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空き家

実家の売却に兄弟が反対|共有物分割請求までの4段階

公開 更新

執筆
株式会社リアテクス リアテクス編集部
監修
株式会社リアテクス 執行役員 鶴野 博之(宅地建物取引士(東京)第257503号)
実家の売却に兄弟が反対|共有物分割請求までの4段階

「実家を売って清算したいのに、兄弟の一人が売却に反対していて話が進まない」。家全体を売るには、共有者全員が売主として契約に署名します。反対が価格・時期・居住・過去の経緯のどれに向いているかで、打てる手が変わります。

当社は買主として直接買い取り、家財が残った状態でも現況のまま金額をお出しします。反対している方の説得や、ご兄弟どうしの話し合いを当社が代わりに行うことはありません。この家が買い取れるかどうかだけ、先に聞く(無料)

目次(12章)

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実家の売却に兄弟が反対の要点を、定義・この記事でわかること・よくある質問の順に短くまとめた動画です。

実家の売却に兄弟が反対している|先に確かめる3つの条件

確かめる順番は3つあります。登記の名義、反対している人の立場、反対の中身です。この順に見ると、打てる手が絞れます。

名義が誰になっているかで、契約書に署名する人が決まります。反対している人の立場で、どの手続に乗せるかが決まります。反対の中身が価格か時期か居住かで、打てる手が決まります。署名する権限のある人が別にいれば、合意は成立しません。名義を確かめないまま説得を重ねても進みません。

3つの書類から分かること

  • 登記事項証明書

    遺産共有か共有名義か、現在の名義の状態が分かります。

  • 名寄帳

    私道の持分など、親名義の他の不動産があるか分かります。

  • 固定資産税の課税明細

    建物の構造や床面積、課税標準額が分かります。

登記の名義が誰になっているかで、話し合いの相手が決まる

登記を見ると、反対されている状態の性質が分かります。二つのうちのどちらかです。ひとつは、売主が誰なのかがまだ決まっていない状態です。もうひとつは、売主は決まっているのに条件で折り合えない状態です。前者は手続の問題として片づく余地があります。後者は金額と時期の擦り合わせになります。

親が亡くなったあと登記に手を付けていなければ、実家は相続人全員の遺産共有です。この状態では、誰か一人の意思では動きません。すでに遺産分割協議が終わり、兄弟の共有名義で登記されていることもあります。その場合の当事者は、登記に載っている共有者だけです。相続人であっても、持分を持たない人は売買の当事者から外れます。どちらの状態かは、法務局で登記事項証明書を取れば分かります。取得したその日のうちに確定します。

登記事項証明書は、所有者本人でなくても取得できます。手数料を払えば、誰でも窓口やオンラインで請求できます。親名義の不動産がほかにもあるかは、名寄帳(固定資産課税台帳)で確かめます。市区町村の税務課に、相続人として請求してください。その自治体にある不動産が、一覧で出てきます。私道の持分や、隣接する小さな地番が別にあると分かることがあります。売却の段取りにも金額にも影響します。

実家の売却前に確かめる3つの条件

  1. 1

    登記の名義を確かめる

    契約書に署名する人が誰かを特定する

  2. 2

    反対する人の立場を見る

    どの手続に乗せるかが決まる

  3. 3

    反対の中身を確かめる

    価格か時期か居住かで打てる手が決まる

反対している兄弟が、どの立場で反対しているのか

同じ「反対している」でも、立場で話の筋道が変わります。遺産共有の相続人か、登記済みの共有者か、実家に住んでいる占有者かです。住んでいる場合は、売却の同意とは別の問題が乗ります。いつ出るのかという、明渡しの話です。金額の話だけでは終わりません。

見落としやすい形があります。反対の声を出しているのが、相続人本人ではなく配偶者や子である場合です。売買契約に署名するのは、あくまで相続人本人です。誰が最終的に署名するのか、話し合いの初めにはっきりさせてください。ここを曖昧にすると、合意したはずの内容が後から覆ります。 相続人本人が高齢で、判断能力に不安がある場合もあります。その場合は、成年後見人の選任が協議の前提です。申立先と選任までの期間は、後述の「合意できないまま期限が近いときの手続き」の節に書いています。

反対の中身が「売ること」なのか「条件」なのか

実務で受けるご相談の多くは、売ること自体への反対ではありません。条件への反対です。金額が安すぎる、時期が早すぎる、思い出の品の整理が終わっていない。こうした内容が、伝わるうちに「反対されている」という一語に縮みます。

切り分けるには、三つを本人に聞くのが早い方法です。いくらなら売ってよいと考えているか。いつまでなら待てるのか。売らない場合に、固定資産税と管理の費用を誰が出すのか。三つ目に答えが返ってこないときは、反対の中身が費用の話ではありません。気持ちの整理か過去の経緯にあるので、進め方を変えてください。

兄弟の反対で実家の売却が止まっている間に進む3つの期限

話し合いが止まっていても、期限は別々に進みます。相続登記の3年、相続税の10か月、譲渡の特例の年末です。

期限のうち二つは税のものです。過ぎると使えたはずの制度が使えず、手取りが減ります。ひとつは登記の義務で、過ぎると過料の対象になり得ます。どれも合意の有無とは関係なく進みます。話し合いの日程は、この期限から逆算して組んでください。

相続登記の申請義務の起点の違い

観点2024年4月1日以後の相続施行日より前の相続
申請義務の起点実家を受け継ぐと分かった日すでに受け継ぐと分かっていた場合
期限の区切り起点から3年2027年3月31日

相続登記の申請義務は、取得を知った日から3年

登記の名義を動かす期限は、2024年4月1日に始まった申請義務で決まります。起点は、親が亡くなった日ではありません。その実家を自分が受け継ぐと分かった日で、そこから3年です。施行日より前に親が亡くなっている場合は、別の扱いです。当時すでに受け継ぐと分かっていたなら、区切りは2027年3月31日です。理由もなく過ぎれば、10万円以下の過料を科される場合があります。

兄弟の反対で遺産分割がまとまらない場合でも、この義務からは外れません。分割がまとまっていない段階には、受け皿があります。自分が相続人であることを法務局に申し出る、相続人申告登記の制度です。申し出をすれば、申請義務を履行したものとして扱われます。ただし、これは所有権を移す登記ではありません。実際に売るときには、改めて相続登記が必要になります。 制度の説明は、法務省の相続登記の申請義務化のページにあります。

相続税の申告は10か月、取得費加算は申告期限の翌日から3年

相続税の申告と納付の期限は、10か月以内です。起点は、相続の開始があったことを知った日の翌日です。遺産分割がまとまっていなくても、期限は延びません。いったん法定相続分で分けたものとして申告します。この未分割の状態では、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例は原則として使えません。ただし、申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添えておく方法があります。分割がまとまった後に、適用を受け直せる余地が残ります。

相続税を納めた人がその不動産を売る場合、納めた相続税の一部を取得費に加算できます。使える期間は、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までです。兄弟の話し合いが2年、3年と延びると、この加算が使えないまま売ることになります。同じ価格で売っても、手取りが減ります。 適用の可否は、国税庁の資料と税理士に確認してください。

譲渡の特例は、相続開始から3年を経過する日の属する年の年末で切れる

被相続人が一人で住んでいた家屋とその敷地を、相続人が売却することがあります。一定の要件を満たせば、譲渡所得から最大3,000万円を控除できます。求められる条件には、たとえば次のものがあります。

  • 相続の開始の直前に、被相続人がその家屋に一人で住んでいたこと
  • その家屋が昭和56年5月31日以前に建築されたもので、区分所有建物でないこと
  • 売却代金が1億円以下であること
  • 耐震基準に適合させたうえで売るか、家屋を取り壊して敷地を売ること(一定の場合は買主が引渡し後に行う形も認められます)
  • 相続の時から売却の時まで、その家屋と敷地を事業用・貸付用・居住用のいずれにも使っていないこと

ここに挙げたのは、主な要件の一部です。ほかにも、満たすべき条件が定められています。要件の全体は、国税庁のタックスアンサー3306番「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」で確かめてください。そのうえで、売主になるご兄弟一人ずつに当てはめて税理士にご確認ください。

兄弟の反対がある場面で効いてくるのは、期限と人数の二つです。売る時期には、線が引かれています。相続開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までです。さらに、令和6年(2024年)1月1日以後に売った場合の扱いがあります。その家屋と敷地を取得した相続人が3人以上いると、控除額は一人あたり2,000万円に下がります。それより前に売った譲渡に、この引き下げはありません。話し合いが長引いて年末をまたぐと、それだけで税額が変わる可能性があります。

なお、この記事の法務・税務に関する記載は一般的な情報提供です。個別の事案についての判断ではありません。

「兄弟の反対で実家の売却が止まっている間に進む3つの期限」について、そのまま聞けます。

実家の売却に兄弟が反対する理由で分かれる4つの型

実家の居間で、兄弟がテーブルを囲んで話し合っている

打てる手は、大きく4つに分かれます。反対が価格・時期・居住・過去の経緯のどれに向いているかで決まります。

数字で動くのか、時間の経過で動くのか。住まいの手当てが要るのか、相続分の計算そのものを争うのか。ここで、要る時間が変わります。数字で動く反対なら、査定を取り直せば数週間で結論が出ます。相続分の計算を争う反対は、裁判所の手続に入る可能性が高くなります。年単位を見ておくことになります。

兄弟が売却に反対する理由で分かれる4つの型

  • 仲介の想定成約価格

    買い手が現れれば成立する見込みの金額。

  • 買取価格

    提示した時点で契約できる確定した金額。

  • 見込み額に伴う費用

    売れるまでの固定資産税・管理費・手数料。

  • 比べるときの注意点

    大小だけでなく、確定か見込みかを書き分ける。

1. 価格への反対:「その金額では安すぎる」と言われている場合

いちばん扱いやすい型です。反対している方の金額の感覚には、もとがあります。近隣の新築の売り出し価格や、十数年前の取引の記憶です。現在の成約水準とずれているため、話がぶつかります。ずれを埋めるには、同じ紙の上に性質の違う二つの数字を並べてください。

ひとつは、仲介で売りに出した場合の想定成約価格です。もうひとつは、提示した時点で契約できる買取価格です。二つを一列に並べ、大小だけを比べると判断を誤ります。確定した金額なのか、買い手が現れれば成立する見込みの金額なのかを書き分けてください。 二種類の数字の取り方と、比べるときに差し引く費用があります。後述の「話し合いの前に揃える」の節にまとめています。

2. 時期への反対:「今はまだ売りたくない」と言われている場合

四十九日や一周忌が済んでいない。遺品と仏壇の整理が終わっていない。これが理由なら、反対しているのは売却そのものではなく順番です。この型は、待つ期限を決められれば解けます。

決め方は、先に挙げた3つの期限からの逆算です。相続登記の3年、相続税の10か月、譲渡の特例の年末です。譲渡の特例を使う予定があるなら、その年の12月31日から数えます。何か月前までに契約を終えるかが決まります。そこから、引渡しと遺品整理の日程が決まります。待つこと自体は構いません。ただし、待つ間に出ていく費用があります。固定資産税、火災保険料、通水や草刈りです。誰が負担するかは、待つと決めるその場で決めてください。 ここを決めずに待つと、近くに住む相続人だけが負担を抱えます。一年後に、別の不満が生まれます。

3. 居住への反対:その家に住んでいる、または住む予定がある場合

兄弟の一人が親と同居していて、そのまま住み続けている形は珍しくありません。家を売れば、その人は住む場所を失います。反対の理由としては筋が通っており、金額を上げても解決しません。

現実的な出口は二つです。ひとつは、住み続ける人が他の相続人の持分に見合う金銭を払い、単独で取得する方法(代償分割)です。もうひとつは、いったん売って代金を分ける方法です。住んでいた人は、別の住まいに移ります。前者は、資金の手当てが要ります。金融機関から借りる場合は、審査に通るかどうかが条件です。なお、共有名義の不動産の固定資産税は、共有者が連帯して納める義務を負います(地方税法第10条の2)。住んでいない兄弟にも、納税の義務が及びます。話し合いの材料として押さえておいてください。

4. 過去の経緯への反対:介護や生前の資金援助が絡んでいる場合

「自分だけが介護をした」「弟は住宅資金を出してもらった」。こうした主張が背景にある場合、反対の対象は売却ではありません。分け方です。法律の言葉では、寄与分と特別受益に当たります。遺産分割の中で調整される論点です。

ここで、時間の制約が効きます。令和3年の民法改正で、10年の区切りができました。相続開始の時から10年を経過した後にする遺産分割は、原則として特別受益や寄与分を考慮しません。法定相続分(または遺言による指定相続分)によることとされました(民法第904条の3)。この規定は、2023年4月1日に施行されています。施行前に開始した相続については、経過措置が置かれています。自分の相続がどちらの扱いになるかは、附則を読まないと分かりません。10年に近い案件は、弁護士に残り期間を確認してください。

名義の状態で分かれる|親名義のまま・兄弟の共有名義・単独名義の実家

木造住宅の外観と、手入れされた庭木

同じ反対でも、名義の状態で行く先が変わります。親のままか、すでに兄弟の共有名義かです。話し合いが決裂したとき、家庭裁判所か地方裁判所かに分かれます。

見るのは、その不動産がまだ遺産のままかどうかです。遺産分割を終えて、普通の共有物になっているかを確かめます。遺産の状態にあるものは、家庭裁判所の遺産分割の手続で決めます。分割を終えた共有物は、地方裁判所の共有物分割の手続です。手続の種類が違えば、要する期間も使える結論の形も変わります。

名義の状態で変わる決裂時の行き先

名義の状態不動産の扱い決裂時の行き先
親名義のまま遺産家庭裁判所(遺産分割調停)
兄弟の共有名義分割を終えた共有物地方裁判所(共有物分割請求)

1. 親名義のまま登記が動いていない(遺産共有)

相続人全員が当事者です。一人でも反対すれば、家全体の売買契約は結べません。売る前提は二つあります。遺産分割協議をまとめて、相続登記を済ませる形です。もうひとつは、協議の中で「売却して代金を分ける」と合意する形(換価分割)です。

協議がまとまらない場合の行き先は、家庭裁判所の遺産分割調停です。地方裁判所に共有物分割を求めることは、原則としてできません。ただし、相続開始の時から10年を経過したときは例外があります。一定の場合に、遺産共有の持分を共有物分割の手続で併せて分割できます(民法第258条の2)。相続人の一人と連絡が取れない、行方が分からないという事情もあります。その場合は、家庭裁判所の不在者財産管理人の選任を先に検討します。

2. 兄弟の共有名義で登記が済んでいる

遺産分割が終わり、持分が登記されている状態を考えます。当事者は、登記上の共有者だけです。家全体を売るには、共有者全員が売主として契約書に署名します。反対する人がいる限り、全体の売買は成立しません。一方で、各共有者が自分の持分だけを処分することはできます。他の共有者の同意は要りません。

この状態で話がまとまらないときの手続は、地方裁判所に対する共有物分割請求です。共有名義人のうちの一人が、先に亡くなることもあります。その子や配偶者に持分が移っていると、当事者の数はさらに増えます。持分がどう移るかは、「共有名義人が死亡したとき」の記事に書いています。

3. 遺言や協議で単独名義になっている

登記が一人の名義になっていれば、その人の意思だけで売れます。他の兄弟が反対していても、売買の当事者ではありません。契約を止めることはできません。

ただし、遺留分の問題は別に残ります。遺言で一人にすべてを相続させた場合を考えます。他の相続人は、遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求できます。この請求権には、期間の制限があります。売って現金化した後に、請求を受ける可能性があります。代金をすべて使ってしまう前に、他の相続人との清算が済んでいるかを確認してください。

同意が取れないときの出口|実家の売却で打てる5つの手

全員の同意が取れないまま打てる手は、5つあります。向かう先で見ると、3方向です。分け方を変える、自分の持分だけを処分する、相続そのものから降りるの3つです。

分け方を変える方向は、2つあります。実家を現金に換えてから分ける換価分割(下の1)です。もうひとつは、誰か一人が現物で取得して他に金銭を払う代償分割(下の2)です。どちらも、全員の合意が要ります。自分の持分だけを処分する方向が、持分の売却(下の3)です。相続そのものから降りる方向が、相続分の譲渡(下の4)と相続放棄(下の5)です。後の3つは、他の相続人が反対していても進められます。自分の判断だけで足ります。

売却代金から控除する主な費用

  • 仲介手数料

    売却代金から控除する費用の一つです。

  • 登記費用

    名義変更などに伴う手続の費用です。

  • 印紙代

    売買契約書に貼付する印紙の費用です。

  • 残置物の処分費

    家財などの片づけにかかる費用です。

  • 固定資産税の日割り清算

    引渡し日を基準に清算する税金です。

1. 換価分割:全員で売って、代金を分ける

いちばん多い形です。遺産分割協議書に書いて進めます。「不動産を売却し、その代金から費用を控除した残額を各人が何分の一ずつ取得する」という文言です。売買の当事者は、相続人全員です。契約書にも登記の委任状にも、全員の署名押印が要ります。

実務でのつまずきは、「代金を等分する」とだけ決める形です。控除する費用の範囲を書いていません。仲介手数料、登記費用、印紙代、残置物の処分費、固定資産税の日割り清算があります。これらを引いた後の金額を分けるのだと、文字にしてください。書いていないと、決済の当日に配分でもめます。 登記を一人の名義にまとめてから売る形もあります。その場合は、代金を分ける根拠を協議書に残してください。残さないと、税務上の贈与と見られる可能性があります。

合意の要否で分かれる出口

観点全員の合意が要る出口一人で決められる出口
方向性分け方を変える持分の処分・相続から降りる
具体的な手続換価分割・代償分割持分の売却・相続分の譲渡・相続放棄
他の相続人の同意全員の合意が要る同意がなくても自分だけで決められる

2. 代償分割:一人が取得し、他の兄弟に金銭を払う

実家に住み続けたい人がいる場合の基本形です。相続人全員の合意によって決める、遺産分割の方法です。取得する人が、他の相続人の持分に相当する金額を自分の資金から支払います。似た形に、賠償分割があります。共有物分割請求の中で裁判所が一人に取得させ、他の共有者に金銭を支払わせる方法です。決めるのが当事者か裁判所かという点で、別の手続です。代償分割では、評価額をいくらとするかが争点になりやすい形です。固定資産税評価額、相続税評価額、実際に売れる価格は、それぞれ違う数字になります。

合意の助けになるのは、確定した金額です。実際に売った場合にいくらになるか、という数字です。買取価格の提示は、「この金額なら今日決められる」という数字です。代償金の水準を決める土台として使えます。ただし、提示には有効期間があります。当社の場合は、ご提示の日からおおむね1か月が目安です。期間を過ぎたときは、建物の状態と直近の取引事例を見直したうえで出し直します。その金額を代償金の根拠に使う前に、いつまで有効かを確かめてください。逆に、売却の金額を誰も持たないまま代償金だけを話し合う形もあります。合意に近づかず、同じ議論が繰り返されます。

3. 自分の持分だけを売る

共有者が自分の持分を第三者に譲渡することは、他の共有者の同意なしにできます。全体を売るより、価格は大きく下がります。それでも、話し合いから抜けて現金化する道としては存在します。仕組みと価格の考え方は、「共有持分は自分の持分だけ売却できる」の記事にまとめています。

この選択には、必ず織り込んでおくべき副作用があります。買い受けた会社は、その後に他の共有者へ持分の買い取りや分割を求めて連絡を入れます。自分が抜けた後に、残った兄弟のところへ見知らぬ相手から通知が届きます。 その連絡がいつ、どういう形で行くのかは、別の記事に書いています。「共有持分の買取業者を選ぶ前に」の記事を読んでから決めてください。関係を保ちたいなら、他の兄弟に先に買い取りを打診する順番が先です。

4. 相続分の譲渡で、有償または無償で遺産分割から抜ける

遺産分割がまだ終わっていない段階でのみ使える方法です。自分の相続分そのものを、他の相続人や第三者に譲り渡します。無償で譲れば、結果は放棄に近い形です。有償なら、対価を受け取って抜けられます。譲り渡した後は、遺産分割の当事者ではなくなります。実家をどう分けるかの話し合いにも、呼ばれません。

動くのは、実家の持分だけではありません。相続分の全体で、預貯金も負債も一緒に移ります。気をつけたいのは債務です。相続分を譲っても、債権者から請求を受ける余地が残ります。被相続人の借入れについて、法定相続分に応じた額です。 借入れや連帯保証がある実家では、譲渡の前に弁護士に確認してください。対価を受け取る形にした場合は、課税の扱いも変わります。金額が決まった段階で、税理士にも当たっておく方が確実です。

5. 相続放棄で、はじめから相続人にならない

家庭裁判所に申述する手続です。原則として、3か月以内という制限があります。起点は、自己のために相続の開始があったことを知った時です。受理されると、その人は初めから相続人でなかったものとして扱われます。実家も預貯金も負債も、承継しません。

見落とされやすい点が二つあります。ひとつは、相続権が次の順位の人へ移ることです。親の兄弟やいとこにまで、話が回る場合があります。もうひとつは、保存の義務です。放棄の時にその実家を現に占有していた人には、引き渡すまで義務が残ります(民法第940条)。引き渡す先は、他の相続人または相続財産清算人です。「関わりたくないから放棄する」という進め方は危うい形です。3か月の期間も次順位への影響も見落としやすいので、申述の前に司法書士か弁護士に相談してください。

共有物分割請求までの4段階|兄弟が実家の売却に反対し続けた場合

実家の和室で、兄弟が向かい合って座り、話し合っている

合意できない場合に進む順番は、4段階です。協議、家庭裁判所の調停、審判、そして共有物分割請求です。

どの段階で止まるかで、結末が変わります。実家が手元に残るのか、他の兄弟の所有になるのか、競売にかけられるのかです。段階が進むほど、結論を決めるのは当事者ではなく裁判所になります。

共有物分割請求までの4段階とリスク

  1. 1

    協議(当事者のみ)

    費用なしで分け方も自由だが、長引くと税の特例期限が切れるリスクがある。

  2. 2

    遺産分割調停(家庭裁判所)

    過去の不満で話が止まったら移行。調停委員を挟み、顔を合わせず金額を話し合う。

  3. 3

    審判(裁判所が決定)

    調停が不成立になった場合に進む。当事者ではなく裁判所が結論を出す。

  4. 4

    共有物分割請求

    最終段階。実家が競売にかけられるなど、望まない結末になる可能性がある。

1. 協議:当事者だけで決める段階

全員が合意すれば、分け方は自由です。法定相続分と違う割合でも成立します。誰か一人が全部取得する形でも構いません。ここでまとまるのがいちばん早く、費用もかかりません。

協議を打ち切るかどうかは、回数ではなく議題で判断してください。金額と期限が議題になっているうちは、続ける価値があります。過去の出来事の評価に議題が移り、動かなくなったときが分かれ目です。第三者を入れる段階になります。当事者だけで数年やり取りしている間に、税の期限は過ぎていきます。 取得費加算は、相続税の申告期限の翌日から3年です。譲渡の特例は、相続開始から3年を経過する日の属する年の年末で切れます。

2. 遺産分割調停:家庭裁判所で、調停委員を挟んで話す

遺産分割がまだ終わっていない場合の行き先です。申立先は、相手方のうちいずれかの住所地を管轄する家庭裁判所です。当事者が合意で定めた家庭裁判所でも構いません。申立てには、戸籍一式や不動産の資料が要ります。期日は、おおむね1、2か月に一度のペースで入ります。

調停は、話し合いの場です。当事者どうしが顔を合わせずに進められる点が、実務では大きく効きます。連絡を取りたくない相手がいる、感情的なやり取りで話が進まない。そうした状態でも、調停委員を介せば議題は金額と分け方に戻ります。申立ての手続や必要書類は、裁判所のウェブサイトで確認できます。

3. 審判:調停が不成立になると、裁判所が決める

遺産分割調停が不成立に終わると、手続は自動的に審判へ移ります。裁判所が、分け方を定めます。現物で分ける、一人に取得させて他に金銭を払わせる、換価して分ける。こうした方法から、事情に応じて選ばれます。

審判になった時点で、希望どおりの結末になる保証は誰にもなくなります。 実家を取得したかった人が、代償金を受け取る側になることもあります。現金化を望んでいた人が、共有のまま残される結論もあり得ます。審判に不服があれば、即時抗告の道はあります。ただし、その分だけ時間が延びます。

4. 共有物分割請求:遺産分割を終えた後に、なお合意できない場合

遺産分割が済み、通常の共有になった不動産の話です。分割の協議が調わないときは、裁判所に分割を請求できます。裁判所が命じる方法は、まず現物分割です。次が、共有者の一人に取得させて他の共有者に金銭を支払わせる方法です。それらができないときは、競売と定められています(民法第258条)。

競売になると、市場で売るより低い金額で落札されることが一般的です。手続の費用も、差し引かれます。最後まで争った結果として全員の手取りが減る。この結末が、制度上あり得ます。 三つの結末の中身は、「共有物分割請求とは」の記事で比べてください。この段階まで来る前に、金額の提示を一つ手元に置きたいところです。そのうえで、協議に戻れないかを検討する価値があります。

「共有物分割請求までの4段階|兄弟が実家の売却に反対し続けた場合」について、そのまま聞けます。

話し合いの前に揃える|実家の相続から売却までの手続きの流れ

実家の縁側で、お茶を飲みながらくつろぐ家族

話し合いの席に持ち込むのは、意見ではありません。登記の状態、二種類の査定額、持ち続けた場合の年間費用の3つです。

この3つがそろうと、議論の対象が移ります。「売るか売らないか」から「いくらで、いつまでに」へ変わります。反対している側にとっても、判断の材料がないまま賛成を求められるのは負担です。数字が出た途端に態度が変わることは、珍しくありません。

話し合いの前に揃える3つの材料

  • 登記の状態

    法務局で登記事項証明書を取得して確かめます。

  • 二種類の査定額

    仲介の想定成約価格と買取価格の両方を取ります。

  • 1年分の保有費用

    何も決めない場合に1年でいくら出ていくか出します。

1. 登記事項証明書・名寄帳・課税明細を先に取る

登記事項証明書で、所有者と持分、抵当権の有無を確かめます。抵当権が残ったままの、古い借入れが見つかることがあります。完済済みでも、抹消登記がされていなければ売却の前に手続が要ります。

固定資産税の課税明細書には、建物の構造、床面積、課税標準額が載ります。名寄帳には、その自治体にある親名義の不動産が並びます。この3点のコピーは、全員に配ってください。 兄弟の誰かが「あの土地は聞いていない」と言い出す事態を避けるためです。情報を持っている人と持っていない人がいる状態は、それ自体が不信の原因になります。

2. 査定額を、仲介の想定額と買取価格の二本立てで取る

仲介の想定成約価格は、売りに出して買い手が現れれば成立する金額です。買取価格は、その金額で契約できるという提示です。二つを取ると、差が見えます。売れるまでの時間が、お金に換算していくらなのかが分かります。

自分たちの感覚を確かめたいときは、国土交通省の不動産情報ライブラリを見てください。同じ地域・同じ面積帯の、実際の取引価格が分かります。査定で見られる項目は、「空き家の査定」の記事に書いています。書類をどこまでそろえると精度が上がるかも、同じ記事にあります。兄弟で分ける場合は、査定額そのものでは比べないでください。手数料と登記費用と清算金を引いた後の手取りで並べます。

3. 持ち続けた場合の、1年分の現金の出入りを出す

足す項目は、固定資産税・都市計画税、火災保険料、電気と水道の基本料金です。草刈りと通水のための交通費、数年に一度は来る修繕費も加えます。この合計が、合意できないまま1年持ち続けたときに出ていく現金です。

この数字を出すと、全員に分かることがあります。「とりあえず様子を見る」という選択が、費用を伴う決定だという点です。この年間の持ち出しと、売った場合の手取りをどこで比べるか。計算の形は、「空き家の固定資産税を払い続ける損益分岐点」の記事で示しています。相続から引渡しまでの手続の順番は、「実家 空き家 売却の順番」の記事を参照してください。

反対している兄弟への切り出し方|トラブルなく実家を売却する進め方

切り出すときの議題は、「売るかどうか」ではありません。「いくらなら」「いつまでに」「費用は誰が」の3つに限定します。

賛成か反対かを聞く形にすると、答えは二つに一つです。いったん反対と言った人は、立場を変えにくくなります。条件を聞く形にすれば、答えは数字で返ってきます。合意に近づいたかどうかが、測れます。

切り出し方で変わる相手の答え

観点賛成か反対かを聞く形3条件を聞く形
議題売るかどうかいくらなら・いつまでに・費用は誰が
返ってくる答え二つに一つ数字で返ってくる
合意への影響反対と言った人は立場を変えにくい合意に近づいたかどうかが測れる

1. 最初の連絡では、金額と期限だけを伝える

伝える内容は三つです。査定で出た金額、その金額で契約できる期限、何も決めない場合に1年でいくら出ていくかです。意見や評価は添えず、事実だけを並べた文面にしてください。

手段は、口頭より書面や記録の残る形が向いています。言った言わないの食い違いは、金額そのものより関係を損ないます。 遠方の兄弟が相手なら、同じ資料を同じ日に全員へ送ってください。誰か一人だけが先に詳しい情報を持っている状態を作らないことが、後の不信を減らします。

2. 分け方を先に紙にする|控除する費用を書くときの注意点

代金の分け方は、売り先が決まる前に決めておく方が揉めにくい形です。紙に書く項目は、次の5つです。

  • 売却代金から控除する費用の範囲
  • 控除後の金額を、どの割合で分けるか
  • 固定資産税や電気水道の清算金を、誰が受け取るか
  • 引渡しまでの管理と片づけを、誰がどこまで担うか
  • 遺品や仏壇、位牌の扱いをどうするか

一つ目の費用の範囲には、仲介手数料、登記費用、印紙代、残置物の処分費を書き出します。それぞれ誰が立て替えて、どの時点で精算するのかまで決めておきます。注意点は、割合だけを決めて費用の範囲を書かない形です。片づけに、数十万円かかることがあります。全員で負担するのか、片づけた人が持ち出すのか。ここで、手取りは大きく変わります。決済の日に振り込まれる金額は、一本です。そこから誰にいくら渡すのかを事前に紙にしておかないと、着金の後で話し合うことになります。

3. 合意ができたら、書面の形式を決める

遺産分割協議書は、相続人全員が署名して実印を押します。印鑑証明書も添えます。登記に使う書類でもあります。不動産の表示は、登記事項証明書のとおりに書き写してください。

代償金を分割で払う約束のように、金銭の支払いを伴う合意もあります。公正証書にしておくと、約束が守られなかったときの手続が取りやすくなります。公証制度の概要は、法務省の公証制度のページで確認できます。書面の作成そのものは、司法書士や弁護士の仕事です。当社が作ることはできません。

合意できないまま期限が近いときの手続き|実家の売却を止めないために

期限が近づいているのに合意できない場合は、話し合いを続けません。裁判所の手続と登記の義務を、切り離して進めます。

分かれ目は、止まっている原因です。意見の対立なのか、当事者が欠けていることなのかを見ます。対立なら、調停です。欠けているなら、管理人や後見人の選任という別の入口になります。

止まっている原因と必要な手続の違い

止まっている原因具体的な状況必要な手続要する期間の目安
意見の対立協議がまとまらない遺産分割調停の申立て戸籍収集に数か月
当事者の欠如認知症などで判断能力がない成年後見人の選任申立て選任までに数か月
当事者の欠如長く連絡が取れない不在者財産管理人の選任申立て選任までに数か月

1. 調停を申し立てる準備を、並行して進める

申立てには、被相続人の出生から死亡までの戸籍が要ります。相続人全員の戸籍と住民票も必要です。不動産の登記事項証明書と固定資産評価証明書なども求められます。戸籍の収集は、相続人の人数が多いほど時間がかかります。数か月に及ぶこともあります。

申し立てるかどうかを決める前から、この収集だけは始めてください。 協議がまとまって相続登記に進む場合も、同じ戸籍を使います。調停に至らなくても、集めた分は残ります。当事者がいとこの代まで増えているときの集め方と順番があります。「数次相続で相続人が多い実家の売却」の記事を参照してください。

2. 当事者が欠けている場合は、選任の手続が先に来る

相続人の一人が認知症などで判断能力を欠いていることがあります。その人が署名した協議書は、無効になり得ます。成年後見人の選任の申立先は、本人の住所地を管轄する家庭裁判所です。選ばれた後見人が、本人に代わって協議に加わります。居住用の不動産を売る場合には、家庭裁判所の許可が別に要ります。後見人であっても同じです。

相続人の一人と長く連絡が取れない場合は、別の方法があります。不在者財産管理人の選任を申し立てる形です。こちらの申立先は、不在者の従来の住所地または居所地を管轄する家庭裁判所です。どちらの手続も、申立てから選任まで数か月を見ておくことになります。診断書や戸籍を集める期間を含めた目安です。これは、法律で決まった期限ではありません。裁判所が事情を調べ、候補者の適否を判断するのに要する時間です。事案によって前後します。予納金を含む費用も、別に必要です。「連絡が取れないから兄弟だけで決めた」という形は避けてください。後で協議そのものが無効になります。時間がかかっても、手続を踏んでください。

3. 専門家の分担を決めてから依頼する

担当する範囲は、法律で分かれています。相続人どうしの対立の代理は弁護士、登記は司法書士です。税額の計算と特例の適用は税理士、境界の確定は土地家屋調査士です。誰に何を頼むかを決めずに相談を重ねると、同じ説明を繰り返すことになります。

費用の目安と着手の順番は、最初の面談で確認してください。当社は不動産の買主であり、税務や法律の代理はできません。 適用の可否や具体的な税額は、税務署または税理士にご相談ください。登記は司法書士に、相続人どうしの争いは弁護士にお願いします。

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実家の売却に兄弟の反対があるとき、当社にご相談いただく場合の条件

当社が買い取る条件・買い取れない条件と、実際の買取事例は「当社の買取基準」にまとめています。

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実家の売却に兄弟が反対しているとき、先に決まるのは名義と期限

  • 反対の中身を、価格・時期・居住・過去の経緯のどれかに切り分けてください。 価格なら、二種類の査定額で動きます。時期なら、待つ期限と費用の負担を決めれば動きます。居住なら、代償分割か住み替えの手当てが要ります。過去の経緯なら、遺産分割の手続の問題です。ここを分けないまま説得を重ねても、同じ会話が繰り返されます。
  • 名義の状態が、合意できなかったときの行き先を決めます。 親名義のままなら、家庭裁判所の遺産分割調停です。兄弟の共有名義で登記済みなら、地方裁判所の共有物分割請求です。競売に至れば、手取りは市場で売るより減ります。その前に金額の提示を一つ手元に置いて、協議に戻れないかを考える価値があります。
  • 話し合いが止まっていても、相続登記の3年、相続税の10か月、譲渡の特例の年末は進みます。 遺産分割がまとまらない場合は、相続人申告登記で申請義務に対応できます。ただし、売るときには改めて相続登記が要ります。税の期限を越えると、同じ価格で売っても手取りが減ります。

当社は買主として直接買い取ります。家財が残った状態でも、現況のまま金額をお出しします。裁判所の手続が進行中の物件は、お引き受けできません。住んでいる方の退去時期が決まっていない物件も同じです。

査定は無料・売却の義務なし
0120-996-748受付時間10:00〜19:00(水・日曜定休)

通話料無料・全国対応

この先は、当社の買取窓口「買取くん」のページです(運営は同じ株式会社リアテクスです)。

実家を兄弟で売却するときのよくある質問|反対されている場合

Q1. 兄弟で実家を相続する場合、売却はどうなりますか

遺産分割が済んでいなければ、実家は相続人全員の遺産共有です。家全体を売るには、全員が売主として契約に加わります。分け方の基本は3つです。売って代金を分ける換価分割、一人が取得して他に金銭を払う代償分割、持分を分けて登記する共有です。

どの形を選ぶにしても、お引き渡しまでに相続登記を済ませる必要があります。登記の義務と期限は、法務省の相続登記の申請義務化のページで確認できます。遺産分割がまとまっていない段階には、相続人申告登記という受け皿があります。共有のまま持ち続ける選択は、次の相続で当事者が増えます。合意は、さらに難しくなります。

Q2. 実家を売却して後悔するのは、どんなケースですか

ご相談の中で後悔として語られるのは、金額そのものではありません。決め方と順番であることが多い形です。片づけを先に済ませて数十万円を使った後に、残置物があっても買い取れると知った。費用の負担の話を後回しにしたまま代金を分け、片づけた人だけが持ち出しになった。こうした形です。

税の期限を越えてから売り、使えたはずの特例が使えなかったケースもあります。譲渡の特例の期限と要件は、国税庁のページに書かれています。要件の確認は、売買契約の前に税理士へ回してください。売る・売らないの結論を急ぐ前に、控除する費用の範囲と期限を紙にしてください。その方が、後悔は減ります。

Q3. 相続で揉める家族には、何か共通する特徴がありますか

当社が現場で見ている範囲で共通しているのは、情報の差と負担の偏りです。実家の近くに住むご兄弟だけが、鍵も権利証も課税明細も預かっています。遠方のご兄弟は、建物の床面積も固定資産税の額も見たことがありません。その状態で、「売りたい」と伝えられます。現地を見られない立場では、示された金額が妥当かを確かめる手がかりがありません。だから、まず反対の返事になります。実際、同じ資料が行き渡っていない状態では、こんなことが起きます。こちらが金額をお伝えした後で、別のご兄弟からお問い合わせをいただくのです。「その金額の根拠は何か」という内容です。

もうひとつは、管理の負担を長く一人が担ってきた形です。草刈りと通水を続けてきた人からすれば、代金を等分する提案は不公平に見えます。資料は、全員に同じ日に配ってください。負担してきた費用は、控除項目として明示します。この二つで、二種類の摩擦はかなり減ります。

Q4. 「争いは負けるが勝ち」と言われますが、譲った方がよいのですか

譲るかどうかは、争い続けた場合に何が残るかで判断するものだと考えています。共有物分割の訴訟まで進んで、競売になった場合を考えます。落札価格は、市場で売るより低くなるのが一般的です。手続の費用も、差し引かれます。弁護士費用と、数年分の固定資産税と管理費も出ていきます。

最後まで争って自分の主張が通ったとしても、手取りが譲歩した場合を下回ることがあります。主張の正しさと手取りの多さは、別の軸です。調停に入る前に、争った場合と譲った場合の金額を両方計算してください。 感情の問題として、どうしても譲れない論点もあります。その場合は、弁護士に相談して進めるべき事柄です。

Q5. 兄弟が相続でトラブルになるのは、なぜですか

不動産が現金のように分けられないことが、いちばん大きな理由です。預貯金なら、割り算で終わります。実家は一つしかありません。住む人・売りたい人・保留したい人の希望が、同じ物に集まります。

加えて、評価額が一つに定まりません。固定資産税評価額、相続税評価額、仲介の想定成約価格、買取価格は、それぞれ違う数字です。自分に有利な数字を各自が持ち出すと、議論は噛み合いません。確定した金額を一つ、共有の土台として置いてください。議論は「その金額で分けるかどうか」に絞られます。 介護や生前の資金援助といった過去の経緯もあります。寄与分・特別受益として持ち出されると、論点は金額から評価の問題へ移ります。

Q6. 反対している兄に知らせずに、自分の持分だけを売っても構いませんか

法律上は、自分の持分を他の共有者の同意なく処分できます。ただし、買い受けた側は権利を行使するために、他の共有者へ連絡を取ります。知らせずに売ったつもりでも、結果として兄のところへ第三者から通知が届きます。 関係を保ちたいのであれば、先に兄本人へ買い取りを打診してください。その方が、結果として話は早く終わります。第三者からの通知で初めて知る形になると、その後の交渉は感情の問題に戻ります。

価格の面も見ておきます。買い受けた側は、その家を単独で使うことも売ることもできません。そのため持分だけの売却は、家全体を売った場合の持分相当額を下回ります。下がり幅を決めるのは、持分割合ではありません。他の共有者と連絡が取れるか、住んでいる共有者がいるかという点です。特例の適用や譲渡所得の計算は、持分ごとに判断されます。「空き家3000万円控除の条件」の記事で要件を確かめたうえで、税理士に確認してください。

Q7. 実家に住んでいる弟が出ていかない場合でも、売れますか

住んだままの状態で売る方法はあります。ただし、買い手は限られます。価格も、空き家として引き渡す場合より下がります。当社の場合も、引渡しの日を約束できません。退去の時期が決まっていない物件は、お引き受けできません。

現実的な順番があります。まず、弟が単独で取得して他の兄弟に代償金を払えるかを確かめます。資金の手当てが付かない場合は、退去の期限を決めます。そのうえで、売却に進みます。退去の合意は、口頭ではなく書面にしてください。明渡しの期日と、引越し費用を誰が負担するかまで書いておきます。 話し合いで期日が決まらない場合は、調停の中で明渡しを含めて協議することになります。

ご兄弟のあいだで意見が割れている案件の話です。当社がしていないのは、反対している方への説得です。どなたが正しいかという判断も、いたしません。お伝えできるのは、事実だけです。その実家がいくらで、いつ現金になるのか、という点です。

実務としてお願いしているのは、ご連絡の窓口を一本にしていただくことです。ご兄弟それぞれから別々にご連絡をいただくこともあります。その場合、こちらがお伝えした金額や日程が、伝わる途中で少しずつ違う形になります。窓口を決めていただくか、ご同席のうえでお話しください。その食い違いは、起きなくなります。まだ売ると決めていない段階でのご相談も承ります。見込みの金額をお出しするところまでで、費用はいただきません。数字が一つ出ると、話し合いの議題がはっきりすることが多いためです。

この記事について

執筆・編集
リアテクス編集部株式会社リアテクス当社(宅地建物取引業 東京都知事(1)第107888号)は物件を直接買い取る買主の立場から、売却を検討する方の判断材料となる記事を企画・編集しています。
監修
鶴野 博之鶴野 博之株式会社リアテクス 執行役員宅地建物取引士(東京)第257503号/賃貸不動産経営管理士/2級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP2級)この区分の監修を担当しています。記事の公開判断は当社が行っています(代表が定めた手順による)。確認・公開判断:鶴野 博之(株式会社リアテクス 執行役員)
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