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空き家

空き家の放置に罰則はある?過料50万円になる条件

公開 更新

執筆
株式会社リアテクス リアテクス編集部
監修
株式会社リアテクス 執行役員 鶴野 博之(宅地建物取引士(東京)第257503号)
空き家の放置に罰則はある?過料50万円になる条件

「相続した実家の空き家を放置すると、どのようなペナルティがあるのか知りたい」。空き家を放置しただけで罰則はなく、50万円以下の過料が問われるのは特定空家等として受けた命令に違反したときです。その手前の勧告で、土地の固定資産税の特例が外れます。

勧告や命令の書面が届いた空き家も、片付けや解体をせず現況のまま当社が買い取ります。命令の猶予期限までに名義を移して引き渡せない家には、金額をお出ししません。この家が買い取れるかどうかだけ、先に聞く(無料)

目次(6章)

放置したままの空き家も、片付けずにそのまま相談できます

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空き家を放置しただけで、罰金や過料を科されることはありません。お金の制裁が付くのは、特定空家等として市町村長の命令を受け、それに従わなかったときです。額は50万円以下の過料です。ただ、その手前の勧告の段階で、土地の固定資産税の特例が外れます。実家の名義が亡くなった親のままなら、相続登記の過料も別の法律で走っています。

空き家の放置に罰則はある?過料50万円になる条件の要点を、定義・この記事でわかること・よくある質問の順に短くまとめた動画です。

空き家の放置に罰則はある?命令に従わないときの50万円以下の過料

放置から命令違反の過料までの流れ

  1. 1

    放置の年数

    罰則の基準ではない。3年は相続登記や税の特例など別制度の数字。

  2. 2

    勧告

    固定資産税・都市計画税の住宅用地特例が外れる。

  3. 3

    命令への違反

    市町村長の命令に従わないと50万円以下の過料の対象になる。

空家法と相続登記の過料の金額と条件

制度過料の金額過料の条件
空家法50万円以下市町村長の命令に違反したとき
相続登記10万円以下相続を知った日から3年以内に申請を怠ったとき
空き家を相続した人が、ごみが落ちていて動物が通り抜ける庭の草木を手入れしている

空き家を放置しただけでは罰則はなく、50万円以下の過料は、市町村長の命令に従わなかった所有者に限られます。

  1. 空き家を放置する(年数では罰則にならない)
  2. 助言・指導
  3. 勧告(固定資産税・都市計画税の住宅用地特例が外れる)
  4. 命令
  5. 命令に違反すると50万円以下の過料(空家法第30条第1項)

別制度の3年:相続登記の申請期限(相続を知った日から3年、怠ると10万円以下の過料)/相続空き家の3,000万円特別控除(相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで)

過料が付くのは放置の年数ではなく、命令への違反です。3年という数字は別の制度のものです。

「3年放置したら罰金」という空き家の決まりはない

何年放置したら罰金、という線は法律のどこにもありません。空き家の管理を定めているのは、空家等対策の推進に関する特別措置法です。いわゆる空家等対策特別措置法で、空家法とも呼ばれます。この法律が見るのは年数ではありません。建物と敷地の状態です。

それでも「3年」という数字はよく耳にします。混ざりやすいのは、別の制度の3年です。

1つは相続登記の申請期限です。相続で不動産を取得したと知った日から、3年以内に名義を変える登記を申請します。怠ると過料の対象になります。これは空き家かどうかに関係なく、相続した不動産すべてにかかる決まりです。

もう1つは、相続した空き家を売ったときの税の特例です。譲渡所得から最大3,000万円を差し引ける特別控除があります。売る期限が、その要件の1つです。相続開始の日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることとされています(租税特別措置法第35条第3項)。建物の耐震や取り壊しなど、ほかにも要件があります。使えるかどうかは「空き家3000万円控除の条件」の記事で判定できます。

どちらの3年も、守れなかったときの不利益は放置の罰則とは別物です。期限を過ぎても、建物の状態が保たれていれば市町村の措置は始まりません。逆に、相続から1年しかたっていなくても、屋根が落ちかけていれば措置は動きます。年数を数えるより、建物を見に行く方が先です。

空き家の罰則の対象は、命令に従わなかった所有者

空家法でお金の制裁が付く場面は2つです。1つは、特定空家等の所有者が市町村長の命令に違反したときです。このとき50万円以下の過料に処されます(空家等対策の推進に関する特別措置法(e-Gov法令検索) 第30条第1項)。もう1つは、市町村の立入調査を拒んだり妨げたりしたときで、20万円以下の過料です(空家法第30条第2項)。

過料は、行政の決まりを守らせるための金銭の制裁です。刑事罰の罰金とは性質が違い、前科にはなりません。ただし、払えば済むものでもありません。命令で求められた修繕や除却は、過料の後も残ります。そのままにすれば、市町村が代わりに工事をする段階に進みます。

命令は、ある日いきなり届くものではありません。助言・指導があり、勧告があり、そのあとに命令で、命令の前には意見を述べる機会も与えられます。封筒が届いたら、まず題名に「助言」「指導」「勧告」「命令」のどれがあるかを見て、日付と一緒に控えておきます。どこで止められるかは、章『自分の空き家は今どの段階?届いた書面と名義で罰則までの距離を確かめる』のチェック表で判定できます。

書面の宛先が誰になるかも、押さえておきます。相続人は、登記をしていなくても、相続の時から親の権利と義務を引き継ぎます(民法第896条)。相続人が複数いれば、家は全員の共有になります(民法第898条)。市町村は、固定資産税の課税の記録や戸籍から相続人を調べます。そのうえで書面を送ってきます。

空家法が措置の相手にするのは、所有者だけではありません。管理を任されている人も「所有者等」に含まれます。親戚に鍵を預けて見回りを頼んでいる場合、その人のところに市町村から連絡が行くこともあります。名義が親のままだから自分は関係ない、という考え方は通りません。

放置した空き家が社会問題とされる現状と、損をする理由

放置空き家は、持ち主一人の問題では済まないものとして扱われてきました。空き家問題が社会問題と呼ばれるのは、周りの家と道に被害が及ぶからです。

起きることは似通っています。瓦や外壁の一部が落ち、ブロック塀が傾き、伸びた草木が隣地や道路にはみ出していく。ごみが投げ込まれれば、虫や動物もすみつきます。人の出入りがない家は、放火の的にもなりがちです。

ところが、市町村は長く手を出しにくい状態にありました。持ち主が遠方に住んでいる。相続で名義が亡くなった人のまま止まっている。誰に連絡すればよいかさえ分からない家が多かったのです。そこで空家法が、市町村に調査と措置の権限を与えました。後の法改正で、特定空家等になる手前の「管理不全空家等」という区分も加わっています。

数字で見ると、総務省の令和5年住宅・土地統計調査(令和6年4月公表)では、全国の空き家は約900万戸で、住宅全体の13.8%に当たります。このうち、賃貸や売却に出しておらず別荘でもない、使い道の決まっていない空き家が約385万戸あります。相続したまま誰も住んでいない実家の多くは、この約385万戸の側に数えられています。

所有者の側から見ると、損は罰則より先にやって来ます。固定資産税は使っていなくても毎年届き、勧告を受ければその額が重くなります。窓を閉め切ったままの家は湿気で床や柱から傷み、売るときの値もそれにつれて下がります。そして誰かにけがをさせれば、負う責任は過料とは桁の違う額になりえます。

「空き家の放置に罰則はある?命令に従わないときの50万円以下の過料」について、そのまま聞けます。

放置した空き家はどこから罰則に近づく?勧告で固定資産税、命令で過料

措置の4段階で税や過料が変わる時点

  1. 1

    助言・指導

    罰則も税の変化もまだない段階。

  2. 2

    勧告

    敷地の住宅用地特例が外れ、税が変わる。

  3. 3

    命令

    違反すると50万円以下の過料が付く。

  4. 4

    行政代執行

    市町村が工事を行い、費用は所有者に請求される。

勧告の日付と住宅用地特例が外れる年度

  1. 勧告前

    助言・指導の段階

    この段階で直せば住宅用地特例はそのまま続く

  2. 勧告日

    勧告を受ける

    敷地の住宅用地特例の対象から外れる

  3. 1月1日

    年の変わり目

    勧告を受けたまま迎えると翌年度から税が重くなる

周囲の住宅街から少し離れて建つ、古い木造住宅

放置した空き家への措置は助言・指導、勧告、命令、代執行の順に重くなり、50万円以下の過料は命令に違反したときに問われます。

  1. 助言・指導:罰則も税の変化もない
  2. 勧告:敷地の住宅用地特例が外れる
  3. 命令:違反すると50万円以下の過料
  4. 行政代執行:市町村が工事をし、費用は所有者に請求される

別ルート:相続登記を怠ると10万円以下の過料(不動産登記法第164条)/人や車に損害を与えると賠償の責任(民法第717条)

措置は4段階で重くなります。登記と損害の責任は、この流れとは別の法律で動きます。

  • 特定空家等:倒壊などの危険が大きい、衛生上有害のおそれが大きい、景観を大きく損なう、生活環境の保全上放置が不適切。助言・指導、勧告、命令、代執行まで進む
  • 管理不全空家等:このままでは特定空家等になるおそれがある。指導と勧告まで

過料が出てくるのは、命令がある特定空家等の側だけです。

段階によって、所有者が受ける不利益は違います。税が変わるのは勧告です。過料が付くのは命令の違反です。家の名義の問題と、人に与えた損害の責任は、この流れとは別の法律で動いています。

1. 空き家の定義と、管理不全空家等・特定空家等の区分

空家法でいう空き家の定義は、住む・使うといった利用がされていないことが常態になっている建物と、その敷地です。敷地の立木なども含まれます。年に数回、片付けに通うだけの家も、使われない状態が続いていれば当たることがあります。マンションの1室だけが空いている場合は、通常この定義の外です。

この空家等のうち、状態が悪いものが2つの区分に分かれます。

特定空家等は、重い方の区分です。そのまま放置すれば倒壊など保安上の危険が大きいもの。衛生上有害になるおそれが大きいもの。手入れがされず景観を大きく損なっているもの。周りの生活環境を守るために、放置しておくことが不適切なもの。このどれか1つに当たれば足ります。

管理不全空家等は、その手前に置かれた区分です。今は特定空家等ではありません。ただ、適切に管理されておらず、このままでは特定空家等になるおそれがある空き家です。割れた窓ガラスがそのまま、雨どいが外れかけている、庭の草木が伸び放題、といった状態が典型です。

どちらに当たるかは、市町村が現地を見て判断します。国土交通省が、判断の目安となる指針を示しています。屋根や外壁の傷み、建物の傾き、ごみや草木の状態などが見られます。市町村は、必要があれば敷地に立ち入って調べることもできます。近所からの相談がきっかけで、調査が始まることも少なくありません。

区分によって、市町村がとれる措置が変わります。管理不全空家等に対しては、指導と勧告までです(空家法第13条)。特定空家等に対しては、助言・指導、勧告、命令、代執行まで進められます(空家法第22条)。過料が出てくるのは、命令がある特定空家等の側だけです。

2. 助言・指導から勧告へ進むと、空き家の固定資産税の特例が外れる

助言・指導の書面が届いた段階では、罰則も税の変化もありません。書面には、直してほしい箇所が書かれています。草刈り、割れた窓の補修、落ちかけた雨どいの撤去といった中身です。指摘に応じて直し、市町村に伝えれば、多くはここで止まります。

応じないまま改善がないと、勧告に進みます。勧告は、期限を示して措置を求める書面です。何をいつまでにするかが書かれています。勧告そのものに過料はありません。効いてくるのは税です。

住宅が建っている土地は、固定資産税の課税標準が下がる特例を受けています。勧告を受けた特定空家等と管理不全空家等の敷地は、この特例から外れます(地方税法(e-Gov法令検索) 第349条の3の2)。都市計画税にも同じ形の特例があり(地方税法第702条の3)、こちらも外れます。

土地の部分勧告を受ける前の固定資産税の課税標準勧告を受けた後
住宅1戸あたり200平方メートル以下の部分(小規模住宅用地)価格の6分の1特例の対象外
200平方メートルを超える部分価格の3分の1特例の対象外

課税の基準になるのは、毎年1月1日の状態です。勧告を受けたまま1月1日を迎えると、その年度の納税通知書から、特例のない計算に変わります。勧告が12月に届いたのか、2月に届いたのかで、税が重くなる年が1年ずれます。

課税標準が6分の1だった部分は、特例が外れると最大で6倍の水準に戻ります(地方税法第349条の3の2)。固定資産税の標準税率は1.4%と定められています(地方税法第350条第1項)。たとえば価格1,200万円の小規模住宅用地なら、特例のある間の課税標準は200万円で、これに1.4%をかけた固定資産税は年2万8,000円です。ただ、特例が外れても、税額がそのまま6倍の16万8,000円になるとは限りません。土地の評価や負担の調整で、上がり方は家ごとに違います。勧告から課税までの流れは「空き家の固定資産税が6倍になる条件」の記事で、計算の例とあわせて確かめられます。

3. 命令に従わない空き家は50万円以下の過料、その先に行政代執行

勧告に従わず、特に必要があると市町村長が認めると、命令が出ます。命令の前には通知が届きます。命じようとする措置の中身と理由、意見書の出し先と期限が書かれた書面です。ここで意見と、いつまでに何をするかを伝えられます。

命令には、相当の猶予期限が付きます。期限までに求められた措置をしないと、命令違反です。50万円以下の過料の対象になります(空家法第30条第1項)。命令が出たことは、現地の標識などで公示されます。近所の目にも、措置の対象になっている家だと分かる状態になります。

過料を払っても、命令は消えません。それでも措置がされなければ、市町村は行政代執行に進めます。所有者に代わって、市町村が建物を壊したり、危ない部分を取り除いたりする手続きです。

代執行にかかった費用は、所有者に請求されます。解体まで進めば、その額は過料の上限を大きく超えるのが普通です。納めなければ、税の滞納と同じやり方で財産から取り立てられます(行政代執行法)。工事の業者も工法も、所有者は選べません。

所有者が誰か分からない家では、命令を経ずに市町村が措置をとれる仕組みもあります。略式代執行と呼ばれるものです。後になって所有者が分かれば、費用はその人に請求されることになります。名義を放置していても、費用の行き先が消えるわけではありません。

4. 実家の名義が亡くなった親のままなら、相続登記の過料が別にある

空家法の流れとは別に、名義の問題で過料がかかることがあります。相続登記の申請義務です。

相続登記の申請は、2024年4月1日から義務になりました。親から家を引き継いだと知った日を起点に、3年以内に法務局へ申請します。根拠は不動産登記法第76条の2です。正当な理由なく申請しないと、10万円以下の過料の対象になります(同法第164条)。

施行日より前に親が亡くなった家にも、この義務はかかります。数え始める日は、施行日の2024年4月1日と、自分が相続したと知った日のうち、遅いほうです。そこから3年が期限です。たとえば施行日の前から相続を知っていた人は、2027年3月31日までに申請します。亡くなったのが施行日の前でも、実家を相続したと知ったのが施行日より後なら、数えるのは知った日からです。

正当な理由に当たるかどうかは、事情によって変わります。相続人がとても多く、戸籍を集めるだけで長い時間がかかる場合などが、法務省の案内に例として挙がっています。自分の事情が当たるかは、法務局で確かめられます。

名義は、空家法の書面の届き方にも響きます。名義が親のままだと、市町村は戸籍をたどって相続人を探します。実家から遠い兄弟の家に、書面が先に届くこともあります。名義を放置した場合の不利益は「土地の名義変更をしないとどうなるか」の記事で、売却との関係まで確かめられます。

5. 倒壊や落下で人や車に損害を与えたときの空き家の責任

罰則より重くなりうるのは、損害の責任です。空き家の瓦が落ちて通行人にけがをさせた。塀が倒れて隣の車を傷つけた。こうした場合の責任は、民法が定めています。

建物の設置や保存に欠陥があって他人に損害が出たとき、まず占有者が賠償の責任を負います。占有者が必要な注意を尽くしていれば、所有者が責任を負います(民法第717条)。空き家では、所有者が占有者を兼ねていることがほとんどです。所有者の責任は、注意を尽くしたと示しても免れません。

この責任には上限がなく、過料の50万円とは比べものにならない額になることもあります。市町村から書面が1通も届いていない家でも、変わりません。

備えは点検と保険です。空き家でも入れる火災保険や、他人への賠償を補う保険があります。ただ、保険は建物を直してはくれません。落ちかけた部分を先に取り除くのが、いちばん確かな備えです。責任を負う条件と賠償の考え方は「空き家の放置で責任と賠償を負う条件」の記事で確かめられます。

「放置した空き家はどこから罰則に近づく?勧告で固定資産税、命令で過料」について、そのまま聞けます。

自分の空き家は今どの段階?届いた書面と名義で罰則までの距離を確かめる

書面の段階で選べる3つの対処法

  • 管理を続ける

    助言・指導の段階で選ぶことができる

  • 解体する

    解体後1か月以内に建物の滅失の登記が必要

  • 売る

    名義を移す日が命令の猶予期限より前かが分かれ目

書面の題名と名義から罰則を判定する手順

  1. 1

    届いた書面の題名を確認

    助言・指導、勧告、命令のどれかで税や過料の近さを判定する。

  2. 2

    登記簿の名義を確認

    親のままなら相続登記の10万円以下の過料が別に走る。

  3. 3

    建物の状態を確認

    瓦や外壁が落ちかけなら、損害賠償に備えて先に撤去や補修をする。

実家の和室で、1枚の書類を手に持って確認している家族

届いた書面の題名、登記簿の名義人、建物の傷みの3つを見れば、50万円以下の過料、固定資産税、相続登記の過料、損害の賠償の責任のどれが近いかが分かります。

  1. 書面の題名を見る:助言・指導なら罰則も税の変化もなし/勧告なら固定資産税の特例が外れる/命令なら50万円以下の過料/書面なしなら次へ
  2. 登記の名義を見る:亡くなった親のままなら相続登記の10万円以下の過料が別に走る/本人に移っていれば登記の過料はなし
  3. 建物を見る:瓦・外壁・塀が落ちかけていれば損害の賠償の責任に備えて先に撤去・補修

書面の段階に応じて選ぶ対処は、次の3つです。

  • 管理を続ける:助言・指導の段階で選べる
  • 解体する:解体後に建物の滅失の登記が1か月以内に必要(不動産登記法57条)
  • 売る:名義を移す日が命令の猶予期限より前かどうかが分かれ目

どの対処が選べるかは、書面の段階で絞られます。

1. 書面の題名と名義で、空き家の段階をチェック表で判定する

最初に、市町村から届いた封筒を全部出します。読むのは本文より先に、書面の題名と日付です。「助言」「指導」「勧告」「命令」のどれが書かれているかで、段階が決まります。

次に、法務局で土地と建物の登記事項証明書を取ります。窓口のほか、郵送やインターネットでも請求できます。甲区の所有者の欄に、誰の名前があるかを見ます。

この2つを、下のチェック表に当てはめます。当てはまる行が複数あれば、全部に印を付けます。

チェックする項目当てはまるときに近いもの先にすること
書面の題名が「助言」または「指導」罰則も税の変化もまだない指摘の箇所を直し、市町村の担当課に伝える
書面の題名が「勧告」固定資産税・都市計画税の住宅用地特例が外れる勧告の日付と、年明けの1月1日までの残りを数える
意見書の出し先と期限が書かれた通知が届いた命令の手前期限までに意見書と、直す予定を出す
書面の題名が「命令」50万円以下の過料(空家法第30条第1項)猶予期限の日付を控え、間に合う手を先に決める
登記の所有者が亡くなった親のまま相続登記の10万円以下の過料(不動産登記法第164条)2024年4月1日と相続を知った日の遅い方から3年を数える
書面はないが、瓦・外壁・塀が落ちかけている損害の賠償の責任(民法第717条)落ちかけた部分の撤去や補修を先にする

書面の段階の行と、名義の行は両方に当たることがあります。勧告を受けていて、名義も親のまま。この場合、税と登記の2つが同時に走っています。期限の早い方から手を付けます。

どの行にも当たらない家もあります。書面は来ていない。名義は自分に移っている。建物にも目立つ傷みはない。それでも、使わない状態が続けば管理は求められます。誰が、年に何回見に行くかを決めておけば足ります。

題名だけでは重さが分からない書面もあります。所有者かどうかを確かめる問い合わせや、調査のお願いだけのこともあります。迷ったら、差出人の担当課に電話で聞けます。空家法に基づく措置の書面か、ただのお知らせかで、残り時間がまるで違います。

2. 段階ごとに、放置をやめる適切な対処と解決策を選ぶ

放置をやめる解決策は、管理を続ける・解体する・売るの3つで、どれが適切な対処かは書面の段階で絞られます。

助言・指導の段階なら、3つとも選べます。指摘の箇所を直して管理を続けられるなら、それで止まります。直す費用が建物の値を超えそうなら、解体か売却を考えます。急ぐ理由はまだありません。

管理を続けるなら、中身を決めておきます。窓を開けて風を通す。水を流して排水の臭いを止める。郵便物を回収する。庭の草木を境界の内側に収める。自分で通えないなら、地元の管理の請負や、シルバー人材センターの草刈りを使う方法もあります。

勧告の段階では、1月1日が区切りです。勧告で求められた措置を終えれば、勧告が取り消されることがあります。特例がいつから戻るかは、市町村の税務の担当課で確かめます。措置の費用と、特例が外れた後の税の差を並べると、どれを選ぶかが見えてきます。

命令の段階では、猶予期限が何より先です。期限までに措置を終えるか、終える見込みを示すしかありません。間に合わないと分かったら、期限の前に担当課へ相談します。黙って期限を過ぎるのが、いちばん不利な形です。

解体を選ぶなら、費用と順番を確かめます。前の道が狭い、隣家との間が狭いといった条件で、解体費は上がります。市町村によっては、危険な空き家の解体に補助金があります。工事の契約より前に申し込むよう定めている補助もあるので、担当課に先に聞きます。費用の見方は「空き家の解体費用はいくらかかるか」の記事で確かめられます。

解体の後にも手続きが残ります。解体が終わったら、その日から1か月以内に、法務局へ滅失登記を申し出ます(不動産登記法第57条)。更地には住宅がないので、住宅用地の特例は使えません。解体で措置の対象は消えても、土地の税が軽くなるわけではない点に注意します。

売るなら、書面が届いていることを買主に伝えます。名義が移った後の管理は買主が担い、直すか壊すかも買主が決めます。ただ、すでに命令が出ていて、その猶予期限が名義を移す日より前に来るなら、期限の時点の所有者である売主が命令の相手のままです。移転の後に市町村が措置をどう引き継ぐかは、担当課に確かめておきます。

3. 売却や解体の前に、空き家の書類と費用をそろえる

どの解決策を選んでも、手元に集める書類はほぼ同じです。

  • 土地と建物の登記事項証明書
  • 固定資産税の納税通知書と課税明細書
  • 市町村から届いた書面の一式(日付が分かる封筒も残す)
  • 名義が親のままなら、相続人を確かめる戸籍
  • 解体を考えるなら、2社以上の見積書

名義が親のままなら、相続登記が先に要ります。買主に名義を移すには、いったん相続人の名義にする必要があるからです。遺産の分け方がまとまらない間に使える仕組みもあります。相続人申告登記です。登記官に、相続が始まったことと自分が相続人であることを申し出ます(不動産登記法第76条の3)。法務省の相続登記の案内では、この申出で申請の義務を果たしたことになるとされています。ただし、売るにはこの申出だけでは足りず、相続登記が要ります。

費用の中心は、登記の費用と売買契約書の印紙代です。ローンを借りていた家なら抵当権の抹消、住所が古いままなら住所変更の登記が加わります。解体するなら、解体費と滅失の登記の費用です。

税も見込みます。売って利益が出れば、翌年に譲渡所得の申告をします。相続した空き家なら、見出し『「3年放置したら罰金」という空き家の決まりはない』で触れた3,000万円の特別控除が候補です。この特例は、家屋を耐震基準に合わせるか、取り壊すことも要件の1つです(租税特別措置法第35条第3項)。売る形を決める前に、税務署か税理士に確かめます。

なお、この記事の税務・法務に関する記載は一般的な情報提供であり、個別の事案についての判断ではありません。適用の可否や具体的な税額については、税務署または税理士、登記については司法書士、境界や隣地との権利関係については弁護士や土地家屋調査士など、それぞれの専門家にご確認ください。当社は不動産の買主であり、税務や法律の代理はできません。

「自分の空き家は今どの段階?届いた書面と名義で罰則までの距離を確かめる」について、そのまま聞けます。

当社が放置した空き家を買い取る流れと、お引き受けできない条件

当社が買い取る条件・買い取れない条件と、実際の買取事例は「当社の買取基準」にまとめています。

当社の見方

当社では、空き家のご相談の中で「まだ何も言われていないから大丈夫」と様子を見ているうちに、建物の傷みや草木の伸びが進んでしまったという方が多くいらっしゃいます。小さな違和感を放置すると、いずれ取り返しのつかない負担につながることもあるため、罰則を心配する段階になる前に、一度状況を整理しておくことをおすすめしています。当社では、ご相談から買取価格のご提示までが目安30分、ご契約までが目安1〜2週間です。お引き渡しは早ければ2週間以内で、お引き渡しと同時にご入金します。相続した空き家では、登記識別情報または権利証・本人確認書類・印鑑証明書・固定資産税の納税通知書に加えて、戸籍などの書類が必要になり、相続登記の費用もかかります。ご用意いただく書類やご負担いただく費用は個別のご案件によりますので、放置して手続きが重くなる前に、早めにご相談いただくほうが安心です。

「当社が放置した空き家を買い取る流れと、お引き受けできない条件」について、そのまま聞けます。

当社が買い取る物件・お断りする物件と、買取価格の決まり方は、当社の買取事例76件の内訳とあわせて当社の買取基準にまとめています。

まとめ:空き家の放置と罰則で押さえる3つのこと

  • 放置しただけで罰則はありません。50万円以下の過料は、特定空家等として受けた命令に違反したときです(空家法第30条第1項)。「3年で罰金」という決まりもありません。
  • 先に効くのは税です。勧告を受けると、敷地の住宅用地特例が外れます。勧告を受けたまま1月1日を迎えた年度から、固定資産税と都市計画税が重くなります。
  • 名義と損害は別に走ります。親の名義のままなら相続登記の10万円以下の過料があり、落下や倒壊で人に与えた損害には上限のない賠償の責任があります。

手を付ける順番は、手元の日付で決まります。勧告の書面があるなら、年明けの1月1日までに求められた措置を終えられるかを見ます。命令の書面があるなら、猶予期限の日付が最優先です。書面が1通もなく名義が親のままなら、2024年4月1日と相続を知った日の遅い方から3年を数えます。書面も名義の問題もない家は、瓦や外壁の落ちかけた部分を先に取り除くことが、損害の責任への備えになります。

売ることを考えるなら、分かれ目は、名義を買主へ移す日を命令の猶予期限より前に置けるかどうかです。置けないと分かった時点で、期限の前に市町村の担当課へ事情を伝えます。黙って期限を過ぎる形だけは避けます。

当社は勧告や命令を受けた空き家も現況のまま買い取りますが、命令の猶予期限までに引き渡せない家には金額をお出ししません。

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空き家の放置と罰則についてよくある質問

Q1. 空き家を3年放置すると、100万円以上の罰金が科されることはありますか

空家法にも不動産登記法にも、放置の年数で決まる罰金はありません。空家法の過料は、命令に違反したときの50万円以下のほか、市町村の立入調査を拒んだり妨げたりしたときの20万円以下です(空家法第30条第2項)。相続登記を怠ったときの過料は10万円以下です。100万円以上という額は、どちらの上限も超えています。

気をつけたいのは、お金の負担が過料だけではない点です。行政代執行の費用や、他人に与えた損害の賠償には、決まった上限がありません。額の大きさで比べるなら、罰則よりこちらを先に心配する必要があります。

Q2. 空き家を放置すると、固定資産税はどうなりますか

放置しているだけでは、税額は変わりません。変わるのは、市町村から勧告を受けたときです。勧告を受けた特定空家等と管理不全空家等の敷地は、住宅用地の特例から外れます(地方税法第349条の3の2)。

特例が外れるかどうかは、1月1日の状態で決まります。勧告の日付と年の変わり目の前後を確かめてください。助言・指導の書面の段階で直せば、特例はそのまま続きます。

Q3. 空き家は固定資産税が安くなるというのは本当ですか

半分は本当です。安くなっているのは「空き家だから」ではありません。「住宅が建っている土地だから」です。家が建っている間は、空き家でも住宅用地の特例を受けられます。解体して更地にすると土地の税が上がることがあるのは、このためです。

ただ、この特例は勧告を受けると、家が建ったままでも外れます。「壊さずに置いておけば税が安い」が通るのは、勧告を受けるまでの間です。

Q4. 空き家は何年放置するとダメになりますか

法律の上では、何年で特定空家等になるという線はありません。判断されるのは年数ではなく、屋根・外壁・基礎・草木などの状態です。

建物の傷み方は、換気と雨漏りで大きく変わります。窓を開けず水も流さない家は、湿気がこもって床や柱が傷みます。屋根から水が入れば、傷みは一気に進みます。何年もつかを気にするより、雨漏りの跡と床の沈みを見に行く方が確かです。

Q5. なぜ空き家を放置する人がいるのですか

理由の多くは、決めきれないことにあります。親の家を手放す気持ちの整理がつかない。兄弟で分け方が決まらない。遠方で見に行けない。売れるのか、壊すべきかが分からない。

もう1つは、放置しても当面は何も起きないように見えることです。罰則は命令の段階まで出てきません。そのため、勧告で税が上がって初めて動き出す人もいます。書面が届く前の方が、選べる対処は多く残っています。

Q6. 相続放棄をすれば、空き家の罰則や管理から外れますか

相続放棄が認められると、その相続に限っては、最初から相続人にならなかった扱いを受けます(民法第939条)。ただ、放棄の時にその家を現に占有していた人には、義務が残ります。次に管理する人へ引き渡すまで、自分の財産と同じ注意で保存しなければなりません(民法(e-Gov法令検索) 第940条第1項)。

放棄は家庭裁判所に申し出る手続きで、相続の開始を知った時から3か月以内という期限があります(民法第915条第1項)。家だけを放棄することはできず、預金など他の財産も手放すことになります。管理の義務がどこへ移るかは「相続放棄しても実家の管理義務は消えない」の記事で確かめられます。

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リアテクス編集部株式会社リアテクス当社(宅地建物取引業 東京都知事(1)第107888号)は物件を直接買い取る買主の立場から、売却を検討する方の判断材料となる記事を企画・編集しています。
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鶴野 博之鶴野 博之株式会社リアテクス 執行役員宅地建物取引士(東京)第257503号/賃貸不動産経営管理士/2級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP2級)この区分の監修を担当しています。記事の公開判断は当社が行っています(代表が定めた手順による)。確認・公開判断:鶴野 博之(株式会社リアテクス 執行役員)
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