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空き家

空き家の放置で責任と賠償を負う条件|火災と倒壊

公開 更新

執筆
株式会社リアテクス リアテクス編集部
監修
株式会社リアテクス 執行役員 鶴野 博之(宅地建物取引士(東京)第257503号)
空き家の放置で責任と賠償を負う条件|火災と倒壊

「誰も住んでいない実家が倒れたり燃えたりしたら、遠くにいる自分が賠償を求められるのか」。屋根や外壁が落ちて他人を傷つけた場合、民法第717条の工作物責任で所有者が賠償します。占有者と違い、所有者は注意を尽くしていたと言っても免れません。

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目次(12章)

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誰も住んでいない家から瓦が落ちて通行人に当たったとき、請求を受けるのは所有者です。住んでいないことも、遠方にいることも、理由になりません。

空き家の放置で責任と賠償が発生する根拠は民法第717条

古い木造住宅の居間で、家族が建物の状態を確認している様子

建物や塀のような土地の工作物に欠陥があり、それが原因で他人に損害が出たとします。まず賠償するのは、その工作物を占有している人です。占有者が損害の発生を防ぐのに必要な注意をしていたときは、所有者が賠償します。これが民法第717条の工作物責任です。

分かれ目になるのは、誰が占有しているかと、損害の原因が建物の欠陥にあるかどうかの2点です。人が住んでいない家では、多くの場合、所有者がそのまま占有者を兼ねます。管理を業者に任せていても、占有していると評価されるのは通常は所有者の側で、結局は所有者に請求が来ます。

工作物責任が問われる順序と免責の有無

  1. 1

    第一段階:占有者

    損害を防ぐ注意をしていれば責任を免れる

  2. 2

    第二段階:所有者

    占有者が免責された場合、無条件で賠償する

所有者の責任には、注意を尽くしたという言い訳が効かない

民法第717条第1項は、占有者について「損害の発生を防止するのに必要な注意をしたとき」は責任を負わないと定めています。そのうえで、所有者が賠償すると続きます(民法(e-Gov法令検索))。占有者には免れる道が書かれていますが、所有者には書かれていません。年に何度も見に行っていた、業者に点検を頼んでいた、という事情があっても、瑕疵があって損害が出た以上は所有者が負担します。

この構造が、空き家の相談でいちばん誤解されている部分です。「管理会社に任せているから自分の責任ではない」という説明を受けたという方が時々いらっしゃいますが、管理を委託しても所有権は動きません。委託契約の中で管理会社に落ち度があれば、賠償した後にその分を管理会社へ請求できる余地は出ます。ただし被害者に対しては、所有者が先に払います。

「瑕疵」とは、その建物が通常備えるべき安全性を欠く状態

賠償の入口になるのは、建物に瑕疵があったかどうかです。瑕疵は、その種類の工作物が本来備えているはずの安全性を欠いている状態を指します。築年数が古いこと自体は瑕疵ではありません。古くても、屋根材が留まっていて、外壁が剥がれず、塀が倒れない状態であれば、通常の安全性は保たれています。

問題になるのは、留め具が錆びて瓦がずれている、モルタルの外壁が浮いて叩けば落ちる、ブロック塀に鉄筋が入っておらず傾いている、といった状態です。台風や地震が引き金になった場合でも、その程度の風や揺れで壊れない状態が通常であれば、瑕疵が認められることがあります。地震の規模が想定を大きく超えるときは不可抗力として責任が否定される余地がありますが、そこは個別の判断で、あてにして放置する根拠にはなりません。

損害の範囲は、治療費だけでは終わらない

人が怪我をした場合に請求されるのは、治療費、通院の交通費、休業損害、後遺障害が残ればその逸失利益と慰謝料です。死亡した場合は、収入と年齢から計算される逸失利益が中心になり、金額の桁が変わります。物が壊れた場合は、修理費か、修理が無理なら時価が基準です。隣家の外壁を傷つけた、駐車中の車を壊した、電線を切ったといった被害はいずれもこの枠に入ります。

金額の見当を付けるとき、多くの方が建物の価値を基準に考えます。「価値のない古家だから、壊れても大した額にはならない」という発想です。しかし賠償の額を決めるのは、被害を受けた側に生じた損害であって、原因になった建物の価値ではありません。固定資産税の評価額が数十万円の建物が、数千万円の請求の原因になることがあります。

空き家の放置で責任を問われるのは誰か、名義と占有で決まる

木造住宅の前に立つ家族が、建物の外観を見上げながら話し合っている様子

請求の宛先になるのは、登記の名義人ではなく、実際にその建物を所有している人です。相続が起きていれば、登記が亡くなった親のままでも、相続人が所有者として責任を負います。

請求を受ける人の範囲は、相続の手続きの進み具合で変わります。遺産分割が終わっていない段階と、特定の相続人が取得した後とで、宛先が違います。

相続の進行による責任を負う人の変化

  1. 相続開始〜遺産分割前

    相続人全員が責任を負う

    登記が親のままでも、全員が所有者として賠償責任を問われる立場になる。

  2. 遺産分割協議の成立後

    取得した人が責任を負う

    協議成立後に生じた損害については、建物を取得した相続人が責任を負う。

  3. 協議成立より前の損害

    被害者には主張できない

    協議で責任を押し付け合っても、被害者には主張できず全員が責任を負う。

遺産分割が終わるまでは、相続人全員が所有者

相続が開始すると、遺産は相続人の共有になります。この段階で建物が倒れて損害が出れば、相続人全員が所有者として責任を問われる立場です。誰も住んでいない、誰も欲しがっていない、という事情は関係しません。話し合いが長引いている間に台風が来る、という順番は珍しくないものです。

遺産分割協議が成立して一人が取得すれば、その後に生じた損害についてはその人が責任を負います。ただし協議が成立した日より前に発生した損害については、協議の内容で責任の押し付け合いをしても被害者には主張できません。相続人の間でどう精算するかという話と、被害者に対して誰が払うかという話は、別に進みます。

相続登記の期限と、責任の発生時期は別に数える

不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請することが、2024年4月1日から義務になりました(相続登記の申請義務化(法務省))。2024年4月1日より前に相続で取得したと知っていた場合も対象です。その場合の期限は2027年3月31日です。正当な理由なく期限を過ぎると10万円以下の過料の対象になります。

この3年という期限と、工作物責任が発生する時期は、まったく別に動きます。登記を済ませていなくても、相続した時点から所有者としての責任は始まっています。逆に、期限内に登記を済ませても、屋根が落ちれば賠償します。登記は責任の有無を決めるものではなく、誰が所有者かを外から分かるようにするものです。ただし登記が親の名義のままだと、被害者側が相続人を調べるのに時間がかかり、その間に話がこじれることがあります。

相続放棄をしても、すぐには手が離れない

相続放棄をすれば、その相続に関しては最初から相続人でなかったことになるため、所有者としての工作物責任は負いません。ただし、放棄した時点でその財産を現に占有していた人には、民法第940条の保存義務が残ります。相続人や相続財産清算人に引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって保存する義務です。2023年4月1日施行の改正で、この義務の対象が「現に占有している」場合に限定されました。

この保存義務の中身は、価値を維持する管理ではなく、現状を悪化させない程度の保存です。それでも、鍵を持っていて出入りしていた家について、まったく何もしなくてよいとは言えません。放棄の後にどこまでの義務が残るかは「相続放棄しても実家の管理義務は消えない」の記事で整理しています。放棄を検討する場合は、放棄の申述の期限が自分のために相続の開始があったことを知った時から3か月であることも併せて確認してください。

「空き家の放置で責任を問われるのは誰か、名義と占有で決まる」について、そのまま聞けます。

空き家の倒壊で賠償を負う場合と、火災で責任を免れる場合の違い

倒壊と火災では、適用される法律が違います。倒壊は工作物責任で無過失に近い重い責任になり、火災は失火の責任に関する法律によって、重大な過失がなければ賠償責任が生じません。

この差が生まれるのは、失火責任法が明治32年に、木造家屋が密集し延焼が避けられない社会を前提に作られたからです。同じ「空き家を放置した」という事実でも、結果が倒壊か火災かで、請求できるかどうかが分かれます。

倒壊や落下で工作物責任の対象になる箇所

  • 屋根瓦や外壁材

    落ちて人や物に当たれば工作物責任の枠内

  • 看板やアンテナ

    通常の暴風で落ちれば留め方が悪いと評価

  • 雨樋やブロック塀

    注意を尽くしたという主張では責任を免れない

1. 倒壊・落下は、瑕疵があれば所有者が払う

屋根瓦、外壁材、看板、雨樋、アンテナ、ブロック塀。これらが落ちて人や物に当たった場合、工作物責任の枠内です。所有者は、注意を尽くしていたという主張では免れません。争点になるのは、瑕疵があったかどうかと、その瑕疵と損害の間に因果関係があるかどうかの2点に絞られます。

台風のときだけ落ちた、という事情は、免責の理由にはなりにくいものです。日本の住宅は、一定の風速に耐えることが前提とされています。通常想定される範囲の暴風で落ちたのであれば、留め方が悪かった、劣化を放置していた、と評価されやすくなります。

人が住んでいる家と比べ、空き家は倒壊の危険性が高まりやすい状態に置かれます。雨漏りに気づく人がおらず、台風の翌日に瓦を押さえる人もいないためです。住んでいれば数万円の応急処置で終わる不具合が、見る人のいない家では何年もそのまま進みます。事故が起きた後に「見ていなかったので知らなかった」と説明しても、瑕疵がなかったことにはなりません。

2. 火災は、失火責任法により重過失が要件になる

失火ノ責任ニ関スル法律は、失火者に重大な過失がなければ民法第709条の不法行為責任を適用しないと定めています(失火ノ責任ニ関スル法律(e-Gov法令検索))。条文はたった一文です。軽い不注意で火を出して隣家を焼いても、賠償責任は生じません。逆に言えば、重大な過失があったと判断されれば、この免責は外れます。

重大な過失は、わずかな注意を払えば結果を避けられたのに、それすらしなかったという程度の落ち度を指します。裁判例の積み重ねで判断される領域で、空き家について一律の基準があるわけではありません。ただし、次のような事情が重なると、重過失の議論に入る余地が出てきます。侵入者が出入りしている状態を知りながら放置していた。可燃物が大量に堆積しているのを指摘されても片付けなかった。通電したままの古い配線を何年も点検していなかった。こうした積み重ねです。

空き家で火災が起きた場合の法的責任は、隣家への賠償だけではありません。消防法第3条は、屋外において火災の予防に危険と認められる物件について、所有者や管理者などに除去その他の措置を命じることができると定めています。消防法第5条には、建物の位置・構造・管理の状況が火災予防上危険と認められるときに、改修や除去を命じる仕組みが置かれています。敷地に可燃物が積まれた空き家は、隣家からの通報でこの手続きに乗ることがあります。命令に従わない場合の扱いは、隣家への賠償とは別の線で進みます。

3. 建物の瑕疵が火災の原因なら、工作物責任で問われる余地

火災であっても、失火責任法だけで終わるとは限りません。建物の設置・保存の瑕疵が原因で火が出た、あるいは延焼が拡大したという場合、民法第717条の工作物責任が問題になり得ます。ただし、火災による損害について工作物責任を問う場面でも失火責任法が働き、瑕疵を放置したことについて重大な過失まで要るのかどうかは、裁判で争われてきた論点です。空き家の火災がどちらの枠組みで判断されるかを、事故の前に決めておくことはできません。

実務上の意味は、「空き家の火災は失火責任法があるから絶対に払わなくてよい」とは言い切れない、ということです。配線や設備の劣化を長年放置していた家では、失火者の過失ではなく工作物の瑕疵として構成される可能性が残ります。個別の事案でどちらの枠組みになるかの判断は、弁護士に確認してください。

4. 放火された場合の責任は、原則として放火した人にある

空き家に火をつけられた場合、損害を賠償するのは放火した人です。所有者が当然に責任を負う仕組みにはなっていません。ただし、放火されやすい状態を作っていたことが問題にされる余地はあります。門扉が壊れて誰でも敷地に入れる、割れた窓から室内に入れる、敷地に古材やゴミが積まれていて着火しやすい、という状態を指摘されても放置していた場合です。

放火犯が捕まらなければ、被害を受けた隣家は誰からも回収できません。そのとき、隣家側が所有者の管理責任を追及する動きに出ることがあります。訴訟になれば、認められるかどうかにかかわらず、対応の時間と費用が発生します。施錠と侵入経路の封鎖は、費用が小さいわりに効く対策です。

5. 火が出た後に、所有者の手元に残るもの

隣家への賠償を免れても、焼け跡は自分の家として残ります。焼け落ちた屋根、炭になった柱、水を吸った家財。撤去は所有者の負担です。消火のために消防が壁や戸を壊した分も、復旧費は出ません。

焼け残りは、火災の前より落ちやすい状態です。道路や隣地に倒れかかれば、民法第717条の工作物責任の話に戻ります。火災の後に起きた落下は、失火責任法では守られません。焼け跡の囲いと立入りの防止は、早いほど安く済みます。

片付けを始める時期には順番があります。放火や不審火の疑いがあれば、警察と消防の調査が入ります。調査の間は現場に手を付けられないことがあります。解体の見積りも、その後でなければ固まりません。いつから動けるかは、所轄の消防署と警察の担当者に確かめてください。

貸していた家で火が出た場合は、責任の相手が二手に分かれます。近隣への賠償は失火責任法の枠です。重過失がなければ生じません。一方、借主が貸主に負うのは契約上の義務です。借主の失火には、この免責が及ばないと解されています。どちらの枠に入るかの当てはめは、弁護士にご確認ください。

倒壊と火災で適用される法律と責任の違い

観点倒壊・落下火災
適用される法律民法第717条(工作物責任)失火ノ責任ニ関スル法律
賠償責任の要件建物の瑕疵と損害の因果関係失火者に重大な過失があること
所有者の言い訳注意を尽くしていても免れない重過失がなければ賠償責任は生じない

空き家の放置で賠償額が数千万円になる場合の中身

賠償額が大きくなるのは、人が死傷した場合と、延焼で複数の建物を焼いた場合です。建物の価値がゼロに近くても、被害の側で計算されるため、請求額は建物の価格と連動しません。

金額を分けるのは、被害が人か物かという点と、被害者の年齢・収入です。人身の場合、逸失利益の計算に就労可能年数が入るため、若い被害者ほど額が上がります。

人身被害と物損における賠償項目の違い

被害の対象賠償に含まれる項目金額が跳ね上がる要因
死亡葬儀費用、治療費、逸失利益、死亡慰謝料若い被害者ほど就労可能年数が長く高額に
負傷治療費、交通費、休業損害、入通院慰謝料後遺障害(可動域制限や視力低下)の発生
物損車の修理費・代車費用、隣家の修理・足場被害側の基準で計算され請求額が連動しない

1. 人が死亡した場合の計算の組み立て

死亡事故の賠償は、葬儀費用、死亡までの治療費、死亡による逸失利益、死亡慰謝料が柱になります。逸失利益は、基礎収入に就労可能年数に対応する係数を掛けて求めます。そこから、本人が生きていれば使ったはずの生活費の割合を引くのが一般的な考え方です。働き盛りの方が亡くなれば、この一項目だけで数千万円に達します。

空き家に関する報道で「損害賠償額が数千万円にのぼることも」という表現を見かけるのは、この構造によるものです。具体的な金額は事案ごとに違い、裁判所の判断も一律ではありません。判決の傾向を知りたい場合は、裁判所の裁判例情報で類似の工作物責任の事件を検索するのが一次の手がかりになります。

2. 怪我をさせた場合に積み上がる項目

通行人が落下物で怪我をした場合、治療費、通院交通費、休業損害、入通院慰謝料が基本の項目です。後遺障害が残れば、後遺障害慰謝料と後遺障害による逸失利益が加わります。骨折して手指の可動域に制限が残った、視力が落ちた、といった結果になると、額が一段上がります。

物損だけで済むケースでも、油断はできません。落ちた外壁が駐車中の車を直撃すれば修理費が発生し、その間の代車費用も請求の対象になり得ます。隣家の屋根を突き破れば、修理に足場が必要になり、工事費が膨らみます。

3. 延焼した場合、火元の側が払うかは重過失の有無で決まる

火災が隣家に燃え移った場合、焼けた家の再築費用や家財の損害が発生します。この損害を火元が払うかどうかは、上の「空き家の倒壊で賠償を負う場合」の節で書いた失火責任法の枠組みで決まります。重過失が認められなければ、隣家は自分の火災保険で復旧することになります。

隣家が火災保険に入っていて保険金を受け取った場合、保険会社が求償してくることがあります。求償が通るかどうかも、やはり重過失の有無次第です。重過失が争われる事案では、火災の調査報告書や、消防・警察の記録が証拠として出てきます。

4. 支払えない場合、財産の差押えに進む

判決で賠償が命じられ、支払わなければ、強制執行の対象になります。預金、給与、不動産が差押えの対象です。空き家そのものを売っても足りない金額であれば、他の財産から回収されます。

自己破産をしても、賠償の性質によっては免責されない場合があります。悪意で加えた不法行為や、故意・重過失で人の生命・身体を害した不法行為に基づく損害賠償請求権は、破産法の非免責債権に含まれます。空き家の放置による死傷事故が、この区分に当たるかどうかは事案の内容によります。

火災保険では空き家の放置による賠償責任をカバーできない

火災保険が払うのは、契約している自分の建物と家財の損害です。他人への賠償は、別の保険の役目になります。ここを取り違えたまま「保険に入っているから大丈夫」と考えている方が、相当数いらっしゃいます。

見るべきは、保険の対象が自分の財産か、他人への賠償責任かという点です。空き家では、そもそも火災保険の引受け自体が断られることもあります。

火災保険と施設賠償責任保険の役割の違い

観点火災保険施設賠償責任保険
守る対象自分の建物と家財他人への賠償責任
保険金が使われる場面自分の建物が焼けたり壊れたとき建物の欠陥等で他人に損害を与えたとき
空き家の引受け一般物件として扱われ断られることがある居住していない建物が対象になるかは商品次第

1. 火災保険は自分の建物のための保険

火災保険の保険金は、自分の建物が焼けたり壊れたりしたときに、契約者に支払われます。隣家を焼いたときの賠償や、通行人に怪我をさせたときの賠償には使えません。空き家の建物に価値がほとんどない場合、火災保険の保険金額自体も小さくなります。守られる対象と、心配している対象がずれていないかを確かめてください。

2. 他人への賠償に備えるのは施設賠償責任保険

建物や設備の欠陥、管理の不備によって他人に損害を与えた場合の賠償に備える保険として、施設賠償責任保険があります。火災保険の特約として個人賠償責任の補償が付いていることもありますが、空き家のような居住していない建物が対象になるかは商品によって違います。加入している保険の証券を出して、対象となる建物と、補償される事故の範囲を確認してください。

3. 空き家は、そもそも引受けを断られることがある

人が住んでいない建物は、出火や破損の発生率が高いと見られるため、住宅用の火災保険では引き受けられず、一般物件として扱われることがあります。保険料が上がる、あるいは加入自体が難しくなる、という結果になります。加入の可否と費用の考え方は「空き家に火災保険はかけられるか」の記事に書いています。

4. 保険に入っても、状態の悪化は止まらない

保険は、損害が出た後にお金で埋める仕組みです。屋根が落ちる確率を下げるものではありません。保険料を毎年払いながら、建物の劣化はそのまま進み、数年後の解体費用も上がっていきます。保険に入るという判断と、建物をどうするかという判断は、分けて考えてください。

空き家対策特別措置法による勧告・命令と、放置の責任の関係

住宅街に建つ古い木造住宅と、周囲の家並みを少し離れた場所から見た様子

市区町村からの助言・指導・勧告・命令は、行政上の義務であって、民事の賠償責任とは別の線で動きます。命令に従わなければ50万円以下の過料の対象になりますが、これは被害者への賠償とは別のものです。

相手が行政なのか、被害を受けた人なのかで、話の筋が変わります。行政の手続きが進んでいなくても、事故が起きれば賠償の話は始まります。

行政の措置と民事の賠償責任の性質の違い

観点行政の措置民事の賠償責任
向き合う相手市区町村被害を受けた人
発生する金銭の性質過料(50万円以下等)や代執行の費用被害者へ支払う損害賠償金
話が始まるタイミング行政の助言・指導・勧告・命令に沿って進む行政の手続きが進んでいなくても事故が起きれば始まる

1. 罰金ではなく、過料と代執行の費用

空き家の放置で「罰金はいくらか」という問いがよく出ますが、空家等対策の推進に関する特別措置法が定めるのは過料で、刑事罰の罰金ではありません。命令に違反した場合に50万円以下の過料、立入調査を拒んだ場合に20万円以下の過料という定めです(空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報(国土交通省))。

金額として大きいのは、過料よりも行政代執行の費用です。市区町村が代わりに除却を行った場合、その費用は所有者に請求されます。回収は、税と同じ強制徴収の手続きで行われます。自分で業者を選んで解体する場合より安くなる保証はありません。

2. 勧告を受けると、土地の固定資産税が上がる

特定空家等または管理不全空家等として勧告を受けた土地は、住宅用地の特例の対象から外れます。根拠は地方税法第349条の3の2です。同条が定める課税標準の軽減が外れます。その結果、土地の固定資産税が上がります。条文はe-Gov法令検索で条番号を引くと確認できます。判定は1月1日の状態で行われるため、年内に是正して勧告が撤回されれば、その年度分は特例が残ります。

税額の動き方は「空き家の固定資産税が6倍になる条件」の記事で計算例を置いています。行政の手続きが進む順番そのものは「空き家対策特別措置法をわかりやすく」の記事にまとめています。

3. 行政から何も言われていなくても、賠償責任は生じる

勧告も指導も来ていない家で事故が起きた場合、「行政から注意されていなかった」という主張は、民事の責任を否定する理由になりません。工作物責任は瑕疵の有無で判断され、行政が認定していたかどうかは要件ではないからです。

逆の見方をすると、行政から指導が来ているのに直していない状態は、その建物に問題があると所有者が認識していた証拠として使われる余地があります。書面が届いている場合、内容と日付を控え、対応の記録を残してください。

4. 空き家の数と、行政が動く量

令和5年住宅・土地統計調査によると、全国の空き家は899万戸です。そのうち賃貸用・売却用・二次的住宅を除いた空き家は385万戸でした。数字は総務省統計局の住宅・土地統計調査のページで公表されています。行政の職員数には限りがあるため、この数すべてに個別の指導が行き渡るわけではありません。

近隣からの通報が、行政が動く最も多いきっかけになります。通報が入る前に、隣家との関係の中で先に話が出ることもあります。近所から「危ないですよ」と言われた段階が、いちばん費用をかけずに収められる時点です。

「空き家対策特別措置法による勧告・命令と、放置の責任の関係」について、そのまま聞けます。

空き家の倒壊の前兆を確かめ、放置の責任が現実になる前に手を打つ

最初にすることは、建物の外側を一周して、落ちそうなものと傾きを見ることです。室内に入らなくても、外から見るだけで判断できる項目が大半を占めます。

分かれ目は、手を入れれば止められる段階か、すでに崩落が始まっている段階かです。前者なら数万円から数十万円で収まり、後者は解体か、部分的な除却の話になります。

建物の外から見て確認する危険箇所

  • 屋根のずれと浮き

    下から見上げる。道路側にずれていれば優先

  • 外壁の剥離

    軽く叩いて空洞の音がすれば水が回っている

  • 基礎の亀裂

    斜めのひび割れや鉄筋の露出は構造の問題

  • 建物の傾き

    離れた場所から柱の線と電柱の線を比べる

  • ブロック塀の劣化

    控え壁なしやひび割れがあれば撤去を検討

1. 屋根を下から見上げて、ずれと浮きを探す

瓦がずれている、棟が波打っている、トタンの端がめくれている、といった状態は、地上から見上げれば分かります。双眼鏡かスマートフォンのカメラで拡大すると確認しやすくなります。屋根材が飛べば、落下地点は敷地の外に及びます。道路や隣家の側にずれているものがあれば、優先度が上がります。

自分で屋根に上るのは避けてください。古い建物では野地板が腐っており、踏み抜いて転落する事故が起きています。点検を頼む場合も、足場なしで上がると言う業者には注意が必要です。

2. 外壁と基礎の傷み、建物の傾きを見る

モルタルの外壁は、内部に水が回ると浮きます。軽く叩いて中が空洞の音がすれば、剥離が進んでいる状態です。サイディングの場合は、継ぎ目のシーリングが切れているところから水が入ります。基礎に斜めのひび割れが入っている、コンクリートが欠けて鉄筋が見えている場合は、構造の側の問題で、補修の規模が変わります。

点検箇所ごとの具体的な症状と危険の兆候

点検する場所外から見える症状危険が迫っている兆候
屋根瓦のずれ、棟の波打ち、トタンのめくれ道路や隣家の側に向かってずれている
外壁叩くと空洞の音がする、シーリングの切れ内部に水が回り、剥離が進んでいる
基礎斜めのひび割れ、コンクリートの欠け内部の鉄筋が見え、構造に問題が出ている
建物全体柱の線が電柱や隣家の壁の線とずれている地盤や土台の問題で、部分補修では止まらない
ブロック塀控え壁や鉄筋がない、上から下までのひび傾いており、道路側に倒れれば人に当たる

傾きは、離れた場所からの方が分かります。道路の反対側に立ち、柱の線と電柱や隣家の壁の線を比べてください。明らかに傾いていれば、地盤か土台の問題です。室内に入れる場合は、ビー玉を床に置いて転がる方向を見る方法もあります。傾きが出ている建物は、部分的な補修では止まりません。外壁の浮きは落下、基礎の割れと傾きは倒壊と、危険の出方が分かれます。

3. ブロック塀と門扉、樹木を確認する

敷地の境にあるブロック塀は、道路側に倒れれば直接人に当たります。控え壁がない、鉄筋が入っていない、上から下まで通ったひび割れがある、傾いている、といった塀は、優先して撤去を検討する対象です。樹木の枝が道路や隣地に張り出していれば、通行の妨げになり、落枝の危険もあります。

4. 獣の侵入の跡を見て、人が入れる経路を塞ぐ

床下や天井裏にハクビシン、アライグマ、ネズミが入り込むと、糞尿で天井が抜け、臭いが近隣に及びます。鳥の巣、蜂の巣、シロアリの蟻道も、外周から確認できることがあります。獣の侵入を放置すると、建物の傷みが加速します。さらに、近隣の生活環境の悪化として行政の指導の対象になり得ます。

割れた窓、外れた雨戸、壊れた勝手口、開いたままの門扉。人が入れる経路があると、放火と不法投棄の両方が起きやすくなります。ベニヤ板での目張り、南京錠の追加、フェンスの補修は、いずれも費用が小さい対策です。敷地内に古材やゴミが積んであれば、先に撤去してください。

シロアリや雨漏りが進んだ家をそのまま売る場合の告知については「雨漏り・シロアリの家を売却する」の記事で扱っています。

5. 雨水が入ってから倒壊に近づくまでの順番

倒壊は、ある日突然に起きるものではありません。始まりは瓦1枚のずれです。そこから雨水が野地板に入ります。小屋組みの木が濡れたまま乾かなくなります。数年で梁と桁が腐り始めます。

次に進むのは足元です。水は下へ落ちるため、最後に土台へ溜まります。湿った土台にはシロアリが来ます。柱の足元が食われると、壁と筋交いが効かなくなります。ここまで来た家は、台風の風や積雪で一気に動きます。

順番が分かれば、止める場所も決まります。屋根と雨樋を直せば、水の入口が閉じます。この段階なら、数万円から数十万円で収まる工事もあります。土台とシロアリまで進むと、補修費は解体費に近づきます。柱が傾き始めた家は、補修では元に戻りません。

進み具合は、室内でも読めます。天井にシミがあり、床が沈むなら、水はもう構造に届いています。外から軒裏が黒く垂れている家も同じ段階です。誰も住んでいない家は、通気が止まるため乾く時間がありません。人が住んでいた頃と同じ速さで傷むとは考えないでください。

6. 賠償のリスクがどの段階にあるかを、項目で確かめる

外周を回りながら、次の項目を見ます。当たった数ではなく、どこに当たったかで急ぎ方が変わります。他人に損害が及ぶ項目と、建物の寿命だけに関わる項目とでは、動く順番が違うからです。写真を撮りながら回り、当たった項目には確認した日付を入れておくと、後で対応の記録としても使えます。

  • 道路や隣地の側に、ずれた瓦・浮いた外壁・外れかけた雨樋がある
  • 塀が傾いている、または上から下まで通ったひび割れがある
  • 柱の線が、電柱や隣家の壁と比べて傾いている
  • 基礎に斜めのひび割れがあり、鉄筋が見えている
  • 窓が割れている、勝手口が壊れている、門扉が閉まらない
  • 敷地に古材やゴミなど、燃えやすいものが積まれている
  • 天井裏や床下に、獣が入った跡(糞、臭い、物音)がある
  • 近隣から一度でも危ないと言われたことがある

上の2つは、落ちる先が他人の側にある項目です。落下が先に来るので、補修か除却を先に決めてください。3つ目と4つ目は構造の傷みで、部分の補修では止まりません。解体を含めて出口を決める段階です。5つ目と6つ目は放火と不法投棄を招く項目で、その日のうちに手を付けられる範囲です。7つ目と8つ目は、行政の指導が入る前の段階と見てください。どれにも当たらない家は、年1回の外周の確認と通水で足ります。ただし台風と大雪の後は、当たる項目が増えていないかを見てください。

空き家の倒壊の前兆を確かめる手順

  1. 1

    屋根のずれと浮き

    地上から見上げる。道路や隣家側を優先する

  2. 2

    外壁と基礎

    外壁の剥離や基礎の斜めのひび割れを見る

  3. 3

    建物の傾き

    道路の反対側から柱と電柱の線を比べる

  4. 4

    ブロック塀

    控え壁の有無やひび割れ、傾きを確認する

空き家の放置による賠償を小さくするために先にすること

危険な箇所の除却を先に済ませ、そのうえで建物をどうするかを決めます。落ちそうな部分だけを外す工事は、建物全体の解体より桁が小さく収まることがあります。

判断の軸は、その建物を残して使う見込みがあるかどうかです。使う予定がない建物に補修費をかけると、解体するときに二重の出費になります。

賠償のリスクを下げるための事前の対策

  • 危険箇所の部分撤去

    落ちそうな部分だけ外す。足場不要な場合も

  • ブロック塀の撤去

    自治体の補助金が使えるか今年度の状況を確認

  • 近隣への連絡先伝達

    話がこじれる前に直接連絡をもらえる体制に

  • 対応記録の保管

    日付入り写真や請求書で瑕疵放置でないと証明

1. 落ちる可能性のあるものを外す

瓦の一部、外れかけた雨樋、アンテナ、看板、壊れた雨戸。これらを外すだけの工事なら、足場を組まずに済む場合もあります。建物を残す前提でも、残さない前提でも、他人に当たるものを先に減らすという点では同じです。見積りは2社以上から取ってください。金額の幅が大きい工事です。

2. ブロック塀を撤去する

道路に面したブロック塀の撤去は、自治体が補助金を出していることがあります。制度の名称は「ブロック塀等除却費補助」「安全なまちづくり」など自治体によって違い、補助の割合と上限額も違います。市区町村の建築指導課や住宅課のページで、今年度の受付状況を確認してください。予算の上限に達すると年度の途中で締め切られます。

3. 近隣に連絡先を伝えておく

隣家と自治会に、所有者の氏名と連絡先を渡しておくと、何かあったときに直接連絡が来ます。行政や警察を経由するより早く、話がこじれる前に対応できます。遠方にお住まいの場合、現地の状況を知る手段が近隣の目しかないことも多いはずです。

4. 対応の記録を残す

いつ現地を見たか、何を直したか、いくらかかったかを日付とともに残します。写真は着工前と完了後を同じ角度で撮っておきます。万一の訴訟で、瑕疵を放置していたかどうかが争点になったとき、この記録が手元にあるかどうかで説明の説得力が変わります。業者の請求書と作業報告書も保管してください。

5. 解体の見積りを取り、費用を把握する

解体費は、建物の構造、延床面積、前面道路の幅、残置物の量で変わります。重機が入らない敷地では手壊しの分が上乗せされます。金額の考え方は「空き家の解体費用はいくらかかるか」の記事に整理しています。解体すると翌年の土地の固定資産税が上がる点も、同じ紙に並べて比べてください。

6. 持ち続ける費用と、手放した場合の手取りを並べる

固定資産税、火災保険料、草刈りや通水の費用、往復の交通費、将来の解体費。これらを年単位で足し上げ、今売った場合の手取りと並べます。何年持ち続けると解体費用を含めた負担が売却の手取りを上回るか、という計算の型は「空き家の固定資産税を払い続ける損益分岐点」の記事にあります。ここに、賠償のリスクを抱え続けるという定量化しにくい項目が加わります。

賠償の心配を終わらせるための、空き家の出口の選び方

古い住宅街の道を、家族が並んで歩きながら話し合っている様子

所有権を手放せば、その後に生じた事故について所有者としての責任は問われなくなります。逆に言えば、持っている限り、点検と補修を続ける必要があります。

選び方を決めるのは、時間をかけられるかどうかと、建物の状態です。買い手を探す期間を取れるなら仲介です。状態が悪く、早く終えたいなら買取になります。

空き家を手放す4つの方法とそれぞれの特徴

手放す方法期間の目安手取りと費用の出方
仲介で売る数か月以上(古い家はさらに長期化)買取より高くなりやすいが仲介手数料が発生
現況で買取買い手を探す期間が不要処分費や修繕費が引かれ仲介より低くなる
解体して売る解体工事の期間解体費が先に出る。翌年から土地の税負担増
譲渡・寄付相手が見つかるまで無償で渡しても受け取る側に贈与税がかかる

1. 仲介で買い手を探す

不動産会社に依頼して、市場で買い手を探す方法です。成約すれば買取より高い価格になりやすい一方、売り出しから引渡しまでに数か月かかります。古い家、駅から遠い家、再建築不可の家では、さらに時間がかかります。売れるまでの間、建物の管理と賠償のリスクは所有者の手元に残ったままです。成約した場合、仲介手数料が発生します。

2. 現況のまま買い取ってもらう

業者が直接買う方法で、買い手を探す期間が要りません。残置物を置いたまま、修繕もせずに引き渡せます。価格は仲介での成約想定より低くなります。理由は、処分費と修繕費、再販できない可能性を買う側が負担するためです。価格が下がる仕組みは「空き家を買取で売るデメリット」の記事に書いています。

3. 解体してから売る

建物を壊せば、倒壊と落下の心配は消えます。ただし解体費が先に出ていき、更地になると住宅用地の特例が外れて翌年から土地の固定資産税が上がります。更地の方が高く売れる土地もあれば、古家付きのまま買う相手がいる土地もあります。どちらが手取りで多いかの比べ方は「古家は解体するかそのまま売るか」の記事にあります。

4. 譲る・寄付する

隣地の所有者や、その土地を使いたい人に譲るという道があります。無償で渡す場合、受け取った側に贈与税がかかるのが原則です。自治体への寄付は、行政が使う見込みのある土地に限られ、受け付けていない自治体も多くあります。出口の全体像は「空き家を手放す方法の全部」の記事で比べています。

5. 相続土地国庫帰属制度を検討する

相続で取得した土地を国に引き取ってもらう制度ですが、建物が建っている土地は対象外で、先に解体が必要です。承認されても負担金の納付が求められます。境界が明らかでない土地や所有権の範囲に争いがある土地、担保権や用益権が設定されている土地、通路として他人の使用が予定されている土地は、申請しても却下されます。当てにする前に、自分の土地が要件に当たるかを法務局の窓口で確認してください。

6. 決められないまま時間が過ぎる場合の考え方

兄弟で意見が合わない、親がまだ手放したくないと言っている、という理由で判断が止まることがあります。その間も建物は傷み、解体費は上がり、事故の可能性は残ります。誰か一人が代表して情報を集め、数字を出して共有するところから始めるのが現実的です。それでも合意できないときは共有物分割請求という手続きが残りますが、判決まで進めば時間も費用もかかります。話し合いが止まっている間も、事故が起きれば相続人全員が請求の宛先になる点は変わりません。

なお、この記事で触れた法律と税に関する説明は、一般的な情報の提供であって、個別のご事情についての判断ではありません。賠償責任の有無や訴訟への対応は弁護士、登記は司法書士、税額の計算は税務署または税理士に、それぞれご確認ください。当社は不動産の買主であり、法律事務や税務の代理は行いません。

「賠償の心配を終わらせるための、空き家の出口の選び方」について、そのまま聞けます。

崩れかけた空き家を当社が買い取る場合に確かめること

木造住宅と隣家の間の隙間を覗き込んでいる人の後ろ姿

現地で最初に見るのは、建物のどの部分が敷地の外へ落ちる位置にあるかです。道路や隣家の側に倒れかかっている部分があれば、解体の工法と近隣への養生の費用が変わり、そのまま価格に響きます。

取引態様:買主(当社が自ら買い取ります)/媒介(当社で買い取れない物件は、仲介で売却をお手伝いします)

価格を分ける2つの確認点

1つ目は、重機が入る幅が前面道路と敷地の入口にあるかどうかです。入らなければ手壊しの比率が上がり、工期が延び、費用の桁が変わります。旗竿地や幅の狭い私道に面した家では、ここで見積りが大きく動きます。路地の幅が2m前後しかない敷地では、解体材を手運びで出す分の人件費が上乗せされ、工期も延びます。

2つ目は、隣家との距離と、すでに隣家に接触や損傷が生じていないかです。屋根が隣の敷地に垂れている、外壁が隣家の塀を押している、といった状態があると、解体の前に隣家との話を整える必要があり、その分の日数と費用を見込みます。

現況のまま引き受ける範囲と、価格の出し方

残置物はそのままで構いません。家具、布団、仏壇、庭の物置の中身が残っていても、処分は当社で行います。鍵が見つからない場合や、遠方にお住まいで現地に来られない場合は、状況に応じて当社だけで現地を確認する形も取れます。

価格は、再販できる形にするまでの費用を引いて出します。解体費、残置物の処分費、隣地との調整に要する費用、そして再販までの期間中の保有コスト。崩落が進んでいる建物では、この解体費と近隣への養生費が大きくなります。そのため、同じ立地の建物と比べて価格が下がります。上がる要素として作用するのは、更地にした後の土地に需要があるかどうかです。

価格のご提示までにかかる時間は、目安で30分です。そこからご契約までは、おおむね1〜2週間を見ていただきます。お引き渡しは、書類が整っていれば2週間以内です。代金は引き渡しの日にお振り込みします。買い付けの資金は自己資金です。融資の承認を待たないので、契約に融資の特約は付きません。決済の日に、代金の支払いと所有権移転の登記を同時に済ませます。ご名義が亡くなった方のままのときは、決済日から逆算して司法書士と日程を組みます。当社が買主になる取引では、仲介手数料は発生しません。

書類は、権利証か登記識別情報が起点です。これに本人確認書類、印鑑証明書、固定資産税の納税通知書が加わります。親から相続した家では、戸籍の類も揃えていただきます。費用の側は、まず売買契約書に貼る印紙代です。抵当権が残っていれば、その抹消登記の費用がかかります。登記上の住所が今のご住所と違えば、住所変更登記の費用も出ます。ご名義が亡くなった方のままなら、相続登記の費用が別に必要です。どの書類とどの費用が要るかは、案件ごとに違います。ご相談のときに、その物件で要るものだけをお伝えします。

崩れかけた空き家の買取で確かめる点

  • 倒れかかっている部分

    敷地外へ落ちる位置にあると養生費が変わる

  • 重機が入る幅

    前面道路や入口が狭いと手壊しが増え工期延長

  • 隣家との距離と接触

    すでに損傷があれば解体前に調整の日数と費用

  • 残置物の有無

    そのままで構わない。処分は当社で行う

当社が買い取れない場合と、他を当たった方がよい場合

上に加えて、この種の物件で当社がお引き受けできないのは次のような場合です。

  • すでに崩落が起きて隣家や道路を損傷しており、その損害の負担について隣家や自治体との話がついていない場合です。負担の額が確定していないと、価格に織り込めません。
  • 行政代執行の手続きが進み、除却の費用が所有者に請求される段階に入っている場合です。請求額が確定する前は、当社が引き受ける範囲を決められません。
  • 建物が土砂災害特別警戒区域の中にあり、擁壁の改修が前提になるのに、その擁壁が誰の所有物か決まっていない場合です。改修の費用を誰が負担するかが定まらないと、再販の計画が立ちません。

まだ人が住める状態で、急ぐ事情もない家であれば、先に仲介で売り出された方が手取りは多くなります。買い手を探す数か月を待てる状況なら、そちらを先に試してください。逆に、危険な部分の補修見積りが解体費に近い金額になっている家では、補修に費用をかけてから売るより、現況のまま手放した方が残る金額が大きくなることがあります。価格の高さだけで決めたい場合は、当社1社に絞らず、買取を行う複数社に同じ資料を渡して比べてください。

なお、当社がどのような立場で不動産を扱っているかは運営者情報に記載しています。免許番号もそちらでご確認いただけます。

「崩れかけた空き家を当社が買い取る場合に確かめること」について、そのまま聞けます。

空き家の放置と責任・賠償で、先に確かめる3つ

  • 倒壊や落下は、注意を尽くしていても所有者が払います。 民法第717条の工作物責任には、占有者の免責は書かれていても、所有者の免責は書かれていません。管理を業者に任せていても、被害者に対しては所有者が先に払います。
  • 火災は失火責任法により、重過失がなければ賠償責任が生じません。 ただし建物の瑕疵が原因であれば工作物責任として問われる余地が残り、「火災だから必ず免れる」とは言えません。侵入者が出入りしている状態の放置や、可燃物の堆積は、重過失の議論を招きます。
  • 火災保険では、他人への賠償は払われません。 自分の建物のための保険と、他人への賠償に備える保険は別です。加入している証券を出して、対象の建物と補償の範囲を確かめてください。

崩落が始まっている建物も、残置物が残った家も、現況のまま買い取ります。解体費と近隣への養生費を引いて価格を出すため、金額は仲介での成約想定より低くなります。

査定は無料・売却の義務なし
0120-829-594受付時間10:00〜19:00(水・日曜定休)

通話料無料・全国対応

この先は、当社の買取窓口「買取くん」のページです(運営は同じ株式会社リアテクスです)。

空き家の放置による責任と賠償について、よくある質問

Q1. 空き家の火災で隣家から賠償を請求されたら、何から動けばよいですか

まず、請求の根拠が失火責任法の重過失なのか、建物の瑕疵を理由とする工作物責任なのかを、書面で確かめてください。その場で金額を認めたり、支払いを約束したりする前に、弁護士に相談してください。争える事案でも、いったん認めた内容は後から覆しにくくなります。 消防の調査は、出火の場所と原因を判断する材料になります。加入している保険会社にも、賠償を補償する特約が付いていないかを含めて連絡してください。管理を業者に委託していた場合は、委託の範囲と報告の記録も集めておきます。

Q2. 空き家を3年放置してもいいですか

放置してよいかどうかを決める年数の定めはありません。問題になるのは経過した年数ではなく、建物の状態です。屋根材が浮き、外壁が剥離し、塀が傾いた段階まで進んでいれば、3年でも工作物責任の対象になり得ます。 相続で取得した場合は、相続登記の申請期限が取得を知った日から3年以内であること、相続した空き家を売却する際の譲渡所得の特例に3年目の年末という期限があることが、別の理由で3年という区切りになります。期限の中身は制度ごとに違うので、それぞれ分けて数えてください。

Q3. 空き家を放置すると罰金はいくらですか

空家等対策の推進に関する特別措置法が定めるのは罰金ではなく過料で、命令に違反した場合は50万円以下、立入調査を拒んだ場合は20万円以下です。金額として重いのは過料より行政代執行の費用で、市区町村が除却した費用は所有者に請求され、税と同じ強制徴収の手続きで回収されます。 助言や指導の段階では過料の対象にはなりません。手元に届いた書面の表題と日付を確かめてください。

Q4. 空き家の損害賠償の事例には、どんなものがありますか

類型としては、屋根材や外壁の落下による通行人の負傷、ブロック塀の倒壊による人身事故、庭木の倒伏による隣家の破損、建物の一部崩落による駐車車両の損傷が挙がります。人が死傷した場合は逸失利益と慰謝料が加わるため、建物の価値と無関係に額が跳ね上がります。 具体的な判決の内容は事案ごとに違うため、傾向を調べたい場合は裁判所の裁判例情報で工作物責任の事件を検索するか、弁護士にご相談ください。

Q5. 空き家は何年でダメになりますか

年数で一律に決まるものではなく、雨水が構造材に届いたかどうかで進み方が変わります。屋根や外壁から水が入り始めると、柱と土台が腐り、シロアリの被害と重なって傷みが加速します。 通気のない状態で閉め切られた家は、室内に湿気がこもって畳と床が傷みます。逆に、屋根が健全で通水と換気を続けている家は、築年数が古くても構造が保たれていることがあります。見るべきは築年数ではなく、雨仕舞いの状態です。

Q6. 空き家の獣害を放置するとどうなりますか

ハクビシンやアライグマが天井裏に住み着くと、糞尿が溜まって天井板が抜け、臭いが敷地の外まで及びます。近隣の生活環境を損なう状態として、市区町村から助言や指導を受ける対象になり得ます。 断熱材が荒らされ、配線がかじられれば、建物の傷みも一段進みます。買取の場面でも、獣害の跡がある建物は清掃と消毒の費用を見込むため、価格が下がる要素になります。侵入口になっている床下の通気口や軒の隙間を塞ぐのが、最初の手当てです。

当社の見方

ご相談をいただく時点で、すでに近隣から苦情が入っている家が相当あります。多いのは、屋根材が隣の敷地に落ちた、塀が道路側に傾いてきた、という指摘です。この段階でご連絡をいただければ、崩落の前に引き渡しまで進められることが多いものです。

一方で、事故が起きてからのご相談は、進め方が変わります。被害を受けた方との話が終わっていないと、負担の額が決まらず、当社としても価格を出せません。その場合は、まず弁護士に相談して損害の範囲を確定させることが先で、売却はその後になります。

遠方にお住まいで、何年も現地を見ていないという方には、まず外周を一周した写真を撮ってきていただくようお願いしています。屋根を下から見上げた写真、外壁の四面、塀、敷地の入口。この7枚があれば、現地に伺う前でも、危ない箇所があるかどうかの見当は付きます。写真を見て、急いで手を入れた方がよいとお伝えすることもあれば、慌てる状態ではないとお伝えすることもあります。

空き家対策特別措置法の施行により、空き家にしたまま放置しておくと、自治体から「特定空き家」として認定されてしまう可能性があります。

近年では、ゲリラ豪雨や大型台風をはじめ、ひょう、竜巻など異常気象による自然災害が多発しています。

火災保険に加えて、「施設賠償責任保険」も加入することをオススメします。

これは所有している建物など大家さんが管理している対象に事故があったりして、人にけがを負わせたり人のモノを破損させたりした場合に、損害賠償金をカバーする保険です。

たとえば、物件に付いている看板が、風で飛び人に当たりケガをさせたとか、第三者の車に落ちて破損させたといったケースが該当します。

損害賠償の発生は大家さんにとって大きなリスクとなりますので、保険によるリスクヘッジは必須だと思います。

この記事について

執筆・編集
リアテクス編集部株式会社リアテクス当社(宅地建物取引業 東京都知事(1)第107888号)は物件を直接買い取る買主の立場から、売却を検討する方の判断材料となる記事を企画・編集しています。
監修
鶴野 博之鶴野 博之株式会社リアテクス 執行役員宅地建物取引士(東京)第257503号/賃貸不動産経営管理士/2級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP2級)この区分の監修を担当しています。記事の公開判断は当社代表が行っています。
公開・更新
公開 更新 内容を見直したときは、この日付と改訂の内容を更新しています。
この記事の事実確認の方法
法令:民法、失火ノ責任ニ関スル法律出典:法務省、国土交通省
記事の作り方
この記事は、当社の担当者が事実確認を行ったうえで公開しています。

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