しく見られます。 親族が買う形を考えているなら、先に家庭裁判所に手続の順番を確認してください。

Q6. 売却代金を、介護をしている家族の生活費に使えますか

代金は本人の財産なので、本人のために使う支出以外には充てられません。介護をしている家族への謝礼や生活費の援助は、本人の利益にならないため後見事務の支出として認められません。本人の施設費用、医療費、税金、後見人の報酬といった支出に使い、入金と出金の記録を家庭裁判所に報告します。本人が亡くなった後は後見が終了し、残った財産は相続人に引き継がれます。 相続が開始してから実家を売る場合の順番は「実家 空き家 売却の順番」の記事にまとめています。

当社の見方

家庭裁判所の許可を待つ間に、当社の側で進められることを書いておきます。許可が要るかどうか、出るかどうかの判断を当社がすることはありません。当社にできるのは、許可が下りるまで買取の金額と条件を据え置いてお待ちすることと、価格の根拠としてお使いいただける書面を、当社の提示額とその計算の中身つきでお出しすることの二つです。

段取りとしては、買取価格のご提示までがおおむね30分です。そのうえで許可を条件とする形でご契約を結び、審判書を受け取ってから決済の日を決めます。お引き渡しと同時にご入金しますので、代金がご本人名義の口座に入る日を先に決めておけます。お待ちする間に金額を下げることはいたしません。裁判所とのやり取りの見通しは後見人の方の側でお確かめのうえ、決済のご希望日だけ先にお知らせください。

当社が買い取る物件・お断りする物件と、買取価格の決まり方は、当社の買取事例76件の内訳とあわせて当社の買取基準にまとめています。

この記事について

執筆・編集
リアテクス編集部株式会社リアテクス当社(宅地建物取引業 東京都知事(1)第107888号)は物件を直接買い取る買主の立場から、売却を検討する方の判断材料となる記事を企画・編集しています。
監修
鶴野 博之鶴野 博之株式会社リアテクス 執行役員宅地建物取引士(東京)第257503号/賃貸不動産経営管理士/2級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP2級)この区分の監修を担当しています。記事の公開判断は当社が行っています(代表が定めた手順による)。確認・公開判断:藤山 大二郎(株式会社リアテクス 代表取締役CEO)
公開・更新
公開 更新 内容を見直したときは、この日付と改訂の内容を更新しています。情報の確認日 (出典の公的資料を開いて内容を確かめた日)
この記事の事実確認の方法
法令:民法出典:法務省、家事事件の手続案内、国税庁
記事の作り方
この記事は、当社の担当者が事実確認を行ったうえで公開しています。

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