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相続

相続放棄した家の解体費用は誰が払うか|管理義務の行き先

公開 更新

執筆
株式会社リアテクス リアテクス編集部
監修
株式会社リアテクス 執行役員 鶴野 博之(宅地建物取引士(東京)第257503号)この区分の監修を担当しています。記事の公開判断は当社代表が行っています。
相続放棄した家の解体費用は誰が払うか|管理義務の行き先

「相続放棄をしたのに市役所から実家の解体の話が来て、費用を負担するのか分からない」。解体費用を負う立場になるかどうかは、相続放棄をした時にその家を現に占有していたかで分かれます。占有していた人には、次順位の相続人か相続財産清算人に引き渡すまで保存の責任が残ります。

当社は放棄の期限前の方や、相続人が残っている家を買主として現況のまま買い取り、解体費用と残置物の処分費を引いた金額を出します。全員の放棄が終わって売主がいない家は買い取れません。相続した家が買い取れるかどうかだけ、先に聞く(無料)

目次9章)

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相続放棄の申述が受理されても、実家の解体費用の話はそこで終わるとは限りません。分かれ目は、放棄をした時にその家を現に占有していたかどうかです。占有していなければ、解体の義務も費用の負担も生じません。鍵を預かって出入りしていた人には、家を引き渡すまで保存の責任が残り、その間に瓦や塀が崩れて隣家に損害を与えれば賠償の話になります。市区町村からの連絡も、放棄の事実を書面で伝えて止まる場合と、次順位の相続人か相続財産清算人に引き渡すまで続く場合に分かれます。

相続放棄で消える義務と、解体費用の前に残る保存義務

相続の放棄をした人は、その相続については初めから相続人とならなかったものとみなされます(民法第939条)。被相続人の借入も、未払いの税も、原則として引き継ぎません。それでも解体費用の話が残るのは、相続人であるかどうかとは別に、その家という物を今だれが持っているのかという問題があるからです。

放棄しても、占有していた家は手元に残ったままになる

2023年4月1日に施行された改正民法第940条第1項は、放棄の時点で相続財産を現に占有していた人に限って、保存の責任を負わせています。渡す相手は相続人または相続財産清算人で、その引渡しが済むまでの間、自分の物を扱うときと同じ程度の注意で財産を維持することが求められます(民法(e-Gov法令検索))。改正前の条文は「相続人が管理を始めることができるまで」という書き方で、現地に行ったこともない相続人まで管理義務を負うのかが読み取りにくい形でした。

改正で輪郭がはっきりしたのは3つです。責任を負うのは現に占有していた人だけであること、その責任は引渡しが済むまで続くこと、渡せる相手が次順位の相続人か家庭裁判所の選んだ相続財産清算人に限られることです。市区町村の担当課や隣地の所有者に鍵を置いていっても、義務はそこで終わりません。義務の中身は、「相続放棄しても実家の管理義務は消えない」の記事で条文に沿って整理しています。

現に占有していると見られやすい行為

  • 同居しそのまま住む

    被相続人と同居しており、放棄後もそのまま住み続けている状態。

  • 鍵を持ち出入りする

    鍵を自分で管理し、施錠して出入りしている状態。

「現に占有している」に当たる行為と、当たらない行為

放棄の時の状況現に占有していたと見られやすいか
被相続人と同居していて、そのまま住んでいる見られやすい
鍵を持ち、自分で施錠して出入りしていた見られやすい
電気や水道を自分の名義で契約し続けていた見られやすい
遠方に住み、鍵も持たず一度も立ち入っていない見られにくい
葬儀の後に遺品を少し持ち帰っただけ事案により分かれる

判断の基準になるのは、放棄をした時点の状況です。放棄の前に鍵を他の相続人へ渡していれば保存義務の対象から外れる余地がありますが、鍵を持ったまま申述をすると、受理された後も引渡しまで責任が続きます。逆に、放棄をしてから親切心で草刈りや通水を続けると、そこから占有を始めたと見られる余地が生まれます。近隣への配慮と、責任を引き受けないことは、同時に成り立たない場面があります。

保存の義務は、解体して片付ける義務ではない

保存とは、今ある状態を維持して価値を減らさないことです。割れた窓を塞ぐ、門扉を施錠する、はがれかけた屋根にシートを掛けるといった行為はこの範囲に入りますが、建物を取り壊して更地にすることは財産の処分であり、保存の範囲を超えます。市区町村から危険だと言われても、放棄をした人がその工事を発注する義務は条文から出てきません。

むしろ、他人の財産になった建物を無断で壊すと、支払った費用を誰にも請求できないまま自分の負担で終わるおそれがあります。放棄をする前に取り壊した場合は、相続財産を処分したとして単純承認と扱われ、放棄そのものができなくなることもあります(民法第921条第1号)。解体の見積を集める前に、自分がいまどの立場にいるのかを先に確定させてください。

保存義務を負う人と引渡しの相手

  1. 1

    保存義務を負う人

    放棄の時に現に占有していた人だけが負う

  2. 2

    引渡しの相手

    次順位の相続人か相続財産清算人のどちらか

  3. 3

    義務の終わり

    引渡しの相手が現れるまで責任が続く

相続放棄した家の解体費用が請求される3つの経路

住宅街にある古い家の前で、家族が隣の家との距離や敷地の境界を指差しながら話し合っている様子

費用の話が放棄した人に届くのは、解体の義務があるからではありません。別の理由で費用が発生し、その負担者を探す過程で名前が挙がるからです。

誰も相続しない家は、清算人がいないと動かせない

相続人のあることが明らかでないときは、家庭裁判所は利害関係人または検察官の請求によって相続財産の清算人を選任します(民法第952条第1項)。2023年4月1日の改正で、従来の相続財産管理人が相続財産清算人に改められ、権利の申出と相続人の捜索の公告をまとめて行う形になりました。申立ての手続と必要書類は裁判所のウェブサイトで確認できます。

清算人が選任されると、建物の解体も土地の売却も、清算人が家庭裁判所の許可を得て進めます。相続人の全員が放棄した家は、この選任がないかぎり、だれも合法的に解体できない状態で止まります。隣地の所有者、被相続人の債権者、市区町村も利害関係人として申立てができるため、自分が動かなくても手続が始まることはあります。

申立てには予納金が必要で、金額は相続財産の内容に応じて家庭裁判所が定めます。清算人への報酬や公告の費用を相続財産から支払えないと見込まれる分を、申立てをした人が先に納める仕組みです。各地の家庭裁判所が出している申立ての案内では、財産の内容によって数十万円から100万円程度の予納を求める場合があると説明されています。換価できる預貯金がほとんどなく、土地にも買い手がつきにくい物件ほど、先に納める額は大きくなります。金額の決まり方は管轄と事案で違うので、申立てを考える段階で家庭裁判所の窓口に、必要書類とあわせて予納金の見込みを尋ねてください。財産から回収できなければ納めた分は戻らず、そのまま自己負担になります。

全員が放棄した家が国庫に帰属する流れ

  1. 申立て

    清算人の選任

    利害関係人等の請求と予納金で家庭裁判所が選ぶ

  2. 選任後

    公告と清算

    権利の申出と相続人の捜索をまとめて行う

  3. 許可後

    解体と土地の売却

    清算人が家庭裁判所の許可を得て進める

  4. 清算後

    国庫への帰属

    売却代金から費用を払い、残った財産が国へ渡る

請求の3つの経路と、自分に来る条件

経路請求してくる相手自分に来る条件
建物の危険で生じた損害の賠償隣地の所有者・通行人放棄の時に現に占有していた
行政が代執行した解体の費用市区町村所有者等として命令を受けた
清算手続の費用と予納金家庭裁判所(申立人が負担)自分が選任を申し立てた

1行目の根拠は民法第717条の土地工作物責任です。工作物の設置または保存に瑕疵があって他人に損害が生じたときは、まず占有者が賠償し、占有者が損害の発生を防ぐのに必要な注意をしていたときは所有者が負います。放棄をしても、現に占有している間はこの占有者の側に立ちます。

2行目の命令の相手は「所有者等」、つまり所有者または管理者です。放棄をした人は所有者ではありませんが、鍵を持って出入りしていた実態があると、管理者として扱われる余地が残ります。3行目だけは自分の判断で選ぶ費用で、ここに踏み込むかどうかが分かれ目になります。

固定資産税の通知が届いても、放棄した人の負担ではない

固定資産税は、毎年1月1日の時点で登記上の所有者となっている人に課され、その名義人が賦課期日より前に亡くなっている場合は、現にその不動産を所有している人が納税義務者として扱われます(地方税法第343条第1項・第2項)。被相続人が年内に亡くなっていると、市区町村が法定相続人を現に所有している者とみて、全員に連帯しての納付を求める運用をとることがあります。ただし相続の放棄をした人は、民法第939条によりその相続について初めから相続人でなかったものとみなされるため、この「現に所有している者」には当たりません。

それでも納税通知書が届くのは、課税台帳が被相続人の名義のまま残り、戸籍から拾った相続人へ機械的に送られるからです。届いたときは、相続放棄申述受理通知書または受理証明書の写しを添えて、課税を担当する課に事情を伝えてください。気をつけたいのは払う原資です。被相続人の預金から納めると、相続財産の一部を処分したもの(民法第921条第1号)と見られる余地があり、放棄が認められない材料になりかねません。自分の財産から払った場合まで同じ扱いになるかは事案により、法定単純承認に当たらないと解される場面もありますが、申述の前後であれば、納付する前に弁護士か家庭裁判所の窓口に確かめる方が安全です。

「相続放棄した家の解体費用が請求される3つの経路」について、そのまま聞けます。

相続放棄した家の解体費用が自分に来るかどうかの5つの分かれ目

庭木が伸びた古い家を、道路の向かい側から周囲の街並みとともに広く見渡した構図

同じ「放棄した実家」でも、費用の話が自分のところで止まるか先へ進むかは条件で決まります。

1. 放棄の時に、その家を現に占有していたか

占有していなければ、保存義務も工作物責任の占有者としての立場も生じません。連絡が来ても、放棄が受理された日、鍵を持っていないこと、一度も立ち入っていないことを書面で返せば、そこで終わる場合がほとんどです。占有していた場合は、引渡しが終わるまで責任が続くため、次の2番へ進みます。

解体費用が自分に来るかどうかの分かれ目

  1. 1

    占有していない場合

    保存義務は生じず、書面で返せば終わる

  2. 2

    占有していた場合

    引渡しが終わるまで責任が続き、次へ進む

2. 次順位の相続人がいるか、全員が放棄したか

第一順位の子が全員放棄すると、次は被相続人の親などの直系尊属、その次が兄弟姉妹へ移り、兄弟姉妹が先に亡くなっていれば甥や姪が相続人になります。引き渡す相手が存在するかぎり、保存義務はその人への引渡しで終わります。誰がどこまで放棄したのかを追う方法は、「数次相続で相続人が多い実家の売却」の記事にまとめました。放棄が連鎖して相続人が一人もいなくなった場合だけ、清算人の話になります。

3. 建物が隣家や道路に危険を及ぼしているか

瓦が落ちる、外壁が剥がれる、ブロック塀が傾く、庭木が道路にはみ出しているという状態は、損害が現実に発生する前でも近隣からの申入れの理由になります。占有している立場では、この段階で最小限の手当てをする方が支出は小さくなります。シートを張る、塀の危険な部分だけを除く、門を施錠するといった処置は、建物の解体とは桁が違う金額で済みます。

4. 自治体の手続がどこまで進んでいるか

空家等対策の推進に関する特別措置法は、そのまま放置すれば倒壊などのおそれがある空き家を特定空家等とし、助言または指導、勧告、命令、行政代執行の順で措置を定めています(同法第22条)。2023年12月13日に施行された改正では、その前段の区分として管理不全空家等が設けられ、勧告を受けると土地の固定資産税の住宅用地特例から外れます(空き家対策(国土交通省))。

この税の不利益は納税義務者に生じるもので、放棄をした人には及びません。見ておくべきは命令と代執行で、義務者が応じない場合に市区町村が工事を行い、費用を義務者から徴収します。所有者等を特定できないときは略式代執行が行われ、費用は後で判明した義務者に請求されます。自分が所有者等に当たらないことを早い段階で伝えているかどうかで、後の手間が変わります。

5. 相続財産清算人の選任を、自分から申し立てるか

占有していて引き渡す相手がいない場合、保存義務を終わらせる方法は清算人への引渡ししかありません。申し立てれば予納金という金額の分かる支出が生じ、申し立てなければ、終わりの見えない保存義務と、危険が現実化したときの賠償の可能性が残ります。土地に売却の見込みがあれば清算の費用は財産から回収される余地がありますが、見込みがなければ予納金は戻りません。

解体費用の見積で金額が動く条件と、内訳の読めない部分

居間のテーブルを家族で囲み、家の片付けや解体の段取りについて身振り手振りを交えて相談している様子

先に相場を知りたくなる場面ですが、同じ延床面積でも搬入路と廃棄物の中身で見積は大きく変わります。坪当たりの単価を当てはめて資金の計画を立てると、着工後に足が出ます。構造別と地域別の目安は「空き家の解体費用はいくらかかるか」の記事にあります。

1. 見積書は4つの群に分かれ、比べられるのは群ごと

中身
本体工事建物の解体、基礎の撤去、養生、重機の回送
廃棄物の処分木くず・コンクリート塊・石膏ボード・混合廃棄物の運搬と処分
付帯工事ブロック塀、門扉、カーポート、物置、浄化槽、井戸、庭木、墓石
調査・届出石綿の事前調査、建設リサイクル法の届出、建物滅失登記

2社の見積を比べるときは、この4つの群ごとに並べてください。総額だけを見ると、安い側に付帯工事が入っていないだけという場合があります。床面積80平方メートル以上の建築物の解体工事は、建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律により分別解体と再資源化が義務づけられ、工事着手の7日前までに都道府県へ届け出ます。業者が代行しても、届出の義務者は発注者の側です。

2. 石綿の事前調査は法律上の義務で、費用に必ず含まれる

大気汚染防止法第18条の15により、解体や改修の工事では石綿を含む建材の有無を事前に調査し、一定規模以上の工事は結果を都道府県などへ報告することが義務づけられています。報告の義務は2022年4月1日に始まり、2023年10月1日からは調査を行う者に石綿含有建材調査者などの資格が求められます(石綿に関する情報(環境省))。

調査そのものの費用は小さくても、除去が必要になると金額の桁が変わります。石綿を含む建材は2006年9月に製造と使用が原則禁止されるまで広く使われていたため、それ以前に建てられた家では、屋根のスレート材、外壁や天井の吹付け材、配管の保温材に残っている可能性があります。見積書に石綿を含まない前提と注記されている場合は、それが調査前に置いた仮の条件なのか、事前調査で非含有と判明した結果なのかを業者に確かめてください。前者であれば、調査の結果しだいで金額は増えます。

3. 搬入路の幅と隣地との距離で、手作業の割合が変わる

前面道路が狭くて重機やダンプが入らない家では、小型の機械と手作業の比率が上がり、廃材の搬出も小分けになります。幅員が4メートルに満たず2トン車しか入れない敷地では、運搬の回数が増えた分だけ処分費とは別に運搬費が積み上がります。隣家との距離が数十センチしかない敷地では、仮囲いと防音シートを密に組んだうえで部分的に手で壊すため、同じ建物でも工期が延びます。旗竿地や私道の奥にある家では、工事車両の通行と駐車について、隣地の承諾を得るところから始まります。

見積書を比較するための4つの群

  • 本体工事

    建物の解体や基礎の撤去、養生、重機の回送など基本となる工事。

  • 廃棄物の処分

    木くずやコンクリート塊など、解体で出た廃棄物の運搬と処分。

  • 付帯工事

    ブロック塀や浄化槽、庭木など、建物以外の撤去にかかる工事。

  • 調査・届出

    石綿の事前調査やリサイクル法の届出、建物滅失登記の手続。

4. 残置物と地中の埋設物は、着工後に増える項目

家財が残っていると、解体で出る廃棄物とは別に処分費がかかります。仏壇、金庫、タイヤ、農薬、塗料、ピアノは単価が高く、見積の時点で写真を渡していないと後から追加されます。地中から旧建物の基礎、古い浄化槽、井戸、ガラが出た場合も追加の工事です。長く使われてきた敷地では、これらが出ない前提で契約しない方が安全です。

「解体費用の見積で金額が動く条件と、内訳の読めない部分」について、そのまま聞けます。

相続放棄した家の解体費用の負担を止める4つの手順

占有していた家について責任を終わらせる作業は、書類と引渡しの記録を残す仕事です。順番を飛ばすと、自分がいつまでその家を持っていたのかを後から説明できなくなります。

1. 受理証明書を複数取り、放棄の日を確定させる

家庭裁判所は申述を受理すると、相続放棄申述受理通知書を送ります。自治体、隣地、金融機関へ示す機会が重なるため、受理証明書を必要な数だけ請求しておくと後の手間が減ります。申述をした家庭裁判所で交付を受けられ、事件番号が分かれば他の相続人の放棄の有無も照会できます。

2. 占有の状況を、日付付きで書き出す

鍵を持っているか、最後に立ち入ったのはいつか、電気と水道の契約名義は誰か、郵便物の転送をしていないか。この4点を日付とともに一枚の紙にまとめてください。占有していなかったと伝える場面でも、占有を解いた日を示す場面でも、同じ紙がそのまま使えます。現地の写真とやり取りの履歴も、日付が分かる形で保管します。

解体費用の負担を止める4つの手順

  1. 放棄の受理後

    受理証明書の取得

    放棄の日を確定させ、必要な数を揃える

  2. 引渡し前

    占有状況の記録

    鍵の有無や最終立入日を日付付きで書き出す

  3. 引渡し時

    書面での引渡し

    次順位相続人か清算人へ、署名付きの記録を残す

  4. 連絡が来た時

    事実のみの回答

    自治体や隣地へ、放棄日と引渡しの事実だけを返す

3. 次順位の相続人か清算人に、記録を残して引き渡す

引渡しは、鍵の本数と受け渡した日を書いた書面に双方が署名する形にします。口頭で渡すと、保存義務が終わった時点があいまいになります。次順位の相続人が受け取りを拒む場合は、その経緯を残したうえで、相続財産清算人の選任という道に切り替える判断になります。

4. 自治体と隣地には、事実だけを文書で返す

伝えるのは、放棄の申述が受理された日、放棄の時に占有していたかどうか、鍵と書類を誰にいつ渡したか、の3点です。解体の見積を取る、業者を紹介する、費用の一部を出すといった動きを先にすると、管理を引き受けた実態があると受け取られかねません。危険が差し迫っている場合は、自分で工事を発注せず、危険の内容を市区町村の担当課に伝えて行政の手続に乗せれば、費用を負う相手がずれずに済みます。

解体費用を出さずに相続放棄した家を手放す順番

放棄の期限が残っているなら、選べる道はもう一本あります。土地に値が付く家なら、放棄せずに売って、解体の費用と工事のリスクを買主の側に移す形です。

1. 熟慮期間の3か月のうちに、売れるかどうかを確かめる

相続の放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述します(民法第915条第1項)。調査に時間がかかる場合は、この期間の伸長を申し立てられます。いったん放棄すると撤回はできません(民法第919条第1項)。借入や保証債務がある相続では放棄が妥当な場面が多い一方、負債がなく土地に値が付く家では、売却代金から解体費用を払って手残りが出ることもあります。判断の材料は「田舎の家は相続放棄できるか」の記事に整理しています。

2. 相続登記を済ませて、売主を確定させる

相続登記は2024年4月1日に申請が義務となり、期限は不動産を相続で取得したと知った日から3年です。2024年4月1日より前に相続で取得したことを知っていた場合も対象で、その期限は2027年3月31日です(相続登記の申請義務化について(法務省))。放棄をした人はその不動産を取得していないため、この義務の対象にはなりません。

期限は人ごとに数えるので、放棄の連鎖で新たに相続人になった甥や姪にとっては、自分が相続人になったと知った日が起点です。何代か前の相続が終わっていない土地の数え方は、「相続登記の義務化と過去の相続」の記事に書きました。名義が動かないかぎり、買主がいても決済はできません。

解体費用を出さずに家を手放す順番

  1. 1

    3か月以内に確かめる

    放棄の期限前に、売って手残りが出るか探る

  2. 2

    相続登記を済ませる

    売主を確定させないと決済ができない

  3. 3

    現況のまま売る

    解体費用と工事のリスクを買主に移して手放す

3. 解体せずに、現況のまま売る

買主が土地として買う場合、解体の費用は買主の見積で価格から引かれます。売主が先に更地にして売る場合との差は手取りの額だけではなく、地中埋設物や石綿が出たときの追加費用を誰が負うかという点にあります。工事を発注した側が、その追加を引き受けます。

築年が古くても、間取りや構造材、庭の樹木に価値を見る買い手がつく地域では、古家付きのまま売り出す道もあります。ただし買い手の範囲は狭く、売れるまでの期間は読めません。その間の固定資産税と草刈りは売主の負担で続きます。更地と現況の手取りを並べた比較は「古家は解体するかそのまま売るか」の記事にあります。

放棄する場合と売却する場合の違い

観点放棄する場合売却する場合
手続の期限相続開始を知った時から3か月以内取得を知った日から3年以内に登記
解体費用と工事のリスク買主に移せない買主の側に移せる
相続登記の義務対象にはならない申請が義務になる

4. 更地にする場合は、税と補助金の時期を先に確かめる

固定資産税は1月1日の状況で決まるため、年内に解体すると翌年から建物分の税は消える一方、土地の住宅用地特例が外れます。小規模住宅用地では課税標準が6分の1に減額されているので、更地にすると土地の税額が上がります。売れるまでの期間が長引くほど、この差が積み上がります。

老朽危険空き家の除却に補助金を出している市区町村もありますが、申請できるのは所有者やその相続人に限られ、交付決定の前に着工すると対象外という要件が一般的です。相続を放棄した人は申請者になれません。要件と受付期間は自治体ごとに違うので、解体業者と契約する前に窓口で確かめてください。

5. 建物があるままでは、国庫帰属の申請はできない

相続土地国庫帰属制度は土地を国に引き取ってもらう仕組みで、建物がある土地は申請そのものができません。つまり、この制度を使うには先に解体して更地にする必要があり、解体費用を避ける手段にはなりません。承認された場合も、10年分の管理費に相当する負担金を納めます(宅地は原則20万円)。却下される土地の条件は「相続土地国庫帰属制度は使えないのか」の記事にまとめています。

なお、この記事の法務・税務に関する記載は一般的な情報提供であり、個別の事案についての判断ではありません。放棄の可否と期限の数え方、清算人の申立ては弁護士、相続登記は司法書士、固定資産税の扱いは市区町村の課税担当課に確かめてください。当社は不動産の買主であり、これらの手続を代わりに行う立場ではありません。

「解体費用を出さずに相続放棄した家を手放す順番」について、そのまま聞けます。

当社が相続放棄の前の家を買い取る場合と、解体費用の引き方

取引態様:買主(当社が自ら買い取ります)

ご相談の時点で多いのは、まだ申述をしていない方と、自分は放棄したが他の相続人が残っている方の2通りです。どちらも売主になれる人がいるため、価格の話ができます。

価格を出す前に確かめる3つ

  • 誰が相続人として残っているか。 放棄をした人は売主になれないので、誰がどこまで放棄したかを家庭裁判所の照会と戸籍で確かめます。ここが決まらないと、価格を出しても契約に進めません。
  • 解体を前提にするか、建物を残して使えるか。 解体が前提なら、本体工事と廃棄物の処分費、ブロック塀や浄化槽の付帯工事、石綿の事前調査までを見積に入れ、その合計を土地の評価から引きます。前面道路の幅員が4メートルに満たず2トン車までしか入らない敷地、隣家との離隔が数十センチで仮囲いと手壊しが増える敷地、ブロック塀と浄化槽が両方残っている家では、引く額がその分だけ大きくなります。内訳は、ご希望があれば当社が取った見積のまま数字でお見せします。
  • 建物の登記と敷地の境界。 未登記の増築部分や登記のない物置があると、滅失登記や測量の段取りが増え、決済までの日数に影響します。

空き家解体と相続に関わる制度変更の年

  • 石綿建材の使用終了2,006年
  • 事前調査の報告義務化2,022年
  • 民法の保存義務改正2,023年
  • 相続登記の申請義務化2,024年

当社が買い取れない

相続人の全員が放棄を終えていて、相続財産清算人も選任されていない家は、売買契約に署名できる人がいないためお引き受けできません。清算人が選任された後であれば、家庭裁判所の許可を前提に検討できます。解体と土留め・埋設物の費用の見込みが土地の評価を上回る家も、価格をどれだけ下げても成り立ちません。相続人の間で誰が何を取得するかが決まっていない家は、売る範囲が確定していないので、決済の日に所有権を移せません。

当社に相談しない方がよい場合を並べた「リアテクスに買取を頼むデメリット」の記事も、先にお読みいただいて構いません。放棄が妥当な相続では、買取の話より先に弁護士へ向かう方が早く終わります。

契約から決済までの進み方

自己資金で買うため、融資を受けられなかった場合に契約が白紙に戻る特約は付けません。決済の日に、代金の支払いと所有権の移転の登記を同じ日に行います。決済日は売主のご都合に合わせ、相続登記が済んでいない場合は、決済日から逆算して司法書士と日程を組みます。遠方にお住まいで現地に行けないときは、鍵をお預かりして当社だけで建物の中を確認することもできます。残置物は片付けずにそのままで結構です。

そのかわり、買取の価格は仲介で買主を探した場合の成約想定額より低くなります。解体と処分の費用、保有している間の税、再販できない場合の見込みを、当社が価格に織り込むためです。

「当社が相続放棄の前の家を買い取る場合と、解体費用の引き方」について、そのまま聞けます。

相続放棄した家の解体費用で先に確かめる3つ

  • 費用を負う立場になるかどうかは、放棄の時に現に占有していたかで分かれます。 鍵を持たず立ち入っていなければ、解体を求められる根拠はありません。同居していた人や鍵を預かっていた人には、引渡しまで民法第940条の保存義務が残り、建物の危険で損害が出れば第717条の占有者として賠償の対象になります。
  • 全員が放棄した家は、相続財産清算人を選任しないと誰も解体できません。 申立てをすれば予納金という確定した支出が生じ、しなければ終わりの見えない保存義務が残ります。土地が売れる見込みがあるかどうかで、どちらが軽いかが変わります。
  • 放棄の期限が残っているなら、売った場合の手残りを先に計算してください。 負債がなく土地に値が付く家では、解体費用と工事のリスクを買主に移す形で手放せます。放棄は撤回できないため、比べる順番はこちらが先です。

当社は買主として、残置物と傷みをそのままにした家を現況で買い取り、解体費用と処分費を引いた金額を提示します。売主が確定していない家と、解体と土留め・埋設物の費用の見込みが土地の評価を上回る家は、価格を下げてもお引き受けできません。

査定は無料・売却の義務なし
0120-829-594受付時間10:00〜19:00(水・日曜定休)

通話料無料・全国対応

この先は、当社の買取窓口「買取くん」のページです(運営は同じ株式会社リアテクスです)。

相続放棄と解体費用について、よくある質問

Q1. 相続放棄をすれば、実家の解体費用を請求されることはありませんか

放棄の時にその家を現に占有していなければ、解体を求められる根拠はありません。同居していた場合や鍵を管理していた場合は、次順位の相続人か相続財産清算人へ引き渡すまで保存の義務が残ります。保存は現状を維持する義務であって、更地にする義務ではありません。 請求される危険が現実に生じるのは、建物の瑕疵で隣家や通行人に損害が出たときで、その根拠は民法第717条の占有者としての責任です。

Q2. 市役所から解体の依頼が来ました。応じる義務はありますか

所有者でも管理者でもないなら、工事を発注する義務はありません。放棄が受理された日、占有していなかったこと、鍵の所在を書面で伝えてください。ここで見積を取ったり業者を紹介したりすると、管理を引き受けた実態があると受け取られます。 特定空家等として命令や代執行に進む手続は所有者等を相手に行われるもので、費用を請求されるのは命令の義務者です。危険の内容は、自分で工事をせず担当課に伝える形にしてください。

Q3. 相続人全員が相続放棄した家は、最後にどうなりますか

相続財産は法人として扱われ、家庭裁判所が選んだ相続財産清算人が、公告を経て債務を清算し、財産を換価します。土地や建物が売れれば代金から費用が支払われ、残った財産は国庫に帰属します。売れる見込みがない土地では、清算人が選任されないまま建物が残り続けることもあります。 隣地や自治体が困っている場合は、その人たちが利害関係人として申立てをする道があります。

Q4. 相続財産清算人の予納金は、いくら用意すればよいですか

金額は相続財産の内容に応じて家庭裁判所が定めるため、事案ごとに違います。家庭裁判所の申立ての案内では、財産の内容によって数十万円から100万円程度の予納を求める場合があると説明されています。振れ幅を決めるのは、換価できる預貯金がどれだけあるか、土地に買い手がつく見込みがあるか、建物の解体費用を財産で払えるかの3点です。申立てをする前に、管轄の家庭裁判所の窓口で、必要書類と予納金の見込みを確認してください。 財産から回収できなければ戻りません。

Q5. 解体費用が払えない場合、どの順番で考えればよいですか

まだ放棄していないなら、解体せずに現況で売って、費用を買主の側に移せるかどうかを先に確かめてください。片付けもせずに売れる条件は「空き家をそのまま売る方法」の記事に書いています。自治体の除却補助は交付決定の前に着工すると対象外になるのが一般的なので、業者と契約する前に窓口で要件を確かめてください。 すでに放棄していて占有もしていないなら、自分で費用を工面する場面ではありません。

Q6. 相続放棄をした後でも、家を売って解体費用に充てられますか

できません。放棄によって所有権を取得していないため、売買契約の売主になれず、勝手に売れば無権限の処分になります。売却の手続を進められるのは、次順位の相続人か、家庭裁判所の許可を得た相続財産清算人です。売って解体費用に充てたいという考えがある段階なら、放棄の申述をする前に売却の可能性を確かめてください。 放棄は撤回できないので、この順番を戻すことはできません。

当社の見方

解体の見積りを手にご相談に来られた方へ、当社がお伝えしていることを書いておきます。先に解体の代金を払ってから売っても、その分が売却の金額として戻るとは限りません。当社は傷んだ建物が建ったままの状態で買いますので、更地にしてからお持ちいただく必要はありません。解体と残置物の処分にかかる見込みは、金額をお出しする段階で差し引いた形でお示しします。

気をつけていただきたいのは順番です。家を引き継ぐ相続人の方がいるあいだは、その方が売主になれます。全員が手を引いた後では契約を結ぶ相手がいなくなり、当社にできることがなくなります。費用の負担を誰が負うのかという判断は、司法書士や弁護士にご確認ください。当社の役目は、値が付くかどうかを早くお伝えすることです。お調べする段階で費用はいただきませんので、迷っている時点で一度お声がけください。

この記事について

執筆・編集
リアテクス編集部株式会社リアテクス当社(宅地建物取引業 東京都知事(1)第107888号)は物件を直接買い取る買主の立場から、売却を検討する方の判断材料となる記事を企画・編集しています。
監修
鶴野 博之鶴野 博之株式会社リアテクス 執行役員宅地建物取引士(東京)第257503号/賃貸不動産経営管理士/2級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP2級)この区分の監修を担当しています。記事の公開判断は当社代表が行っています。
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