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空き家

空き家の管理責任は誰が負う?相続放棄後の保存義務も

公開 更新

執筆
株式会社リアテクス リアテクス編集部
監修
株式会社リアテクス 執行役員 鶴野 博之(宅地建物取引士(東京)第257503号)
空き家の管理責任は誰が負う?相続放棄後の保存義務も

「相続放棄をしても、空き家になった実家の管理責任は残るのかを知りたい」。名義が親のままでも相続した人が空き家の所有者として管理責任を負い、相続放棄をしても放棄の時に実家を現に占有していれば、次の相続人か相続財産清算人に引き渡すまで保存の義務が残ります。

当社は相続した空き家を自己資金で買い取り、相続登記が済んでいなければ決済の日から逆算して司法書士と日程を組みます。相続放棄をした方ご自身からはお買い取りできません。この家が買い取れるかどうかだけ、先に聞く(無料)

目次(7章)

相続した空き家の管理責任で、迷っていませんか

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相続した実家が空き家になっても、管理責任は相続した人にかかります。登記簿の名義が親のままでも変わりません。相続放棄をした人でも、放棄の時にその家を現に占有していれば、次に管理する人へ引き渡すまで保存の義務が残ります。

空き家の管理責任は誰が負う?相続放棄後の保存義務もの要点を、定義・この記事でわかること・よくある質問の順に短くまとめた動画です。

相続した実家の空き家の管理責任は誰が負う?名義が親のままでも3年以内の登記が必要

木造の一戸建ての庭先で、家族が建物の外壁や窓の様子を一緒に確認している

名義が亡くなった親のままでも、相続した人が空き家の所有者として管理責任を負い、2024年4月1日からは相続を知った日から3年以内の相続登記も義務です。

責任は1本ではありません。周りに迷惑をかけないよう、管理に努める義務があります。事故が起きたときに賠償する責任があります。相続の登記を申請する義務もあります。根拠の法律はそれぞれ違います。どれも、住んでいないことを理由に外れはしません。

所有者・管理者の努力義務(空家等対策特別措置法第5条)

空家等対策特別措置法第5条は、空き家の所有者と管理者に、周りの生活環境を悪くしないよう適切な管理に努めることを求めています(空家等対策の推進に関する特別措置法(e-Gov法令検索))。国や市町村の空き家の施策に協力するよう努めることも、同じ条にあります。

書き方は「努める」です。この条そのものに罰則はありません。守れなかった日に、過料の通知が届くことはありません。

それでも軽く扱えないのには、理由があります。この条が、後の手続きの入口になっているからです。管理が行き届かず、周りに悪い影響が出始めたとします。市町村は同じ法律の第13条で、指導や勧告をします。傷みがさらに進めば、第22条の命令や代執行へ進みます。第5条は、その手前で所有者に求められる最初の線です。

ここでいう管理は、大がかりな工事を指しません。求められるのは、たとえば次のような手当てです。

  • 屋根や外壁の傷みを見つけ、落ちる前に直す
  • 雑草や庭木を、道路や隣の敷地にはみ出させない
  • 窓と戸締まりを確かめ、人が入り込めないようにする
  • 郵便受けのチラシを片付け、空き家だと目立たせない
  • ごみや不用品を、敷地の外から見える所に置かない

相続人ではない親族が、鍵を預かって見ている家もあります。近くに住む叔父や叔母が様子を見に行く、という形です。この人は管理者として努める側に入りえます。ただ、所有者になるわけではありません。所有者としての責任は、相続した人に残ります。

建物が倒れたり物が落ちたりしたときの責任(民法第717条)

民法第717条は、建物や塀の造りや保存に欠陥があり、他人に損害が出たときの賠償を定めています。最初に責任を負うのは、その建物を占有している人です。占有者が損害を防ぐのに必要な注意を尽くしていれば、所有者が賠償します。

所有者の側には、注意を尽くしたという言い分が用意されていません。欠陥があり、それで損害が出れば、賠償を免れないつくりです。過失の有無を問わない責任と言われるのは、このためです。

誰も住んでいない実家では、この責任が重くなります。住む人がいないので、占有者と所有者が同じ相続人になりやすいからです。遠くに住み、何年も見に行っていなくても同じです。所有者である事実は変わりません。

空き家で起きやすい損害には、次のようなものがあります。

  • 台風で瓦や外壁材が飛び、隣の家の窓や車を傷つける
  • 古いブロック塀が倒れ、前の道を歩く人がけがをする
  • 雨どいや看板が落ち、通行人に当たる
  • 傷んだ物置が崩れ、隣の敷地の植木を壊す

第5条は努めの話でした。こちらは、実際にお金が動く責任です。被害の大きさによっては、家の売値を上回る額を求められることもあります。請求を受けた後の動き方は「3. 放火・倒壊で他人に損害が出たとき」の節にあります。

名義が亡くなった親のままでも相続人に責任がかかる理由

民法第896条は、相続人が相続の始まった時から、亡くなった人の権利と義務を受け継ぐと定めています。実家の所有権が移るのは、親が亡くなった時点です。登記簿の名義を書き換えた日ではありません。

登記は、誰が持っているかを外に示す手続きです。名義が親のままでも、実家の持ち主はもう相続人です。管理責任も、その時から相続人にかかっています。

相続人が何人もいる場合はどうか。遺産分割の前は、民法第898条により実家は相続人全員の共有になります。兄弟が3人なら、3人とも共有者です。長男が継ぐと口で決まっていても、話し合いがまとまるまでは全員が所有者の立場にいます。

名義が親のままなら市町村も自分にたどり着かない、とは考えないでください。空き家の所有者を探すとき、市町村は登記簿だけを見るわけではありません。戸籍や固定資産税の記録もたどります。名義を変えていない相続人のもとにも、指導の書面が届くことがあります。

登記そのものにも期限があります。2024年4月1日から、相続した不動産の登記の申請が義務になりました。自分の期限は「1. 相続登記を3年以内に申請する」の節で、取得を知った日と照らして確かめられます。

空き家の管理で求められる主な手当て

  • 屋根や外壁の修繕

    傷みを見つけ、落ちる前に直す

  • 雑草や庭木の管理

    道路や隣の敷地にはみ出させない

  • 窓と戸締まりの確認

    人が入り込めないようにする

  • 郵便受けの片付け

    チラシを片付け、空き家だと目立たせない

  • ごみや不用品の処理

    敷地の外から見える所に置かない

「相続した実家の空き家の管理責任は誰が負う?名義が親のままでも3年以内の登記が必要」について、そのまま聞けます。

立場で変わる空き家の管理責任は?4つの場合を比べる

家族が窓を開けて部屋に風を通している(誰も住んでいない実家の和室で)

管理責任は4つの立場で変わり、相続放棄をしても実家を現に占有していれば、引き渡すまで民法第940条の保存義務が残ります。

自分の立場は、4つの問いで分かります。紙に書き出し、当てはまるものに印を付けてください。

  • □ 親の実家を相続し、相続放棄はしていない
  • □ 相続放棄の申述が、家庭裁判所で受理された
  • □ 今その家の鍵を持ち、荷物を置くなどして自分で管理している
  • □ 兄弟などほかの相続人と、まだ遺産分割をしていない

印の付き方で、責任の根拠は次のように分かれます。

診断の答え管理責任の根拠次にすること
相続した・ひとりで受け継いだ所有者として空家特措法第5条と民法第717条相続登記と、売るか持つかの判断
相続した・兄弟と遺産分割前共有者の全員が第5条と第717条の立場見回りの担当と費用の分け方を決める
放棄した・放棄の時に占有していた民法第940条の保存義務(引き渡すまで)次の相続人か清算人へ引き渡す
放棄した・放棄の時に占有していなかった第940条の保存義務はかからない放棄の受理を書面で示せるようにする

答えに迷いやすいのは、鍵と荷物の問いです。この問いは、放棄した人の扱いを左右します。境目の考え方は、相続放棄の場合の節で取り上げます。

1. 相続して住まない場合

遺産分割で実家を受け継ぎ、住まないまま持つなら、管理責任もその人がひとりで負います。第5条の努めがかかります。第717条の賠償もかかります。登記の申請の義務も、自分の名前で負います。

住んでいないことは、所有者でなくなる理由になりません。転勤で遠くに暮らしていても同じです。

この立場で見落としやすいのは、年がたつほど責任が重くなる点です。人の住まない家は、換気も通水もされません。湿気がこもります。カビや雨漏りが早く進みます。去年は無事だった屋根が、今年の台風で飛ぶこともあります。気づいたときには、直すより壊すほうが安い家になっていることも珍しくありません。

家族のだれかが住み続けているなら、事情は少し変わります。日々の目配りは、住んでいる人がします。ただ、所有者の責任まで住む人に移るわけではありません。修繕費を誰が出すかは、住む人と決めておく必要があります。

遠方で足を運べない場合の手当ては「2. 火災保険と最低限の見回りを続ける」の節にあります。

2. 遺産分割がまだで兄弟と共有している場合

遺産分割の前は、兄弟の全員が共有者として同じ管理責任を負います。分け方が決まるまで、実家は相続人全員の共有だからです。

共有の家でも、傷みを防ぐ手当ては1人でできます。保存行為は、各共有者が単独でできると民法第252条第5項が定めています。割れた窓をふさぐ。伸びた枝を切る。こうした作業に、ほかの兄弟の同意は要りません。かかった費用は、持分に応じて全員で負担します(民法第253条第1項)。

困るのは、近くに住む1人だけが見回りと支払いを続ける形です。立て替えた費用の精算を後回しにすると、分割の話し合いで揉める種になります。領収書を取っておきます。誰がいくら出したかも書き残します。後で分け方を決めるときの材料になります。

事故の賠償は、共有者それぞれに及びえます。遠くの兄弟が「見回りは任せていた」と言っても、所有者の立場からは外れません。

売るか持つかで意見が割れたときは、「実家の売却に兄弟が反対」の記事で、話し合いから共有物分割請求までの段階を確かめられます。

話し合いがまとまれば、構図が変わります。実家を受け継ぐ人が1人に決まれば、管理責任もその人に移ります。ほかの兄弟は、分割の書類を整えた時点で所有者の立場から外れます。

人の住まない家で傷みが進む流れ

  1. 1

    換気と通水が途絶える

    人が住まなくなり、家の中の空気が滞り水が動かなくなる。

  2. 2

    湿気がこもり傷みが進む

    湿気がこもり、カビや雨漏りが早く進行する。

  3. 3

    台風などで被害が出る

    去年は無事だった屋根が今年の台風で飛ぶなどの被害が起きる。

  4. 4

    直すより壊す状態になる

    気づいたときには修繕より解体が必要な状態まで悪化する。

3. 相続放棄した場合(実家を現に占有しているときだけ保存義務が残る・民法第940条)

相続放棄をした人に義務が残るのは、放棄の時にその家を現に占有していた場合だけです。

民法第940条第1項は、放棄した人が放棄の時に相続財産を現に占有しているなら、相続人か相続財産清算人に引き渡すまで、自分の財産と同じ注意で保存するよう定めています(民法(e-Gov法令検索))。

保存とは、家を今より悪くしないよう保つことです。直して値打ちを上げるところまでは求められていません。自分の物を扱うときと同じ程度の注意で足ります。

占有にあたるかは、放棄の時点の暮らし方で見られます。親と同居していた人は、当たりやすくなります。合鍵で月に何度も出入りし、荷物を置いていた人も同じです。何年も行かず、鍵も持っていなければ当たりにくいと考えられます。鍵を返していても、自分の家具や衣類を置いたままなら、占有していたと見られる材料になりえます。迷うときは、放棄の申述の前に、同居の有無・出入りの回数・置いている荷物を書き出し、その紙を持って弁護士に相談してください。

義務が終わるのは、次の人へ引き渡した時です。後の順位の相続人が相続を受け入れたなら、その人に鍵と家を渡します。受け取る相続人がいなければ、家庭裁判所が相続財産清算人を選びます。その清算人に渡すまで、義務は続きます。

放棄を考えているなら、決める前の動き方にも気をつけます。相続人が財産を処分すると、相続を受け入れたものとみなされます(民法第921条)。放棄の前に実家を売ったり壊したりすると、放棄ができなくなるおそれがあります。放棄するかは、自分が相続人になったと知った時から3か月以内に決め、家庭裁判所に申述します(民法第915条第1項)。

放棄の後に残る義務の線引きは、「相続放棄しても実家の管理義務は消えない」の記事で、条文の読み方とあわせて確かめられます。

放棄の時に家を占有していなかった人は、この保存の義務を負いません。遠くに住み、鍵も持たず、足を運んでいなかった人です。放棄が受理されたことを示す書面は、手元に置いておきます。市町村から連絡が来たときに見せられるようにするためです。

自分の立場が分かる4つの問い

  • 相続放棄の有無

    親の実家を相続し、相続放棄はしていないか

  • 相続放棄の受理

    相続放棄の申述が家庭裁判所で受理されたか

  • 現在の管理状況

    鍵を持ち、荷物を置くなど自分で管理しているか

  • 遺産分割の状況

    兄弟などほかの相続人とまだ遺産分割をしていないか

4. 親族全員が相続放棄して相続人がいない場合(相続財産清算人と国庫帰属)

親族の全員が放棄して相続人がいなくなっても、実家は残ります。固定資産税と管理責任の問題も、発生し続けます。

相続人がいなくなる原因は、いくつかの形に分かれます。配偶者も子もおらず、親や兄弟姉妹も先に亡くなっている。子が全員放棄し、次の順位の親や兄弟姉妹も続けて放棄した。親の借金を心配し、疎遠な親族まで一斉に放棄した。どの形でも、家を引き受ける人がいなくなります。

相続人のいない財産には、そのままでは誰の手も入りません。利害関係のある人か検察官が、家庭裁判所に申し立てます。そこで相続財産清算人が選ばれ、はじめて処分が動き出します(民法第952条)。親にお金を貸していた人などが、利害関係のある人に当たります。申立てには、家庭裁判所が決める予納金が要ることがあります。

清算人は、借金の返済などの清算を進めます。家を売って現金に替えることもあります。それでも残った財産は、最終的に国庫に帰属します(民法第959条)。

清算人が選ばれるまで、家は誰も手を入れない状態で残ります。その間に屋根が飛び、塀が倒れれば、困るのは近所の人たちです。放棄の時にその家を占有していた最後の相続人には、清算人に引き渡すまで保存の義務が残ります。

親族のうち1人でも相続を受け入れれば、話は別です。その人が所有者になり、第5条と第717条の立場に立ちます。

空き家を管理しないまま放置すると起こること

草木が伸びた実家の敷地内で、家族がしゃがんで雑草を抜く作業をしている

放置すると管理不全空家や特定空家として指導・勧告を受け、命令から行政代執行の費用請求に進み、放火や倒壊で他人に損害が出れば賠償を求められます。

いきなり取り壊されることはありません。指導、勧告、命令と、段を踏みます。どの段で手を打つかで、払うお金の桁が変わります。

1. 管理不全空家・特定空家への指導・勧告と固定資産税

市町村から最初に届くのは、指導の書面です。管理不全空家なら指導、特定空家なら助言・指導から始まります。

管理不全空家は、このまま放っておくと特定空家になるおそれがある家です。窓が割れたまま、雑草が道にはみ出したまま、といった段階が当たります。市町村は空家特措法第13条で指導します。改まらず、特定空家になるおそれが大きいと見れば、勧告に進みます。

特定空家は、傷みがもっと進んだ家です。倒れるおそれがある。衛生上ひどく有害である。景観を大きく損ねている。周りの生活環境を守るために、放っておけない。こうした状態が当たり、第22条で助言・指導、勧告と進みます。

勧告を受けると、固定資産税の計算が変わります。住宅が建つ土地は住宅用地として、課税標準が価格の3分の1になります。200平方メートル以下の部分は6分の1です。勧告を受けた管理不全空家と特定空家の敷地は、この特例から外れます(地方税法第349条の3の2)。税額の動き方は、「空き家の固定資産税が6倍になる条件」の記事で、勧告と1月1日の関係から確かめられます。

都市計画税がかかる地域では、住宅用地の軽減もあわせて外れます(地方税法第702条の3)。

指導の段階で直せば、税の扱いは変わりません。指導を受けただけでは、特例は外れないからです。書面に書かれた箇所を直し、担当課に伝えます。それで勧告まで進まずに終わる家は少なくありません。

2. 命令と行政代執行の費用請求

勧告にも従わないと、期限を決めた命令が出ます。それでも動かなければ、行政代執行に進みます。

命令が出るのは、勧告を受けた所有者が正当な理由なく措置をとらないときです。市町村が特に必要と認めた場合に限られます(空家特措法第22条)。命令の前には、所有者が意見を述べる機会が与えられます。命令に従わなければ、過料の対象にもなります。

行政代執行とは、所有者に代わって行政が空き家の解体撤去などを行う手続きです。命令で求めた措置が期限までに行われないとき、市町村が業者を手配して実行します。所有者の同意は要りません。

かかった費用は、所有者に請求されます。払わなければ、国税の滞納と同じ手続きで取り立てられます(行政代執行法第6条)。預金や給与が差し押さえられることもあります。業者を自分で選ぶことも、見積りを比べることもできません。

所有者が分からない空き家にも、手は打たれます。市町村が公告したうえで除却できる仕組みがあるからです。後で所有者が分かれば、費用を求められることがあります。災害などで危険が差し迫っているときは、命令を待たずに代執行できる場合もあります。

命令の前に自分で動けば、流れは止められます。期限までに求められた措置を終えれば、代執行には進みません。業者の手配に時間がかかるなら、着手の予定を書面で担当課に伝えておきます。

指導と勧告での固定資産税の扱いの違い

観点管理不全空家特定空家
家の状態放っておくと特定空家になるおそれがある倒れるおそれや衛生上有害など傷みが進んだ
市町村の最初の手続き空家特措法第13条による指導空家特措法第22条による助言・指導
勧告を受けた後の税金固定資産税の住宅用地の特例から外れる固定資産税の住宅用地の特例から外れる

管理不全空家・特定空家への措置の段階

  1. 1

    指導・助言

    市町村から最初に書面が届き、状態の改善を求められる。

  2. 2

    勧告

    改まらないと勧告を受け、固定資産税の特例から外れる。

  3. 3

    命令

    勧告にも従わない場合、期限を決めた命令が出される。

  4. 4

    行政代執行

    命令にも動かなければ、行政代執行に進む。

3. 放火・倒壊で他人に損害が出たとき

建物が崩れたり物が落ちたりして他人に損害が出れば、所有者は民法第717条で賠償を求められます。

倒壊や落下では、保存に欠陥があったかが問われます。長年見に行かず、傷みを知らなかったことは、言い分になりません。請求が来た段階で効くのは記録です。傷みの写真や修繕の領収書があれば、話し合いの材料になります。

放火の場合は、少し事情が違います。火の不始末による火事は、重い過失がなければ不法行為の賠償を負わない。そう定めるのが、失火ノ責任ニ関スル法律です。第三者が火を付けた放火なら、所有者が火を出したわけではありません。

ただ、所有者がまったく責任を問われないとは言い切れません。燃えやすいごみを積んだまま、戸締まりもしていなかった。近所から何度も注意されていた。そうした管理の状態が、重い過失や建物の欠陥として争われる余地は残ります。争いになったときに見られやすいのは、燃えやすい物の量と置き場所、戸締まりの状態、近所や市町村から注意を受けていたかの3つです。注意を受けた記録が残っているのに手を打っていなければ、所有者に不利な材料になります。

放置した空き家の責任の線引きは、「空き家の放置で責任と賠償を負う条件」の記事で、火災と倒壊に分けて確かめられます。

損害が出たら、消防と警察に届けます。加入している保険会社にも、早めに連絡します。賠償の額は、その場で約束しないでください。弁護士に相談してから、話し合いに入ります。

台風のような自然の力だけで壊れ、建物に欠陥がなかったと言えるなら、扱いは変わりえます。ただ、どこまでが自然の力かは争いになりやすい点です。日ごろの見回りの記録が、ここでも効きます。

「空き家を管理しないまま放置すると起こること」について、そのまま聞けます。

空き家の管理責任を軽くするには何をする?相続登記は3年以内

まず相続登記を3年以内に申請し、火災保険と最低限の見回りを続けながら、売却・解体・譲渡を比べて手放す道を決めます。

3つは並べて進められます。ただ、登記を先にするのには理由があります。名義が整わないと、売る契約も解体の契約も進めにくいからです。保険と見回りは、手放す日までの事故への備えです。

1. 相続登記を3年以内に申請する

相続登記は、相続で不動産を取得したと知った日から3年以内に申請します。

親から受け継いだ実家のような不動産の登記は、2024年4月1日を境に、するかどうかを選べる手続きから、しなければならない手続きに変わりました。期限は、自分が取得したと知った日から数えて3年です。制度の全体は、法務省の案内(相続登記の申請義務化について)にあります。

親が亡くなったのが何年も前で、実家の名義を親のまま置いてきた家も、この義務から外れません。たとえば2019年に父が亡くなり、その時点で兄弟と実家を受け継いだと分かっていたなら、登記の期限は2027年3月31日です。制度が始まった2024年4月1日から3年を数えるためです。疎遠だった親の家を自分が受け継いでいたと、2025年になって市町村からの書面で初めて知った人なら、その知った日から3年です。制度の始まった日と、自分が知った日。2つのうち遅い方から3年と覚えておけば、期限を取り違えません。

遺産分割がまとまらず、期限に間に合わないこともあります。その場合は、相続人申告登記を使えます(不動産登記法第76条の3)。自分が相続人だと登記官に申し出る手続きです。ほかの相続人と足並みをそろえる必要はありません。この申出で、申請の義務を果たしたことになります。分割がまとまった後は、分割の日から3年以内に、その内容で登記を申請します。

正当な理由なく申請しないと、過料の対象になります。過去の相続のどこまでが対象かは、「相続登記の義務化と過去の相続」の記事で、過料の条件とあわせて確かめられます。

登記そのものが、管理責任を減らすわけではありません。それでも先に済ませるのは、手放す道を開く最初の手続きだからです。

相続放棄をした人は、ここから外れます。初めから相続人でなかった扱いになるので、登記の義務もかかりません。

手放すまでに進める3つの手当て

  • 相続登記の申請

    名義を整え、売却や解体の契約を進めやすくする

  • 火災保険と見回り

    手放す日までの事故に備えて続ける

  • 手放す道の決定

    売却・解体・譲渡を比べて決める

相続登記の期限の数え方

  1. 取得を知った日

    3年のカウント開始

    制度開始の2024年4月1日より前なら、同日が起点になる

  2. 3年以内

    登記または申告

    遺産分割が未了なら相続人申告登記で申請義務を果たす

  3. 分割の日から3年以内

    まとまった内容で登記

    申告後に遺産分割がまとまったら、改めて登記を申請する

2. 火災保険と最低限の見回りを続ける

手放すまでの間は、火災保険を切らさず、季節ごとに家を見に行きます。管理責任を果たす最低限の手当てです。

親が住んでいた頃の保険は、住む人のいる家として結ばれていることが多くあります。誰も住まなくなったら、保険会社に伝えてください。住む人のいない建物向けの扱いに変わることがあるためです。伝えないままだと、いざというときに支払いで揉めるおそれがあります。

建物の損害を補う契約と、他人への賠償を補う契約は別物です。倒壊や延焼で隣に損害を与えたとき、使えるかどうか。特約の中身まで確かめておきます。引き受けを断られたときの対処は、「空き家に火災保険はかけられるか」の記事で確かめられます。

見回りの回数に、法律の決まりはありません。台風や大雪の後と、季節の変わり目は外さないようにします。行ったときに見る所は、次のとおりです。

  • 屋根の瓦や外壁に、浮きやはがれがないか
  • 天井や壁に、雨漏りのしみが広がっていないか
  • 窓を開けて空気を入れ替え、水道を流して排水口のにおいを止める
  • 塀や物置が傾いていないか
  • 庭木や雑草が、道路や隣の敷地にはみ出していないか
  • 郵便受けを片付け、戸締まりを確かめる

遺産分割が期限に間に合わない場合は?

相続人申告登記を使い、自分が相続人だと申し出ます。遺産分割がまとまった後、分割の日から3年以内に登記を申請します。

  • ほかの相続人と足並みをそろえる必要はない
  • 申出で申請の義務を果たしたことになる
  • 正当な理由なく申請しないと過料の対象になる

行くたびに写真を撮ります。日付と、気づいたことも書き残します。事故が起きたとき、保存に気を配っていたことを示す材料になります。

遠くに住み、自分で行けないこともあるでしょう。近くの親族に頼むか、見回りを請け負う業者に頼む形になります。見る所と報告の方法は、書面で決めます。写真も送ってもらいます。誰に頼んでも、所有者の立場は自分に残ります。

3. 売却・解体・譲渡を比べて決める

管理責任から抜け出せるのは、家の所有権を誰かに移したときです。解体しても土地は手元に残り、土地の管理は続きます。

手放し方ごとの違いは、次のとおりです。

手放し方管理責任が移る時点手元から出るお金
買取で売る代金を受け取り、引き渡した日印紙代・登記の費用など
仲介で売る買主が見つかり、引き渡した日仲介手数料・登記の費用など
解体して土地を持つ建物の分だけ消え、土地は残る解体費と、特例が外れた分の税
無償で譲る相手に引き渡し、登記した日登記の費用(受ける側に贈与税の場合も)
相続土地国庫帰属制度承認後、負担金を納めた時解体費・審査手数料・負担金

売れば、引き渡しの日から所有者の責任は買主に移ります。買取は買主を探す期間がありません。責任を手放す日が読みやすくなります。代わりに、価格は一般の買主に売るより低くなります。仲介は価格が上がりやすい一方、買主が見つかるまで管理を続けます。

解体は、倒壊や落下の心配を消す手です。ただ、土地の雑草や不法投棄の管理は残ります。家が建っていた土地の税の特例も外れます。特例の中身は「1. 管理不全空家・特定空家への指導・勧告と固定資産税」の節のとおりです。解体なら勧告がなくても、翌年の1月1日に住宅がなければ外れます。費用の決まり方は、「空き家の解体費用はいくらかかるか」の記事で、現況で売る場合との比較とあわせて確かめられます。

売るなら、税の特例の期限も見ておきます。親がひとりで暮らしていた家を相続して売ると、要件を満たせば譲渡所得から最大3,000万円を差し引けます(租税特別措置法第35条第3項)。令和6年1月1日以後の譲渡では、上限が1人あたり2,000万円に下がる場合があります。その家屋と敷地等を取得した人が3人以上いる場合です(亡くなった方の相続人全員の数ではなく、実際に取得した人の数で数えます)。売る期限は、相続開始の日から3年を経過する日の属する年の12月31日までです。今の制度では、令和9年12月31日までの譲渡が対象です。この日付は制度そのものの適用期限で、延長されるかどうかで変わります。控除の上限額(3,000万円・2,000万円)とは別の話です。相続の日から数えた期限と、この日付のうち早いほうが、自分の期限です。

古い実家を工事せずに手放しても、この特例を使える道があります。特例では、建物を今の耐震基準に適合させるか、取り壊して更地にすることが求められます。令和6年1月1日以後の譲渡なら、その工事を引き受けるのは買主でもかまいません。工事を終える期限は、売った年の翌年2月15日です。売る側は工事の費用も業者の手配も抱えずに、傷んだ家のまま引き渡して管理の責任を終えられます。特例のほかの条件に当てはまるかは、「空き家3000万円控除の条件」の記事で確かめられます。

無償で譲る道もあります。隣の家や近所の人が引き取ってくれれば、登記の費用だけで済むこともあります。ただ、受け取る側に贈与税がかかる場合があります。引き取り手になりやすいのは、敷地を広げたい隣の家や、自治体の空き家バンクで家を探している人です。雨漏りやシロアリで直す費用がかさむ家は、無償でも断られやすくなります。

相続土地国庫帰属制度は、土地を国に引き取ってもらう仕組みです。建物が建ったままの土地は、申請できません。先に解体が要ります。審査の手数料と、承認後の負担金もかかります(負担金は、宅地は原則20万円です)。

近いうちに家族の誰かが住む予定があるなら、急いで手放す必要はありません。住めるように直して引き継ぐほうが、筋の通る家もあります。

なお、この記事の税務・法務に関する記載は一般的な情報提供であり、個別の事案についての判断ではありません。適用の可否や具体的な税額については、税務署または税理士、登記については司法書士、境界や隣地との権利関係については弁護士や土地家屋調査士など、それぞれの専門家にご確認ください。当社は不動産の買主であり、税務や法律の代理はできません。

「空き家の管理責任を軽くするには何をする?相続登記は3年以内」について、そのまま聞けます。

当社の空き家買取は相談から入金まで何日?目安は最短2週間以内

当社が買い取る条件・買い取れない条件と、実際の買取事例は「当社の買取基準」にまとめています。

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空き家の管理責任で、相続した人が先に決める3つ

  • 名義より先に、自分の立場を4つの問いで決めます。相続したか、放棄したか、今その家を占有しているか、兄弟と共有か。答えで、空家特措法第5条、民法第717条、民法第940条のどれで責任を負うかが分かれます。
  • 期限のある手続きから片付けます。相続登記は、取得を知った日と2024年4月1日の遅い方から3年以内です。放棄するなら、相続人になったと知った時から3か月以内に決めます。
  • 手放す日までは、保険と見回りで事故に備えます。管理責任が移るのは、売るか譲るかで所有権が移った時です。解体だけでは、土地の責任が残ります。

当社は相続した空き家を自己資金で買い取り、お引き渡しの日から所有者としての管理責任を引き受けますが、相続放棄をした方ご自身からはお買い取りできません。

査定は無料・売却の義務なし
0120-996-748受付時間10:00〜19:00(水・日曜定休)

通話料無料・全国対応

この先は、当社の買取窓口「買取くん」のページです(運営は同じ株式会社リアテクスです)。

空き家の管理責任でよくある質問

Q1. 相続放棄しても不動産の管理責任は残りますか

放棄の時にその家を現に占有していたなら、残ります。民法第940条第1項の保存の義務です。次の相続人か相続財産清算人に引き渡せば、義務は終わります。占有していなかった人には、この義務はかかりません。放棄を決める前に、家を売る、取り壊すといった動きは避けてください。放棄が認められなくなるおそれがあります。占有の考え方は「3. 相続放棄した場合(実家を現に占有しているときだけ保存義務が残る・民法第940条)」の節にあります。

Q2. 空き家と空家の違いは何ですか

指すものに大きな違いはありません。法律の表記が「空家」です。空家特措法第2条第1項は、人が住むなどの使い方がされないのが常になった建物と、それに付く工作物、その敷地を「空家等」としています。国や地方公共団体が持つものは除かれます。役所の案内でも、読みやすさから「空き家」と書くことは多くあります。管理責任の話で大切なのは、表記より範囲です。建物だけでなく、塀や庭も含まれます。

Q3. 親族みんなが相続放棄をすると、実家はどうなりますか

家は国のものにすぐ変わるわけではありません。意外に思われやすいのは、この点です。誰も引き受けない財産として残り、家庭裁判所が相続財産清算人を選ぶまで、手が入りません。清算人が選ばれれば、家は売られるなどして清算されます。残った財産は国庫に入ります。その間の倒壊や草木の問題は、近所の人と市町村が抱えます。放棄の時に家を占有していた人には、保存の義務も残ります。

Q4. 空き家の放火で火災が起きたら、所有者は責任を負いますか

火を付けたのが第三者なら、所有者が延焼の賠償を当然に負うわけではありません。ただ、管理の状態によっては責任が争われます。燃えやすい物を積み、戸締まりもしていなかった、という場合です。焼け残った建物が倒れそうなら、その後の手当ては所有者の仕事です。ふだんの備えとしては、次の3つが効きます。郵便物をためない。敷地の外から見える所に燃える物を置かない。門と窓に鍵をかける。この3つは、見回りのたびに確かめられます。

Q5. 空き家になった実家の火災保険はどうなりますか

親が契約者のままの保険は、名義と中身の見直しが要ります。保険会社には、契約者が亡くなったことを伝えます。誰も住まなくなったことも、同じ連絡で伝えます。契約者を相続人に替えるのか、新しく結び直すのかは、保険会社の案内で決まります。住む人のいない建物は、保険料や補う範囲が変わることがあります。隣への賠償に使える特約の有無も、この機会に確かめます。

Q6. 遠方に住んでいて、空き家の見回りに行けない場合はどうしますか

近くの親族か、見回りを請け負う業者に頼むことになります。頼んでも、所有者の立場は自分に残ります。何を見て、どう報告するかは、最初に書面で決めます。見回りを頼み続けるより、手放すほうが負担の軽い家もあります。売ると決めた場合、当社では鍵をお預かりし、売主さまが現地に行かずに進めることもできます。

Q7. 市区町村から空き家の管理について通知が届いたら、どうすればよいですか

まず、書面がどの段階のものかを見ます。指導か、勧告か、命令か。段階で、残っている時間が違います。指導なら、書かれた箇所を直して担当課に伝えます。それで勧告に進まずに済むことが多くあります。勧告を受けると、固定資産税の住宅用地の特例が外れます。指導のうちに手を打つほうが、負担は軽く済みます。命令が出ているなら、期限と求められた措置を担当課に確かめます。間に合わないときは、着手の予定を書面で伝えてください。

当社の見方

ご相談の中では、相続した空き家の草木や傷みが気になりながら、この先も管理を続けられるか、手放すならどう進めればよいか迷っているという方が多いです。相続した物件では、一般には登記識別情報または権利証・本人確認書類・印鑑証明書・固定資産税の納税通知書に加えて、戸籍などの書類が追加で必要になります。費用は、一般には売買契約書の印紙代や抵当権の抹消登記・住所変更登記の費用に加え、相続登記の費用がかかりますが、書類も費用も個別のご案件によります。全国(47都道府県)に対応していますので、遠方にある空き家の管理に手が回らないという方もご相談いただけます。買い取れない物件や、売らないほうがよい場合は、正直にそうお伝えしていますので、管理を続けるか手放すかを決めるための材料のひとつとしてお使いください。

当社が買い取る物件・お断りする物件と、買取価格の決まり方は、当社の買取事例76件の内訳とあわせて当社の買取基準にまとめています。

この記事について

執筆・編集
リアテクス編集部株式会社リアテクス当社(宅地建物取引業 東京都知事(1)第107888号)は物件を直接買い取る買主の立場から、売却を検討する方の判断材料となる記事を企画・編集しています。
監修
鶴野 博之鶴野 博之株式会社リアテクス 執行役員宅地建物取引士(東京)第257503号/賃貸不動産経営管理士/2級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP2級)この区分の監修を担当しています。記事の公開判断は当社が行っています(代表が定めた手順による)。確認・公開判断:鶴野 博之(株式会社リアテクス 執行役員)
公開・更新
公開 更新 内容を見直したときは、この日付と改訂の内容を更新しています。情報の確認日 (出典の公的資料を開いて内容を確かめた日)
この記事の事実確認の方法
法令:空家等対策の推進に関する特別措置法、民法出典:相続登記の申請義務化について
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この記事は、当社の担当者が事実確認を行ったうえで公開しています。

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