換価分割は、実家を売って代金を分ける方法です。代償分割は、1人が実家を引き継ぐ方法です。その人が、他の相続人へ現金を渡します。誰も住まない空き家なら前者が噛み合います。住み続ける人がいて現金を用意できるなら後者です。どちらを選ぶかで、税の特例を使える人数が変わります。現金が手に入る時期も変わります。
空き家
換価分割と 代償分割の 違い | 空き家の 実家で 選ぶ基準
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「相続した実家が空き家のままで、兄弟のあいだで換価分割にするか代償分割にするかが決まらない」。実家を売って代金を全員で分けるのが換価分割、1人が実家を取得して他の相続人へ自分の現金を渡すのが代償分割で、誰も住まない空き家なら前者、住み続ける人がいて現金を用意できるなら後者が噛み合います。
換価分割で売る実家は、残置物や雨漏りがあっても現況のまま買い取り、決済日に代金の支払いと所有権の移転の登記を同じ日に行います。代償金の額の根拠が欲しい段階でも金額はお伝えできますが、その金額は仲介で売れた場合の想定額より低くなります。この家が買い取れるかどうかだけ、先に聞く(無料)
目次(9章)
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換価分割と 代償分割の 違いは、 実家を 売るか 1人が 引き継ぐかで 分かれる
換価分割は、実家を売った代金を相続人で分ける方法です。代償分割は、実家を取得した1人が自分の現金を他の相続人へ渡す方法です。
換価分割は現金で分けやすく、代償分割は実家を残して活用できる
換価分割と代償分割の主な特徴
換価分割の不動産
実家を第三者へ売却して手放す
換価分割の現金
売却代金を相続人全員で指定の割合で分ける
代償分割の不動産
相続人の1人が実家を取得して手元に残す
代償分割の現金
取得した人が自分の預金から他の相続人へ払う
実家の名義が亡くなった親のままで、誰も住まないまま年を越している。この状態から動くとき、先に挙がる候補がこの2つです。現物分割(土地を分筆して分ける)や、共有のまま持つ形もあります。ただし1棟の家が建つ敷地では、分筆が現実的でないことが多いです。共有は、次の相続で人数が増えます。
換価分割は、 実家を 現金に 換えてから 分ける
売却代金という1つの金額を、協議で決めた割合に分けます。土地や建物のままでは「3分の1ずつ」を物理的に作れません。現金なら1円単位で割れます。兄弟の誰も実家に住む予定がない。現金を持ち出せる人もいない。この場合にまとまりやすいのは、こちらです。
注意すべきは、金額が最後まで決まらない点です。売買契約を結ぶまで、いくらで売れるかは見込みのままです。売却にかかる費用は、代金から差し引かれます。仲介で売るなら仲介手数料、解体するなら解体費、残置物があれば処分費です。残った額が、分配の対象になります。誰がいくら受け取るかは、この引き算が終わるまで確定しません。
売った後に残る宿題もあります。譲渡所得が出た場合、翌年の確定申告は相続人がそれぞれ自分で行います。1人がまとめて申告する形にはなりません。
代償分割は、 実家を 取る 人が 自分の 預金から 払う
実家を1人が取得し、その人が他の相続人へ代償金を払います。たとえば評価額1,500万円の実家を、長男が取得する。次男へ750万円を渡せば、取り分は半分ずつです。この750万円は、売却代金ではありません。長男がもともと持っている預金や、相続した預貯金、生命保険金から出ます。
実家が手元に残ります。住み続ける、貸す、時期を見て売るという判断を、取得した人が単独でできます。そのかわり、固定資産税も管理も、その人1人に移ります。空き家のまま持ち続ければ、出ていく費用も1人で負います。
代償金は、払った人の相続税の課税価格から差し引きます。そのうえで、受け取った人の課税価格に足します。払う側が有利になるわけでも、受け取る側が損をするわけでもありません。
住む人が いない 実家では、 代償金の 原資が あるかで 決まる
兄弟のうち誰かが実家に戻る予定なら、代償分割が噛み合います。誰も戻らないなら、換価分割に寄ります。取得しても、空き家が1人の負担になるだけだからです。
換価分割は売却代金を分け、代償分割は取得者が自分の現金を渡す
換価分割と代償分割の仕組み
| 観点 | 換価分割 | 代償分割 |
|---|---|---|
| 実家の行き先 | 第三者へ売却する | 相続人の1人が取得する |
| 現金の出どころ | 実家の売却代金 | 取得する人の預金や保険金など |
| 分配する金額 | 代金から売却費用を引いた残額 | 協議で決めた代償金 |
| 実家の維持管理 | 売却により手放す | 取得した1人が引き継ぐ |
難しいのは、実家に愛着のある相続人はいる、しかし代償金を払う現金はないという場合です。この状態で結論を先送りにすると、実家は全員の共有のまま残ります。共有のまま次の相続が起きれば、持分を持つ人の数が増えます。売るための同意を集める作業も重くなります。人数が増えた後の進め方は「数次相続で相続人が多い実家の売却」の記事に書いています。話し合いが止まったまま、年単位で動かなくなることもあります。その場合に残る法的な手続きは、「共有物分割請求とは」の記事で結末の種類を整理しています。
換価分割と 代償分割を 選ぶ前に、 相続開始から 動いている 期限と 10年の 区切り
分け方を決める前から、いくつもの日付が動いています。相続税の申告の10か月、相続登記の3年、空き家を売る特例の3年目の年末。これに、民法の10年の区切りが加わります。
空き家を持ち越す間にかかる費用:10か月以内・3年目の12月31日まで・3年以内
空き家を持ち越す間にかかる費用
10か月以内
相続税の申告と納付の期限
3年目の12月31日まで
空き家を売る場合の特例が使える期限
3年以内
相続登記の申請義務の期限
相続開始の 日から 数える 3つの 期限
相続税の申告と納付は、相続の開始を知った日の翌日から10か月以内です。かかるかどうかは、基礎控除と遺産の総額を比べて判断します。基礎控除は3,000万円に、法定相続人1人あたり600万円を足した額です(国税庁「相続税の計算」)。この期限までに分け方が決まらない場合は、いったん法定相続分で分けたものとして申告します。後から修正する手間が出ます。
2つ目が相続登記です。申請は2024年4月1日から義務になりました。放置すると、過料の対象になり得ます。期限は、その不動産を相続で取得したと知った日を起点に3年。施行より前に取得を知っていた実家も対象です。この場合の区切りは2027年3月31日です(相続登記の申請義務化(法務省))。売って分けるにせよ、1人が引き継ぐにせよ、親名義のままで終わらせる道はありません。
3つ目が、売る場合に使える特例の期限です。相続の開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで。この日までに譲渡しないと、空き家の譲渡の特例は使えません。要件と使える人数は、後の「4. 空き家の譲渡の特例を使える人数が変わる」で書いています。相続開始が3月でも12月でも、終わりの日は同じ年末です。
空き家の まま 持ち越す間に、 毎年 出ていく 費用
固定資産税と都市計画税は、1月1日時点の所有者に課されます。名義が親のままでも、納税通知書は相続人の代表者宛てに届きます。支払いは続きます。これに、草刈りや通水のための往復の交通費が乗ります。業者に頼む場合の管理の費用、火災保険料も同じです。
状態が悪くなって市区町村から勧告を受けると、土地の住宅用地の特例が外れます。翌年度から税額が上がります。この仕組みと上がり幅は「空き家の固定資産税が6倍になる条件」の記事にまとめています。分け方が決まらない期間は、そのまま費用が積み上がる期間です。
分割が 決まるまで、 実家は 相続人全員の 共有の 状態に ある
民法第898条は、相続人が数人いるときの相続財産を共有に属するものと定めています。つまり遺産分割が終わるまで、実家は誰か1人のものではありません。売るにも解体するにも、全員の同意が要ります。
相続税申告は10か月、登記は3年、譲渡の特例は3年目の年末まで
相続開始から動く3つの期限
相続開始を知った翌日から10か月
相続税の申告と納付
期限までに決まらないと法定相続分で申告し後で修正の手間
取得を知った日から3年
相続登記の申請
2024年4月から義務化。放置すると過料の対象になり得る
相続開始から3年目の12月31日
空き家を売る場合の特例の期限
開始月に関わらず同じ年末。過ぎると譲渡の特例が使えない
特別 受益や 寄与分を 主張できるのは、 期限とは 別に 10年まで
相続開始の時から10年を過ぎると、遺産分割の場面が変わります。原則として、特別受益や寄与分を主張できなくなります。
この区切りを定めているのが、2023年4月1日に施行された民法第904条の3です。「相続開始の日から数える3つの期限」で挙げた3つは、過ぎると不利益が生じる期限です。過料や加算税、特例の不適用がそれにあたります。10年の方は、過ぎても手続きが止まるわけではありません。取り分の計算に持ち込める主張の範囲が狭まる、という形で効きます。親の介護をした、生前に住宅資金をもらった。こうした事情を分け方に反映させたい相続人がいるなら、10年の前後で結論が変わります。なお、民法第908条にも10年という数字が出てきます。相続人全員の契約で遺産分割を禁止できる期間の上限です。主張の制限を定めた第904条の3の10年とは、別の規定です。数え方は同じでも、効き方が違います。名義を動かさないまま置いた場合に起きることは「土地の名義変更をしないとどうなるか」の記事にも書いています。
「換価分割と代償分割を選ぶ前に、相続開始から動いている期限と10年の区切り」について、そのまま聞けます。
換価分割と 代償分割の 違いを、 現金・譲渡所得税・相続税・ 特例の 4点で 比べる
結果が分かれるのは4点です。手元に残る現金がどこから出て、金額がいつ決まるか。譲渡所得税を誰が払うか。相続税に入る金額は何か。空き家の特例を何人が使えるか。
1. 現金の 出どころと、 金額が 確定する 時期
| 比べる点 | 換価分割 | 代償分割 |
|---|---|---|
| 実家の行き先 | 第三者に売る | 相続人の1人が取得する |
| 現金の出どころ | 売却代金 | 取得する人の自己資金 |
| 金額が決まる時期 | 売買契約を結んだ時 | 評価額に合意した時 |
| 譲渡所得税 | 売った持分ごとに各相続人 | 将来売ったときに取得者本人 |
| 相続税の計算 | 相続開始時の評価額で計算 | 代償金を控除と加算で調整 |
| つまずく点 | 売れない・価格が読めない | 代償金を用意できない |
換価分割は、現金が外から入ってくるので、相続人の誰も自分の財布を開きません。代償分割は、相続人の1人が先に現金を出します。この向きの違いが、話がまとまる速さをそのまま左右します。
2. 譲渡所得税が かかるのは 「売った 人」
相続で取得した不動産を売ったときの取得費と所有期間は、亡くなった方のものを引き継ぎます(所得税法第60条)。親が40年前に買った家なら、長期譲渡に当たります。国税庁の譲渡所得の案内では、長期の税率は20.315パーセントとされています。所得税と復興特別所得税、住民税の合計です。5年以下の短期は39.63パーセントです。
購入時の契約書が見つからないことは珍しくありません。国税庁が示す取得費の取扱いでは、分からないときに売却価格の5パーセントを概算の取得費とする方法が使われます。この場合、売れた金額のほとんどが利益として扱われます。
売却代金から取得費と譲渡費用を引き、持分ごとに各相続人が申告する
譲渡所得を計算して申告する流れ
- 1
取得費と所有期間の引き継ぎ
亡くなった方のものを引き継ぐか、不明な場合は売却価格の5%で計算します。
- 2
譲渡所得の計算と分配
売却代金から費用を引き、換価分割では持分に応じて各相続人に分けます。
- 3
翌年の確定申告
譲渡所得が出た場合、翌年に各相続人がそれぞれ自分で申告します。
換価分割では、この譲渡所得が持分に応じて各相続人に分かれます。代償分割では、売却そのものが起きません。この段階で譲渡所得税は出ません。取得した人が数年後に売れば、そのときに本人の譲渡所得として計算されます。税額の試算の仕方は「相続した家の売却の税金」の記事に計算例を置いています。
3. 相続税に 入る 金額は、 売値ではなく 評価額
評価額1,500万円の実家が、換価分割で1,000万円でしか売れなかったとします。それでも相続税の計算に使うのは、相続開始時の評価額1,500万円です。土地は路線価、建物は固定資産税評価額が基礎になります。売値が評価額を下回っても、課税価格はそのままです。ここを取り違える例があります。売った金額で相続税が決まると思い込んだまま、申告の相談に行く形です。
代償分割では、代償金を払った人の課税価格からその額を引きます。受け取った人の課税価格には足します。遺産の総額は変わらず、取り分の配分だけが動く形です。評価額とかけ離れた高額の代償金を設定すると、差額が贈与と見られることがあります。額の根拠を残しておいてください。
4. 空き家の 譲渡の 特例を 使える 人数が 変わる
譲渡所得から最大3,000万円を控除できる制度があります。対象は、被相続人が一人で住んでいた家屋とその敷地です。これを相続した相続人が、一定の要件を満たして売却した場合に使えます(被相続人の居住用財産を売ったときの特例(国税庁))。主な要件は、昭和56年5月31日以前の建築であること。売る時点で耐震基準に適合させるか、家屋を取り壊すこと。売却代金が1億円以下であること。相続から3年目の年末までに譲渡すること。これで全部ではありません。
換価分割は売却代金から現金を分け、譲渡所得税は売った人にかかる
譲渡所得税を払うのは誰か?
換価分割では売った各相続人が払い、代償分割ではこの段階で税は出ません。
- 換価分割:持分に応じて各相続人が申告する
- 代償分割:売却が起きないため税は出ない
- 取得費と所有期間は亡くなった方のものを引き継ぐ
控除は、売った人の譲渡所得から引きます。換価分割で兄弟2人が共有のまま売るとします。2人がそれぞれ要件を確かめて、使える可能性があります。代償分割で1人が取得して後に売れば、使えるのはその1人分だけです。なお令和6年1月1日以後に売る場合は、人数で上限が変わります。家屋と敷地等を取得した相続人が3人以上いるときは、1人あたり2,000万円です。要件の判定の順番は「空き家3000万円控除の条件」の記事に並べています。
空き家の 実家で 換価分割と 代償分割が 分かれる 4つの 条件

分かれ目は4つです。代償金の現金を用意できるか。住み続ける相続人がいるか。売却の手間を誰が負うか。売れる見込みが読めるか。
1. 代償金の 現金を、 いつまでに 用意できるか
代償金の原資になるのは、取得する人自身の預金です。受け取った生命保険金、金融機関からの借入れも使えます。生命保険金は、受取人固有の財産として扱われます。ただし相続税では、課税の対象に入ります。国税庁の案内では、法定相続人1人あたり500万円の非課税枠が設けられています。
亡くなった親の預金を当てにする場合、遺産分割が終わるまで原則として引き出せません。例外が民法第909条の2です。各相続人は、預貯金債権の額の3分の1に自分の法定相続分を掛けた額まで、単独で払い戻せます。上限は、同一の金融機関につき150万円です(民法(e-Gov法令検索))。葬儀費用には足りても、代償金の全額をここから作るのは難しい金額です。
代償金は自己資金や生命保険金のほか、借入れや預貯金の払戻しで用意する
代償金の原資となる主な資金
自己資金・借入れ
取得する人自身が用意する代償金の主な原資
生命保険金
受取人固有の財産として代償金に充てられる
親の預貯金の払戻し
上限150万円等があり全額を賄うのは難しい
分割払いにする場合は、期日と回数を協議書に書きます。書かないまま「落ち着いたら払う」で始めてはいけません。数年後に支払いが止まったとき、手がかりが残りません。
2. 実家に 住み続ける、 または 住む 予定の 相続人が いるか
親と同居していた子がそのまま住むなら、代償分割が自然な形です。相続税の面でも噛み合います。国税庁の小規模宅地等の特例を見てください。被相続人の居住用の宅地等は、330平方メートルまで評価額を80パーセント減額できます。要件は、申告期限まで宅地を保有していることなどです。配偶者が取得する場合は、この保有の要件が外れます。
ここで換価分割を選ぶと、申告期限より前に売ってしまうことがあります。保有を前提とする要件を満たせなくなります。別居していた子が取得する場合は、いわゆる家なき子の要件が関わります。満たすかどうかで、結論が変わります。どちらに傾くかは、申告期限の10か月と売却の日程を並べてから決めてください。
誰も住まず、貸す予定もないとします。代償分割で取得しても、空き家の維持費が1人に集まるだけです。代償金を払ってまで実家を取る理由が残りません。
3. 売却の 手間と 費用を、 誰が 負うか
換価分割では、売るまでの作業が発生します。残置物の片付け、仏壇や位牌の扱い、鍵の管理。現地での立ち会いや、書類の取り寄せもあります。相続人が遠方に分かれていると、この作業が誰か1人に偏ります。共有のまま売る場合は、決済の日に全員が同席します。できなければ、委任状と印鑑証明書を人数分そろえます。
手間の偏りは、後から不満の種になります。片付けを担った相続人の取り分を、少し増やす。立替えた費用を、代金から先に精算する。こうした取り決めを先に書いておくと、分配の段で揉めません。兄弟の意見が割れたまま、動かなくなることもあります。その場合に何が起きるかは「実家の売却に兄弟が反対」の記事に段階ごとに書いています。
4. そも そも 売れるか どうかが 読めない 実家か
再建築不可、前面道路が私道、擁壁のやり直しが必要。雨漏りで、小屋組まで水が回っている。こうした実家では、仲介で買い手を探しても金額も時期も読めません。換価分割は、代金を分ける方法です。代金が決まらない間は、分け方も決まりません。
売り出して半年反応がなく、値下げを重ねる。当初の想定の半額で売れた場合、相続人のあいだで合意した「だいたいこのくらい」が崩れます。崩れ方は小さくできます。先に金額の下限を決めておくか、買取の金額を先に取って下限として置くかです。査定の種類ごとの数字の意味は「空き家の査定」の記事で整理しています。
「空き家の実家で換価分割と代償分割が分かれる4つの条件」について、そのまま聞けます。
換価分割で 進める 手順と、 協議書に 書く 分配の 割合

進め方の順は決まっています。協議書に換価分割である旨と割合を書き、相続登記で名義を移す。売却して代金を分け、翌年に各自が申告します。
1. 遺産分割協議書に、 換価分割である ことと 分配の 割合を 書く
最初の分かれ道は、登記の名義をどうするかです。相続人全員の共有名義で登記してから売る形があります。もう1つが、便宜上1人の名義で登記して売る形です。後者で気をつけたいのは、売却代金を他の相続人へ渡す行為です。贈与と見られないようにする必要があります。国税庁の質疑応答事例「遺産の換価分割のための相続登記と贈与税」を見てください。便宜上1人の相続人の名義で相続登記をした場合でも、協議の内容どおりに売却代金が分配されるなら、贈与税の課税は生じない。そうした考え方が示されています。実際の適用は、申告の前に税務署または税理士へ確認してください。
共有名義は全員で登記し、代表者名義は便宜上1人で登記してから売る
共有名義と代表者名義の違い
| 観点 | 全員の共有名義で登記 | 便宜上1人の名義で登記 |
|---|---|---|
| 登記の名義 | 相続人全員 | 代表者1人 |
| 贈与税のリスク | 自分の持分を売るため生じない | 代金の分配が贈与と見られる恐れ |
協議書に書き込んでおきたいのは、3つです。換価のために売却すること、売却代金から控除する費用の種類、そして分配の割合。控除する費用には、仲介手数料や印紙代、登記費用が入ります。解体をするならその費用、残置物の処分費も同じです。「売却代金を2分の1ずつ」とだけ書くと、解釈が割れます。費用を引く前の金額なのか、後の金額なのかが決まりません。
もう1つ入れておくと効くのが、売却価格の下限です。いつまでに売れなければ方針を見直すか、という区切りも書きます。下限を決めずに売り出すと、値下げのたびに全員の合意を取り直すことになります。記載の例と文言の作り方は「遺産分割協議書の書き方」の記事を参照してください。
2. 相続登記から 代金の 分配、 翌年の 確定申告までの 順番
協議書に全員が署名押印し、印鑑証明書を添えます。そのうえで、司法書士に相続登記を依頼します。必要になるのは、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍です。相続人全員の戸籍と住民票、固定資産評価証明書も要ります。遠方の相続人がいる場合は、書類の郵送で2週間ほど見ておくと日程が崩れません。
売り方を決める段では、2つの道を比べます。仲介で買い手を探す道と、買取で直接売る道を、金額と期間の両方で見ます。周辺の成約価格は、国土交通省の不動産情報ライブラリで調べられます。仲介の査定額は、売れた場合の見込みです。買取の金額は、実際に受け取る額です。仲介手数料や解体費、売れるまでの管理費を引いた手取りに直してから並べてください。
代金の分配は、決済の当日か翌営業日に済ませるのが安全です。いったん1人の口座に入れたまま、数か月置かないでください。使い込みを疑われることがあります。相続人の誰かに差押えがあったとき、巻き込まれることもあります。振込の控えは、全員が保管してください。分配が協議書どおりに行われた証拠になります。
翌年の確定申告は、譲渡した年の翌年2月16日から3月15日までに各自が行います。空き家の譲渡の特例を使うなら、被相続人居住用家屋等確認書が要ります。市区町村が発行する書類で、発行までに日数がかかります。売買契約を結んだ段階で、必要書類を窓口に聞いておくと間に合います。
代償分割で 進める 手順 |代償金の 額の 決め方と 支払いの 約束

代償分割は、実家の評価額をどの価格で合意するかを先に決めます。そのうえで、代償金の額と支払期日、支払方法を協議書に書きます。
1. どの 価格を 評価額と して合意するかを、先に 決める
同じ実家でも、使う価格によって金額が大きく変わります。固定資産税評価額は、総務省の固定資産評価基準のもとで置かれます。目安は、地価公示価格の7割程度です。相続税の路線価は、国税庁の財産評価基準で8割程度の水準とされています。不動産会社の査定額は、実勢価格の水準を見込んで出す金額です。この2つの公的な評価額より、高く出ることが多くなります。買取の金額は、査定額より低くなります。代償金の額を話し合うときは、公的な評価額が実勢より低めに置かれている前提で並べてください。
総務省の評価基準は7割、国税庁の評価基準は8割と、地価公示価格に対する割合を比較
評価基準による地価公示価格に対する割合
- 総務省の評価基準7割
- 国税庁の評価基準8割
実家を取得して住み続ける相続人は、低い価格を主張しがちです。現金を受け取る相続人は、高い価格を主張します。まとめるときは、どれか1つを選ぶ形にしないでください。複数の価格を全員が見たうえで、根拠を言葉にして残します。「相続税の路線価を基礎に、現況の傷みを引いた額」のような形です。この方が、後から蒸し返されません。折り合わない場合は、不動産鑑定士の鑑定を取る方法もあります。ただし、費用が別にかかります。
評価の時点も決めておきます。相続開始の時の価格で見るか、分割する時の価格で見るかで金額が動くためです。相続開始から数年空いている実家では、傷みが進んだ分だけ分割時の価格が下がります。
2. 協議書に、 代償金の 額・ 期日・ 払えない ときの 扱いを 書く
書くべきは3点です。誰が誰にいくら払うか、いつまでに払うか、どの方法で払うか。振込で払い、控えを残す形にしてください。税務署から代償分割の実態を問われたとき、説明が済みます。手渡しにして記録を残さないと、代償金なのか贈与なのかが外から見えません。
分割払いにする場合は、回数と各回の期日、支払いが滞ったときの扱いを入れます。実家の名義は先に移るため、代償金だけが未払いで残る形が起こり得ます。不安が残るなら、代償金の支払いが終わるまで抵当権を設定しておく方法もあります。
現金のかわりに、別の不動産や株式を代償として渡す形もあります。取得する人が持っている資産です。この場合は、渡した側に譲渡所得として課税される扱いになります。現金で払う場合と、手取りが変わります。採る前に税理士へ確認してください。
評価額でも代償金でも折り合えないときは、家庭裁判所の遺産分割調停に進みます。手続きの種類や申立てに必要なものは、裁判所の案内で確認できます。調停は、期日ごとに月単位の間隔が空きます。相続税の申告期限や、空き家の譲渡の特例の3年目の年末を越えることがあります。
なお、この記事の税務・法務に関する記載は一般的な情報提供であり、個別の事案についての判断ではありません。適用の可否や具体的な税額については、税務署または税理士、登記については司法書士、境界や隣地との権利関係については弁護士や土地家屋調査士など、それぞれの専門家にご確認ください。当社は不動産の買主であり、税務や法律の代理はできません。
「代償分割で進める手順|代償金の額の決め方と支払いの約束」について、そのまま聞けます。
換価分割で 実家を 売る とき、 当社が 買い取る 場合の 条件と 決済日
当社が買い取る条件・買い取れない条件と、実際の買取事例は「当社の買取基準」にまとめています。
「換価分割で実家を売るとき、当社が買い取る場合の条件と決済日」について、そのまま聞けます。
換価分割と 代償分割の 違いで、 先に 決める 3つ
- 実家に住む人がいるかどうかを、最初に確かめてください。 誰も住まず、貸す予定もないなら、取得しても維持費が1人に集まるだけです。住み続ける相続人がいる場合に限って、代償分割が噛み合います。
- 代償金の原資を、金額と時期で確かめてください。 自己資金、生命保険金、借入れのどれで用意するか。それがいつまでかが決まらないうちは、代償分割の合意は形だけです。亡くなった方の預金は、民法第909条の2の範囲までしか先に引き出せません。
- 換価分割にするなら、協議書に換価分割である旨と分配の割合、控除する費用を書いてください。 書かずに代表者の名義で登記して代金を配ると、贈与と見られる余地が残ります。空き家の譲渡の特例は、売った人の譲渡所得から引きます。共有で売るか、1人が取得して売るかで、使える人数も変わります。
残置物や雨漏りがある実家も、現況のまま買い取ります。決済日はご都合に合わせて置けます。ただし売り急ぐ事情がなく、買主がローンを使える土地なら、仲介を先に試した方が手取りは多くなります。
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換価分割と 代償分割の 違いに ついて、 よく ある 質問
Q1. 遺産の 代償分割とは、 どう いう 分け方ですか
相続人の1人が、実家などの現物を取得します。その人が他の相続人へ、自分の財産から現金を渡して取り分を調整する方法です。渡す現金は売却代金ではなく、取得する人の預金や生命保険金、借入れから出ます。 相続税の計算では、払った人の課税価格から代償金を引きます。受け取った人の課税価格には足します。協議書に額と支払期日、支払方法を書き、振込の控えを残してください。
Q2. 不動産を 換価分割すると、 相続税や 譲渡所得税は どうなりますか
相続税は売れた金額ではなく、相続開始時の評価額で計算します。売値が評価額を下回っても、課税価格はそのままです。譲渡所得税は、売った人にかかります。共有のまま売れば、持分に応じて各相続人が自分で申告します。 取得費と所有期間は、亡くなった方のものを引き継ぎます。申告は、譲渡した年の翌年2月16日から3月15日までに行います。
Q3. 遺産分割で やってはいけない ことは 何ですか
相続人の1人を外して協議をまとめることです。全員が参加していない遺産分割協議は、効力を持ちません。後からやり直しになります。口頭の合意だけで登記や売却に進むのも避けてください。 後で問題になる形が、ほかに3つあります。換価分割なのにその旨を協議書に書かず、代表者名義で登記すること。代償金の支払期日を書かないこと。相続放棄を考えている人がいる段階で、家財や建物を処分すること。最後の1つは、民法第921条の単純承認とみなされる行為に当たり得ます。
Q4. 遺産分割を 5年間禁止する ことは できますか
民法第908条は、3つの禁止を定めています。遺言による5年以内の分割の禁止、相続人全員の契約による5年以内の禁止、家庭裁判所の審判による禁止です。契約による禁止は更新できます。ただし、相続開始の時から10年を超えることはできません。この10年は、民法第904条の3の10年とは別の規定です。第904条の3は、本文で触れた特別受益や寄与分の主張を制限する条文です。ただし空き家の実家では、禁止している間も固定資産税と管理の負担は続きます。 相続税の申告期限も止まりません。相続開始から3年目の年末という、売却の特例の期限も同じです。
Q5. 相続財産に なる ものと、 ならない ものは 何ですか
土地・建物・預貯金・株式・自動車は、相続財産に入ります。借入金や未払いの税金といった負債も引き継がれます。死亡保険金は、受取人固有の財産として遺産分割の対象外になるのが原則です。ただし相続税では課税の対象に入り、国税庁の案内では法定相続人1人あたり500万円の非課税枠があります。 墓地や仏壇などの祭祀財産は、民法第897条により承継者が引き継ぎます。分割の対象にはなりません。年金の受給権のような一身専属の権利も相続されません。
Q6. 亡くなる 前に 預金を 全額 おろしておくと、 どうなりますか
引き出した現金が、亡くなった時点で手元に残っているとします。その現金は、相続財産として分割の対象になります。使ってしまった分についても、ほかの相続人から使途の説明を求められます。返還を請求されることもあります。相続税の申告でも、死亡直前の多額の出金は調査で確認される項目です。 葬儀費用などで当座の資金が要る場合は、民法第909条の2の払戻しの制度を使ってください。後の説明が簡単になります。
当社の 見方
戸建て・築60年以上で、再建築不可・前面道路が私道・空き家の物件を当社が買い取り、販売まで終えました。
神奈川県川崎市幸区の戸建て(築60年以上)を、買取金額200万円台で買い取りました(2026年に取引)。
千葉県柏市の戸建て(築50年以上)を、買取金額200万円台で買い取りました(2024年に取引)。
相続した物件では、戸籍などの書類が追加で必要になります。
ご用意いただく書類は、個別のご案件によります。
ご負担いただく費用は、個別のご案件によります。
リースバック(売却後も賃借人として住み続ける形)も積極的にお受けしています。
買い取れない物件や、売らないほうがよい場合は、正直にそうお伝えしています。
当社が買い取る物件・お断りする物件と、買取価格の決まり方は、当社の買取事例76件の内訳とあわせて当社の買取基準にまとめています。
この記事について
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- リアテクス編集部株式会社リアテクス当社(宅地建物取引業 東京都知事(1)第107888号)は物件を直接買い取る買主の立場から、売却を検討する方の判断材料となる記事を企画・編集しています。
- 監修
鶴野 博之株式会社リアテクス 執行役員宅地建物取引士(東京)第257503号/賃貸不動産経営管理士/2級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP2級)この区分の監修を担当しています。記事の公開判断は当社が行っています(代表が定めた手順による)。確認・公開判断:鶴野 博之(株式会社リアテクス 執行役員)- 公開・更新
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