亡くなった方が一人で住んでいた家を売るとき、最初に決まることがあります。その家が事故物件として扱われるかどうかです。分かれ目になるのは、亡くなった原因と、発見までにかかった時間の二つです。自然死でも、発見が遅れて特殊清掃が入った家は別です。買主に告げたうえで売る前提になります。
事故物件
孤独死が あった 家は 事故物件か |告知義務と 売却の 判断
公開 更新

「親が一人で亡くなった家を売りたいが、発見が遅れたことを買主にどこまで話せばよいのか分からない」。告げる必要があるかどうかは、亡くなった原因と、特殊清掃が入ったかどうかで分かれます。売買では賃貸のような年数の目安が示されていないため、時間が経ったことを理由に黙って売る判断は取れません。
においと残置物が残ったままでも片付けをお願いせずに買い取りますが、床下まで汚損が達している家では、土の入れ替えを見込んだ分だけ価格が下がります。この物件が買い取れるかどうかだけ、先に聞く(無料)
目次(9章)
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孤独死が 事故物件に あたるかは、 心理的瑕疵の 有無で 決まる
法令に事故物件という区分はありません。買主の判断に重い影響を与える心理的瑕疵があるかどうかで、扱いが分かれます。
亡くなった原因と起きた場所および発見までに空いた日数の確認事項
孤独死の発生時にまず確認する3つの事実
亡くなった原因
自然死や不慮の死か、それ以外の死因か
起きた場所
室内で起きたか、別の場所だったか
発見までの日数
日数が空き、特殊清掃が行われたか
事故物件と いう 言葉は、 法令の どこにも 書かれていない
「事故物件」は、広告や売買の会話で使われてきた通称です。宅地建物取引業法にも民法にも、この語の定義はありません。代わりに使われるのが心理的瑕疵という言い方です。雨漏りのような物理的な壊れ方ではありません。そこで起きた出来事によって、買主が住みにくさを感じる状態を指します。
国土交通省は2021年10月に「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を公表しました。居住用の不動産の取引が対象です。宅建業者が過去に起きた人の死をどこまで調べ、どこまで相手方に告げるかの考え方を整理しています。このガイドラインも、事故物件という語を基準には置いていません。見ているのは、どんな死が、どこで起きて、その後にどんな作業が行われたかです。
売主さまからのご相談で最初にうかがうのも、次の三点です。亡くなった原因は何だったか。室内で起きたのか、別の場所だったのか。発見までにどれくらい日数が空いたのか。この三つが決まれば、告げる前提で進めるかどうかはその場でほぼ決まります。
心理的瑕疵の 有無を 分けるのは、 発見までの 時間と 特殊清掃
ガイドラインは、取引の対象となる不動産で起きた自然死を、原則として告げなくてよいと整理しています。日常生活の中での不慮の死も同じ扱いです。病気や老衰で亡くなった場合がこれに当たります。階段からの転落、入浴中の事故、食事中の誤嚥もここに含まれます。高齢の方が自宅で亡くなること自体は、起こり得ることとして扱われているわけです。
ただし、この整理には但し書きが付きます。自然死や不慮の死であっても、例外があります。遺体が長く置かれると、においや害虫が生じます。これを取り除く清掃・消毒が、いわゆる特殊清掃です。特殊清掃が行われた場合は、原則として告げなくてよい類型から外れます。それに伴う大規模なリフォームが行われた場合も同じです。さらに、死の種類や経過した期間にかかわらず、告げる扱いになる場面があります。買主から問われた場合です。もう一つは、事案の社会的な影響が大きいなど、買主が把握しておくべき特段の事情があると認識した場合です。ここが実務上の分かれ目です。
発見が遅れると、室内には体液とにおいが残り、害虫が出ます。畳や床板を剥がし、下地に薬剤を入れ、消臭を何度も繰り返す作業が要ります。この工事が入ったかどうかが、同じ自然死でも扱いを変えます。亡くなった原因が同じでも、発見が翌日だった家と二週間後だった家は違います。売るときの段取りがまったく別になります。
死因や発見までの日数から特殊清掃の有無をたどり告知義務を判定する手順
孤独死の告知義務を判定する手順
- 1
亡くなった原因
病気や老衰などの自然死・不慮の死かを確認する。
- 2
発見までの日数
遺体が長く置かれ、においや害虫が生じたか。
- 3
特殊清掃の有無
特殊清掃が行われた場合は、告げる前提となる。
- 4
判定結果
自然死で特殊清掃がなければ、原則告げなくてよい。
宅建業者に 向けた 線引きと、 売主が 負う 責任は 別に ある
ガイドラインが名宛人としているのは宅建業者です。宅地建物取引業法第47条第1号は、宅建業者に二つの禁止を定めています。重要な事項について故意に事実を告げないことと、事実でないことを告げることです(宅地建物取引業法(e-Gov法令検索))。仲介に入った不動産会社が調査と説明を尽くすのは、この規定があるためです。
売主さまご自身の側には、民法の契約不適合責任が働きます。引き渡した物が契約の内容に適合していない場合です。買主は修補や代金の減額、損害の賠償、契約の解除を求められます。どんな事実が契約の内容に適合しないかは、価格や説明の経緯を含めた事案ごとの判断です。同じ死因でも結論が揃うとは限りません。さらに、民法第572条の定めがあります。売主が知りながら告げなかった事実は別です。責任を負わない旨の特約を契約書に入れても、その責任は免れません。
つまり、業者の側で告げなくてよいと整理される事案もあります。それでも、売主が知っていて黙っていた事実は売主の側に残ります。線引きの細かいところは「事故物件の告知義務はどこまでか」の記事にまとめています。
孤独死の 発見から 売却までに、 家で 起きる ことの 順番
警察の確認、鍵の返却、特殊清掃、残置物の処分、名義の確認という順に進みます。どれかが止まると、売却の話も止まります。
警察から受け取った書類や管理会社からの連絡の控えなどの保管対象
発見から数日の間に保管しておくべき記録
警察からの書類
推定死亡日と発見日の手がかりとしてまとめる
連絡の控え
管理会社や発見した方からの連絡記録を残す
電話のメモ
遠方の場合、日付と話した内容を当日に書く
発見から 数日:警察の 確認が 終わるまで、 室内には 手を 付けられない
一人で亡くなった方が見つかると、まず警察が現場を確認します。事件性の有無を調べる手続で、終わるまでは室内のものを動かせません。鍵は警察が預かり、確認が済んでから相続人や管理会社に戻されます。この間は、清掃の見積りを取りに業者を入れることもできません。
この段階で、発見までにどれくらい日数が空いていたかが記録として残ります。後で告知の内容を書くとき、発見された日と推定される死亡の日が手がかりです。警察から受け取った書類は、この時点で一か所にまとめておいてください。管理会社や発見した方からの連絡の控えも同じです。数か月経つと、記憶だけでは日付が曖昧になります。
遠方に住んでいて現地へ行けない場合は、管理会社や近隣の方に状況を聞きます。電話の日付と話した内容を、その日のうちに書き留めてください。後の書面づくりが楽になります。
発見から 数週間:特殊清掃に 入るか、 閉めたまま 止めるかを 決める
鍵が戻った後、最初に判断するのが清掃の範囲です。においは日を追って建材に染み込みます。夏場は進みが早く、玄関を開けた時点で共用の廊下まで広がることもあります。マンションでは管理組合や隣の住戸から申し出が入ることがあります。先に手を打つよう求められる場面もあります。
一方で、建物を解体して土地として売ると決めているなら、内装を直す意味はありません。消臭と消毒だけを行い、床や壁はそのままにしておく選び方もあります。どこまでやるかは、最終的にどの売り方をするかで変わります。清掃を終えてから売り方を考えると、使わなかった工事の分だけ手元のお金が減ります。
警察の確認から特殊清掃を経て残置物処分と名義確認に至るまでの順番
孤独死の発見から売却までに進める手続き
発見時
警察による現場確認
事件性の有無を調べる。終わるまで室内の物は動かせない。
確認中
鍵の預かりと立ち入り制限
鍵は警察が預かる。清掃業者の見積もりもまだ入れられない。
確認後
鍵の返却と書類の保管
鍵が戻る。警察の書類や連絡の控えをまとめて保管する。
数か 月後:固定資産税と 管理費の 請求が、 相続人に 回り始める
誰も住まなくなった家にも、費用は毎月かかります。マンションなら管理費と修繕積立金、戸建てなら火災保険料と庭木の手入れです。固定資産税は、その年の1月1日の所有者に対して、その年の年度分が課されます。名義が亡くなった方のままの場合は、相続人代表者指定届を出します。多くの市区町村では、これで代表者あてに納税通知書が送られます。届出をしないままだと、通知の送り先が定まりません。納期限を過ぎてから気づくことがあります。送付先の扱いは市区町村ごとに違うため、資産税の担当窓口に確かめてください。
建物が傷んだまま年単位で置かれると、市区町村から助言や指導が届くことがあります(空き家対策(国土交通省))。窓が割れたまま、草が道路へはみ出したままといった状態が入口です。持ち続けた場合に年いくらかかるかは「空き家の固定資産税を払い続ける損益分岐点」の記事に計算の型を置いています。
「孤独死の発見から売却までに、家で起きることの順番」について、そのまま聞けます。
孤独死が 事故物件に あたる 場合と あたらない 場合の ケーススタディ
住戸の中で起きて特殊清掃が入った場合は、告げる前提です。隣の住戸や通常使わない共用部分で起きた場合は、原則として告げなくてよい扱いです。
清掃業者の作業報告書や工事前後の写真および費用の内訳が分かる請求書
特殊清掃を行った場合にそろえる裏づけ書類
作業報告書
どこまで直したかを示す清掃業者の記録
工事の前後の写真
同じ角度で撮影し、処理の範囲を証明する
費用の請求書
工事や清掃の費用の内訳が分かるものを加える
1. 自宅で 自然死が 早く 見つかり、 特殊清掃が 入らなかった 場合
持病で亡くなった方が当日や翌日に見つかり、室内に汚れが残らなかった場合です。ガイドラインは、次の二つを原則として告げなくてよい類型に置いています。取引の対象となる不動産で起きた自然死と、日常生活の中での不慮の死です。床も壁もそのまま使え、通常の清掃で引き渡せる状態であれば、この類型に当たります。
ただし、買主から過去に人が亡くなったことがあるかと問われた場合は別です。ガイドラインは、問われたときには告げる必要があるとしています。買主が把握しておくべき特段の事情があると認識したときも同じです。聞かれて「ありません」と答えたとします。そこから先は、事実と違うことを告げた話になります。黙っていられる場面と、嘘をついてよい場面は違います。あわせて、原則として告げなくてよいという整理は宅建業者の告知についての考え方です。売主さまが知っている事実を隠したときの契約不適合責任は、この整理の外側に残ります。
2. 発見が 遅れ、 床材の 解体と 消臭まで 行った 場合
同じ自然死でも、発見まで日数が空いて特殊清掃が入った家は、告げる前提で進めます。原則として告げなくてよい類型から、特殊清掃等が行われた場合が外れているためです。
工事の規模は問われません。畳の入れ替えだけで済んだ場合も、床板を剥がして下地と土台まで処理した場合もあります。どちらも、特殊清掃が入ったという事実は同じように残ります。残るからこそ、どこまで直したかを示す書類が効いてきます。そろえるのは、清掃業者の作業報告書と、工事の前後を同じ角度で撮った写真です。費用の内訳が分かる請求書も加えます。これがあると、買主の受け止め方が変わります。
3. マンションの 共用部分や隣の 住戸で 孤独死が あった 場合
売る住戸の中で起きていなければ、扱いは変わります。ガイドラインは、隣接する住戸で起きた死を、原則として告げなくてよい類型に置いています。日常生活で通常使用しない共用部分も同じです。
一方、同じ共用部分でも扱いが違う場所があります。毎日通るエレベーターや廊下、階段は、通常使用する部分として扱われます。マンションの告知は、三つに分かれます。住戸の中か、毎日通る共用部分か、通常使用しない共用部分かです。屋上や設備室は三つ目(通常使用しない共用部分)です。
早期発見の自然死と発見が遅れ特殊清掃が入った場合の告知義務の違い
孤独死の状況による告知の要否の分かれ目
- 1
早期発見の自然死
室内に汚れが残らず通常の清掃で済めば原則不要。
- 2
発見が遅れ特殊清掃あり
床材の解体や消臭など特殊清掃が入れば告げる前提。
- 3
共用部分や隣の住戸
隣の住戸や通常使わない共用部分なら原則不要。
- 4
買主から問われた場合
原則不要なケースでも、問われたときには告げる。
マンションで注意が要るのは、記録の残り方です。管理組合の議事録、掲示板の貼り紙、清掃や消毒の費用が載った会計報告。買主は購入前に、管理規約や議事録の写しを受け取ります。売主が触れなくても、別の経路で伝わります。隠す前提で組み立てると、契約の直前で話が崩れます。この類型でも、原則として告げなくてよいのは宅建業者の告知の話です。売主さまが問われて事実と違う答えをすれば、民法上の責任は別に残ります。
4. 自殺や 他殺など、 事件性が ある 場合
自然死にも日常生活の中での不慮の死にも当たらない死は、告げる前提になります。報道された事案や、近隣で広く知られている事案は別です。年数が経っても告げる必要があると整理されています。事件性、周知性、社会に与えた影響が特に高いものもあります。時間では薄まらないという考え方です。
ご自身が住んでいた家で起きた場合の進め方は「事故物件の自宅を売る」の記事に書いています。売主が現場を見ている分、書面に書く内容が細かくなります。買主からの質問も増えます。
5. 上の 1〜4の 場合を、 売買の 告知の 扱いで 並べ直す
| 起きたこと | 特殊清掃の有無 | 売買での扱い |
|---|---|---|
| 住戸の中の自然死・早期に発見 | なし | 原則として告げなくてよい。問われたら答える |
| 住戸の中の自然死・発見が遅れた | あり | 告げる前提で進める |
| 隣の住戸・通常使わない共用部分(屋上・設備室など) | 問わない | 原則として告げなくてよい |
| 毎日通る共用部分(エレベーター・廊下・階段)の自然死・不慮の死 | なし | 住戸の中と同じ扱い。原則として告げなくてよい。問われたら答える |
| 毎日通る共用部分(エレベーター・廊下・階段)の自然死・不慮の死 | あり | 住戸の中と同じ扱い。告げる前提で進める |
| 住戸の中の自殺・他殺 | 問わない | 告げる。周知性が高ければ年数が経っても告げる |
ご相談でいちばん多いのは、表の2行目(住戸の中の自然死で、発見が遅れて特殊清掃が入った場合)です。賃貸借については、年数の整理が示されています。特殊清掃等が行われた事案はその発覚から、そうでない事案は発生から数えます。おおむね3年を経過するまでは、借主に告げるという内容です。年数が出てくるのはこの賃貸借の場面だけで、売買には同じ目安が置かれていません。3年待てば言わずに売れる、という読み方はできないということです。
孤独死を 告知した 事故物件の 価格と、 マンションで 判断が 分かれる 点

下がり幅を決めるのは3つです。住戸の中で起きたか、清掃と工事がどこまで入ったか、近隣にどこまで知られているかです。
告知して適正価格で売る場合と隠して売却後に損害賠償を請求される場合の違い
孤独死を告げて売る場合と黙って売る場合
| 観点 | 告げて売る場合 | 黙って売る場合 |
|---|---|---|
| 売出し時の価格 | 事実の重さが反映され下がる | 下がり幅を避けられる |
| 引渡し後の請求 | 事前に告げているため受けない | 代金の減額や賠償の請求を受ける |
| 契約の解除 | 事前に告げているため受けない | 事実を隠したとして解除を受ける |
この3つは、買主が物件を見る順番とほぼ重なります。間取り図を見て、内見で床と壁を見て、最後に管理組合や近所の話を聞く。そこで出てきた事実の重さが、そのまま提示される金額に反映されます。下がり幅を嫌って、黙ったまま売ったとします。避けたつもりの金額は、引渡しの後に戻ってくることがあります。代金の減額や賠償の請求という形です。
1. 下がり幅は、 同じ 条件で 買い直す人の 数で 決まる
価格が動く理由は、気持ちの問題ではありません。同じ地域で同じ広さの家を探している人はいます。そのうち、事情を聞いたうえでも買うと言う人が減るからです。母数が減れば、競り合いが起きません。売り出しの期間が延び、結果として金額が下がります。
下げ幅を一律の割合で示すことはできません。同じ市内でも違います。買い手の多い駅前の住戸と、買い手が限られる郊外の戸建てでは戻り方が別です。賃貸に回しやすい間取りか、投資として買う人が見込めるかでも変わります。売り出す前に、周辺で同じ条件の物件がいくらで成約しているかを押さえます。そこから引く額を考える順番にしてください。
2. マンションは、 管理組合と 近隣に 記録と 記憶が 残る
戸建てとマンションでいちばん違うのは、情報の残り方です。マンションでは、管理組合が費用を払って共用部分の消毒を手配することがあります。その支出は会計報告に載ります。総会の議事録に残ることもあります。
買主は重要事項説明の前に、管理規約や総会の資料、管理費等の滞納の有無を確認します。買主側の仲介会社が管理会社に書面で照会する流れが一般的です。そこで事情が出てくることがあります。マンションで事実を伏せて進めるのは、現実的に難しいと考えてください。
戸建ての場合は、近隣の方の記憶が情報源になります。引渡しの後、新しい所有者が隣の方から聞かされる形が多くあります。そこから売主に連絡が来ます。
3. 建物を 解体して 更地に すれば、 心理的瑕疵は 消えるのか
更地にしても、その土地で人が亡くなった事実は消えません。ガイドラインに、建物を取り壊せば告げなくてよくなるという記載はありません。解体は、においと汚損という物理的な問題を消す手段です。告知の判断とは別の話です。
それでも解体に意味がある場面はあります。床下まで汚損が達していて、修繕の範囲が読めない家があります。買主が建て替えを前提にしている土地も同じです。更地にした方が、買う側の判断は早くなります。逆に、解体費を払っても土地の価格が解体前と変わらない場合があります。払った分だけ手取りが減ります。費用と手取りの比べ方は「古家は解体するかそのまま売るか」の記事に置いています。
4. 告知せずに 売却すると、 損害賠償請求や 契約の 解除を 受ける
買主が後から事実を知ると、契約不適合責任にもとづく請求を受けることがあります。民法第563条は代金の減額について定めています。第564条は、損害の賠償と契約の解除を買主が求められる場合を定めています(民法(e-Gov法令検索))。請求の中身は、引渡しの後に買主が負った費用と、支払った代金との差です。
期間の決まりもあります。民法第566条は、種類または品質に関する不適合について定めています。買主が知った時から1年以内に、売主へ通知しなければなりません。ただし、売主が引渡しの時にその不適合を知っていた場合は別です。重大な過失によって知らなかった場合も、この期間の制限は働きません。知っていて告げなかった売主は、1年という守りを使えない側に回ります。
「孤独死が事故物件にあたるかは、心理的瑕疵の有無で決まる」の節の小見出し「宅建業者に向けた線引きと、売主が負う責任は別にある」で、民法第572条を挙げました。効いてくるのはここです。契約書に免責の特約を入れても、知りながら告げなかった事実だけは外せません。仲介に入った不動産会社が事情を知らされていなければ、買主への説明も不十分になります。結果として、売主に請求が集まります。
「孤独死を告知した事故物件の価格と、マンションで判断が分かれる点」について、そのまま聞けます。
孤独死が あった 事故物件を 売る 前に、 事実と 書類を そろえる

いつ発見されたか、どんな清掃と工事をしたかを、日付の順に書き出します。業者の書類と写真は、同じ場所にまとめます。
推定死亡日から清掃完了までの日付と起きたことおよび裏づけ書類の対応
孤独死の発生から清掃までの事実と書類
| 準備する項目 | 書き出す日付・内容 | 集める書類・期限 |
|---|---|---|
| 清掃と工事の範囲 | 清掃の着手日と完了日・工事を行った範囲 | 見積書・作業報告書・請負契約書・請求書・写真 |
| 共用部分の消毒 | 管理組合が手配した事実 | 管理組合からの案内や請求 |
| 相続登記(施行後取得) | 相続と取得を知った日 | 知った日から3年 |
| 相続登記(施行前取得) | 2024年4月1日 | 2027年3月31日 |
1. 発生から 今日までを 日付で 書き出し、 名義を 確かめる
紙を1枚用意して、左から日付、起きたこと、裏づけになる書類の順に並べます。書き出すのは、推定される死亡の日と、発見された日です。警察の確認が終わった日、鍵を受け取った日も加えます。清掃に着手した日、清掃が完了した日、工事を行った範囲も並べます。記憶が新しいうちに書くほど正確になります。
裏づけとして集めるのは、清掃業者の見積書と作業報告書です。工事をした場合は請負契約書と請求書、それに作業の前後に撮った写真も集めます。管理組合が共用部分の消毒を手配していれば、その案内や請求も控えておきます。これらは後で買主に渡す資料になります。同時に、どこまで直したかを自分で説明する材料になります。
同じ時期に、登記の名義も確かめてください。亡くなった方の名義のままでは、買主との売買契約へ進めません。相続登記の申請は、2024年4月1日から義務になりました。期限は3年で、数え始めの日は二つの日付のうち遅い方です。一つは、相続が始まったことを知り、その不動産を取得したと知った日です。もう一つは、施行日の2024年4月1日です。2024年4月1日以後に取得を知った方は、知った日から3年を数えます。施行の前に亡くなり、その時点で取得を知っていた方は、施行日から3年を数えます。この場合の期限は2027年3月31日です(相続登記の申請義務化(法務省))。放置した場合に何が起きるかは「土地の名義変更をしないとどうなるか」の記事にまとめています。
戸籍を集めるところから始めると、数か月かかることがあります。清掃や売り方の検討と並行して、司法書士への依頼を先に動かしてください。
2. 特殊清掃と 残置物の 処理を、 どこまで 行うか 決める
清掃の必要性は、その家をどうするかで変わります。売ると決めているなら、買主が内見できる状態にするための最小限で足ります。持ち続けて賃貸に回すなら、内装の入れ替えまで必要になります。先に出口を決めてから、作業の範囲を決める順番です。
清掃業者を選ぶときに見るのは、見積りの内訳です。消臭と消毒、床材の撤去、下地や土台の処理、家財の運び出し、追加費用が出る条件。この五つが別々の行に分かれていない見積りは、作業の途中で金額が動きます。2社から取って、同じ項目同士を並べてください。
廃棄物の運搬にも確認が要ります。家庭から出た家財は一般廃棄物にあたり、収集と運搬には市区町村の許可が必要です。自社に許可があるのか、許可を持つ業者へ委託するのか。見積りの段階で聞いておいてください。
依頼の流れは、現地を見てもらうところから始まります。見積りを受け取り、作業日を決め、鍵を渡すか立ち会います。完了後に、報告書と写真を受け取ります。遠方にお住まいなら、立会いなしで進めて、完了の写真で確認する形も取れます。家財が大量に残っている場合の進め方は「ゴミ屋敷を片付けずに売却できるか」の記事にも書いています。
孤独死の 告知を 書面に して、 事故物件の 売却方法を 選ぶ

物件状況報告書に、発生の時期と場所、清掃の範囲を書いて渡します。そのうえで、仲介と買取の手取りを並べます。
仲介で残る金額と買取で残る金額を並べ、引かれる費用の違いを示した棒グラフ
仲介と買取で手元に残る金額の比較
- 仲介で残る金額査定額から手数料や清掃費等を引く(万円)
- 買取で残る金額清掃や内装費等が引かれた額(万円)
1. 物件状況報告書に、 どこまで 書いて 残すか
物件状況報告書は、売主が記入して買主に渡す書面です。告知書と呼ばれることもあります。雨漏りやシロアリと並んで、過去に起きた出来事を書く欄が設けられています。ここに書いたかどうかが、後で争いになったときの分かれ目になります。
書く内容は、起きた時期、起きた場所、原因です。発見までにどれくらい経っていたかも書きます。特殊清掃を行ったかどうか、行った工事の範囲も必要です。「以前に居住者が亡くなりました」とだけ書くのでは足りません。どこで、どんな原因で、どこまで直したか。ここまで書いてはじめて、買主が判断できる情報になります。
記入する前に、次の表で欄ごとに埋まるかを確かめてください。左の項目ごとに、真ん中の状態まで書けるか、右の書類が手元にあるかを見ます。
| チェックする項目 | 書けている状態 | 手元にそろえる裏づけ |
|---|---|---|
| 起きた時期 | 推定される死亡の日と、発見された日の両方が書ける | 警察から受け取った書類、管理会社や発見した方からの連絡の控え |
| 起きた場所 | 住戸の中ならどの部屋か、共用部分ならどの場所かまで書ける | 間取り図に場所の印を付けたもの |
| 原因 | 病気・老衰、不慮の事故、それ以外のどれかを書ける | 警察や医師から聞いた内容を日付つきで書き留めた控え |
| 特殊清掃 | 行ったかどうかと、着手した日・完了した日が書ける | 清掃業者の見積書と作業報告書 |
| 工事の範囲 | 床材だけか、下地・土台までか、床下の土までかを書ける | 請負契約書、請求書、工事の前後を同じ角度で撮った写真 |
| 管理組合の対応(マンション) | 共用部分の消毒を手配したかどうかが書ける | 管理組合の案内、清掃や消毒の費用が載った会計報告 |
| 問われたときの答え | 上の各行と同じ内容で答えられる | 上の書類一式 |
真ん中の状態まで書けない行が一つでもあれば、その行の書類を先にそろえます。報告書に書くのはそのあとです。書けないまま「不明」とした欄は、引渡しの後に買主から問われたとき、確かめる手段がありません。
口頭で伝えて終わりにしないでください。伝えたかどうかが後で食い違ったとき、書面がなければ確かめる手段がありません。仲介に入った不動産会社にも、同じ内容を書面で渡します。宅建業者の調査は、売主からの告知を出発点にします。ここが曖昧だと、重要事項説明の中身も曖昧になります。
2. 仲介で 売るか、 訳あり物件の 買取業者に 売るかを 手取りで 比べる
仲介は、買主を探す期間が要る代わりに、成約の金額は高くなりやすい方法です。ただし事情のある家では、内見のたびに説明が必要になります。申込みが入ってから、白紙に戻ることもあります。売り出してから引渡しまでの期間は読めません。その間の管理費、税、保険料は売主の負担のまま続きます。
買取は、業者が直接の買主になるため、買主を探す期間がありません。清掃や片付けをせずに引き渡せる場合もあります。そのかわり、価格は仲介での成約想定より低くなります。清掃費、内装の入れ替え、再販までの保有の費用を、買った側が負うためです。再販のときに買主が限られることも、価格に入ります。
比べるときは、仲介の査定額をそのまま買取価格と並べないでください。査定額から、仲介手数料、特殊清掃と内装の費用を引きます。売れるまでの管理費と固定資産税も引いた額が、手元に残るお金です。周辺の成約価格は国土交通省の不動産情報ライブラリで調べられます(不動産情報ライブラリ(国土交通省))。比較の手順は「不動産は買取と仲介どっち」の記事に置いています。業者を選ぶときの確認点は「訳あり物件の買取業者の選び方」の記事にまとめています。
なお、この記事の税務・法務に関する記載は一般的な情報提供であり、個別の事案についての判断ではありません。適用の可否や具体的な税額については、税務署または税理士、登記については司法書士、境界や隣地との権利関係については弁護士や土地家屋調査士など、それぞれの専門家にご確認ください。当社は不動産の買主であり、税務や法律の代理はできません。
「孤独死の告知を書面にして、事故物件の売却方法を選ぶ」について、そのまま聞けます。
孤独死の あった 事故物件を、 当社が 買い取る 場合
当社が買い取る条件・買い取れない条件と、実際の買取事例は「当社の買取基準」にまとめています。
「孤独死のあった事故物件を、当社が買い取る場合」について、そのまま聞けます。
孤独死と 事故物件の 判断で、 先に 確かめる 3つ
- 室内で起きたか、清掃がどこまで入ったかで分かれます。 自然死でも、発見が遅れて特殊清掃が入った家は、告げる前提で進めてください。床をどこまで剥がしたかまで書き出してください。買主との話が短く済みます。
- 賃貸で示された概ね3年という目安は、売買には当てはまりません。 売買について、年数の整理は示されていません。時間が経ったことだけを理由に、黙って売る判断は取れません。周知性の高い事案は、年数では消えません。
- 告知は口頭ではなく、物件状況報告書に書いて渡します。 代金の減額や損害賠償請求、契約の解除を求められる場面があります。書いて渡したという事実が、売主さまを守ります。清掃業者の報告書と写真も一緒に添えてください。
においも残置物もそのままで買い取ります。床下まで汚損が達している家では、土の入れ替えを見込んだ分だけ価格が下がります。
通話料無料・全国対応
時間外と定休日のお電話も担当の携帯に転送されるので、直接責任者につながります。
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孤独死と 事故物件に ついて、 よく ある 質問
Q1. 孤独死が あった 家は、 いつまで 事故物件と して 扱われますか
賃貸借については、年数の整理が示されています。特殊清掃等が行われた事案はその発覚から、そうでない事案は発生から数えます。おおむね3年を経過するまでは告げる、という内容です。売買については、同じような年数の目安が置かれていません。 国土交通省のガイドラインの考え方はこうです。取引の相手方の判断に重要な影響を及ぼす場合には、告げる必要がある。事件性や周知性が特に高い事案は、期間が経っても告げる前提です。年数で自動的に消えるものとして予定を組まないでください。
Q2. 事故物件は 買わない 方が よいと 言われますが、 売れますか
価格が下がる分を理由に選ぶ買主はいます。自宅として住む方だけでなく、賃貸に回す目的で探している方もいます。同じ条件の物件より安く買えることが、決め手になります。買主が住宅ローンを使う場合、金融機関によっては担保の評価が下がります。資金計画が組み直しになることがあります。 売り出す前に、現金で買う層と融資を使う層のどちらを想定するか。仲介の担当者と決めておいてください。
Q3. 孤独死の 原状回復費用は、 連帯保証人に 請求できますか
賃貸していた部屋で入居者が亡くなった場合、原状回復の義務は賃借人の相続人が引き継ぎます。連帯保証人は、保証した債務の範囲で責任を負います。2020年4月1日以後に結んだ契約には、決まりがあります。個人が保証人になる根保証契約は、極度額を定めなければ効力を生じません(民法第465条の2)。請求できるのは、通常の使用による損耗を超える部分です。 金額と範囲は契約書の文言で変わるため、請求の前に弁護士にご確認ください。
Q4. 不動産の 5年ルールとは 何ですか
譲渡所得の税率が所有期間で変わる区分を指して使われることが多い言い方です。国税庁の説明では、譲渡した年の1月1日の時点で判定します。所有期間が5年を超えていれば長期譲渡所得、5年以下なら短期譲渡所得です。適用される税率が変わります。相続した家は、亡くなった方が所有していた期間を引き継いで数えます。 告知が必要かどうかの判断に、5年という区切りはありません。税額の計算は税務署または税理士にご確認ください。
Q5. 告知せずに 売却したことが 後から 分かると、 どうなりますか
買主から、代金の減額や損害賠償請求、契約の解除を求められることがあります。条文の位置は「孤独死を告知した事故物件の価格と、マンションで判断が分かれる点」の節の小見出し4「告知せずに売却すると、損害賠償請求や契約の解除を受ける」に挙げています。知っていて告げなかった場合は別です。買主が不適合を知った時から1年以内という通知の制限も働きません。 仲介に入った不動産会社が事情を知らされていなければ、説明も不十分になります。請求は売主さまに向かいます。
Q6. 特殊清掃を してから 売った 方が、 手取りは 増えますか
売り先によって変わります。個人の買主に仲介で売る場合、においが残っていると内見の段階で止まります。消臭までは行っておく方が、検討は先へ進みやすくなります。買取で売るなら、清掃を済ませても、その費用の分だけ価格が上がるとは限りません。 当社の場合、汚損の範囲が同じであれば、価格の出し方は変わりません。売主さまが清掃を済ませた家も、これから当社が手配する家も、同じ費用の積み上げです。清掃に着手する前に、買取価格を聞いてから決めても遅くありません。
当社の 見方
土地(古家付きを含む)・築40年以上で、事故物件・古家付きの物件を当社が買い取り、販売まで終えました。
神奈川県高座郡寒川町の土地(古家付きを含む)(築40年以上)を、買取金額100万円台で買い取りました(2025年に取引)。
当社では、神奈川県秦野市の戸建て(築50年以上)も、事故物件で残置物が残ったままの状態のまま、買取金額500万円台で買い取りました(2025年に取引)。ご相談の中では、亡くなった後の片付けが手つかずで、告知が必要かどうかも分からずに迷っているという方が多いです。そうした物件も、そのままの状態でご相談いただけます。相続した家では、戸籍などの書類や相続登記の費用が追加で必要になるため、早めに確かめておくと安心です。一方で、買い取れない物件や売らないほうがよい場合は、正直にそうお伝えしています。
当社が買い取る物件・お断りする物件と、買取価格の決まり方は、当社の買取事例76件の内訳とあわせて当社の買取基準にまとめています。
この記事について
- 執筆・編集
- リアテクス編集部株式会社リアテクス当社(宅地建物取引業 東京都知事(1)第107888号)は物件を直接買い取る買主の立場から、売却を検討する方の判断材料となる記事を企画・編集しています。
- 監修
鶴野 博之株式会社リアテクス 執行役員宅地建物取引士(東京)第257503号/賃貸不動産経営管理士/2級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP2級)この区分の監修を担当しています。記事の公開判断は当社が行っています(代表が定めた手順による)。確認・公開判断:鶴野 博之(株式会社リアテクス 執行役員)- 公開・更新
- 公開 更新 内容を見直したときは、この日付と改訂の内容を更新しています。情報の確認日 (出典の公的資料を開いて内容を確かめた日)
- この記事の事実確認の方法
- 法令:宅地建物取引業法、民法出典:国土交通省、法務省
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出典(5件・に確認)
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