税金がかかるのは、売った代金から取得費と売るための費用を引いて、なお残る譲渡所得があるときだけです。代金そのものに税がかかるわけではありません。
譲渡所得 = 売った代金 -(取得費 + 売るための費用)- 特別控除
売値100万円と300万円における譲渡所得と所得税の金額
売値100万円の譲渡所得65万円
65万円
売値100万円の所得税9万7,500円
9万7,500円
売値300万円の譲渡所得245万円
245万円
売値300万円の所得税36万7,500円
36万7,500円
相続した家の取得費は、親が買ったときの代金を引き継ぎます。持っていた期間も、親の分を引き継いで数えます(所得税法第60条第1項)。親が家を買ったときの契約書を探すのは、このためです。
契約書が見つからないときは、売った代金の5%を取得費にできます(国税庁タックスアンサー No.3258「取得費が分からないとき」)。親が昔に高く買った家でも、書類が無ければこの5%で計算します。押し入れや金庫の書類は、捨てる前に一度見てください。
税率は、売った年の1月1日に所有期間が5年を超えていれば、所得税15%です(租税特別措置法第31条)。ここに住民税と復興特別所得税が加わります。親が長く持っていた家なら、たいていこちらに当たります。
100万円で売った場合を考えます。取得費が分からず、5%(国税庁 No.3258)の5万円としました。売るための費用が仮に30万円なら、譲渡所得は65万円です。所有期間が5年を超えていれば、所得税は15%で9万7,500円です(租税特別措置法第31条)。住民税5%と復興特別所得税を加えると、合計は約13万2,000円です。親が買った代金が分かっていても、建物の分は減価償却費を引いた額が取得費になります。そのうえで取得費と費用の合計が売値を超えれば、譲渡所得は出ません。税金もかかりません。
300万円で売った場合も同じ式です。取得費が分からず15万円、費用が仮に40万円なら、譲渡所得は245万円です。所得税は15%で36万7,500円になります(租税特別措置法第31条)。住民税5%と復興特別所得税を加えた合計は、約49万8,000円です。
ここで3,000万円の特別控除を使えれば、どちらの例も譲渡所得は0円です。対象は、被相続人が一人で住んでいた家屋とその敷地を相続した相続人です。一定の要件を満たして売却すると、譲渡所得から最大3,000万円を控除できます(租税特別措置法第35条第3項)。主な要件は次のとおりです。
- 家屋が昭和56年5月31日以前に建てられていること
- 家屋がマンションのような区分所有の建物でないこと
- 相続の直前に、亡くなった人のほかに住んでいた人がいないこと
- 相続から売るまで、貸したり、住んだり、事業に使ったりしていないこと
- 売った代金が1億円以下であること
- 相続の開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること
- 売るのが令和9年12月31日までであること
- 家屋を耐震基準に合わせるか、取り壊すこと
全部の要件と添える書類は、国税庁の「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」で確かめてください。家屋と敷地を相続で取得した人が3人以上いると、1人あたりの控除の上限は2,000万円です(国税庁 No.3306)。
数えるのは、家屋と敷地の両方を相続で取得した人です。預金だけを受け継いだきょうだいは、この人数に入りません。この上限は、2024年1月1日以後の売却に当てはまります。たとえば実家を3人の共有名義にして3人で売ると、1人あたりの控除は2,000万円までです。2人の共有名義なら、1人あたり3,000万円までです。共有にした人のうち1人だけが売る場合も、人数は家屋と敷地を取得した人の数で数えます。売却益が大きい家では、名義を何人で持つかで税額が変わることがあります。遺産分割協議書に判を押す前に、税理士に見てもらってください。売却益の見込みと、名義の人数です。名義を何人で持つかを決める前の段取りは、「実家の売却は何から始める?名義・税金・3年の期限」の記事にまとめています。
親が老人ホームに入っていた家も、一定の条件のもとで対象になります。判定の順番は「空き家3000万円控除の条件」の記事で追えます。
相続税を納めた人には、納めた相続税の一部を取得費に足せる制度もあります(租税特別措置法第39条)。こちらを使うと、3,000万円の特別控除は使えません。どちらが有利かは、両方で税額を出して比べます。控除で税金が0円になっても、確定申告は必要です。
譲渡所得が赤字になることもあります。相続した空き家の損失は、給与などほかの所得と差し引けません。自分が住んでいた家を売った損失とは、扱いが違います。
なお、この記事の税務・法務に関する記載は一般的な情報提供であり、個別の事案についての判断ではありません。適用の可否や具体的な税額については、税務署または税理士、登記については司法書士、境界や隣地との権利関係については弁護士や土地家屋調査士など、それぞれの専門家にご確認ください。当社は不動産の買主であり、税務や法律の代理はできません。