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事故物件

心理的瑕疵の告知は3年で終わるか|国交省ガイドラインの読み方

公開 更新

執筆
株式会社リアテクス リアテクス編集部
監修
株式会社リアテクス 執行役員 鶴野 博之(宅地建物取引士(東京)第257503号)
心理的瑕疵の告知は3年で終わるか|国交省ガイドラインの読み方

「家族が亡くなった家を売ろうとしている。3年たてば言わなくてよいと聞いたが、売るときにもその3年が当てはまるのか分からない」。亡くなってから3年が過ぎても、家を売るときの告知は終わりません。ガイドラインの3年は賃貸借の取引の区切りで、売買では、特殊清掃をしていない自然死や隣の住戸での死などを除き、経過した年数で告知の対象から外れる定めはありません。

亡くなった事実を告知書に残したうえで、片付けも清掃もしていない状態のまま当社が買い取ります。事実を伏せて売りたいご相談はお受けできず、価格は仲介での成約想定より低くなります。この物件が買い取れるかどうかだけ、先に聞く(無料)

目次(9章)

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心理的瑕疵の告知と3年の区切りは、賃貸の取引に置かれたもの

国土交通省のガイドラインが「おおむね3年で告げなくてよい」としたのは、貸す取引のことです。家を売るときの告知には、年数の区切りがありません。

葬儀と四十九日が過ぎ、家をどうするか考え始める頃です。「事故物件は3年たてば言わなくてよい」という話を耳にする方は多くいます。その話を信じて3年待つと、待った年数のぶんだけ建物が傷みます。固定資産税と管理の費用も積み上がります。それでいて、買主に渡す告知の文面は1行も変わりません。3年という数字がどこに書かれ、誰に向けたものかを、売り出す前に確かめておいてください。

ガイドラインの「おおむね3年」は、借主に告げるかどうかの目安

この数字の出どころは、2021年10月に国土交通省が策定した「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」です(ガイドラインの策定の公表(国土交通省))。対象は住まいとして使う不動産の取引で、3年の区切りが置かれているのは、そのうちの賃貸借の取引だけです。

中身を順に追います。1つ目の対象は、貸す部屋や、マンションの廊下やエントランスのように日常の生活で通常使う共用部分です。そこで、自然死や日常生活の中での不慮の死以外の死があった場合が当たります。もう1つは、自然死であっても特殊清掃などが行われた場合です。これらは、事案の発生から、特殊清掃などをした場合は発覚から数えます。おおむね3年が過ぎた後は借主に告げなくてよい、というのがガイドラインの考え方です。

ただし、事件性や周知性、社会に与えた影響が特に高い事案は、3年が過ぎても告げる側に残ります。報道で大きく扱われた部屋は、年数がたっても借りる人の判断に響くという見方です。賃貸でさえ、3年は例外の付いた目安にとどまります。

賃貸と売買での告知期間の違い

観点賃貸の取引売買の取引
3年の区切りの有無おおむね3年で告げなくてよい年数で告知が外れる定めなし
事件性などが高い事案3年が過ぎても告げる側に残る期間の定めなく告げる対象

売買には、年数で告知が外れる定めがない

同じガイドラインは、売買の取引について、告げなくてよくなる期間を定めていません。売買で原則として告げなくてよいとされるのは、自然死と日常生活の中での不慮の死、それに隣の住戸や通常使わない共用部分で起きた死です。それ以外の死は、経過した年数にかかわらず告げる対象として扱われるのが原則です。

なぜ売買だけ期間が無いのか。買う人は家を資産として持ち、住んだあとに建て替えたり、次の人に売ったりします。借りる人より長い期間、その家の過去と付き合うことになるため、年数で一律に線を引きにくいと考えられています。

売る側にとっての3年は、告知が終わる日ではありません。待っている間に進むのは、雨漏りや設備の傷み、庭木の伸び、郵便受けにたまる郵便物といった建物の状態の悪化です。告知が要る事実はそのままで、物理的な不具合だけが増えていく順番になります。売り出しの時期は、年数の経過で決めるものではありません。建物がいまの状態を保てるうちに動くかどうかで決めてください。

賃貸における事案発生からの期間

  1. 事案発生・発覚

    期間のカウント開始

    事案の発生、または特殊清掃をした場合は発覚から数える

  2. おおむね3年経過

    賃貸の告知義務の分かれ目

    賃貸では原則として借主に告げなくてよくなる

  3. 3年経過後も継続

    売買と重大事案の扱い

    売買の取引や、事件性の高い事案は年数で告知が外れない

ガイドラインの宛先は業者で、売主の責任は売買契約から生じる

ガイドラインが直接向けられているのは、取引を仲介したり自ら売ったりする宅地建物取引業者です。宅地建物取引業法第47条は、取引の相手方の判断に重要な影響を及ぼす事項を対象にしています。業者がわざと事実を告げなかったり、事実と違うことを告げたりすることを禁じています。ガイドラインは、人の死についてその線をどこに引くかを示したものです。

個人の売主には、このガイドラインそのものは向けられていません。その代わり、売主は買主と結ぶ売買契約の当事者として、民法の契約不適合責任を負います。業者の行政上の決まりと、売主の契約上の責任は、出どころが別だと考えてください。

もう1つ、売主さまに関わる点があります。ガイドラインでは、仲介する業者は売主に告知書への記載を求めれば足ります。それで、通常の情報収集としての調査を果たしたことになるとしています。近所への聞き込みやインターネットでの調べ物までは、業者に義務として求めていません。つまり買主に伝わる事実の中身は、売主さまが告知書に書いたことで、ほぼ決まります。

心理的瑕疵の告知が原則として不要な自然死と、告知義務が発生する死

家族が木造住宅の居間で、テーブルの上に置かれた1枚の書類を確認しながら話し合う

自然死と、転倒や誤嚥のような日常生活の中での不慮の死は原則として告知が不要です。それ以外の死は、売買で告知義務が発生する側に入ります。

一人で暮らしていた親と連絡がつかなくなり、心配して訪ねた家族が見つける。ご相談は、こうした場面から数週間、数か月たった頃に始まることがあります。売主さまがまず気にされるのは、病気で亡くなったのだから告知はいらないのではないか、という点です。答えは死因だけでは決まらず、見つかるまでの日数と、そのあと室内にどんな手を入れたかで分かれます。

亡くなった状況と、その後の処置ごとの扱い

ガイドラインが売買について示している扱いを、売主さまの手元にある記録と並べると、次の表のようになります。

亡くなった状況売買での扱い(ガイドライン)手元で確かめる記録
持病や老衰による自然死で、特殊清掃をしていない原則として告げなくてよい死亡診断書の写し、見つかった日
家の中での転倒や、食事中の誤嚥による不慮の死原則として告げなくてよい救急や医療機関の記録
自然死だが見つかるまで日がたち、特殊清掃をした告げる対象(期間の定めなし)清掃業者の見積書・領収書
自死、他殺、日常生活の外で起きた事故による死告げる対象(期間の定めなし)警察からの説明、報道の有無
隣の住戸や、通常使わない共用部分で起きた死原則として告げなくてよい(事件性などが特に高ければ告げる)管理組合からの連絡、報道の有無

表の扱いは、買主から事案の有無を聞かれていない場合のものです。聞かれたときは、表のどの行に当たる家でも告げる側に回ります。その理由は「心理的瑕疵の告知が3年を過ぎても重く残る家と、薄れる家の分かれ目」の節で扱います。表の右の列は、告知書を書く段になって探し回らないよう、いまのうちに手元へ寄せておきたい記録です。

自然死でも、特殊清掃や大規模なリフォームをした家は告知の対象になる

見つかるまでに日がたつと、季節によっては、においや体液の跡が床材や壁の下地まで染みることがあります。この段階で専門の業者に特殊清掃を頼んだり、床や壁を大きく張り替えたりした家があります。ガイドラインは、こうした家を自然死であっても告げる対象としています。いわゆる特殊清掃や大規模なリフォームが行われた場合、という書き方です。死因ではなく、亡くなったあとの経過と処置が、買う人の判断に響くと見ているためです。

ここで分けて考えたいのが、心理的な事情と物理的な不具合です。清掃のあとも床下や柱ににおいが残る、床が浮いているといった状態があります。これは亡くなった事実とは別に、建物の不具合として伝える事項になります。自然死でも、心理的瑕疵と物理的瑕疵の両方に当たる家がある、ということです。

清掃業者の作業報告書に、どこまで除去し、どこを交換したかが書かれていれば、その範囲で建物の状態を説明できます。報告書をもらっていなければ、いまのうちに業者へ再発行を頼んでください。清掃から日がたつほど、業者の側の記録も探しにくくなります。貸す場合も含めた告知の範囲は、「事故物件の告知義務はどこまでか」の記事で取引の形ごとに整理しています。

告知義務の確認に必要な記録

  • 自然死(清掃なし)

    死亡診断書の写しと、見つかった日

  • 不慮の死

    救急や医療機関の記録

  • 自然死(清掃あり)

    清掃業者の見積書や領収書

  • 自死・他殺・事故死

    警察からの説明と、報道の有無

  • 隣家や共用部分での死

    管理組合からの連絡と、報道の有無

隣家や共用部分での死と、建物を取り壊した後の土地

隣の住戸や、マンションの住民が日常の生活で通常使わない共用部分で起きた死もあります。ガイドラインは、これらを売買でも原則として告げなくてよいとしています。戸建ての売主さまにとっては、隣家で起きた出来事がこれに近い場面です。ただし、事件性や周知性、社会に与えた影響が特に高い事案は、この場合も告げる側に入ります。

迷いやすいのは、建物を取り壊したあとの土地です。ガイドラインが主に念頭に置くのは住まいとして使う建物の取引で、更地になった土地の扱いを個別に定めた部分はありません。建物が無くなっても、その場所で人が亡くなった事実は残ります。

買う人が家を建てて住むつもりなら、その事実が判断に響くことがあります。心理的瑕疵のある土地を売却するときも、告知義務が発生する前提で記録をそろえておく方が、後の争いを避けやすくなります。土地に心理的瑕疵が認められるかどうかは、事案の中身と、買主が何のために買ったかによって、裁判所が個別に判断します。取り壊してから売るか、建物を残したまま売るかの手取りの比べ方は、「古家は解体するかそのまま売るか」の記事が参考になります。

亡くなった状況による告知義務の判定

  1. 1

    死因と状況の確認

    自然死や不慮の死か、それ以外の死かを確認する。

  2. 2

    発見後の処置の確認

    自然死でも、特殊清掃を行ったかどうかで扱いが分かれる。

  3. 3

    告知義務の判定

    特殊清掃なしの自然死は不要、清掃ありやその他の死は告知対象。

「心理的瑕疵の告知が原則として不要な自然死と、告知義務が発生する死」について、そのまま聞けます。

心理的瑕疵の告知が3年を過ぎても重く残る家と、薄れる家の分かれ目

年数より効くのは、事件として知られているか、建物を残すか、誰が買うか、買主から聞かれたかの4つです。どれも時間がたつだけでは動きません。

亡くなってから1年、2年とたつうちに、近所での話題は少しずつ落ち着いていきます。一方で、ニュースの記事やインターネット上の書き込みは消えずに残り、買う人が住所や建物の名前で調べたときに出てきます。売り出す時点で、どの事実が買う人の目に入る状態にあるかを並べておくと、告知の重さと価格への響き方の見当がつきます。

1. 事件として報道されたか、近所で広く知られているか

ガイドラインは、事件性や周知性の高い事案を別扱いにしています。こうした事案は年数がたっても、買う人がほかの経路から知る見込みが高いためです。売買ではもともと期間の定めがありません。そのうえ報道のあった家では、買う人が告知書に書かれた以上のことを自分で調べます。告知書の文面が控えめでも、検索の結果が重ければ、価格はそちらに引っ張られます。

放っておいて変わるのは、記事の数ではなく建物の傷みのほうです。報道が残ったまま建物まで傷めば、買う人は二重の理由で値を下げます。

まず、売り出す前に住所と建物の名前で一度検索してください。何が出るかを、売主さま自身が見ておくことから始めます。出てきた内容と告知書の文面が食い違うと、買う人は書かれていない部分を疑います。検索で出てくる事実は、告知書の側でも同じ言葉で触れておく方が、話が早く進みます。

告知の重さと価格に響く分かれ目

  • 近所での話題

    1年、2年とたつうちに少しずつ落ち着く

  • ニュースや書き込み

    消えずに残り、住所や建物名で検索される

  • 検索結果と告知の差

    食い違うと買主は書かれていない部分を疑う

  • 建物の傷み

    報道が残り建物も傷めば二重に値が下がる

2. 亡くなった建物を残して売るか、取り壊して売るか

建物を残したまま売る場合、買う人は亡くなった部屋に実際に入り、内見のたびにその場所を目にします。取り壊して土地として売る場合は、亡くなった場所そのものが無くなります。買う人が向き合うのは、告知書の文面だけです。事実を伝えることに変わりはありませんが、内見で受ける印象の重さが違います。

ただし、取り壊しには先に費用がかかります。地方税法第349条の3の2が定める住宅用地の特例は、住宅が建っている土地に適用されるものです(地方税法(e-Gov法令検索))。1月1日の時点で建物が無ければ、その年度の固定資産税から特例が外れ、土地の税額が上がります。取り壊したあと買い手が見つからないまま年を越すと、この負担が毎年続きます。

決める順番は、取り壊す前に、建物付きのまま買う相手がいるかを確かめ、その価格を一度聞いてからです。解体費用を払ったうえで土地の値がどれだけ戻るかは、建物を残した場合の価格と並べないと分かりません。

3. 住むために買う人か、建て替えや売り直しのために買う人か

同じ事実でも、買う人によって重さが変わります。家族と暮らす家を探している人は、告知を読んだ段階で候補から外したり、申込みのあとに家族の反対で取りやめたりします。建て替えて売る業者や、売り直しを前提に仕入れる業者は、告知を前提に値を付けます。事実そのものを理由に話が止まることは、多くありません。

仲介で個人向けに売り出すと、内見のたびに同じ説明を繰り返し、そのたびに断られる、という時間が続くことがあります。季節を越えて売れ残れば、建物の傷みと税の負担が重なります。誰に売るかを先に決め、その相手に合わせて売り方を選ぶ方が、売れるまでの時間を読みやすくなります。売り方の選び方は「心理的瑕疵物件の売却方法を選び、告知したまま決済まで進める」の節で扱います。

4. 買主から事案の有無を聞かれたかどうか

自然死や隣の住戸での死のように、本来は告げなくてよい場合があります。それでも買主から事案の有無を聞かれたときは、業者が告げる必要があるとガイドラインはしています。社会的な影響の大きさから、買主が知っておくべき特段の事情があると業者が分かっている場合も同じです。聞かれた時点で、その事実は買主の判断に響くものとして扱われる、ということです。

売主さまの側で気をつけたいのは、聞かれて「ありません」と答える場面です。黙っていた場合と違い、事実と違うことを告げたことになり、後で知られたときの責任はより重くなりかねません。内見の場で近所の人と立ち話をした買主が、契約の直前になって質問してくることもあります。

告げなくてよい側に入る家でも、聞かれたときに答える文面を、告知書の下書きと一緒に用意しておいてください。その場で言葉を探すと、日付や場所があいまいになり、かえって疑いを招きます。

建物を残す場合と取り壊す場合

観点建物を残して売る取り壊して売る
買主が向き合うもの実際の部屋と告知書の文面告知書の文面のみ
内見時の印象亡くなった場所を直接目にする亡くなった場所そのものが無い
事実を伝えること変わりはない変わりはない

心理的瑕疵を告知せずに売った後に起きる、契約不適合責任と請求の期限

告げずに売った事実を、後から買主が知ることがあります。そのときは民法の契約不適合責任として、代金の減額や契約の解除、損害賠償を求められることがあります。

引渡しから半年ほどたって、新しく住み始めた人が近所の人から昔の話を聞き、仲介した業者を通じて連絡をしてくる。告知を省いた売買が問題になるのは、たとえばこうした形です。そこから先は、売主がその事実を知っていたかどうかと、買主が知ってからどれだけたったかで、求められる中身と期限が決まります。

1. 減額・解除・損害賠償の請求は、買主が知ってから1年以内の通知が起点

民法第562条から第564条は、引き渡した物が品質などの点で契約の内容に合っていないときの定めです。買主は、追完、代金の減額、損害賠償、契約の解除を求められます(民法(e-Gov法令検索))。人が亡くなったという事情は直しようがないため、争いになるのは減額や解除、損害賠償の側です。心理的な事情が「品質」の不適合に当たるかどうかは、事案の中身と契約の内容から個別に判断されます。

そのうえで民法第566条は、品質などの不適合について通知の期限を置いています。買主が不適合を知った時から1年以内に売主へ通知しなければ、こうした請求ができなくなります。起点は引渡しの日ではなく、買主が知った日です。引渡しから5年後に近所の話で知った買主でも、その日から1年の間に通知すれば、請求の入口に立てます。

2. 知りながら告げなかった売主は、「責任を負わない」特約があっても免れない

個人の売主どうしの売買や業者が買う取引では、契約不適合責任を負わない、または期間を短くするという特約を付けることがあります。しかし民法第572条は、そうした特約があっても、売主が知りながら告げなかった事実については責任を免れないと定めています。亡くなった事実を知っている売主が、特約を付けたうえで黙っていても、守られることにはなりません。

民法第566条の1年の通知の期限にも、例外があります。売主が引渡しの時に不適合を知っていたか、重大な過失で知らなかった場合には当てはまりません。知りながら告げなかった売主は、特約でも通知の期限でも身を守れず、残る区切りは時効だけになります。

告知せずに売った後の責任追及

  1. 1

    買主が事実を知る

    引渡しの日ではなく、買主が不適合を知った日が起点になる。

  2. 2

    売主への通知

    事実を知った時から1年以内に、売主へ通知を行う。

  3. 3

    責任の追及

    通知を済ませることで、代金減額や契約解除などの請求ができる。

3. 請求できる期間は、通知の期限と消滅時効の2つで数える

通知を済ませた買主の請求にも、時効があります。民法第166条により、権利を行使できることを知った時から5年、行使できる時から10年のいずれかが過ぎると、時効にかかります。

事実を隠したこと自体が不法行為とされる場合は、民法第724条により、損害と加害者を知った時から3年、不法行為の時から20年で請求できなくなります。ここに出てくる3年は、買主の側が請求できる期間の話で、ガイドラインの「おおむね3年」とは関係がありません。売主さまの身の回りには、3年という同じ数字が別々の決まりから3つ出てきます。

  • ガイドラインのおおむね3年:賃貸の取引で、借主に告げなくてよくなる目安
  • 民法第724条の3年:不法行為の損害賠償を、損害と加害者を知った時から請求できる期間
  • 相続登記の3年:相続で不動産を取得したと知った日から、登記を申請する期限

この3つは起点も対象も違うため、どれか1つが過ぎても、ほかの2つには響きません。「3年たったから大丈夫」と考える前に、どの3年の話かを確かめてください。

契約不適合責任の通知期限

  1. 物件の引渡し

    通知期限の起点ではない

    引渡しから何年たっているかは通知期限に関係しない

  2. 買主が事実を知る

    通知期限のスタート

    後から近所の話などで告知のない事実を知った日が起点

  3. 知った時から1年以内

    売主への通知期間

    この間に通知すれば、減額や解除などを請求する入口に立つ

  4. 知った時から1年経過

    請求の権利を失う

    1年以内に通知しなければ、契約不適合責任を問えなくなる

4. 業者に売る買取でも、告知義務は発生する

心理的瑕疵物件を買取で業者に売る場合でも、売主が事実を告げる必要は変わりません。買主が業者であっても、売買契約の当事者であることは個人の買主と同じで、後から知れば同じように請求できます。業者だから事故物件に慣れているはずだ、という理由で告知が省けるわけではありません。

むしろ業者は、買い取った家を売り直すとき、宅地建物取引業者として次の買主に事実を告げる立場にあります。仕入れの時点で事実が分かっていなければ、売り直しの告知を書けません。買取の契約書に「現況のまま引き渡す」「契約不適合責任を負わない」と書かれていても、民法第572条の扱いは変わりません。

業者に売るときこそ、亡くなった時期、場所、死因、特殊清掃の有無を、売る前に書面で渡しておくことになります。伝えた事実の範囲が契約書に残れば、それ以外の点について後から争いになる余地を狭められます。

「心理的瑕疵を告知せずに売った後に起きる、契約不適合責任と請求の期限」について、そのまま聞けます。

心理的瑕疵の告知の中身を、売り出す前に書面へ落とす手順

和室の押し入れの前で、片付けのために手を動かしている家族

売り出す前に、亡くなった時期・場所・死因・特殊清掃の有無の4項目を手元の記録で確かめ、告知書に書ける形にしておきます。

片付けの途中で、警察から渡された書類や清掃業者の領収書が、ほかの郵便物と一緒に段ボールに入ったままになっていることがあります。査定を頼んだ時点でこれらが見つからないと、告知書の欄を「不明」で埋めることになります。買う人の側は、分からない部分をいちばん重い想定で値付けします。

1. 告知に書く事実を、チェック表で記録と突き合わせる

ガイドラインが告げる内容として挙げているのは、事案の発生時期(特殊清掃などをした場合は発覚時期)、場所、死因、特殊清掃などを行った場合はその旨です。この4項目に、価格に響く2つの事実を足したのが次のチェック表です。表は6行で、はじめの4行が告知書に書く項目、残りの2行が価格を決めるときに見られる事実です。

  • □ 亡くなった日、特殊清掃をした場合は見つかった日を、書類の日付で言える
  • □ 亡くなった場所を、建物のどの部屋か、敷地のどこかまで言える
  • □ 死因を、死亡診断書や死体検案書、警察からの説明の範囲で言える(分からなければ、分からないと書ける)
  • □ 特殊清掃をしたかどうかを、業者名と作業日つきで言える
  • □ 清掃のあとにした床や壁の張り替えなど、改修の範囲と時期が記録で分かる
  • □ 報道や近所での話の広がりについて、売主さま自身が知っていることを書き出してある

□が埋まらない行があっても、売り出しを止める必要はありません。埋まらない行は、告知書に「分からない」と書く行になります。無理に推測で埋めると、後で記録が出てきたときに食い違いが残ります。

時間がたつほど埋めにくくなるのは、4行目と5行目です。清掃業者や工務店の記録は、業者の側でも保存の期間が限られます。見積書や領収書が手元に無ければ、売り出しを決める前に、業者へ写しを頼んでおいてください。

2. 告知書には、分かっている事実と分からない事実を分けて書く

告知書は、仲介で売る場合は「物件状況等報告書」などの名前で、売主が物件の状態を書いて買主に渡す書面です。業者に直接売る場合も、同じ役割の書面を作り、売買契約書に添えます。ここに書いた内容が、買主に伝わる事実の範囲になります。

書く内容は、上のチェック表のはじめの4行です。ガイドラインは、亡くなった方やご遺族の名誉と生活の平穏に配慮しています。氏名、年齢、住所、家族構成、具体的な死の態様、発見の状況などは告げる必要がないとしています。たとえば「2025年8月、1階和室にて死亡。死因は病死。発見までに日数を要し、2025年9月に特殊清掃を実施」という程度で足ります。

分からない点は、分からないと書きます。「死因は警察から説明を受けていないため不明」のように、なぜ分からないのかを一言添えると、隠しているのではないことが伝わります。

書き上げた告知書は、売り出しの前に一度読み返し、チェック表の最後の行と食い違いがないかを確かめてください。広告に出たあとで文面を直すと、買う人は直した理由を気にします。

告知書に書く事実の確認項目

  • 発生・発覚の時期

    亡くなった日や見つかった日を書類で確認

  • 亡くなった場所

    建物のどの部屋か、敷地のどこか

  • 死因

    死亡診断書や警察の説明の範囲で確認

  • 特殊清掃の有無

    業者名と作業日つきで言えるか

  • 改修の範囲と時期

    清掃後の床や壁の張り替えなどの記録

  • 報道や近所での話

    売主自身が知っている広がりを書き出す

心理的瑕疵物件の売却方法を選び、告知したまま決済まで進める

建物の外観を見上げながら相談している家族(戸建て住宅の庭先で)

告知書ができたら、告知を受け止めて買う相手が多い売り方を選びます。相続した家なら、名義を移す日と決済の日を同じ予定表に置きます。

告知書を手にした段階で、売主さまの前には、仲介で個人の買主を探すか、業者に直接買い取ってもらうかの2つの道があります。どちらを選んでも告知の中身は同じです。違うのは、その告知を何人が読み、何回説明し、いつ代金が入るかです。

1. 仲介か買取かを、告知を読む相手の数で選ぶ

仲介で売る場合、広告には「告知事項あり」などと書かれ、多くの人の目に触れます。読んだ人のうち一部が内見に来て、さらにその一部が申込みをします。告知を読んで候補から外す人がいるぶん、買い手が決まるまでの時間は読みにくくなります。告知の対象にならない家や、駅に近いなど探す人の多い場所の家なら、この道で手取りを大きくできることがあります。

告知義務のある心理的瑕疵物件でも、買取なら売却まで進めやすい理由は3つあります。

  • 告知を伝える相手が1社で、事実の説明が1回で済む
  • 住むためではなく売り直しや建て替えを前提に値を付けるため、告知を理由に話が途中で止まりにくい
  • 現況のままの引渡しになり、清掃や片付けの段取りを売主さまが抱えずに済む

買取で売却するデメリットは、価格が相場より安価になることです。買い取る業者が、清掃や改修の費用、売り直すときの告知、売れるまでの期間を引き受けて値を付けるためです。どちらが手取りで多くなるかは、「不動産は買取と仲介どっち」の記事で条件ごとに比べています。ご自身が住んでいた家で起きた場合の進め方は、「事故物件の自宅を売る」の記事が近い場面です。

心理的瑕疵のある家を建物付きのまま売るときに、価格の下がり幅を抑える方法としては、次の4つがあります。

  • 告知書を広告の段階から開示し、内見や申込みのあとで買い手が引く流れを作らない
  • 清掃と改修の記録をそろえ、物理的な不具合が残っていないことを書面で示す
  • 建て替えを考える買い手や業者を相手に選び、住むために探す人に限らない
  • 国土交通省の不動産情報ライブラリで近くの取引価格を調べ、事案が無かった場合の価格を手元に置いておく

最後の行は、提示された価格がどれだけ下がっているかを測る物差しになります。物差しが無いまま話を進めると、下がり幅が妥当かどうかを判断できません。

2. 相続した家なら、相続登記の日と決済の日を一緒に決める

亡くなった方の名義のままでは、家を売ることはできません。売買の決済の日までに、相続人の名義へ移す相続登記を済ませておく必要があります。この登記は2024年4月1日から義務になり、相続で取得したと知った日から3年以内に申請することになりました(相続登記の申請義務化(法務省))。

ご自身の期限を数えるときは、相続を知った日がいつかを先に確かめてください。2025年3月に親が亡くなり、その日に知ったのであれば、期限は2028年3月です。義務化の前に亡くなった方の家でも、名義がそのままなら申請が要ります。2024年4月1日より前に相続を知っていた家の期限は、2027年3月31日です。過去の相続がどこまで含まれるかは、「相続登記の義務化と過去の相続」の記事で詳しく扱っています。

ここでの3年は、告知とは関係のない登記の期限です。売り出しの準備と並べて考えると、戸籍を集め、相続人の間で誰が引き継ぐかを決め、司法書士に登記を頼むまでに数か月かかることがあります。告知書の作成と登記の準備は、どちらかを待たずに同じ時期に始めてください。

仲介と買取の売却方法の違い

比較する点仲介で売る買取で売却する
告知を伝える相手多くの人の目に触れる1社(事実の説明は1回で済む)
買い手が決まる時間読みにくい途中で止まりにくい
清掃や片付け売主が段取りを抱える抱えずに済む(現況のまま引渡し)
価格手取りを大きくできることがある相場より安価になる

なお、この記事の税務・法務に関する記載は一般的な情報提供であり、個別の事案についての判断ではありません。適用の可否や具体的な税額については、税務署または税理士、登記については司法書士、境界や隣地との権利関係については弁護士や土地家屋調査士など、それぞれの専門家にご確認ください。当社は不動産の買主であり、税務や法律の代理はできません。

告知の範囲の判断や、売ったあとに買主から請求を受けたときの対応は、弁護士にご相談ください。

「心理的瑕疵物件の売却方法を選び、告知したまま決済まで進める」について、そのまま聞けます。

心理的瑕疵のある家を当社が買い取る場合の確認と、買い取れない条件

当社が買い取る条件・買い取れない条件と、実際の買取事例は「当社の買取基準」にまとめています。

「心理的瑕疵のある家を当社が買い取る場合の確認と、買い取れない条件」について、そのまま聞けます。

心理的瑕疵の告知と3年について、売る前に確かめる3つのこと

  • 3年で告知が終わるのは賃貸の取引だけです。 国土交通省のガイドラインは、売買について告げなくてよくなる期間を定めていません。3年待っても告知の文面は変わらず、建物の傷みと費用だけが増えていきます。
  • 自然死でも、特殊清掃をした家は告知の対象です。 原則として告知が不要なのは、特殊清掃をしていない自然死と、日常生活の中での不慮の死です。どの家でも、買主から聞かれたときは事実を答えてください。
  • 知りながら告げずに売ると、特約でも身を守れません。 民法第572条により、責任を負わない特約があっても、知りながら告げなかった事実の責任は残ります。告知書には時期・場所・死因・特殊清掃の有無を書き、分からない点は分からないと書いてください。

亡くなった方の荷物や清掃前の部屋が残ったままでも、告知の事実を書面にしていただければ当社が買い取ります。ただし、価格は仲介で売れた場合の想定より下がります。

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心理的瑕疵の告知と3年に関するよくある質問

Q1. 「心理的瑕疵物件」は何と読みますか

「しんりてきかしぶっけん」と読みます。瑕疵は、きずや欠点を指す言葉です。建物そのものに壊れた所はなくても、過去にあった出来事のために、住む人が心理的な抵抗を感じる物件を指して使われます。法律の条文に定義された言葉ではなく、不動産の取引の場で使われている言い方です。

Q2. 事故物件であることを言わずに売ると、どうなりますか

後で買主が知れば、代金の減額や契約の解除、損害賠償を求められることがあります。売主さまが事実を知っていたなら、免責の特約も1年の通知の期限も効きません。仲介した業者の側も、宅地建物取引業法にもとづく処分の対象になり得ます。請求の起点と期限は「心理的瑕疵を告知せずに売った後に起きる、契約不適合責任と請求の期限」の節のとおりです。

Q3. 告知義務違反の責任は、何年で消えますか

一つの年数で消えるわけではありません。買主が知ってからの通知の期限、民法第166条の時効、不法行為なら民法第724条の期限が、それぞれ別に数えられます。ガイドラインの「おおむね3年」は賃貸で借主に告げるかどうかの目安で、売ったあとの責任の期限とは関係がありません。売ってから何年たてば安心という線は、法律の上では引かれていないと考えてください。

Q4. 「事故物件」は、ほかにどんな言い方をされますか

取引の場では「心理的瑕疵物件」と呼ばれることが多く、売り出しの広告では「告知事項あり」と書かれているのをよく見かけます。「訳あり物件」という言い方もありますが、こちらは再建築できない家や共有の家なども含む広い呼び名です。広告で「告知事項あり」と書かれていても、何を告知するのかは告知書を読まないと分かりません。

Q5. 4大瑕疵とは何ですか

不動産の取引でよく使われる分け方で、物理的瑕疵、法律的瑕疵、環境的瑕疵、心理的瑕疵の4つを指します。物理的瑕疵は雨漏りや傾きなど建物や土地そのものの不具合、法律的瑕疵は建て替えが法令で制限されているなどの問題、環境的瑕疵は騒音やにおいなど周りの環境の問題です。法律で決められた分類ではありません。火災があった家は物理的と心理的の両方に当たることがあり、「火事の家の売却」の記事で扱っています。浸水の履歴は、「浸水した家の売却と告知義務」の記事が近い話です。

Q6. 家で倒れて病院で亡くなった場合も、告知書に書くべきですか

家の中で亡くなったのか、搬送先で亡くなったのかが、記録ではっきりしないことがあります。その場合は推測で書かず、「自宅で倒れて救急搬送され、搬送先の病院で死亡」のように、記録で確かめられる範囲を告知書に書いてください。買主から聞かれたら、告知書のその一文を読み上げて答え、記録に無いことは付け足さないでください。告げる必要があるかどうかの判断に迷うときは、売り出す前に弁護士へご相談ください。

当社の見方

土地(古家付きを含む)・築40年以上で、事故物件・古家付きの物件を当社が買い取り、販売まで終えました。

神奈川県高座郡寒川町の土地(古家付きを含む)(築40年以上)を、買取金額100万円台で買い取りました(2025年に取引)。

神奈川県秦野市の戸建て(築50年以上)も、空き家・事故物件・残置物ありの状態のまま、買取金額500万円台で買い取りました(2025年に取引)。ご相談の中では、「何年たてば告知しなくてよいのか」が気になって、売り出しをためらっている方が多くいます。当社では、告知が要るかどうかで迷っている段階でも事情をそのまま伺い、ご相談から買取価格のご提示までは目安30分です。買い取れない物件や、売らないほうがよい場合は、正直にそうお伝えしています。

当社が買い取る物件・お断りする物件と、買取価格の決まり方は、当社の買取事例76件の内訳とあわせて当社の買取基準にまとめています。

この記事について

執筆・編集
リアテクス編集部株式会社リアテクス当社(宅地建物取引業 東京都知事(1)第107888号)は物件を直接買い取る買主の立場から、売却を検討する方の判断材料となる記事を企画・編集しています。
監修
鶴野 博之鶴野 博之株式会社リアテクス 執行役員宅地建物取引士(東京)第257503号/賃貸不動産経営管理士/2級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP2級)この区分の監修を担当しています。記事の公開判断は当社が行っています(代表が定めた手順による)。確認・公開判断:鶴野 博之(株式会社リアテクス 執行役員)
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公開 更新 内容を見直したときは、この日付と改訂の内容を更新しています。情報の確認日 (出典の公的資料を開いて内容を確かめた日)
この記事の事実確認の方法
法令:地方税法、民法出典:国土交通省、法務省
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