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空き家のゆくえ買取くん

空き家

市街化調整区域の家が売れない理由|建て替えの例外

公開 更新

執筆
株式会社リアテクス リアテクス編集部
監修
株式会社リアテクス 執行役員 鶴野 博之(宅地建物取引士(東京)第257503号)
市街化調整区域の家が売れない理由|建て替えの例外

「相続した実家が市街化調整区域にあり、売れないと言われたまま空き家になっている」。売れるかどうかは、その敷地に今から建物を建て直せるかで決まります。線引きの前から建っている家か、条例で指定された区域かを市町村の都市計画課で確かめると、買い手の幅が見えます。

当社が価格を出すときに見るのは、建て替えの許可の根拠と、水道・排水の引き込みです。許可の見込みが立たない敷地は、資材置き場や菜園として使える範囲の値段になります。この家が買い取れるかどうかだけ、先に聞く(無料)

目次(12章)

先にこの家の買取価格のめどだけ知りたい方へ。

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相続した実家が市街化調整区域にある。不動産会社に声をかけたら、扱いが難しいと言われた。この区域で売りにくさの元になっているのは、建物を建て直すときの許可です。許可の見込みが立つ敷地なら、買い手は付きます。立たない敷地でも、値段の付き方が変わるだけで、出口そのものは残ります。

市街化調整区域の家が売れない理由の要点を、定義・この記事でわかること・よくある質問の順に短くまとめた動画です。

市街化調整区域の家が売れない元は、建て替えの許可にある

売りにくさの元は、家を建て直すときに都道府県知事の許可が要る点にあります。買い手が見ているのは、その許可が自分にも下りるかどうかです。見込みを示せる家と、示せない家で、値段も買い手の数も変わります。

市街化区域と調整区域の手続きの違い

観点市街化区域市街化調整区域
開発許可の対象一定の規模を超える場合規模にかかわらず原則として対象
建物だけを建てる場合建築確認の手続きへ進む知事の許可が必要(法第43条)
手続きの順番建築確認都市計画法の許可が先、次に建築確認

市街化を抑制すべき区域として、線引きされている

都市計画区域は、市街化区域と市街化調整区域に分けられることがあります。この区分を区域区分と呼び、現場では線引きと言います。根拠は都市計画法第7条です(都市計画法(e-Gov法令検索))。市街化調整区域は、市街化を抑制すべき区域と定められています。道路や下水を整えて街を広げる方向には使わない、という位置づけです。線引きが行われた日は、都市計画を決めた自治体ごとに違います。昭和40年代に線を引いた自治体もあります。平成に入ってから引いた自治体もあります。この日付が、後で建て替えの可否を分ける基準になります。実家が建ったのは線引きの前か、後か。そこが出発点です。

建築確認の前に、開発許可か建築許可で止まる

市街化区域では、一定の規模を超える開発行為に許可が要ります。市街化調整区域では、規模の大小にかかわらず、原則として開発許可の対象になります。根拠は都市計画法第29条です。土地の形を変えずに建物だけを建てる場合も、知事の許可が要ります。こちらは同法第43条です。建築基準法第6条の建築確認とは、別の手続きになります。順番としては、都市計画法の許可が先です。ここで止まれば、確認申請まで進めません。

この許可は、誰が建てるか、何を建てるかで判断が変わります。土地に一律で付いてくる権利ではありません。前の持ち主が建てられたから、次の買い手も建てられるとは限らないわけです。買い手がこの点を嫌います。家が古く、建て替えを前提に買う人ほど、強く気にします。

買い手の住宅ローンが通りにくい

金融機関は、土地と建物を担保として評価します。建て替えの可否がはっきりしない土地は、評価が低く出ます。貸した金が返らなかったとき、売って回収しにくいためです。評価が低ければ、借りられる額も下がります。自己資金の少ない買い手は、そこで降ります。

結果として、買い手は現金で買える人に寄ります。母数が一気に減ります。これが「売れない」と言われる実態です。物件に値段が付かないのではありません。買える人の数が少ないのです。この区別が付くと、打つ手も変わってきます。

建築確認までの手続きの順番

  1. 1

    開発許可または建築許可

    都市計画法に基づく知事の許可。これが先になる

  2. 2

    建築確認

    建築基準法の手続き。先の許可がないと進めない

相続した実家の書類で、市街化調整区域のどこが売れない原因かを切り分ける

実家の居間で、テーブルの上に置かれた1枚の紙を指差しながら話し合っている家族

手元の書類だけで、家がどの許可で建ったか、敷地がいつ線引きされたかの見当は付きます。原因が許可の側にあるのか、建物の側にあるのかで、次に行く窓口が変わります。

市町村の都市計画図で、区域区分と線引きの日を見る

市町村の都市計画課に、都市計画図が置かれています。多くの自治体が、同じ内容を自分のサイトでも公開しています。そこで見るのは2点です。実家の敷地が市街化調整区域に入っているか。線引きが行われた日はいつか。

線引きの日は、窓口で聞けば教えてもらえます。この日付と、建物の建った年を並べてください。線引きより前に建っていれば、建て替えの道が残っている可能性があります。後に建っていれば、何らかの許可を受けて建てたはずです。どの許可だったかを、次に探します。

登記事項証明書と建築時の書類で、いつ建ったかを見る

登記事項証明書の表題部に、新築年月日が載っています。法務局の窓口でも、オンラインでも取れます。増築していれば、その登記も残っていることがあります。建物が未登記なら、市町村の固定資産課税台帳の家屋の記録を当たります。

建築時の書類も探してください。確認済証、検査済証、開発許可や建築許可の通知書。仏壇の引き出しや古い金庫から出てくることがあります。許可の通知書が1通あるだけで、役所での話が早く進みます。書類が無くても、自治体に許可の記録が残っていることがあります。台帳の保存年限は自治体で違うため、窓口で確かめてください。

納税通知書の課税明細で、地目と住宅用地の区分を見る

固定資産税の納税通知書には、課税明細書が付いています。土地の欄に、地目と評価額、課税標準額が並んでいます。地目が宅地でなく田や畑になっていれば、農地法の手続きが絡みます。住宅用地の区分が入っていれば、住宅として扱われています。

この3枚の紙で、相談の入口が決まります。許可の見込みが論点なら都市計画課と建築指導課です。農地が絡むなら農業委員会です。建物の状態が論点なら、解体費用との比較になります。何も分からないまま不動産会社を回るより、紙を先に揃えた方が早く進みます。

原因を切り分けるための確認書類

  • 区域区分の確認

    敷地が市街化調整区域に入っているかを見る

  • 線引きの日の確認

    窓口やサイトで線引きが行われた日を調べる

  • 建築年との比較

    線引きの日と建物の建った年を並べて比べる

  • 線引き前の場合

    建て替えの道が残っている可能性がある

  • 線引き後の場合

    何らかの許可を受けて建てたはずなので探す

「相続した実家の書類で、市街化調整区域のどこが売れない原因かを切り分ける」について、そのまま聞けます。

買い手が降りるのはどこか|市街化調整区域で話が止まる5つの地点

買い手が降りる理由は、建て替えの不確かさ、融資、インフラ、用途の制限、情報の流れ方の5つに分かれます。どの理由で止まっているかによって、残っている手が変わります。全部が同時に効いている物件もあれば、1つだけの物件もあります。

1. 建て替えの可否が、買う前に確定しない

買い手は、将来その家を建て直せるかを気にします。市街化調整区域では、許可の判断が自治体の基準に委ねられています。買い手が自分で窓口に行っても、計画が固まる前だと確定的な答えは出にくいものです。契約してから許可が下りないと分かれば、買い手は損をします。だから手前で降ります。

この不確かさは、更地でも同じです。建物が残っていれば、建て替えの枠(既存の建物があることを前提に、許可が認められる余地)が残っている場合があります。壊してしまうと、その余地ごと失うことがあります。解体を急ぐ前に、建て替えの可否を先に確かめてください。順番を逆にすると、戻せません。

建て替えができない点では、接道義務を満たさない敷地と状況が似ています。土地としての使い道は残るが、家を建てる前提では値が付かない。この構造は「再建築不可物件はなぜ売りにくいのか」の記事に書いた売りにくさと重なります。

2. 住宅ローンが通らず、買い手が現金の人に限られる

融資が付かないと、買い手は貯金で払うしかありません。300万円から500万円くらいまでなら、退職金や貯蓄から出せる人がいます。1,000万円を超えると、現金で払える買い手はほとんど残りません。地方の市街化調整区域で値段が低く落ち着きやすいのは、売れる価格がこの層の出せる範囲に収まるからです。

借りられる場合もあります。地元の信用金庫や農協が、地域の事情を踏まえて扱う例があります。ただし自己資金の割合や、返済期間の条件が付くことが多いところです。買い手が融資を使う前提なら、審査の結果が出るまで契約が固まりません。売主の側からは、期間が読めない取引になります。

3. 上下水道や道路の整備が、市街化区域より遅れている

市街化を抑制する区域なので、公共の整備は後回しになりがちです。公共下水道が来ておらず、浄化槽の家が多くあります。井戸水のままの家もあります。前面の道が私道で、幅が狭い場所もあります。

買い手は、ここを費用として見積もります。水道の引き込みが細ければ、口径を上げる工事が要ります。浄化槽が古ければ、入替えの費用がかかります。道が狭ければ、工事車両の分の割増が出ます。合計すると百万円単位になることもあります。その分は、土地の値段から引かれます。

4. 住宅以外の用途に変えられない

市街化区域なら、古家を事務所や店舗に使う道があります。市街化調整区域では、用途を変えるにも許可が要ります。建てたときの許可の内容から外れる使い方は、原則として認められません。買い手の使い道が住宅に限られます。

倉庫にしたい、作業場にしたいという相談も来ますが、許可の枠から外れれば建てられません。投資として買う人も入りにくくなります。賃貸に回す場合も、建てたときの許可の条件によっては貸せないことがあります。買い手の層が薄くなる理由の1つです。

5. 不動産会社が扱いたがらず、情報が流れない

仲介会社から見ると、手間に対して報酬が小さい物件になります。役所調査に時間がかかります。許可の見込みを調べても、売れる保証はありません。仲介手数料の上限は宅地建物取引業法第46条にもとづく告示(昭和45年建設省告示第1552号。その後の改正で現在は国土交通省の告示)で決まっており、価格が低いほど報酬も小さくなります。結果として、広告に出す優先順位が下がります。

空き家そのものの数も背景にあります。総務省の令和5年住宅・土地統計調査では、賃貸用・売却用・二次的住宅を除いた空き家が385万戸ありました(住宅・土地統計調査(総務省統計局))。買い手の数に比べて、売り物の数が多い状態です。情報が流れない物件は、その中に埋もれます。

買い手が検討を止める主な地点

  1. 検討初期

    建て替えできるか気にする

    買い手は将来その家を建て直せるかを気にする。

  2. 窓口相談

    確定的な答えが出ない

    計画が固まる前だと許可の判断が出にくい。

  3. 契約前

    買い手が検討から降りる

    許可が下りない損を避けるため手前で降りる。

建て替えできる例外はどれか|市街化調整区域で家が建つ条件

建て替えが通るのは、線引きの前から建っている家や、条例で指定された区域にある敷地など、自治体の許可基準に当てはまる場合です。どの基準に乗るかで、買い手に説明できる中身が変わります。乗らなければ、家を建てる前提の値段は付きません。

建て替えの許可基準となる主な条件

  • 建て替えの主な条件

    用途が同じで、規模や敷地が大きく変わらないこと

  • 日付の突き合わせ

    登記の新築年月日が線引きより前か確かめる

  • 過去の建物の証明

    古い航空写真や住宅地図で当時からあったか示す

  • 昔の制度との違い

    既存宅地制度は廃止され、今は自治体の基準による

1. 線引きの前から建っている家の建て替え

線引きが行われる前から適法に建っていた建物は、多くの自治体が建て替えの許可基準に入れています。条件が付くのが普通です。用途が従前と同じであること。規模が大きく変わらないこと。敷地の範囲が広がらないこと。自治体によって、建て替えられる人の範囲まで定めている例があります。

確かめ方は、線引きの日と建物の建築年の突き合わせです。登記の新築年月日が線引きより前なら、まず相談に行く価値があります。古い航空写真や、昔の住宅地図で、当時から建物があったことを示す例もあります。自治体が過去の航空写真を保管していることがあるので、窓口で聞いてください。

かつては既存宅地の確認という仕組みがあり、線引き前から宅地だった土地は届出で建てられました。この制度は2001年の法改正で廃止され、経過措置も終わっています。今は、各自治体の条例と許可基準がその役を引き継いでいます。古い資料を見て「既存宅地だから大丈夫」と考えるのは、現在では通りません。

2. 条例で指定された区域にある敷地

都市計画法第34条第11号は、市街化区域に隣接または近接し、おおむね50以上の建築物が連たんしている地域のうち、都道府県の条例で指定した区域での開発行為を認めています。同条第12号は、条例で区域と建物の用途を限って定める形です。実務では、この条例で指定された区域に入っているかどうかが大きな分かれ目になります。

区域に入っていれば、第三者が買って家を建てられる場合があります。買い手の幅が一気に広がります。入っていなければ、建てられる人が限られます。指定の名称や範囲は自治体ごとに違います。区域の図面を窓口で見せてもらい、実家の敷地が線の内側か外側かを確かめてください。境目の数十メートルで結論が変わることもあります。

3. 分家住宅として許可を受けた家

農家の後継ぎ以外の子が、親の土地に家を建てる。この形を分家住宅と呼びます。条例や開発審査会の基準にもとづいて許可されます。許可の対象が「誰が住むか」と結びついているため、属人的な性格を持ちます。

ここが売却で問題になります。許可を受けた本人以外が住むなら、用途の変更にあたる手続きが要ります。自治体によっては、一定の期間が経ち、やむを得ない事情があると認められる場合に、第三者への譲渡を認める基準を置いています。認められるかどうかは、建ててからの年数や、手放す理由の説明で変わります。基準の有無と中身は、建物のある市町村でしか分かりません。買い手を探す前に、窓口で確かめる必要があります。

4. 開発審査会の議を経て認められる場合

都市計画法第34条第14号は、開発審査会の議を経て、支障がないと認められるものを許可できる形を置いています。自治体はこれを受けて、個別の類型ごとに基準を作っています。長年住んできた家の建て替え、収用による移転、既存の工場の建て替えなど、類型は自治体ごとに並びが違います。

審査会にかける案件は、書類の準備に時間がかかります。開催も定期的です。買い手が決まってから申請すると、契約から引き渡しまでが数か月に伸びることがあります。売主として押さえておくのは、この時間の長さです。期限のある相続の手続きと並行すると、日程が組みにくくなります。

5. 許可が下りても、接道義務で止まることがある

都市計画法の許可が通っても、建築基準法の側で止まる場合があります。建築基準法第43条は、建築物の敷地が道路に2メートル以上接することを求めています(建築基準法(e-Gov法令検索))。ここでいう道路の定義は同法第42条にあります。農道や里道に面しているだけでは、条件を満たさないことがあります。

市街化調整区域には、昔の農道沿いに建った家が残っています。見た目は車が通れても、建築基準法上の道路ではない場合があります。都市計画課で許可の見込みを聞き、建築指導課で道路の種類を聞く。この2つを別々に確かめてください。片方だけで判断すると、後で覆ります。

線引き前からの建物の建て替え条件

建て替えの条件内容の目安
建築時期線引きの前から適法に建っていること
建物の用途従前と同じであること
建物の規模大きく変わらないこと
敷地の範囲広がらないこと
人の範囲自治体によっては建て替える人を限定

仲介・買取・売らずに手放す|市街化調整区域の家を整理する道

畑と住宅が混在する地域の道を、家族が並んで歩いている

売る方法は、仲介で買い手を探す形と、業者に直接買い取らせる形の2つです。手放す道には売却以外の選択肢もあり、残り時間と手取りのどちらを優先するかで分かれます。

仲介と買取の期間と手取りの違い

観点仲介で売る買取で売る
買い手を探す期間読めない(反応がないまま過ぎることも)探す期間がない(期日が決まる)
手元に残る価格買取で売る想定より高くなる仲介で売れた場合の想定より低くなる
残置物や建物の傷み買い手との交渉や片付けが必要そのままにして引き渡せる

1. 仲介で売る方法は、隣地と近隣から当たる

市街化調整区域の買い手は、地元にいることが多いものです。隣の畑を耕している人。実家の近くに住む親族。同じ集落で土地を広げたい人。この層は、建て替えの制限を知ったうえで値段を見ます。広告を打つより、声をかける方が早い場合があります。

仲介会社を選ぶときは、その市町村の許可基準を調べた経験があるかを聞いてください。調整区域の取り扱いは、役所調査の深さで差が出ます。媒介契約を結ぶ前に、どこの窓口に何を確かめるつもりかを尋ねると、経験の有無が見えます。売り出してからの期間は読めません。反応が無いまま値段を下げ続ける形になりやすい区域です。

空き家バンクに登録する道もあります。自治体が運営する仕組みで、移住希望者の目に触れます。ただし登録しても、建て替えの可否は変わりません。登録しただけで止まっている理由の切り分けは「空き家バンクで売れない原因の切り分け」の記事に整理しています。

2. 買取で売る方法は、価格が下がる代わりに期日が決まる

業者が自分で買う形です。買い手を探す期間がありません。残置物や傷みをそのままにして引き渡せます。価格は、仲介で売れた場合の想定より低くなります。再販できない見込みの分と、整備や処分の費用を買う側が負うためです。

市街化調整区域では、この差が大きく出ることも、小さく収まることもあります。条例で指定された区域にあって建て替えができる家なら、仲介で売れる値段が高く、差が広がります。許可の見込みが立たない家は、仲介でも値段が伸びないため、差が縮みます。どちらに当たるかは、建て替えの可否を調べないと分かりません。価格の決まり方は「空き家を買取で売るデメリット」の記事にも書いています。

3. 売却以外で手放す3つの方法

売るほかに、隣地の所有者に譲る、自治体や法人に寄付を申し出る、相続した土地を国に引き取ってもらう、という道があります。どれも条件が厳しく、誰にでも使える方法ではありません。

隣地に無償で譲る場合、受け取った側に贈与税がかかるのが原則です。渡す側は登記費用の負担を決めておく必要があります。自治体への寄付は、使い道のある土地に限って受け付けるのが通常です。公共の計画が無ければ断られます。相続土地国庫帰属制度は土地だけが対象で、建物があると申請できません。承認されても負担金を納めることになり、宅地は原則20万円です。申請しても承認されない土地の例は、「相続土地国庫帰属制度は使えないのか」の記事に並べています。

貸すという道も残ります。市街化調整区域でも、建てたときの許可の内容によっては賃貸に回せる場合があります。ただし借り手が付かなければ、修繕費だけが出ていきます。借り手が付いた後は、売るときに入居者の扱いを決める必要があります。

4. 市街化調整区域の家でやってはいけない手放し方

建て替えの可否を確かめずに解体する。これが一番戻せない判断です。建物があるうちは建て替えの枠が残っていても、更地にするとその枠を失うことがあります。更地になった土地は、市街化調整区域では使い道が限られます。買い手がさらに減ります。

名義だけを親族に移すのも、手放したことにはなりません。固定資産税の納税義務と、建物の管理の責任が移るだけです。受け取った側に贈与税が出ます。将来売るときには、取得費の計算が複雑になります。知らない相手に売買の形だけ作って渡すのも、後で境界や残置物の話が戻ってきます。

片付けと草刈りだけを先に済ませるのも、順番としては後です。費用をかけて整えても、建て替えの可否が変わるわけではありません。先に役所で可否を確かめ、それから費用をかけるかを決めてください。

市街化調整区域の空き家を持ち続けたときに増える負担とリスク

庭の草木が伸びた空き家の前で、家族が腕を組んで建物を眺めている

増えるのは、毎年の固定資産税と管理の費用、そして建物が傷んだ後にかかる解体費用です。負担の伸び方は、建物の状態と、市町村から書面が届いているかで分かれます。

空き家の税金に関わる地方税法の条文

  • 住宅用地の特例第349条の3の2
  • 都市計画税の原則第702条

1. 固定資産税は下がらず、都市計画税はかからないことが多い

住宅が建っている土地は、住宅用地として課税標準が下がります。地方税法第349条の3の2は、200平方メートル以下の部分を価格の6分の1とすると定めています(地方税法(e-Gov法令検索))。これを超える部分は3分の1です。人が住んでいなくても、住宅として使える家屋が建っていれば適用されます。

都市計画税は扱いが違います。同法第702条は、原則として市街化区域内の土地と家屋に課すと定めています。市街化調整区域の家には、通常はかかりません。自治体が条例で区域を定めて課している例もあるため、課税明細書の欄で確かめてください。年ごとの負担と売った場合の手取りを比べる型は「空き家の固定資産税を払い続ける損益分岐点」の記事に置いています。

2. 勧告を受けると、土地の課税標準が上がる

空家等対策の推進に関する特別措置法にもとづき、市町村は状態の悪い空き家に助言・指導、勧告、命令と段階を踏みます。国土交通省が制度の内容と指針を公表しています。勧告を受けた土地は、住宅用地の特例から外れます。地方税法第349条の3の2第1項の括弧書きで、勧告を受けた特定空家等や管理不全空家等の敷地が、特例の対象から除かれているためです。

税額が動くのは、勧告の状態のまま1月1日を迎えた年の年度分からです。助言や指導の書面では動きません。届いた封筒の表題を読んでください。市街化調整区域の空き家は、周りに家が少ないぶん通報が遅れます。そのかわり、草木が道にはみ出して通行の支障になると、まとめて指摘されます。

3. 建物が傷むほど、出口が解体に寄る

雨漏りが始まると、柱と土台に水が回ります。床が抜けると、中を見せること自体が難しくなります。住む前提で買う人が減り、更地にする前提の買い手だけが残ります。すると、解体費用が値段から引かれます。

解体の金額は、構造と残置物の量、前面の道の幅で変わります。重機が入らない敷地では手作業の分が乗ります。市街化調整区域は道が狭い場所が多く、この割増が出やすい地域です。費用の考え方は「空き家の解体費用はいくらかかるか」の記事に整理しています。

4. 相続が重なると、売主の人数が増える

今は兄弟2人の話でも、どちらかが亡くなればその子が入ります。10年置けば、売主が5人、6人になることがあります。全員の実印と印鑑証明が要る取引になります。遠方に住む人や、連絡の取れない人が出ると、手続きが止まります。

値段の安い物件ほど、1人あたりの取り分が小さくなります。それでも手間は人数分かかります。動くなら、関係者が少ないうちです。持ち続けるか手放すかの判断を先送りすると、選べる道が減っていきます。

「市街化調整区域の空き家を持ち続けたときに増える負担とリスク」について、そのまま聞けます。

市街化調整区域で建て替えの可否を役所に確かめる手順

最初にすることは、市町村の都市計画課で区域区分と線引きの日を聞くことです。ここで敷地の位置が決まり、次に聞く相手が決まります。

役所で建て替えの可否を確かめる手順

  1. 1

    都市計画課で聞く

    区域区分や線引きの日を聞き、敷地の位置を決める

  2. 2

    建築指導課に相談する

    接道や規模の制限など、建て替えの可能性を相談する

1. 都市計画課で、区域区分と線引きの日を聞く

窓口に持っていくのは、登記事項証明書と、敷地の位置が分かる地図です。納税通知書の課税明細書もあると話が早く進みます。聞くのは4点です。敷地が市街化調整区域に入っているか。線引きの日はいつか。条例で指定された区域に入っているか。入っていない場合、他に当たりそうな許可基準はあるか。

答えは口頭になるのが普通です。その場でメモを取り、日付と担当課の名前を書き残してください。後で買い手に説明するときの材料になります。文書での回答や、図面の写しをもらえるかも聞いておきます。もらえるものは、そのまま売却の資料になります。

遠方に住んでいて窓口に行けない場合、電話でも相談に応じる自治体があります。地番を伝えれば、図面を見ながら答えてもらえます。ただし現地の状況が絡む話は、電話だけでは結論が出ません。

2. 建築指導課に、この敷地で建て替えられるかを相談する

都市計画課で許可の見込みが見えたら、建築指導課に移ります。聞くのは、前面の道が建築基準法上の道路に当たるか、敷地が2メートル以上接しているか、建て替えるとして規模にどんな制限が付くかです。

ここで、建物の図面や当時の確認済証があると判断が早くなります。無い場合も、建てられる可能性が消えるわけではありません。自治体に記録が残っていることがあります。無許可で建てられた疑いがある建物は、ここで分かります。是正の指導を受けている建物は、その内容を聞いて書き留めてください。

相談の結果は、確定した許可ではありません。買い手が具体的な計画を出して申請し、そこで初めて決まります。売主としては、見込みの根拠を集めるところまでが仕事です。「建てられます」と言い切るのではなく、「この基準に当たる可能性があると窓口で聞いた」と伝える形にしてください。言い切ると、後で責任の話になります。

市街化調整区域の実家を売るために、売主と敷地の中身を揃える手順

名義を相続人に移し、農地や水回りの状況を書類で押さえると、買い手との話が具体的になります。どこまで揃えるかは、仲介で売るか買取で売るかによって変わります。

引き渡しに向けた準備の段取り

  1. 売却検討時

    戸籍の取り寄せを進める

    売るか迷う段階でも進めておくと後が楽になる。

  2. 取得を知った日から3年以内

    相続登記の申請

    2024年4月1日から義務化。名義を確定させる。

  3. 引き渡し

    売買の登記

    売却を決めてから始めると数か月先になる。

1. 相続登記を済ませ、売主を確定させる

名義が亡くなった方のままでは、売買の登記ができません。相続登記の申請は2024年4月1日に義務となりました。相続で取得したことを知った日から3年以内が期限です(相続登記の申請義務化(法務省))。この日より前に取得を知っていた場合も対象で、その締切は2027年3月31日です。

手続きには、戸籍の収集と遺産分割協議が要ります。相続人が多いほど日数がかかります。司法書士に頼む場合、費用は売主の負担になります。売却を決めてから始めると、引き渡しが数か月先になります。売るかどうか迷っている段階でも、戸籍の取り寄せだけは進めておくと、後が楽になります。

2. 農地と、水道・排水の引き込みを確かめる

市街化調整区域の敷地は、庭先が畑になっていることがあります。地目が田や畑のままなら、売買に農地法の許可が絡みます。市街化調整区域の農地を宅地に変える場合、原則として農地法第5条の転用許可が必要です。市街化区域の届出とは手続きが違います。許可が下りるかは、その農地の区分で変わります。扱いの難しさは「農地を相続したが売れない」の記事に書いています。

水回りも調べてください。公共下水道が来ているか、浄化槽か、汲み取りか。浄化槽なら設置の年と、保守点検の記録が残っているか。水道は本管から引き込んでいるか、井戸か。引き込みの口径はいくつか。買い手はここを費用に換算します。分からない場合は、市町村の上下水道の担当課で調べられます。この情報が揃っていると、価格の話が早く進みます。

市街化調整区域の家の手放し方を、仲介と買取で比べて決める手順

比べるときは、売れる値段ではなく、手元に残る金額と、かかる月数の2つを並べます。どちらを選ぶかは、建て替えの可否と、いつまでに終えたいかで決まります。

仲介と買取の手取り金額の計算方法

項目仲介の場合当社が買い取る場合売らずに持つ場合
仲介手数料引くかからないかからない
解体・片付け費求められた場合は引くかからないいずれ出る費用として足す
税と管理費売れるまでの月数分を引くかからない年あたりの負担×10年分を足す

1. 仲介に出す期間を、先に区切る

媒介契約を結ぶ前に、いつまでに買い手が決まらなければ切り替えるかを決めてください。市街化調整区域の物件は、反応が無いまま半年、1年と過ぎることがあります。その間も固定資産税と管理の費用は出ていきます。遠方に住んでいれば、見に行く交通費も毎回かかります。

区切りの月を決めたら、不動産会社にも伝えます。伝えておくと、値下げの相談や、買取への切り替えの話が進めやすくなります。何も決めずに始めると、下げ続ける以外の手が無くなります。

2. 手取りに直して並べ、下限の金額を決める

仲介の査定額は、売れた場合の見込みです。買取の価格は、実際に支払われる金額です。そのままでは比べられません。仲介の側からは、仲介手数料と、解体や片付けを求められた場合の費用、売れるまでの月数分の税と管理費を引いてください。当社が買い取る場合は仲介手数料はかかりません。引いた後の数字を並べると、差が見えます。

下限の金額も決めておきます。これ以下なら売らずに持つ、という線です。持ち続ける場合の年あたりの負担を計算し、10年分を足してみてください。建物が傷んだ後の解体費用も、いずれ出る費用として入れます。その合計より買取の価格が高ければ、手放す判断に傾きます。低ければ、しばらく持つ選択も残ります。

なお、この記事の税務・法務に関する記載は一般的な情報提供であり、個別の事案についての判断ではありません。適用の可否や具体的な税額については、税務署または税理士、登記については司法書士、境界や隣地との権利関係については弁護士や土地家屋調査士など、それぞれの専門家にご確認ください。当社は不動産の買主であり、税務や法律の代理はできません。

「市街化調整区域の家の手放し方を、仲介と買取で比べて決める手順」について、そのまま聞けます。

市街化調整区域の実家を当社が買い取る場合の、価格の見方と段取り

当社が買い取る条件・買い取れない条件と、実際の買取事例は「当社の買取基準」にまとめています。

「市街化調整区域の実家を当社が買い取る場合の、価格の見方と段取り」について、そのまま聞けます。

市街化調整区域の家が売れないと感じたとき、先に確かめる3つ

  • 建て替えの許可が見込めるかを、市町村の都市計画課で確かめてください。 線引きの日と建物の建築年、条例で指定された区域に入っているかの3点です。ここが決まるまで、値段の話は固まりません。
  • 解体と片付けを先に進めないでください。 建物があるうちに残っている建て替えの枠を、更地にして失うことがあります。費用をかける順番を逆にすると、戻せません。
  • 仲介に出すなら、切り替える月を先に決めてください。 反応が無いまま持ち続ける間も、税と管理の費用は出ます。手取りに直した数字と、持ち続ける場合の負担を並べてから選んでください。

当社は、許可の見込みが立たない敷地でも、現況のまま買い取ることがあります。ただし家を建てられる前提の値段にはならず、土地として使える範囲の金額になります。

査定は無料・売却の義務なし
0120-996-748受付時間10:00〜19:00(水・日曜定休)

通話料無料・全国対応

この先は、当社の買取窓口「買取くん」のページです(運営は同じ株式会社リアテクスです)。

市街化調整区域の家が売れないことについて、よくある質問

Q1. 市街化調整区域の家は売れますか

売れた例はあります。買える人の数が少ないだけです。分かれ目は、買い手が自分で建て替えられるかどうかです。 条例で指定された区域に入っていれば、地元で家を建てたい人が買い手になります。入っていなくても、今ある建物をそのまま使う人や、土地として使う人がいます。値段の桁は、この違いで変わります。まず市町村の都市計画課で、敷地の位置を確かめてください。

Q2. 市街化調整区域で分家住宅を建てられますか

自治体が条例や許可の基準で分家住宅の類型を置いていれば、要件を満たす場合に建てられます。要件は自治体ごとに違い、本家が線引きの前からその土地を持っていること、申請する人が本家の親族であること、他に住む家が無いことなどが並びます。 建てられるかどうかは、都市計画課と農業委員会で確かめてください。すでに分家住宅として建った家を売るときは、譲渡を認める基準があるかが別の論点になります。

Q3. 売れない実家はどうしたらいいですか

止まっている理由を先に切り分けてください。建て替えの可否で止まっているのか、建物の傷みで止まっているのか、情報が流れていないだけなのかで、打つ手が違います。 許可の見込みがあるのに買い手が付かないなら、隣地や近隣に声をかける余地があります。建物の傷みが理由なら、現況のまま買う相手を探す形になります。売らずに持つ場合は、年あたりの負担を計算し、いつまで持つかを決めてください。

Q4. 違法建築や無許可の増築がある家は売れないのでしょうか

売れないと決まってはいません。価格が下がり、買い手が限られます。 市街化調整区域では、許可の内容と違う建物や、許可を受けずに建てた建物が残っていることがあります。市町村から是正の指導が出ていれば、その内容と期限を確かめてください。是正の費用が分かれば、そのぶんを引いた価格で話ができます。何を直せば済むかが決まっていない段階では、買う側も値段を出せません。

Q5. 市街化調整区域の空き家にも、3000万円の控除は使えますか

区域の種類は要件に入っていません。昭和56年5月31日以前の建築であること、亡くなった方が一人で住んでいたこと、相続の後に貸したり住んだりしていないことなどの要件を満たせば、市街化調整区域の家でも対象になります。 要件はこれで全部ではなく、国税庁のページで確かめてください(相続した空き家を売ったときの特例(国税庁))。判定の順番は「空き家3000万円控除の条件」の記事に置いています。適用の可否は税務署か税理士にご確認ください。

Q6. 買い手が住宅ローンを使えないと言われました。打つ手はありますか

融資が付かない理由は、担保の評価が低いことです。建て替えの許可の見込みを書面や窓口の回答で示せると、評価が変わることがあります。 地元の信用金庫や農協が、地域の事情を踏まえて扱う例もあります。買い手に、まず地元の金融機関で相談してもらってください。それでも付かない場合は、現金で買える層か、業者の買取に相手が絞られます。審査の結果を待つ間も費用は出るので、待つ期間の上限を決めておくと判断しやすくなります。

当社の見方

ご相談で多いのは、解体の見積りを取った後でお電話をいただく形です。建物を壊してから、建て替えの枠まで無くなると分かる。この順番になると、値段が戻りません。草刈りや片付けも同じです。費用をかける前に、市町村の窓口で可否を聞いていただくのが先です。電話1本で分かることが、かなりあります。

もう1つ多いのが、不動産会社を何社か回って断られた、というご相談です。断られた理由が、建て替えができないからなのか、値段が折り合わないからなのかで、次の手が変わります。許可の見込みが立つ敷地なら、仲介で売った方が手取りが多くなることもあります。その場合は、そう申し上げます。当社がお出しできるのは買取の価格と日程だけで、許可の判断は市町村が持っています。現地を見る前でも、どこで値段が分かれるかはおおよそお話しできます。

線引きの前から建っている木造平屋で、敷地が200平方メートル前後、本管から水道が引き込まれていない敷地なら、井戸の改修と浄化槽の入替えに見込む工事費を、そのまま価格から差し引いた数字をお出しします。許可の見込みが立たない敷地では、菜園や資材置き場として使える範囲の値段になり、数十万円台に収まることもあります。その金額と、固定資産税の年額に将来の解体費の見積りを足した「持ち続ける側の数字」を並べて、どちらを選ぶかを決めていただいています。

当社が買い取る物件・お断りする物件と、買取価格の決まり方は、当社の買取事例76件の内訳とあわせて当社の買取基準にまとめています。

この記事について

執筆・編集
リアテクス編集部株式会社リアテクス当社(宅地建物取引業 東京都知事(1)第107888号)は物件を直接買い取る買主の立場から、売却を検討する方の判断材料となる記事を企画・編集しています。
監修
鶴野 博之鶴野 博之株式会社リアテクス 執行役員宅地建物取引士(東京)第257503号/賃貸不動産経営管理士/2級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP2級)この区分の監修を担当しています。記事の公開判断は当社が行っています(代表が定めた手順による)。確認・公開判断:鶴野 博之(株式会社リアテクス 執行役員)
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この記事の事実確認の方法
法令:都市計画法、建築基準法、地方税法出典:総務省統計局、法務省、国税庁
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