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相続

数次相続で相続人が多い実家の売却|全員の同意なしに進められるか

公開 更新

執筆
藤山 大二郎株式会社リアテクス 代表取締役CEO 藤山 大二郎
監修
株式会社リアテクス 執行役員 鶴野 博之(宅地建物取引士(東京)第257503号)
数次相続で相続人が多い実家の売却|全員の同意なしに進められるか

「相続人が10人を超えてしまった実家、全員の同意がないと何も進まないのか」。実家をまるごと売るには相続人全員の同意が要りますが、自分の持分だけを動かす手は1人ででき、進め方は人数よりも、連絡が取れない人や反対している人がいるかで変わります。

相続人が多い実家を、当社は買主として引き取っています。ただし当社は相続人の代理人として、他の相続人と交渉することはできません。相続した家が買い取れるかどうかだけ、先に聞く(無料)

目次(7章)

先に相続した家の買取価格のめどだけ知りたい方へ。

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祖父名義のままになっている実家があります。祖父が亡くなったあと、その子である父も伯父も亡くなり、さらにその子の代へ相続が進んだ。戸籍を取り寄せてみたら、相続人が10人を超えていた。中には会ったこともない従兄弟や、その配偶者、海外にいる人、認知症で判断能力に不安がある人が混じっている。そして司法書士や不動産会社に相談したら、「相続人全員の署名と実印が必要です」と言われた。ここで手が止まる。けれども、「全員の同意が本当に必要な場面」と「必要でない場面」は、法律の条文単位で切り分けられます。

数次相続で相続人が多い実家の売却の要点を、定義・この記事でわかること・よくある質問の順に短くまとめた動画です。

まず相続人「全員の同意が要る場面」と「要らない場面」を分ける

倒壊の恐れがある古い実家の前で、二人の兄弟が改築に向けて外壁の状態を点検している
古い木造家屋の傷んだ外壁を確かめる二人の男性

「相続人が多いから何もできない」と思い込んでいる方が非常に多いのですが、すべての行為に全員の同意が必要なわけではありません。 結論は3つです。

  1. 不動産を「まるごと」売るには、相続人全員の同意が要ります。 ここに使いやすい例外はありません。
  2. 一方で、他の相続人の同意がなくても1人で進められる手続きもあります。 法定相続分での相続登記、自分の共有持分の売却、相続分の譲渡、相続人申告登記の4つです(それぞれの条件は下の各節)。「全員の同意が取れないから何もできない」は正確ではありません。ただし相続人申告登記は相続登記の義務を果たすための申出で、これをしても不動産は売れません。 どの手が自分の事案に使えるかは、司法書士・弁護士に確かめてください。
  3. 最初にやるべき行為は、説得ではなく「査定を取ること」と「戸籍を集めて相続人一覧表を作ること」の2つです。 金額と人数が出るまで、話し合いは抽象論のまま終わります。

「相続人が◯人以上なら◯◯すべき」という一律の答えは出せません。 相続人が20人いても全員が協力的で3か月で終わることがあり、逆に5人でも1人が音信不通で2年動かないことがあります。人数は難易度の目安になりますが、決定要因ではありません。決定要因は「連絡が取れない人がいるか」「反対している人がいるか」「判断能力に問題がある人がいるか」の3つです。

この記事では、手続にかかる費用の相場や、解決までの平均日数を数字で書きません。 戸籍の収集通数、司法書士の報酬、家庭裁判所の手続にかかる期間は、事案ごとに大きく振れます。公的な統計として全国平均が公表されているわけでもありません。自社で確認できない数字を相場のように書くことはしていません。そのかわり、どの順番で何を確認すれば、自分の事案の難易度が分かるかを書きます。そして、「権利関係が整理される前の段階でも、不動産の処分について何が動かせるか」という部分は、司法書士でも弁護士でもなく、実際に買う側でないと具体的に書けません。

記事で解説しないことと解説すること

  • 人数で一律の答えは出さない

    決定要因は連絡不可、反対、判断能力の問題の有無です。

  • 費用や日数の平均は書かない

    事案ごとに振れるため、難易度が分かる確認手順を書きます。

  • 相続手続の代理はできない

    当社は買主であり、手続の代理は専門家にご確認ください。

  • 処分について動かせることを書く

    権利関係整理前でも不動産の処分で何が動かせるか書きます。

行為の種類と必要な同意

遺産分割が終わっていない不動産は、相続人全員の共有状態にあります。共有物について何ができるかは、民法が行為の種類ごとに分けて定めています。2023年4月施行の改正民法で、この部分の規律はかなり整理されました。

行為の種類具体例必要な同意
保存行為修繕、不法占拠者に対する明渡しの請求(単独でできると解されていますが、個別の事情で結論が変わりうる論点です)単独でできる
管理行為短期の賃貸(建物3年以内など)、大規模でない改良持分の過半数
変更(軽微)形状・効用の著しい変更を伴わない変更持分の過半数
変更(軽微でない)大規模な改築、建物の取壊し(※解体の位置づけには異論あり。後述)全員の同意
処分不動産そのものの売却、抵当権の設定全員の同意
自己の持分の処分自分の共有持分だけを売る・贈与する単独でできる

※法定相続分での相続登記は、この表(共有物の管理のルール)とは別の、不動産登記法上の手続です。次の段落で説明します。

実家をまるごと売るのは「処分」ですから、全員の同意が要ります。 ここは変わりません。しかし表を見てください。「自己の持分の処分」は単独でできます。 これは民法上、共有者が自分の持分を自由に処分できることが原則だからです。他の共有者の承諾は要りません。

そして相続登記も、法定相続分での登記であれば相続人の1人から申請できます。 根拠は共有物の管理のルールではなく、登記手続のルールです。不動産登記法第63条第2項は、相続による権利の移転の登記は登記権利者が単独で申請できると定めており、登記実務では、共同相続人の1人から法定相続分どおりの共有の登記を申請することが認められています。「全員の実印がないと登記できない」というのは、遺産分割の結果を反映した登記をする場合の話です。この2点を知っているかどうかで、動ける範囲がまったく変わります。

所在等不明共有者がいる場合の新制度

2023年4月施行の改正民法では、共有者の中に所在が分からない人がいる場合の手当てが新設されました。

  • 所在等不明共有者の持分を、裁判所の決定を得て他の共有者が取得できる制度
  • 所在等不明共有者以外の全員が同意すれば、その持分も含めて第三者に譲渡できる制度
  • 所在等不明共有者を除いて、管理に関する事項を決められる制度

いずれも裁判所への申立てが必要です。そのうえで、持分の取得と持分の譲渡の2つは、裁判所が定める額の金銭を供託するよう命じられます(非訟事件手続法第87条第5項、第88条第2項)。管理に関する事項を決める制度には、この供託の定めはありません。誰でもすぐ使える簡便な制度ではありません。

そしてここが数次相続で重要な点ですが、所在等不明共有者の持分が相続財産に属する場合(共同相続人間で遺産の分割をすべき場合に限る)は、相続開始の時から10年を経過していない間、持分取得・持分譲渡の制度を使えません(民法(e-Gov法令検索)第262条の2第3項、第262条の3第2項)。この制限は、不動産全体が遺産共有の場合に限りません。他の共有者が通常の共有持分を持っている不動産でも、所在の分からない人の持分が遺産分割前の相続財産であれば、同じく10年を待つ必要があります。10年以内は、あくまで遺産分割によって解決することが優先される建て付けです。

また、10年を経過していても、この制度で遺産分割そのものを代替できるわけではありません。 できるのは「所在の分からない共有者の持分」を対価の供託によって切り離すことであって、残った相続人の間でどう分けるかは別途決める必要があります。通常共有と遺産共有が混在している場合の扱いなど、細かい論点も残ります。

相続開始から10年の前と後で、使える手続が変わる

観点相続開始から10年を経過する前10年を経過したあと
所在等不明共有者の持分の取得・譲渡持分が遺産分割前の相続財産なら使えない裁判所の決定を得て使える。時価相当額を供託する
共有物分割訴訟遺産分割をすべきときは、この手続で分割できない相続財産に属する持分も分割できる場合がある。遺産分割の請求があり相続人が異議を申し出たときは除く
解決の中心遺産分割(協議・調停・審判)が優先される所在不明の人の持分を切り離せるだけで、残る相続人の取り分は別に決める

ただし、「1人だけ行方不明で全部止まっている」という典型的な詰まり方に対して、法律上の出口ができたことは重要です。制度の概要は法務省が「所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し」として公表しています。相続登記の義務化も、この一連の見直しの一部です。

「まず相続人「全員の同意が要る場面」と「要らない場面」を分ける」について、そのまま聞けます。

相続人を確定させ、詰まり方と物件の売りやすさを見分ける

相続人が工作物の取壊しや地方裁判所へ向かう準備のために家族と荷物を整理している(祖父の代から残る空き家の室内で)
畳の和室で食器や荷物を段ボールに詰める四人

「たぶん10人くらい」では何も始まりません。最初にやるのは、相続人を1人残らず特定することです。そのうえで、どこで詰まっているのか、物件そのものが売れるのかを見分けます。

1. 相続人を1人残らず特定する

数次相続とは何か、代襲相続とどう違うか。 用語を整理しておきます。ここが混ざると、誰が相続人なのかを正しく数えられません。

数次相続は、ある人が亡くなって相続が開始し、その遺産分割が終わらないうちに、相続人の1人が亡くなった状態です。例えば、祖父が2005年に亡くなり、その遺産分割をしないまま、相続人だった父が2018年に亡くなった。この場合、祖父の相続について、父が持っていた相続人としての地位が、父の相続人(母・あなた・兄弟)に引き継がれます。つまり、祖父の遺産分割協議には、母・あなた・兄弟の全員が参加することになります。父1人だった枠が、3人に増えるということです。

これが2回、3回と重なると、相続人は指数的に増えます。祖父の子が4人いて、それぞれが亡くなり、それぞれに子が2〜3人ずついれば、その時点で10人前後。さらにその世代でも死亡があれば、20人を超えることも珍しくありません。

代襲相続は、被相続人が亡くなる「前」に、相続人になるはずだった子がすでに亡くなっている場合に、その子の子(被相続人から見れば孫)が代わりに相続人になるものです。数次相続との違いは、死亡の前後関係だけです。なお、同時に亡くなった場合や、どちらが先に亡くなったか分からない場合は、同時に死亡したものと推定されます(民法第32条の2)。代襲相続は、子が「相続の開始以前に死亡したとき」に生じる(同法第887条第2項)ため、同時に死亡した場合は数次相続ではなく代襲相続の側に入ります。

相続人の死亡時期誰が相続人になるか
代襲相続被相続人より前に死亡その人の子・孫(直系卑属)。配偶者は入らない
数次相続被相続人より後に死亡その人の相続人全員。配偶者も入る

この違いは実務上とても大きいです。 代襲相続では亡くなった子の配偶者は相続人になりませんが、数次相続では配偶者も相続人になります。つまり、数次相続のほうが人数が増えやすい。「伯父は祖父より先に亡くなったのか、後に亡くなったのか」。この一点で、伯母(伯父の妻)が協議に加わるかどうかが決まります。戸籍で死亡日を確認するとき、必ずこの前後関係を押さえてください。

さらにややこしいものとして、相続の承認・放棄を決める前(熟慮期間中)に相続人が亡くなった場合を再転相続と呼ぶことがあります。この場合、後の相続人は「先の相続を承認するか放棄するか」の選択権も引き継ぐと理解されています。熟慮期間そのものは民法915条1項に定めがあり、「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月」とされています。再転相続の場合の起算点については民法916条に規定が置かれています。

そして、この「知った時」をいつと見るかについては、最高裁の判断が複数あります。相続財産が全く存在しないと信じ、そう信じたことに相当な理由がある場合について起算点の考え方を示した最高裁昭和59年4月27日判決や、民法916条の起算点の意味について判断した最高裁令和元年8月9日判決が知られています。ただし、どの判断がどこまで自分の事案に当てはまるかは、事実関係次第で変わります。 ここは断定できる領域ではありません。放棄を検討する場合は、必ず弁護士・司法書士に事案そのものを見てもらってください。相続に関する規定は民法第882条以下、共有については第249条以下です。

被相続人(最初に亡くなった人、この例では祖父)の出生から死亡までの連続した戸籍。 現在の戸籍謄本だけでは足りません。婚姻や転籍、法改正による改製で戸籍は何度も作り直されているため、除籍謄本・改製原戸籍謄本をさかのぼって集める必要があります。

その途中で亡くなった相続人についても、同じく出生から死亡までの戸籍。 数次相続では、これが人数分必要になります。

現在の相続人全員の戸籍謄本と、住民票または戸籍の附票。 附票は住所の履歴を追うために使います。連絡先が分からない相続人の現住所は、ここから調べます。

戸籍収集は郵送でできます。 本籍地の市区町村に郵送で請求できます。定額小為替、返信用封筒、請求者の本人確認書類、そして自分が相続人であることを示す戸籍のつながりが必要です。なお、2024年3月から戸籍の広域交付制度が始まり、本籍地以外の市区町村の窓口でも、まとめて戸籍証明書を請求できるようになりました(ただし請求できる人の範囲や対象に制限があります)。窓口に出向ける方は、この制度で収集の手間がかなり減る場合があります。制度の詳細は法務省・法務局のページで確認してください。

2. 法定相続情報一覧図を用意しておく

戸籍が揃ったら、法務局の法定相続情報証明制度を使うことを強くお勧めします(法務局「「法定相続情報証明制度」について」)。

これは、集めた戸籍一式と、相続関係を一覧にした図(これが「法定相続情報一覧図」です)を法務局に提出すると、登記官が内容を確認して認証文付きの写しを交付してくれる制度です。以後の手続では、分厚い戸籍の束の代わりに、この一覧図の写しを提出すれば足りるようになります。ただし一覧図は、亡くなった方(被相続人)1人ごとに作るものです。数次相続では、法務省の説明資料(法定相続情報証明制度について・法務省民事局)どおり被相続人ごとに作成するため、祖父・父のように亡くなった方が複数いれば、その人数分の一覧図が必要になります。

相続人を確定させるための手順

  1. 1

    連続した戸籍を集める

    被相続人と途中で亡くなった相続人の出生から死亡までの戸籍を集めます。

  2. 2

    現在の相続人の情報を集める

    現在の相続人全員の戸籍謄本と、住所を追うための附票を集めます。

  3. 3

    郵送や広域交付で請求する

    本籍地への郵送や、窓口での戸籍の広域交付制度を利用して収集します。

  4. 4

    法定相続情報一覧図を用意する

    戸籍一式と一覧図を法務局に出し、認証文付きの写しを交付してもらいます。

数次相続で戸籍が数十通に及ぶ場合、この差は大きいです。登記、金融機関の手続、相続税の申告、そして不動産の売買契約。それぞれで戸籍一式を出す手間が消えます。写しの交付は手数料が不要で、必要な通数を取得できます。

3. 相続人が確定したら、一覧表を作る

エクセルでも手書きでも構いません。次の項目を並べてください(項目:確認すること)。

  • 氏名:戸籍上の表記
  • 続柄:被相続人から見た関係
  • 法定相続分:分数で。数次相続では分母が大きくなる
  • 現住所:戸籍の附票で確認
  • 連絡が取れるか:取れる/不明/未接触
  • 意向:賛成/反対/不明
  • 特記事項:高齢・判断能力・未成年・海外在住・行方不明

この一覧表が埋まった時点で、事案の難易度がほぼ確定します。 「連絡が取れない」「反対」「判断能力に不安」の欄にいくつ印が付くかで、取れる手が変わります。

4. 詰まり方は5パターンに分かれる

数次相続の物件が止まる理由を、必要になる法的な手続の違いで分けると、次の5つに整理できます。件数を集計した分類ではなく、論点ごとに分けた整理です。自分がどれかを見当づけてください。複数該当することもあります。

数次相続が止まる5つのパターン

  • 連絡は取れるが返事がない

    なぜハンコを押す必要があるのか伝わっていないことが多いです。

  • 特定の1人が反対している

    金額の問題か感情の問題かを見極める必要があります。

  • 連絡先が分からない

    不在者財産管理人や失踪宣告などの制度利用を検討します。

  • 判断能力に不安がある

    署名押印が無効になるおそれがあり、成年後見人等が必要です。

  • 未成年者がいて、親も相続人

    親が子を代理して協議に参加すると利益相反になります。特別代理人の選任が必要です。

パターン1:全員に連絡は取れるが、返事が返ってこない。 一番多い形です。反対しているわけではなく、関心がない。「自分には関係ない遠い親戚の家」と思われている。書類を送っても放置される。この場合、「なぜ自分がハンコを押す必要があるのか」と「押すと何が起きるのか」が伝わっていないことが原因であることが多いです。相手からすれば、見たこともない不動産の書類が突然届き、実印と印鑑証明を求められている状態です。警戒するのが普通です。

パターン2:特定の1人が反対している。 「先祖代々の土地を売るな」「自分は多くもらうべきだ」「兄が生前に援助を受けていたはずだ」。理由はさまざまですが、明確に反対の意思がある状態です。金額の問題なのか、感情の問題なのかを見極める必要があります。金額の問題であれば数字で調整できますが、感情の問題は数字では動きません。

パターン3:連絡先が分からない相続人がいる。 戸籍の附票を取っても住所が追えない、住所は分かるが手紙が返ってくる、住民票上の住所に住んでいない。海外に転出して所在が分からない場合もこれに含まれます。この場合、通常の遺産分割協議は成立しません。不在者財産管理人の選任、失踪宣告、あるいは前述の所在等不明共有者に関する制度の利用を検討することになります。

パターン4:判断能力に不安のある相続人がいる。 認知症等で意思表示ができない相続人がいる場合、その人が署名押印した遺産分割協議書は無効になるおそれがあります。「同居の家族が代わりにハンコを押す」ことはできません。 成年後見人等の選任が必要になり、選任後も、後見人は本人の利益を害する内容の分割には同意できません。家庭裁判所の後見に関する手続は、裁判所の「後見開始」のページに案内があります。

パターン5:相続人の中に未成年者がいて、親も相続人である。 親と子が同じ相続の当事者になる場合、親が子を代理して協議に参加すると利益相反になります。特別代理人の選任が必要です。

この5パターンのうち、パターン1だけは「時間と説明」で解決する可能性があります。 残りの4つは、法的な手続を挟まないと前に進みません。そして法的手続には、申立て、審理、選任、と段階を踏む時間がかかります。自分がどのパターンかを見誤ると、いつまでも「もう一度手紙を出してみよう」を繰り返すことになります。

5. 待っているあいだの費用と、物件そのものの売りやすさ

数次相続の事案で、私たちが最も気になるのはここです。協議がまとまるのを待っているあいだも、費用と責任は発生し続けます。

固定資産税は誰が払っているか。 未分割の不動産の固定資産税は、相続人全員が連帯して納付義務を負います。ただし実務上は、市区町村が相続人の1人を代表者として指定し、その人に納税通知書が送られることが多いです。その結果、実家の近くに住む1人が、何年も自腹で払い続けているという状態がよく起きます。他の相続人はその負担を知らないことすらあります。この不公平は、協議のときに必ず論点になります。「これまで払った税金を精算してほしい」という主張が出ます。先に金額を記録しておいてください。 納税通知書と領収書は捨てないことです。

建物の管理と、事故のリスク。 誰も住んでいない建物は劣化が早く進みます。屋根材の飛散、外壁の落下、塀の倒壊。第三者に損害を与えた場合、工作物の所有者は責任を問われる可能性があります。共有状態の建物で事故が起きた場合、誰がどう責任を負うのか。これは非常にややこしい問題になります。「自分は関係ない」と思っている相続人も、登記簿上は共有者です。

空家法の対象になる可能性。 草木の繁茂、害虫、ごみの不法投棄、不審者の侵入。近隣から苦情が出ると、市町村が動きます。空家等対策の推進に関する特別措置法では、周囲に悪影響を及ぼす空き家を「特定空家等」として指定し、助言・指導、勧告、命令、行政代執行までを段階的に行える仕組みが定められています。2023年(令和5年)12月13日施行の改正で、その前段階の「管理不全空家等」も指導・勧告の対象になりました(空き家対策(国土交通省))。勧告を受けると、固定資産税の住宅用地特例が外れます。 200平方メートル以下の部分で課税標準額が6分の1に軽減されている状態が解除されるということです。税額は大きく上がります。そして、その上がった税金を払うのも、やはり相続人です。

建物の価値は下がり続ける。 木造戸建ての建物部分は、時間とともに市場での評価が下がります。築20年を大きく超えたあたりからは、実務上ほぼ土地値での取引になります。つまり、「協議がまとまるまで待つ」ことのコストは、税金と管理費だけではありません。 待っているあいだに、分ける原資そのものが目減りしていきます。解体を検討する場合の費用の考え方は空き家の解体費用はいくらかかるかにまとめています。ただし、共有物件の解体には合意形成の問題が残ります。

建物の取壊しは、共有物の「軽微でない変更」として共有者全員の同意が必要と説明されるのが一般的です。 一方で、老朽化して危険な状態にある建物の取壊しについては、保存行為または管理行為として整理する余地があるとする見解もあり、実務上の扱いは一様ではありません。少なくとも確実に言えるのは、全員の同意を得ないまま解体すると、後から他の共有者に損害賠償を請求されるリスクがあるということです。実行する場合は、事前に弁護士に確認してください。「解体なら売却より合意のハードルが下がる」と単純に考えないほうが安全です。

そしてもう1つ、相続人の問題が解決しても、物件そのものが売りにくい場合があります。 数次相続が起きるほど長く放置されている不動産は、そもそも「売りにくかったから放置された」ケースが少なくありません。

売却先が限られる物件の条件

  • 再建築ができない土地

    道路に2メートル以上接していない等で建て替えできません。

  • 借地権付きの建物、または底地

    売却には地主または借地人との調整が必要になります。

  • 市街化調整区域、農地

    建築に制限がある区域や農地法の許可が必要な土地です。

  • 別荘地・リゾートマンション

    管理費や修繕積立金が発生し続け、需要が限られます。

再建築ができない土地。 前面の道が建築基準法上の道路に当たらない、道路に2メートル以上接していない、そもそも接道していない。この場合、建物を建て替えることができません。なお、幅員4メートル未満の道でも、特定行政庁が指定した道(いわゆる2項道路)は道路とみなされ、原則として道の中心線から2メートルの線まで敷地を後退(セットバック)すれば建て替えられます(建築基準法第42条第2項)。幅員だけで再建築の可否は決まりません。住宅ローンの審査が通りにくいため、一般の個人が買主になりにくい。結果として、売却期間が読めなくなります。仕組みと出口については再建築不可物件はなぜ売りにくいのかに整理しています。相続で取得した再建築不可の家について、保有し続ける・解体する・売るの3択を条件で比較した記事も別にありますので、あわせて参照してください。

借地権付きの建物、または底地。 建物は自分たちのものだが、土地は借りている。あるいは逆に、土地は自分たちのものだが、建物は借地人のもの。この場合、売却には地主または借地人との調整が必要になり、相続人間の合意とは別のハードルが加わります。底地と借地権の出口に、双方の立場からの整理を書いています。

市街化調整区域、農地。 建築に制限がある区域、あるいは農地法の許可が必要な土地。買主が限定されます。

別荘地・リゾートマンション。 管理費・修繕積立金が発生し続けるうえ、需要が限られる物件です。数次相続で放置されている典型例のひとつでもあります。別荘・リゾートマンションを処分したいを参照してください。

「相続人の同意が取れたら売れる」と考えている方は、先に物件の売りやすさも確認してください。 苦労して20人の実印を集めたあとで、「この物件は市場では買い手がつきません」と言われるのが、最もつらい順番です。順序としては、先に物件の見込みを確認し、それを持って協議に入るのが合理的です。

「相続人を確定させ、詰まり方と物件の売りやすさを見分ける」について、そのまま聞けます。

相続登記を整え、相続人全員の遺産分割協議を進める順序

ここからは、実行の順番に沿って書きます。まず全体の順序を示し、そのあと登記と協議の進め方を並べます。

1. 進め方の順序

数次相続物件の売却に向けた手順

  1. 1

    物件の基礎資料を集める

    登記事項証明書などで登記名義を確認し、数次相続の段数を把握します。

  2. 2

    物件の売りやすさを確認する

    接道や用途地域などを確認し、この段階で査定を取っておきます。

  3. 3

    相続人を確定させる

    戸籍を収集し、法定相続情報証明制度で一覧図の写しを取ります。

  4. 4

    難易度判定と方針決定

    相続人一覧表を作り、詰まり方のパターンに応じた方針を決めます。

  5. 5

    登記を整える

    遺産分割の成立内容か、法定相続分で登記し、売主を権利者にします。

第1段階:物件の基礎資料を集める。 登記事項証明書、公図、地積測量図、固定資産税の課税明細書。登記事項証明書は誰でも取得できます。まず「登記名義が誰になっているか」を確認してください。 祖父の名前なのか、曾祖父の名前なのか。それで数次相続の段数が分かります。

第2段階:物件の売りやすさを確認する。 接道の状況、用途地域、市街化調整区域かどうか、借地・底地の別。市区町村の建築主管課で「この土地は建築可能か」を確認できます。この段階で査定を取っておくと、以降の議論が具体的になります。

第3段階:相続人を確定させる。 戸籍の収集。司法書士に依頼するのが現実的です。数次相続では通数が多く、読み取りにも慣れが要ります。

第4段階:相続人一覧表を作り、難易度を判定する。 前述の一覧表を埋め、パターン1〜5のどれに当たるかを判定します。

第5段階:パターンに応じた方針を決める。

  • パターン1(返事がない)→ 金額を示した書面で再アプローチ。並行して調停も検討
  • パターン2(反対がある)→ 反対の理由を確認。金額の問題なら調整、感情の問題なら調停
  • パターン3(所在不明)→ 不在者財産管理人・失踪宣告・所在等不明共有者制度を検討
  • パターン4(判断能力)→ 成年後見等の申立て
  • パターン5(未成年)→ 特別代理人の選任

同時に、「全体の売却をあきらめて自分の持分だけを処分する」道も、常に選択肢として置いておいてください。 これは「敗北」ではなく、単に別の出口です。

第6段階:登記を整える。 遺産分割が成立したらその内容で、成立しないなら法定相続分で登記します(相続人申告登記では売れる状態になりません)。決済で所有権を買主に移すまでに、売主が登記簿上の権利者になっている必要があります。

第7段階:売却。 全体を売るのか、持分を売るのか。仲介か買取か。なお、相続人が多いほど全員の予定は平日に揃いません。夜と土日にできる準備は夜間・土日に不動産の相談はできるかにまとめています。相続手続は平日の窓口が中心になるため、段取りを組む価値があります。

2. 相続登記の義務化で、放置のコストが変わった

数次相続が発生する最大の原因は、前の代で相続登記をしなかったことです。そして2024年4月1日から、この放置に対して法律上の義務が課されました。

相続登記義務化の期限

  1. 2024年4月1日

    相続登記の義務化施行

    施行日前に相続を知った不動産も義務化の対象になる。

  2. 相続を知った日から3年以内

    相続登記の申請義務

    正当な理由なく怠った場合、過料の対象となる。

  3. 施行日か知った日の遅い方から3年

    過去の相続の申請期限

    施行日前に相続を知っていた場合の期限。

  4. 遺産分割の成立から3年以内

    遺産分割後の登記義務

    遺産分割成立後、内容に沿った登記をする義務が別途生じる。

不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に、相続登記を申請することが義務づけられました。正当な理由なく怠った場合、過料の対象となります。重要なのは、施行日である2024年(令和6年)4月1日より前に相続したことを知った不動産も対象になるという点です。「祖父が20年前に亡くなって、そのまま名義を変えていない」という不動産も含まれます。この場合の期限は、施行日または相続を知った日のいずれか遅い日から3年です。制度の内容は法務省が公表しています(相続登記の申請義務化に関する制度(法務省))。

3. 相続人申告登記と、法定相続分での相続登記

とはいえ、数次相続で相続人が20人いる事案で、3年以内に遺産分割をまとめて登記まで終えるのは現実的でない場合があります。

そこで用意されたのが相続人申告登記です。「自分が相続人の1人である」ことを法務局に申し出れば、その申出をした人については、いったん義務を果たしたものとして扱われます。単独で申出でき、他の相続人の協力は要りません。 ただし注意点があります。相続人申告登記は権利の登記ではありません。 これをしても不動産を売ることはできませんし、持分が確定するわけでもありません。あくまで「過料を避けるための暫定措置」です。そして遺産分割が成立したら、成立から3年以内に、その内容に沿った登記をする義務が別途生じます。

もうひとつの選択肢が、法定相続分どおりの共有として相続登記をしてしまう方法です。前述のとおり、不動産登記法上、相続人の1人から申請できます。他の相続人の実印も印鑑証明も要りません。この登記をすると、登記簿上、相続人全員の名前と持分が記載されます。ここまで済ませておくと、次の段階が見えてきます。登記簿に自分の持分が載っている状態になれば、その持分は自分の財産として処分できるからです。

1人でできる2つの登記で、そのあと動ける範囲

観点相続人申告登記法定相続分での相続登記
他の相続人の協力要らない。自分が相続人の1人だと申し出る要らない。1人から申請でき、他の人の実印も印鑑証明も不要
登記簿に載るもの権利の登記ではなく、持分も確定しない相続人全員の名前と持分
不動産を動かせるか売ることはできない登記簿に載った自分の持分は処分できる
あとに残るもの遺産分割が成立したら、3年以内にその内容の登記をする義務分割で違う内容になれば登記のやり直しで費用が二重。共有者が増えた形が固定される

一方でデメリットもあります。いったん法定相続分で登記した後に遺産分割で異なる内容になれば、登記をやり直すことになり、費用が二重にかかります。また、共有者が増えた状態が登記簿に固定されるため、後の代でさらに複雑化する原因にもなります。「暫定的に登記して動けるようにするか」「時間をかけても分割協議を先にまとめるか」は、事案の見込みで選ぶしかありません。ここは司法書士に相談してください。

4. 最初の連絡で「金額」を出す

パターン1(返事が返ってこない)の場合、進め方の工夫でかなり動きます。実務上効くことを並べます。最も効くのが、最初の連絡で金額を出すことです。

遺産分割協議を動かす連絡の手順

  1. 1

    協議の前に査定を取る

    いくらで売れて自分にいくら入るかを示すため、先に査定を取ります。

  2. 2

    金額と放置のリスクを伝える

    概算の取り分と、固定資産税や過料などの放置リスクを併記します。

  3. 3

    郵送物の内容を工夫する

    送付状、相続関係説明図、物件写真、記入見本、返信用封筒を同封します。

  4. 4

    費用負担を明記する

    印鑑証明書の取得費用や郵送費はこちらで負担すると明記します。

見ず知らずの親戚から「実家を売りたいので協議書に署名してください」と言われても、相手は判断材料を持っていません。「いくらで売れて、自分にいくら入るのか」が分からない状態で実印を押す人はいません。 逆に、「この物件は買取業者から◯◯万円という提示を受けており、諸費用を引いた残りを法定相続分で分けると、あなたの取り分は概算で◯◯万円になります」と書いてあれば、判断できます。だから査定を先に取るのです。 協議をまとめてから査定するのではなく、査定を持って協議に入る。順序が逆だと、いつまでも話が抽象的なままです。

「押さないとどうなるか」も併記する。 これは脅しではなく、事実として書きます。

  • 登記が済んでいない不動産は売却できず、固定資産税は毎年発生し続けること
  • その税金を誰かが払い続けていること(多くの場合、実家に近い相続人1人が負担している)
  • 建物が老朽化すれば、倒壊や飛散で第三者に損害を与えるおそれがあり、所有者は工作物責任を問われうること
  • 相続登記の義務化により、放置には過料のリスクがあること
  • さらに相続が重なれば、次の世代はもっと多くの人数で協議することになること

「今なら自分の代で終わらせられる」という点は、多くの人に響きます。 子や孫に同じ問題を渡したい人はあまりいません。

郵送の作法。

  • 送付状に、自分が誰で、どういう関係で、なぜ連絡したのかを1枚で書く
  • 相続関係説明図を添える(家系図の形にすると理解が早い)
  • 物件の写真を添える(見たことがない人がほとんどです)
  • 記入見本を同封する
  • 返信用封筒に切手を貼る
  • 印鑑証明書の取得費用や郵送費は、こちらで負担すると明記する

細かいようですが、ここで手を抜くと返信率が落ちます。 相手にとっては面倒ごとでしかないので、面倒の量を減らす工夫がそのまま結果に出ます。

電話をかける前に手紙を出す。 いきなり電話をかけると警戒されます。詐欺を疑われることもあります。手紙を先に送り、「◯日ごろにお電話します」と予告しておくほうが話が通ります。

5. まとまらないなら遺産分割調停、共有物分割訴訟は代わりになるか

話し合いで決まらない場合、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てる方法があります。調停委員を介した話し合いで、成立すれば調停調書が作られ、これに基づいて登記ができます。調停が不成立なら審判に移行します。手続の案内は裁判所のウェブサイト(遺産分割調停)にあります。ただし、相続人が多い事案では、調停は時間がかかります。 全員に期日の通知を出し、出席しない人がいれば書面でやり取りし、それを繰り返します。急いでいる方には向きません。

共有状態を裁判で解消する手続として、共有物分割訴訟(民法258条)があります。ただし、遺産分割がまだ終わっていない不動産については、共同相続人の間で遺産分割をすべきときは、この手続による分割はできないとされています(民法第258条の2第1項)。

同条第2項には例外があります。条文は「共有物の持分が相続財産に属する場合において、相続開始の時から十年を経過したとき」は、相続財産に属する共有物の持分についてもこの手続で分割できる、と定めています。ただし、その持分について遺産分割の請求があり、相続人が異議を申し出たときは除かれます。異議の申出は、裁判所から通知を受けた日から2か月以内にしなければなりません(同条第2項ただし書・第3項)。

条文が対象にしているのは「共有物の持分が相続財産に属する場合」です。たとえば相続人の一部がすでに持分を第三者に売っていて、通常の共有と遺産共有が混ざっている事案がこれに当たります。不動産全体が遺産共有のままの事案にこの例外がどう当てはまるかは、個別に弁護士に確認してください。遺産共有の不動産は、まず遺産分割(協議・調停・審判)で解決するのが原則の建て付けです。

全員の同意を待たずに動かす3つの道と、連絡が取れない相続人の制度

庭に残る古い工作物を、相続人がバールで取壊している
雪の積もった庭で、古い木の物置をバールで壊す男性

ここからが本題です。「全員の同意が取れない」と分かったとき、それでも動ける道が3つあります。そして連絡が取れない相続人がいるときは、裁判所の制度を使います。

1. 自分の持分を売る・相続放棄する・相続分を譲渡する

全員の同意なしで動かせる3つの道

  • 自分の共有持分だけを売る

    法定相続分での登記後、単独で第三者に売却できます。

  • 相続分の譲渡

    法定相続分での登記前でも自分の地位を移すことができます。

  • 相続放棄する

    相続開始を知った時から3か月以内に家庭裁判所に申述します。

道1:自分の共有持分だけを売る。 遺産分割が終わっていなくても、法定相続分での相続登記を済ませれば、登記簿上に自分の持分が現れます。その持分は、他の共有者の同意なく、単独で第三者に売却できます。 これは民法上の原則です。共有者は自分の持分を自由に処分できます。買主は、その持分を持った共有者の1人になります。以後、他の共有者との関係は買主が引き継ぎます。売った側は、その不動産から完全に離脱できます。

メリットは明確です。

  • 他の相続人の協力が一切要らない
  • 現金化して、その不動産に関する固定資産税・管理責任から抜けられる
  • 話し合いに参加し続ける精神的な負担から解放される

デメリットも明確です。

  • 価格は、不動産全体の価値に持分割合を掛けた額よりも低くなる
  • 他の共有者との関係が悪化することがある
  • 「勝手に売った」と非難される可能性がある

持分売却の仕組みと、価格がなぜ下がるのかは共有持分は自分の分だけ売れるに詳しく書いています。数次相続の事案でこの手を検討する方は、先にそちらを読んでください。なお、法定相続分での登記をしていない段階でも、「相続分の譲渡」という形で自分の地位を移す方法があります(後述)。

道2:相続放棄する。 相続財産全体を引き継がない選択です。自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内(民法915条1項)に、家庭裁判所に申述します。放棄すれば、その相続については初めから相続人でなかったことになります。不動産の共有者にもなりません。ただし、数次相続の事案では注意点が多いです。

第一に、期間の問題。 祖父の死亡から20年経っている場合、通常はとうに期間が過ぎています。ただし「自分が相続人であることを知らなかった」場合の起算点をどう見るかは、前述の判例の考え方を含め、事案ごとの判断になります。ここは弁護士・司法書士に相談する領域です。再転相続にあたる場合は、民法916条の起算点をどう捉えるかという論点も加わります。

第二に、放棄すると預貯金など他のプラスの財産も受け取れません。 不動産だけを放棄することはできません。

第三に、放棄しても管理義務が直ちに消えるとは限りません。 2023年施行の改正民法940条は、放棄の時に現に占有している財産について、相続財産清算人等に引き渡すまで保存義務を負うと定めています。この点は誤解が非常に多いので、相続放棄しても実家の管理義務は消えないを確認してください。

第四に、放棄すると相続人の構成が変わります。 同順位の相続人がいなくなれば、次順位(兄弟姉妹など)に相続権が移り、かえって相続人が増えることがあります。全員が放棄して相続人がいなくなった場合、財産を清算するには、利害関係人(債権者など)または検察官が家庭裁判所に請求し、相続財産の清算人を選任してもらう必要があります(民法第952条第1項)。選任は自動的には行われません。

道3:相続分を譲渡する。 遺産分割が終わる前に、自分の相続人としての地位(相続分)を、他の相続人または第三者に譲り渡す方法です。有償でも無償でもできます。譲渡すると、譲受人が遺産分割協議に参加することになり、譲渡した側は協議から抜けられます。「相続人を減らす」という意味で、数次相続の事案では有効な手です。 例えば、20人の相続人のうち10人が、実家の近くに住む1人に相続分を無償で譲渡すれば、協議の当事者は11人に減ります。さらに集約すれば、最終的に数人でまとまります。

ただし注意点があります。

  • 相続分の譲渡は、債務も含めた地位の移転です。負債があれば譲受人が負担する側になります(ただし債権者に対する関係では、譲渡した側の責任が当然に消えるわけではありません)
  • 無償で譲渡した場合、贈与税の問題が生じることがあります
  • 有償で譲渡した場合、譲渡所得の問題が生じることがあります
  • 遺産分割の前に相続人以外の第三者へ譲渡した場合、他の相続人は、その価額と費用を償還して相続分を取り戻せます。この権利は1か月以内に行使しなければなりません(民法第905条・相続分の取戻権)

税務の扱いは事案によって変わります。譲渡を検討する場合は、実行前に税理士に確認してください。

2. 3つの道の比較

共有持分の売却・相続分の譲渡・相続放棄の違いを、項目ごとに一般的な目安として並べます(項目:共有持分の売却/相続分の譲渡/相続放棄)。どの道が使えるか、税や債務がどうなるかは事案によって変わるので、実行の前に司法書士・弁護士に、税の扱いは税理士に確かめてください。

  • 他の相続人の同意:不要/不要/不要
  • 期間の制限:なし/遺産分割成立前まで/原則3か月
  • 対価:受け取れる/有償・無償を選べる/受け取れない
  • 前提となる登記:法定相続分での登記が実務上必要/不要/不要
  • 他の財産への影響:なし(その不動産の持分のみ)/相続分全体が移転/全財産を放棄
  • 債務の扱い:影響しない/譲受人に移るが債権者には対抗しにくい/免れる
  • 他の相続人への影響:見知らぬ共有者が入る/協議の当事者が変わる/相続人構成が変わる

どれを選ぶかは、「対価が欲しいか」「他の財産があるか」「関係を壊したくないか」で分かれます。

3. 連絡が取れない相続人がいる場合の制度

パターン3(連絡先が分からない)の場合に使える制度を整理します。いずれも家庭裁判所または地方裁判所への申立てが必要です。

連絡が取れない場合の法的手続

観点不在者財産管理人の選任失踪宣告
申立先家庭裁判所家庭裁判所
状態の要件従来の住所を去って戻る見込みがない生死不明の状態が7年間続いている
遺産分割への影響管理人が代わりに参加(許可が必要)死亡とみなされ、その人の相続が開始する

不在者財産管理人の選任。 従来から使われてきた方法です。従来の住所を去って戻る見込みのない人について、家庭裁判所に財産管理人の選任を申し立てます。選任された管理人が、不在者に代わって遺産分割協議に参加します。ただし、遺産分割は管理人の権限を超える行為とされるため、別途家庭裁判所の権限外行為許可が必要です。そして許可を得るには、不在者の法定相続分が確保される内容であることが実務上求められます。つまり、「行方不明の人の取り分をゼロにする」内容の分割は通りにくいということです。また、管理人の報酬を予納金として納める必要があり、不在者の財産から支払えない場合は申立人が負担します。

失踪宣告。 生死不明の状態が7年間続いている場合(普通失踪)、家庭裁判所に失踪宣告を申し立てることができます。宣告を受けると、その人は7年の期間が満了した時に死亡したものとみなされ、その時点でその人についての相続が開始します(民法第31条)。死亡とみなされるのは宣告の日ではないため、その時点が他の相続人の死亡より前か後かで、誰がその人の相続人になるか(数次相続になるか、代襲相続になるか)が変わりえます。災害等に遭遇した場合の特別失踪では、期間が短縮されます。ただし、失踪宣告によってその人の相続が開始するため、その人の相続人が新たに協議の当事者になります。 人数が減るとは限りません。

所在等不明共有者の持分取得・譲渡(改正民法)。 制度の中身、相続開始から10年の要件、遺産分割そのものは終わらないことは、前の「所在等不明共有者がいる場合の新制度」のとおりです。手続としては、地方裁判所に申し立て、公告と一定期間の経過を経て、所在等不明共有者の持分の時価相当額を供託します。10年の要件があるため比較的最近の相続では使えませんが、数次相続で何十年も放置されている物件では、要件を満たすことが多いでしょう。相続人が多数いて、そのうち複数が所在不明という事案では、申立ての立て方自体が専門的な判断になります。

4. 使い分けの目安

状況ごとの一般的な目安です。どの制度が使えるか、申立ての立て方は、弁護士・司法書士の判断になります。

状況検討する制度
生存はしていそうだが所在不明不在者財産管理人
7年以上生死不明失踪宣告
相続開始から10年経過、共有持分を整理したい所在等不明共有者の持分取得・譲渡
相続人が誰もいない/全員放棄相続財産清算人

いずれも、申立てから結論まで相応の時間がかかります。 「来月までに売りたい」という事情がある場合、これらの制度は間に合いません。その場合は、自分の持分だけを処分する道を検討することになります。

5. 税金についての注意点

数次相続の事案では、税務の論点も複数絡みます。要点だけ挙げます。具体的な判断は必ず税理士または税務署にご確認ください。

相続空き家の特例が使えない理由

  • 譲渡の期限を過ぎている

    相続開始から3年を経過する年の12月31日までの期限があります。

  • 要件がひとつでも欠けている

    直前に被相続人以外に居住者がいなかった等の要件があります。

相続空き家の3,000万円特別控除。 数次相続の相談で「この特例は使えますか」と聞かれることが多いのですが、何十年も前の相続がもとになっている物件では、まず使えないと考えたほうが現実的です。 制度自体は、被相続人が一人で住んでいた家屋とその敷地を相続した相続人が、一定の要件を満たして売却した場合、譲渡所得から最大3,000万円を控除できるというものです。ただし、令和6年1月1日以後の譲渡で、家屋と敷地を相続または遺贈で取得した相続人の数が3人以上の場合は、控除の上限が2,000万円になります(被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例(国税庁))。相続人が多い数次相続では、こちらが当てはまることが多いはずです。

使えない理由は2つあります。1つは、そもそも譲渡の期限を過ぎていること。 この特例は「いつ相続したか」を起点に売却時期が区切られており、相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る必要があります(制度そのものの期限も令和9年(2027年)12月31日までの譲渡です)。祖父の代の相続を今から処理する事案では、その枠を大きく超えていることがほとんどです。数次相続では「誰の相続について適用を考えるのか」を最初に特定しないと、話が噛み合いません。

もう1つは、要件がひとつでも欠ければ適用されないことです。 相続の開始直前に被相続人以外に居住者がいなかったこと、相続の時から譲渡の時まで事業・貸付け・居住の用に供されていないこと、昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること、区分所有建物でないこと、売却代金が1億円以下であること。数次相続の物件でまず引っかかるのは、前の2つです。何十年も放置されてきた家には、途中で親族の誰かが住んだ、物置として貸した、駐車場として使わせた、といった履歴が残っていることが多い。しかも相続人が多い事案ほど、その履歴を全員から聞き取らないと確認しようがありません。相続人が多い場合は、誰がこの特例を使えるのかも分かれます(国税庁の同じページ)。

取得費が分からない場合。 古い不動産では、購入時の資料が残っていないことが多いです。取得費が分からない場合、譲渡収入金額の5%を概算取得費とする扱いがあります(国税庁「取得費が分からないとき」)。ただし、実際の取得費より不利になることもあります。購入時の契約書、領収書、通帳の記録が残っていないか、相続人の間で探してみてください。 これが見つかるかどうかで税額が変わります。

相続分の譲渡に伴う税。 無償で相続分を譲渡した場合、贈与とみなされる可能性があります。有償の場合は譲渡所得の問題になります。「親族間だから」という理由で税務上の扱いが変わるわけではありません。 実行前に確認してください。

相続税の申告期限。 相続税の申告は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内です。数次相続の場合、それぞれの相続について期限が走ります。未分割のまま申告期限を迎えると、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例が使えない状態で申告することになります(後で分割が成立すれば、一定の手続により適用できる場合があります)。相続税がかかる規模の遺産がある場合、この期限は最優先です。 不動産の売却より先に、税理士に相談してください。

6. 同じことを次の世代に渡さないために

数次相続が起きるのは、前の代で「面倒だから」「急いでいないから」と登記を先送りしたからです。そのときは1回の話し合いで済んだはずのことが、いま10人、20人の話し合いになっています。そして、いま先送りすれば、次はもっと増えます。

今の代でできることは、大きく2つあります。

1つ目は、決着をつけること。 全員で分けるのが難しいなら、誰か1人に集約する。集約が無理なら売却して現金で分ける。売却が無理なら、自分の持分だけでも処分して、自分の子には渡さない。どの形でもよいので、「未分割のまま次の代へ」だけは避けるということです。

2つ目は、記録を残すこと。 誰が固定資産税を払ってきたか。誰が管理してきたか。生前にどういう約束があったか。これらが記録されていないことが、話し合いを紛糾させます。

そして、まだご存命の親世代がいるなら、遺言があるだけで話がまったく変わります。 遺言があれば遺産分割協議そのものが不要になる場合があります(遺言の方式や効力は、弁護士・司法書士に確かめてください)。数次相続で苦労した経験は、そのまま「自分の代では同じことを起こさない」という判断につながるはずです。

「全員の同意を待たずに動かす3つの道と、連絡が取れない相続人の制度」について、そのまま聞けます。

相続人から当社に相談いただいた場合、何ができて何ができないか

当社が買い取る条件・買い取れない条件と、実際の買取事例は「当社の買取基準」にまとめています。

「相続人から当社に相談いただいた場合、何ができて何ができないか」について、そのまま聞けます。

相続人が多いほど難しい、とは限らない

空き家のまま年月が経ち、苔が広がって瓦のずれた実家の屋根を、隣の家の二階から見下ろした
窓から見下ろした、苔が広がり瓦のずれた古い屋根

相続人が何人いるかは、この問題の難しさをほとんど説明しません。

  • 全員の同意が必要なのは、不動産をまるごと売る場合や、建物の取壊し・抵当権の設定のように、共有物の変更や処分にあたる場合です。それ以外に1人でできる手は、本文の「行為の種類と必要な同意」と「3つの道の比較」のとおりです。
  • 効いてくるのは人数ではなく、詰まり方です。 返事が来ないのか、反対されているのか、所在が分からないのか、判断能力に問題があるのか、未成年者と親が同じ相続の当事者なのか。相続人一覧表を作って、まず難易度を判定してください。
  • 判定できたら金額を先に置き、待つあいだのコスト(固定資産税、管理費、建物の劣化、空家法の勧告による住宅用地特例の解除)も数字にします。物件そのものの売りやすさは、実印を集める前に確かめてください。

当社は買主として直接購入します。できることとできないことは「相続人から当社に相談いただいた場合、何ができて何ができないか」の節のとおりで、戸籍の収集、協議書の作成、登記の申請、他の相続人との交渉は司法書士・弁護士の職域です。査定は無料です。「全体を売った場合」と「持分だけを売った場合」の両方をお出しします。進め方を決めるのは人数ではなく、連絡が取れない人や反対している人がいるかどうかです。まずその2つを確かめてください。

和室の座卓の上に置かれた朱肉と万年筆
障子と縁側の見える和室の卓に朱肉入れと万年筆
査定は無料・売却の義務なし
0120-996-748受付時間10:00〜19:00(水・日曜定休)

通話料無料・全国対応

この先は、当社の買取窓口「買取くん」のページです(運営は同じ株式会社リアテクスです)。

相続人が多い実家の売却で、よく聞かれる質問

署名しない相続人への対応手順

  1. 1

    署名しない理由を確認する

    関心がないのか、内容に反対しているのか、理由を確認します。

  2. 2

    金額を具体的に示す

    概算の取り分を書面で示し、記入見本と返信用封筒を送ります。

  3. 3

    話し合いか調停に進む

    話し合いで折り合うか、家庭裁判所の遺産分割調停に進みます。

  4. 4

    自分の持分処分を検討する

    時間がかかるのを待てない事情があるなら、自分の持分処分を検討します。

Q1. 相続人が15人います。全員の同意なしで実家を売る方法はありますか

実家の土地建物をまるごと売るには、原則として全員の同意が必要です。 そのうえで、全員の同意がなくても1人で進められる手続きがあります。本文の「全員の同意を待たずに動かす3つの道」の、自分の共有持分の売却(法定相続分での相続登記を先に行うのが実務上の前提)、相続分の譲渡(他の相続人または第三者へ)、相続放棄(期間の制限あり)です。違いは本文「3つの道の比較」のとおりで、どれが使えるかは事案によるので、司法書士・弁護士に確かめてください。

所在が分からない相続人がいて相続開始から10年が経過していれば、裁判所の手続でその持分を含めて譲渡できる制度もあります(残る相続人間の分け方までは決まりません)。「まるごと売る」を諦めれば、道はあります。

Q2. 遺産分割協議書に署名してくれない相続人がいます。どうすればいいですか

まず、なぜ署名しないのかを確認してください。 理由が「関心がない・面倒」なのか、「内容に反対」なのかで対応が変わります。

関心がない場合は、本文「最初の連絡で『金額』を出す」のとおり、取り分の概算を書いた書面を、記入見本と切手を貼った返信用封筒とともに送ります。それでも動かない場合は、電話や訪問を検討します。

内容に反対している場合は、話し合いで折り合うか、家庭裁判所の手続(遺産分割調停、調停でもまとまらなければ審判)に進むことになります。進め方は弁護士に相談してください。手続の案内は裁判所の遺産分割調停のページにあります。

どちらの道も時間がかかります。 それを待てない事情があるなら、自分の持分を処分する選択を検討することになります。

Q3. 相続登記をしていない状態でも、査定はしてもらえますか

できます。登記が済んでいなくても、物件の情報が分かれば査定できます。

むしろ、査定を先に取ることをお勧めします。 理由は本文「最初の連絡で『金額』を出す」のとおりです。

ただし、決済で所有権を買主に移すまでに、登記が整っている必要があります。 査定と契約は別の話です。

Q4. 自分の持分だけを売ると、他の相続人に迷惑がかかりますか

影響はあります。

持分を第三者に売却すると、他の相続人は「見知らぬ会社が共有者になった」状態になります。以後、遺産分割協議や共有物の管理について、その相手と話をすることになります。心情的に反発される可能性は十分にあります。

一方で、次の点も事実です。

  • 持分の処分は法律上認められた権利であり、他の共有者の承諾は要りません
  • 何年も話が進まないまま、固定資産税だけが誰かの負担になっている状態も、それはそれで問題です
  • 買主が入ることで、かえって話が進むこともあります(買主は解決を急ぐため)

当社としては、可能であれば「先に他の相続人に打診してから」をお勧めしています。 他の相続人が買い取るなら、そのほうが円満です。それが無理な場合の選択肢として持分売却がある、という順序です。価格がなぜ下がるのかを含め、詳しくは本文「道1」で紹介した記事をご確認ください。

Q5. 相続人の中に認知症の人がいます。家族が代わりに署名できますか

できません。 同居の家族でも、法的な代理権がなければ代わりに署名できず、家庭裁判所による成年後見人等の選任が必要です(本文「パターン4」)。後見人は本人の利益を害する内容の分割には同意できないため、「認知症の人の取り分をゼロにして、他の相続人で分ける」という内容は通りません。法定相続分が確保されることが前提になります。

また、成年後見は一度始めると、原則として本人が亡くなるまで続きます。報酬も発生します。「不動産を売るためだけに後見を使う」つもりで申し立てると、その後の負担が想定外に長く続くことがあります。 手続の内容は裁判所の後見開始のページで確認し、弁護士・司法書士に相談してください。

Q6. 相続人が誰も引き取りたがりません。全員で相続放棄すればどうなりますか

相続人全員が放棄すると、その相続について相続人がいない状態になります。この場合、利害関係人または検察官の請求により、家庭裁判所が相続財産清算人を選任します。清算人が財産を管理・清算し、最終的に残った財産は国庫に帰属します。

ただし、清算人の選任には予納金が必要になることが多いです。 財産から報酬をまかなえない場合、申立人が負担します。売れる見込みのない不動産では、この負担が重くなります。放棄しても保存義務(民法940条)が直ちに消えるとは限らないこと、不動産だけを切り離して放棄できないことは、本文「道2」のとおりです。

「値段はつかなくてもいいから手放したい」という物件でも、売却できるなら売却したほうが、費用面では有利なことが多いです。 放棄の前に、一度査定を取ってみてください。

Q7. 何十年も前の相続で、今から相続登記をすると過料を取られますか

古い相続も義務化の対象になることは、本文「相続登記の義務化で、放置のコストが変わった」のとおりです。施行日である2024年(令和6年)4月1日より前に相続を知っていたのであれば、期限は2027年(令和9年)3月31日までです(相続登記の申請義務化について(法務省))。

過料は「正当な理由なく」怠った場合の制度です。数次相続で相続人が多数にのぼり、戸籍の収集や協議に時間がかかっている事情は、考慮される余地があります。

「過料が怖いから何もしない」のが最悪の選択です。 すぐに遺産分割がまとまらなくても、相続人申告登記なら単独で申し出られます。手続は最寄りの法務局にご相談ください。

Q8. 収益物件や貸家が含まれている場合、話は変わりますか

変わります。入居者がいる不動産は、賃貸借契約の当事者としての地位も相続の対象になります。

遺産分割が終わるまでの間に生じた賃料は、遺産そのものとは別の財産として、各相続人が相続分に応じて取得すると判断した最高裁判決があります(最高裁平成17年9月8日第一小法廷判決)。 誰か1人が受け取り続けている場合、他の相続人との間で後から精算が必要になることがあります。

また、入居者がいる状態での売却は、オーナーチェンジという形になり、価格の決まり方も一般の居住用不動産とは異なります。入居者がいるまま収益物件を売るに段取りを整理しています。老朽アパートを相続した場合は、満室にしてから売るのか、空室のまま買い取ってもらうのかで手取りが変わります。

収益物件が絡む数次相続は、賃料の精算、修繕費の負担、入居者への通知など、論点が増えます。 早い段階で専門家を入れることをお勧めします。

相続人が15人います。全員の同意なしで実家を売る方法はありますか

実家の土地建物をまるごと売るには、原則として全員の同意が必要です。「まるごと売る」を諦めれば、単独でできる方法があります。

  • 自分の共有持分だけを売る
  • 相続分を譲渡する
  • 相続放棄する

当社の見方

相続人が多い実家のご相談で、当社が実際にどう動いているかを書いておきます。人数が多いこと自体は、当社にとって断る理由ではありません。問題になるのは、誰が話をまとめる立場にいるのかがはっきりしないときです。連絡の窓口が定まらないまま進めると、同じ説明を何度も繰り返すことになり、話が前に進みません。

ですので当社では、最初に窓口をお一人決めていただくようお願いしています。その方に決定権がある必要はありません。話を受け取って伝えていただければ十分です。全員の足並みが揃うのを待ってからご相談いただく必要もありません。金額の見込みが先にあったほうが、話はまとまりやすくなります。遠方にお住まいの相続人がいらっしゃる場合も、当社は全国47都道府県をお受けしていますので扱いは変わりません。

当社が買い取る物件・お断りする物件と、買取価格の決まり方は、当社の買取事例76件の内訳とあわせて当社の買取基準にまとめています。

この記事について

執筆・編集
藤山 大二郎藤山 大二郎株式会社リアテクス 代表取締役CEO著書『大家なら!今すぐ不動産業を開業しよう! 不動産投資家から起業家へ』(スタンダーズ)で、大家業から不動産業へ踏み出す道筋を書きました。
監修
鶴野 博之鶴野 博之株式会社リアテクス 執行役員宅地建物取引士(東京)第257503号/賃貸不動産経営管理士/2級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP2級)この区分の監修を担当しています。記事の公開判断は当社が行っています(代表が定めた手順による)。確認・公開判断:藤山 大二郎(株式会社リアテクス 代表取締役CEO)
公開・更新
公開 更新 内容を見直したときは、この日付と改訂の内容を更新しています。情報の確認日 (出典の公的資料を開いて内容を確かめた日)
この記事の事実確認の方法
法令:民法出典:国土交通省、法務省、国税庁
記事の作り方
この記事は、当社の担当者が事実確認を行ったうえで公開しています。

監修者の一覧運営会社・記事の作り方

出典(13件・に確認)

更新履歴

  1. 第2版重複していた説明をまとめ、文章を読みやすく整えました(内容の変更はありません)。
  2. 第1版公開

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