相続した実家の建物が登記されていなくても、亡くなった方の建物は相続によって相続人に移っています。足りていないのは、その建物が誰の物かを法務局の記録に載せる手続きのほうです。建物には所有権を取得した日から1か月以内に表題登記を申請する義務があり、土地は相続登記の3年の期限で動きます。住み続けるか、売るか、壊すかによって、どこまで登記を入れるかが変わります。
相続
未登記建物を 相続したら 何を するか |登記と 売却の 手順
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「実家の建物が登記されていなかった。相続の手続きで、何から手を付ければいいのか分からない」。遺産分割で未登記建物を取得する人を決め、その人の名義で表題登記と所有権保存登記を続けて入れれば、建物の相続登記を別に申請しなくても名義が整います。壊すと決めているなら、登記を入れずに市区町村への届け出で終わることがあります。
未登記建物の表題登記を売主さまと当社のどちらが入れるかを契約の前に決め、当社が入れる場合はその費用と日数を金額の内訳に入れてお出しします。課税明細書にも載らず、建てた時期や人を示す書類も無い離れは、その建物を含めた契約日を置けません。相続した家が買い取れるかどうかだけ、先に聞く(無料)
目次(9章)
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未登記建物を 相続したら、 最初に 見る 納税通知書と 登記事項証明書
建物が未登記かどうかは、固定資産税の納税通知書に付く課税明細書と、法務局の登記事項証明書を並べると分かります。
葬儀や四十九日が一段落し、実家に届いた納税通知書の封を開けたところが、たいていの方の出発点です。課税明細書には土地と家屋が並んでいるのに、法務局で取った書類には家屋が見当たらない。この食い違いに気づいた時点で、相続の手続きの中に、建物の登記という別の作業が加わります。
未登記建物とは、 登記手続きが 一度も されず所 有者が 登記簿から 分からない 建物
登記簿の記録は、建物の所在・種類・構造・床面積を書く表題部と、所有者や抵当権を書く権利部の2つに分かれています。未登記建物は、このうち表題部を作る表題登記の手続きが一度もされていない建物を指します。法務局の記録には建物そのものが無いので、登記簿を見ても所有者は不明のままです。
ただ、所有者が誰にも分からないわけではありません。固定資産税は、登記されていない家屋についても、市区町村の家屋補充課税台帳に所有者として登録された人に課されます(地方税法第343条)。亡くなった方の名前で税の通知が届いていたなら、市区町村はその方を所有者として扱っていたことになります。
登記簿の側の状態は、1種類ではありません。表題部はあるのに権利部が無い建物、母屋は登記してあるのに増築部分や離れだけが載っていない建物も、日常では同じく未登記と呼ばれます。どの状態かで頼む専門家と費用が変わります。言葉で判断せず、書類で状態を確かめてください。
昭和の頃に住宅ローンを使わず自己資金で建てた家や、敷地の奥に後から建てた物置・作業小屋では、登記をしないまま何十年も過ぎていることがあります。借入が無ければ金融機関から登記を求められる場面がなく、税の通知だけが毎年届きます。だから相続まで、誰も気づかないのです。
登記簿の表題部と権利部の違いと、未登記建物はどちらも無い状態であることを示す
登記簿の表題部と権利部の違い
| 観点 | 表題部 | 権利部 |
|---|---|---|
| 記録する内容 | 建物の所在・種類・構造・床面積 | 所有者や抵当権 |
| 未登記建物の状態 | 一度も作られていない | 作られていない |
未登記建物の 所有者を 調べる 方法は、 課税の 記録と 登記の 記録の 2つ
1つ目の方法は、市区町村の課税の記録を見ることです。課税明細書の家屋の行で、家屋番号の欄が空いていたり「未登記」と書かれていたりすれば、その家屋は登記簿に載っていない可能性が高くなります。表記のしかたは市区町村で異なります。相続人であれば、戸籍で相続の関係を示して、亡くなった方の名寄帳や評価証明書を資産税の担当課で請求できます。
2つ目の方法は、法務局で登記の記録を見ることです。未登記の建物には家屋番号が無いので、土地の地番を手がかりに、その土地の上に登記された建物があるかを調べます。窓口で地番を伝えれば、建物の有無を確かめる手順を案内してもらえます。
2つの記録を突き合わせると、次の3通りのどれかに落ち着きます。課税の記録にも登記の記録にもある建物は、登記済みの建物です。課税の記録にだけある建物が、未登記建物です。どちらにも無い物置や車庫は、そもそも登記の対象になる建物かどうかを、土地家屋調査士に確かめるところから始まります。
書類を取りに行く前に、実家に残る古い封筒も見ておいてください。建築確認の通知書、工事の請負契約書、大工さんへの代金の領収書が出てくれば、このあとの表題登記で所有を示す材料になります。片付けの業者に家財の処分を頼む前に探すのが、いちばん確実です。
未登記建物の 相続で 最初の 手続きを 決める 診断
当てはまるものに印を付けてください。
- □ 課税明細書に、その建物の家屋の行がある
- □ 登記事項証明書に、その建物の表題部がある
- □ 登記事項証明書に、その建物の権利部(所有者の登記)がある
- □ 相続したあと、その建物に住むか、貸すか、売る予定がある
- □ 相続したあと、その建物を壊す予定がある
表題部に印が付かず、使い道が住む・貸す・売るのどれかなら、最初の手続きは土地家屋調査士に頼む表題登記です。そのあと、司法書士に頼む所有権保存登記に進みます。
表題部に印が付いて権利部に付かないなら、表題登記はすでに済んでいます。表題部の所有者の欄が亡くなった方であれば、相続人が司法書士に頼んで所有権保存登記から入ります。所有者の欄が祖父母など前の世代なら、「未登記建物の相続で、手続きと費用が重くなる3つの条件」の節にある「2. 表題部の所有者が、祖父母の名前のまま残っている」の場面に当たります。
表題部にも権利部にも印が付いたなら、その建物は未登記ではありません。土地と同じく、相続登記の3年の期限で進めます。
壊す予定に印が付き、表題部に印が付かないなら、登記を入れずに市区町村の資産税の窓口へ取り壊しを届ける道があります。課税明細書の行にも印が付かない建物は、調査士に登記の対象かどうかを聞くところからです。
未登記建物は登記簿の表題部と権利部の両方がなく、所有者が記録されていない
登記簿の構成と未登記建物の状態
| 日常で未登記と呼ばれる状態 | 表題部(所在・種類・構造・床面積) | 権利部(所有者や抵当権) |
|---|---|---|
| 未登記建物 | 無い | 無い |
| 表題部はあるが権利部が無い建物 | ある | 無い |
| 増築部分や離れが載っていない建物 | 母屋のみある | 母屋のみある |
未登記建物の 相続で 動く 期限と、 そのままに すると 危険な 理由
建物は所有権を取得した日から1か月以内の表題登記、土地は相続と取得を知った日から3年以内の相続登記が期限です。
亡くなってから半年、1年とたち、そろそろ手続きをと考え始めた時点では、建物の側の期限はすでに過ぎていることがほとんどです。それでも、ここから何もできなくなるわけではありません。2つの期限を別々に数え、間に合う方から手を打ちます。
建物は 表題登記の 1か月、 土地は 相続登記の 3年で 数える
不動産登記法は、表題登記の無い建物の所有権を取得した人に、取得の日から1か月以内の表題登記の申請を求めています(第47条第1項)。相続では亡くなった時に権利義務が相続人へ移るので(民法第896条)、葬儀や役所の届け出をしている間に1か月が過ぎてしまうのが実際の姿です。
土地や、すでに所有者の登記がある建物には、相続登記の義務がかかります(不動産登記法第76条の2第1項)。こちらは所有権の登記名義人が亡くなった場合の決まりです。登記名義人のいない未登記建物には当たりません。建物の義務は表題登記の1か月、土地の義務は相続登記の3年と、別々に数えます。
| 対象 | 申請の期限と数え始め | 定めている条文 |
|---|---|---|
| 表題登記の無い建物 | 所有権を取得した日から1か月以内 | 不動産登記法第47条第1項 |
| 所有者の登記がある土地・建物 | 相続の開始と取得を知った日から3年以内 | 不動産登記法第76条の2第1項 |
| どちらかの申請を怠ったとき | 正当な理由が無ければ10万円以下の過料 | 不動産登記法第164条 |
表題登記のあとに入れる所有権保存登記には、申請の期限がありません。義務になっているのは建物を記録に載せる表題登記までで、権利部を作るかどうかは所有者の判断に任されています。条文は不動産登記法(e-Gov法令検索)で確かめられます。
1か月を過ぎていても、表題登記を申請する道が閉じるわけではありません。期限を知った時点で、遅れた分を取り戻すつもりで手続きを始めるのが順番です。
2024年4月1日より 前の 相続でも、 土地の 相続登記は 期限に 入る
相続登記の申請義務は2024年4月1日に始まりました。法務省の案内では、この日より前に相続で取得したと知っていた不動産で、相続登記がまだのものは、2027年3月31日までに申請が要るとされています。たとえば2019年に父親が亡くなり、実家の土地が父親の名義のままなら、その土地の期限は2027年3月31日です。
同じ実家の建物が未登記なら、建物の表題登記の1か月は2019年のうちに過ぎています。土地には2027年3月31日という期限が先に控え、建物は期限を過ぎたまま残っている。2つの期限は、こうして別々の位置にあります。
遺産分割の話し合いが期限までに終わりそうにないときは、土地について相続人申告登記を使えます(不動産登記法第76条の3第1項)。登記官に、相続が始まったことと自分が相続人であることを申し出る手続きで、申し出た人は相続登記の義務を果たしたものとされます。ただし土地の名義が相続人に移るわけではないので、売るときには改めて相続登記が要ります。
死亡届や年金、預金の手続きと並べて期限の順を見たいときは、「親が亡くなった後の家の手続き」の記事で全体の一覧を確かめられます。
未登記建物の1か月と登記済み不動産の3年の期限の違い、過料、期限のない保存登記
建物と土地で異なる登記の期限と罰則
未登記建物の表題登記
所有権を取得した日から1か月以内(不動産登記法第47条第1項)
登記済み土地・建物の相続登記
相続の開始と取得を知った日から3年以内(不動産登記法第76条の2第1項)
申請を怠ったときの罰則
正当な理由が無ければ10万円以下の過料(不動産登記法第164条)
所有権保存登記
表題登記のあとに入れる手続きで、申請の期限はない
相続した 未登記建物を そのままに すると 危険な 理由
未登記のままにしておくと危険なのは、時間がたつほど、建物が誰の物かを示す材料が減り、示す相手が増えるという理由からです。建てた大工さんの領収書や建築確認の書類は、家の片付けのときに捨てられやすく、年数がたつほど残りにくくなります。
相続人の側も変わります。遺産分割をしないうちに相続人の1人が亡くなると、その人の配偶者や子が話し合いに加わります。未登記建物を誰が取得するかを書く書面に、判を押す人が増えていきます。
売る場面では、買主の選び方そのものが狭まります。貸す場面でも、建物を担保に修繕の資金を借りることはできません。持ち主として不自由が出るという問題は、ここから始まります。
登記が無くても、建物の所有者が相続人であることは変わりません。屋根材が飛んで隣家を傷つけた、塀が倒れて通行人がけがをした、といった事故の責任は、登記の有無と関係なく所有者に向かいます。責任を負う条件は「空き家の放置で責任と賠償を負う条件」の記事で場面ごとに確かめられます。
建物は取得から1か月以内、土地は相続を知ってから3年以内と別々に期限を数える
建物と土地の登記の期限
建物の所有権取得日
1か月以内に表題登記
未登記建物は取得の日から1か月が申請の期限
土地の相続・取得を知った日
3年以内に相続登記
所有者の登記がある土地・建物の申請期限
申請を怠ったとき
10万円以下の過料
正当な理由なくどちらかの申請をしない場合
表題登記のあと
所有権保存登記は期限なし
権利部を作るかは所有者の判断に任される
「未登記建物の相続で動く期限と、そのままにすると危険な理由」について、そのまま聞けます。
未登記建物を 相続した あとの 使い道で、 手続きが 3通りに 分かれる
住む・貸すなら表題登記と保存登記まで、売るなら買主と順番を決め、壊すなら市区町村への届け出で終わることがあります。
相続人の間で「この家をどうするか」がまだ話の途中でも、使い道の見当だけは先に付けておくと、最初に頼む専門家が決まります。調査士に頼むのか、司法書士に頼むのか、市区町村の窓口に行けば足りるのか。ここを決めずに動くと、要らない費用を先に払うことになります。
1. 住み続ける ・貸すなら、 表題登記と 所有権保存登記まで 入れる
実家に家族が住み続ける場合や、人に貸す場合は、表題登記で建物を記録に載せたあと、所有権保存登記で権利部まで作っておきます。表題部に所有者の名前が載っても、それだけでは権利の登記になりません。売るときや借入の担保にするときには、保存登記が求められます。
手順の要は、遺産分割で建物を取得した相続人を、表題登記の申請人にすることです。その人を所有者として表題登記を入れ、続けて同じ人の名義で保存登記をすれば、亡くなった方の名義を経由しません。建物について相続の移転登記を別に申請する必要がなく、登録免許税も保存登記の分だけで済みます。
住み続ける家でも、相続人の子の代になってから同じ手続きをするより、書類がそろっている今のほうが手間は少なく済みます。改修の資金を借りる予定があるなら、工事の契約より先に登記の段取りを付けてください。
未登記建物の手続きは、住む・貸す、売る、壊すの3つの使い道によって分かれる
使い道で分かれる3つの手続き
1. 取得者を決める
遺産分割で建物を取得する相続人を決める
2. 表題登記
取得した人を申請人として建物を記録に載せる
3. 所有権保存登記
続けて同じ人の名義で権利部を作る
2. 売るなら、 登記を 済ませてから 売るか、 買主と 順番を 決めて 売る
売る場合は、誰に売るかで登記の順番が変わります。仲介で一般の買主を探すなら、買主の多くは住宅ローンを使います。金融機関が建物の登記を担保の前提にするので、決済の日までに表題登記と保存登記を済ませておくことになります。
この順番では、調査士と司法書士の作業が売り出しの準備と並んで進みます。売り出す前に登記を終えておくと、買主が見つかってから決済までの日程が読みやすくなります。逆に、買主が決まってから登記を始めると、測量や書類の不足で決済の日が延びることがあります。
事業者が自己資金で買う場合は、売主が登記を入れてから引き渡すか、引き渡しを受けた買主が自分で表題登記を入れるかを、契約の前に話し合って決められます。どちらが入れるにしても、その費用と日数は、価格か日程のどちらかに表れます。
いずれの場合も、未登記建物を誰が相続したかを書いた遺産分割協議書は先に要ります。相続した家を売ったときの譲渡所得の特別控除を使うかどうかには、売る時期の期限と家屋の要件が絡みます。使えるかの判定は「空き家3000万円控除の条件」の記事で項目ごとに確かめられます。
3. 解体するなら、 市区町村への 家屋滅失の 届け出で 終わる ことが ある
建物を壊すと決めているなら、未登記建物に表題登記を入れてから壊す必要は、通常ありません。法務局の記録にもともと無い建物なので、消す登記もないのです。代わりに、課税の記録から外してもらうため、市区町村の資産税の窓口へ取り壊したことを届けます。届けの名前や書式は、家屋滅失届など自治体ごとに異なります。
母屋は登記してあり、離れだけが未登記という実家では、届け先が2つに分かれます。母屋を壊したら法務局へ建物の滅失の登記を申請し(不動産登記法第57条)、離れは市区町村へ届けます。届け先を取り違えると、壊した建物に翌年度も税がかかる原因になります。
壊す時期は税にも響きます。固定資産税は1月1日時点の状態をもとに課されるので、年内に壊すと翌年度から住宅用地の特例の対象から外れ、土地の税が上がります(地方税法第349条の3の2)。建物を壊しても、土地の相続登記の3年の期限は残ります。解体の見積りの見方と、壊して売るか現況で売るかの比べ方は、「空き家の解体費用はいくらかかるか」の記事で確かめられます。
遺産分割で取得者を決めた後、同じ人の名義で表題登記と保存登記を続けて入れる
住む・貸す場合の登記の手順
- 1
遺産分割で取得者を決める
建物を取得する相続人を決めて表題登記の申請人にする。
- 2
取得した人の名義で表題登記
亡くなった方を経由せず、取得者を所有者として記録に載せる。
- 3
続けて所有権保存登記
同じ人の名義で権利部を作る。登録免許税は保存登記の分だけ。
未登記建物の 相続で、 手続きと 費用が 重くなる 3つの 条件

増築部分だけが未登記のとき、表題部の所有者が前の世代のまま残るとき、遺産分割協議書に建物が無いときに手間が増えます。
登記事項証明書を取ってみて、思っていた形と違っていた場面がここに当たります。どれも手続き自体はできますが、関わる人と書類が増えるぶん、日数と費用が上乗せされます。早く気づくほど、上乗せは小さくなります。
1. 増築した 部分だけが 未登記で、 登記の 床面積と 合わない
母屋の登記はあるのに、昔の増築や二階の継ぎ足しが登記に反映されていない実家は珍しくありません。この場合は表題登記ではなく、登記されている建物の床面積や構造を直す表題部の変更の登記を、土地家屋調査士に頼みます。現地で測り直し、増築部分を含めた図面を作り直す作業です。
気をつけたいのは、増築が建築確認を経ていたかどうかです。確認の書類が見つからない増築は、建ぺい率や容積率を超えている可能性を、買主側の調査で指摘されることがあります。登記は直せても、建築基準法に合っているかどうかは登記では直りません。
売る予定があるなら、増築の時期と確認の有無を、調査士に頼む段階で一緒に調べておいてください。住み続ける場合でも、将来の建て替えで同じ問題に当たります。
登記された母屋の面積と、未登記の増築部分を含んだ実際の床面積の差で手間が増える
登記と実際の床面積の差
| 観点 | 登記の床面積 | 実際の床面積 |
|---|---|---|
| 含まれる部分 | 母屋のみ | 母屋と増築・継ぎ足し部分 |
| 必要な手続き | すでに登記されている | 表題部の変更の登記 |
2. 表題部の 所有者が、 祖父母の 名前の まま 残っている
表題部だけがあり、所有者の欄に祖父や祖母の名前が書かれている建物では、保存登記を入れるのは祖父母の相続人です。祖父母の相続人の中にすでに亡くなった方がいれば、その方の相続人も加わります。相続が2回、3回と重なると、遺産分割協議に判を押す人が10人を超えることもあります。
戸籍も、祖父母の出生までさかのぼって集めます。本籍地が何度か移っていれば、請求先の役所もその数だけ増えます。人数が多い実家で、売却まで進めるにはどこまで同意が要るのかは、「数次相続で相続人が多い実家の売却」の記事で順番を追えます。
3. 遺産分割協議書に、 未登記の 建物が 書かれていない
相続人の間で協議書を作るとき、土地と、家屋番号のある建物だけを書き、未登記建物が抜けてしまうことがあります。法務局の記録をもとに財産の一覧を作ると、記録に無い建物は最初から一覧に出てこないためです。
協議書に未登記建物が書かれていないと、表題登記の申請で、その建物を相続したことを示す書類として使えません。相続人全員で、未登記建物を誰が取得するかを書いた協議書を改めて作り、実印を押して印鑑証明書を添えることになります。最初の協議書のときに、遠方の相続人から判をもらうのに苦労した家ほど、この作り直しが重くなります。
「未登記建物の相続で、手続きと費用が重くなる3つの条件」について、そのまま聞けます。
未登記建物を 相続する 人を 決め、 表題登記を 入れる 手順

最初に遺産分割協議書で未登記建物を取得する人を決め、その書面を持って土地家屋調査士に表題登記を頼みます。
戸籍がそろい始め、相続人の顔ぶれが確定した時点が着手の目安です。協議書の書き方を誤ると調査士の段で差し戻しになり、相続人全員にもう一度判をもらうことになります。
1. 遺産分割協議書に、 未登記建物を 所在・構造・床面積で 書き入れる
民法は、相続人どうしの協議で遺産を分けることを認めています(民法第907条)。未登記建物には家屋番号が無いので、協議書では課税明細書の記載をもとに建物を特定します。協議書に入れる項目は、次の4つです。
- 所在:建物が建っている土地の地番
- 種類:居宅、物置など、課税明細書の用途
- 構造:木造瓦葺平家建など
- 床面積:課税明細書の面積(測量で変わることがある旨を添える)
「未登記」であることも書き添えておくと、読み手にどの建物の話かが伝わります。相続人全員が署名して実印を押し、印鑑証明書を添えます。
税の側でも、市区町村に新しい所有者を届けます。未登記家屋の所有者が変わったことを資産税の窓口に届けると、翌年度からの納税通知書が、取得した相続人に届くようになります。届けの名前と添える書類は自治体ごとに違うので、窓口で確かめてください。土地と登記済みの建物を含めた名義変更と売却の順番は、「相続した空き家の名義変更と売却の事例」の記事で実例に沿って追えます。
遺産分割協議書に書き入れる所在・種類・床面積・構造と、書き添える補足事項
遺産分割協議書で未登記建物を特定する書き方
土地の地番で特定する「所在」
家屋番号が無い未登記建物を特定するため、建っている土地の地番を書く
課税明細書から写す「種類・床面積」
居宅や物置などの用途と面積は、課税明細書の記載をもとに書き入れる
建物の造りを示す「構造」
木造瓦葺平家建など、建物の構造を書き入れる
誤解を防ぐための「書き添え」
測量で面積が変わる可能性や、未登記の建物である旨を添えておく
2. 土地家屋調査士に 表題登記を 頼み、 所有を 示す書類を 渡す
表題登記は、建物を測って図面を作り、所有者であることを示す書類を付けて申請する手続きで、土地家屋調査士が代理で申請できます。調査士は現地で建物の外周と各階を測り、建物図面と各階平面図を作ります。申請人は、遺産分割で未登記建物を取得した相続人です。
調査士から求められやすい所有の書類は、次のとおりです。
- 建築確認の通知書と検査済証
- 工事の請負契約書と、工事代金の領収書
- 固定資産の評価証明書か、納税の記録
- 未登記建物を書き入れた遺産分割協議書と、相続人全員の印鑑証明書
- 亡くなった方の出生から死亡までの戸籍と、相続人の戸籍
建てたときの書類がそろわないことも、古い家では普通にあります。その場合にどの書類で代えるかは、調査士が法務局と相談して決めるので、手元にある物を全部渡すところから始めてください。表題登記そのものには登録免許税がかからず、費用の中心は調査士の報酬です。報酬は建物の大きさ、棟の数、書類の有無で変わるので、見積りを取って比べます。
現地の測量には、建物の中に入るための鍵の手配が要ります。遠方に住む相続人が多いなら、鍵を誰が持ち、誰が立ち会うかを協議書の段階で決めておくと、日程の調整が一度で済みます。
未登記建物を 相続人の 名義に する 保存登記と、 話し合いが 止まった ときの 手順

表題登記が済んだら同じ人の名義で保存登記を司法書士に頼み、登録免許税は国税庁の税額表の1000分の4で見込みます。
調査士から表題登記が終わったと連絡が来た時点が、この段の始まりです。表題部の所有者の欄に、取得した相続人の名前が載ったことを登記事項証明書で確かめてから、司法書士に引き継ぎます。
1. 所有権保存登記を 司法書士に 頼み、 登録免許税を 1000分の 4で 試算する
国税庁の登録免許税の税額表では、所有権の保存登記も、相続による所有権の移転登記も、税率は不動産の価額の1000分の4です(No.7191 登録免許税の税額表(国税庁))。価額には、固定資産税の評価額をもとにした金額が使われます。
同じ税額表の税率で試算すると、次のとおりです。
- 建物の評価額が300万円なら、300万円 × 1000分の4 = 1万2,000円が保存登記の税額
- 土地の評価額が1,500万円なら、1,500万円 × 1000分の4 = 6万円が土地の相続登記の税額
ここに司法書士の報酬と、証明書を取る費用が加わります。回り道をして、亡くなった方の名義で保存登記まで入れてから相続人へ移すと、建物について保存と移転の両方に税額表の1000分の4がかかります。取得した相続人の名義で直接入れる順番になっているかを、依頼のときに司法書士と確かめてください。
取得者名義で直接入れる場合と故人を経由する場合で登録免許税の負担が変わる
保存登記を入れる順番の違い
| 観点 | 相続人の名義で直接入れる | 亡くなった方の名義を経由する |
|---|---|---|
| 登記の回数 | 保存登記の1回 | 保存登記と移転登記の2回 |
| 登録免許税の負担 | 1000分の4が1回分 | 1000分の4が2回分かかる |
2. 相続人どうしで 話が まとまらない ときは、 家庭裁判所の 手続きと 手元の 管理を 分けて 進める
協議がまとまらないときは、家庭裁判所に遺産分割の調停や審判を申し立てられます(民法第907条)。未登記建物を誰が取得するかが決まるまでは、表題登記と保存登記の申請人も決まりません。
それまでの間、建物は相続人全員の共有として扱われます(民法第898条)。固定資産税の通知は相続人の誰かに届き続けます。誰が立て替えるかと、遺産分割のときにどう精算するかを、簡単な書き付けでも残しておいてください。雨漏りの修理や草木の手入れも同じで、領収書をまとめておけば、話し合いが再開したときの材料になります。
土地については、期限が近づいたら相続人申告登記で義務を果たしておく道があります。中身は「2024年4月1日より前の相続でも、土地の相続登記は期限に入る」の節で触れたとおりで、売る段になれば、分割が決まったあとの相続登記が別に要ります。
なお、この記事の税務・法務に関する記載は一般的な情報提供であり、個別の事案についての判断ではありません。適用の可否や具体的な税額については、税務署または税理士、登記については司法書士、境界や隣地との権利関係については弁護士や土地家屋調査士など、それぞれの専門家にご確認ください。当社は不動産の買主であり、税務や法律の代理はできません。
「未登記建物を相続人の名義にする保存登記と、話し合いが止まったときの手順」について、そのまま聞けます。
相続した 未登記建物の ある 実家を、 当社が 買い取る 場合の 流れと 条件
当社が買い取る条件・買い取れない条件と、実際の買取事例は「当社の買取基準」にまとめています。
「相続した未登記建物のある実家を、当社が買い取る場合の流れと条件」について、そのまま聞けます。
未登記建物の 相続で 決める、 3つの こと
- 最初に、課税明細書と登記事項証明書を並べて、建物ごとの状態を見ます。表題部が無ければ表題登記、表題部だけなら保存登記、両方あれば相続登記の3年と、入口がそこで決まります。
- 次に、使い道を決めます。住む・貸すなら保存登記まで入れ、売るなら買主と登記の順番を決め、壊すなら登記を入れずに市区町村へ届けることがあります。
- そのうえで、遺産分割協議書に未登記建物を書き入れ、取得した人の名義で表題登記と保存登記を続けて入れます。建物の1か月はすでに過ぎていることが多いので、土地の相続登記の期限から逆に日程を組みます。
当社は、未登記建物の表題登記を誰がいつ入れるかを契約の前に決め、当社が入れる場合はその費用を内訳に入れた金額で買い取ります。
通話料無料・全国対応
時間外と定休日のお電話も担当の携帯に転送されるので、直接責任者につながります。
この先は、当社の買取窓口「買取くん」のページです(運営は同じ株式会社リアテクスです)。
未登記建物の 相続で よく ある 質問
Q1. 建物の 登記は、 いつから 義務に なったのですか
建物の表題登記を取得から1か月以内に申請する義務は、相続登記の義務化より前から、不動産登記法第47条第1項に置かれています。2024年4月1日に新しく始まったのは、所有者の登記がある土地や建物を相続したときの相続登記の義務です(相続登記の申請義務化について(法務省))。この日より前に相続を知っていた場合も対象で、期限は2027年3月31日です。未登記の建物にかかるのは表題登記の義務なので、土地とは分けて考えてください。
Q2. 古い 未登記建物を 登記すると、 費用は どの くらい かかりますか
費用は表題登記と保存登記の2段に分かれます。表題登記には登録免許税がかからず、土地家屋調査士の報酬が中心で、建物の大きさや棟の数、建てたときの書類の有無で変わります。保存登記は、評価額をもとにした価額に国税庁の税額表の1000分の4を掛けた登録免許税に、司法書士の報酬が加わります。古い建物は評価額が低いことが多く、税額より、所有を示す書類が無いときの調査の手間で費用が増えます。金額は調査士と司法書士の見積りで確かめてください。
Q3. 土地の 登記を しないと、 どうなりますか
相続した土地の相続登記は、相続の開始と取得を知った日から3年以内の申請が義務です。正当な理由が無く怠ると、10万円以下の過料の対象になります(不動産登記法第76条の2第1項・第164条)。過料とは別に、名義が亡くなった方のままでは、土地を売ることも担保にすることもできません。分割の話し合いが長引くなら、相続人申告登記を申し出て、申し出た人の義務を果たしておく方法があります。
Q4. 未登記の 建物を 相続しないと、 どうなりますか
遺産分割で誰も取得すると決めないままなら、未登記建物は相続人全員の共有のままです(民法第898条)。登記が無くても所有者であることは変わらないので、固定資産税も管理の手間も相続人に残ります。相続そのものを放棄しても、放棄の時点で実家を現に占有していた人には、次に管理する人へ引き渡すまで保存する義務が残ります(民法第940条第1項)。放棄したあとの管理の行き先は、「相続放棄しても実家の管理義務は消えない」の記事で確かめられます。
Q5. 3年以内に 相続登記を しないと、 どうなりますか
正当な理由が無く申請を怠ると、10万円以下の過料の対象になります。どのような事情が正当な理由に当たるかは、法務省の案内で例が示されています。期限に間に合わないと分かった時点で相続人申告登記を申し出れば、申し出た人は義務を果たしたものとされます。未登記建物の側にかかるのは相続登記ではなく表題登記の義務なので、土地とは別の期限として数えてください。
Q6. 相続の 手続きを 10年 そのままに すると、 どうなりますか
10年の間に相続人の誰かが亡くなれば、その人の相続人が加わり、遺産分割に判を押す人が増えます。未登記建物では、建てたときの書類や大工さんの領収書が片付けの中で失われ、表題登記で所有を示す材料が減っていきます。民法には、相続の開始から10年を過ぎた遺産分割では、生前の贈与や介護の貢献を取り分に反映させる主張を原則として認めない定めもあります。土地の相続登記の期限は10年を待たずに切れるので、少なくとも土地の手続きはその前に終える必要があります。
Q7. 未登記建物の まま でも、 相続した 実家を 売る ことは できますか
売買の契約そのものは、未登記のままでも結べます。ただ、住宅ローンを使う一般の買主に仲介で売るなら、金融機関の担保の都合で、決済までに表題登記と保存登記を済ませることになります。自己資金で買う事業者が相手なら、売主と買主のどちらが表題登記を入れるかを契約の前に決め、その費用を価格に反映させる進め方が取れます。どちらの場合も、未登記建物を誰が相続したかを書いた遺産分割協議書が先に要ります。
当社の 見方
ご相談の中では、親の家を相続して手続きを進めるうちに、建物が登記されていないことに初めて気づいたという方が多いです。当社では、相続した物件のご売却には、本人確認書類・印鑑証明書・固定資産税の納税通知書などに加えて、戸籍などの書類が追加で必要になるとお伝えしています。費用も、売買契約書の印紙代に加えて相続登記の費用がかかるのが一般的ですが、ご用意いただく書類やご負担いただく費用は個別のご案件によります。手順が多く見えて先延ばしにしてしまう方もいますが、ご相談から買取価格のご提示までは目安30分、ご契約までは目安1〜2週間、お引き渡しは早ければ2週間以内で、お引き渡しと同時にご入金します。未登記の建物が残っていて、登記を整えてから売るかどうか迷われている段階でも、全国(47都道府県)からご相談をお受けしています。買い取れない物件や、売らないほうがよい場合は正直にそうお伝えしていますので、まずは今の状態のままお話をお聞かせください。
当社が買い取る物件・お断りする物件と、買取価格の決まり方は、当社の買取事例76件の内訳とあわせて当社の買取基準にまとめています。
この記事について
- 執筆・編集
- リアテクス編集部株式会社リアテクス当社(宅地建物取引業 東京都知事(1)第107888号)は物件を直接買い取る買主の立場から、売却を検討する方の判断材料となる記事を企画・編集しています。
- 監修
鶴野 博之株式会社リアテクス 執行役員宅地建物取引士(東京)第257503号/賃貸不動産経営管理士/2級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP2級)この区分の監修を担当しています。記事の公開判断は当社が行っています(代表が定めた手順による)。確認・公開判断:鶴野 博之(株式会社リアテクス 執行役員)- 公開・更新
- 公開 更新 内容を見直したときは、この日付と改訂の内容を更新しています。情報の確認日 (出典の公的資料を開いて内容を確かめた日)
- この記事の事実確認の方法
- 法令:不動産登記法出典:国税庁、法務省
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出典(4件・に確認)
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