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空き家のゆくえ買取くん

収益物件

老朽アパート・一棟物件をどう手放すか|満室で売るか空室で買取か

公開 更新

執筆
藤山 大二郎株式会社リアテクス 代表取締役CEO 藤山 大二郎
監修
株式会社リアテクス 取締役COO 薩摩 賢幸
老朽アパート・一棟物件をどう手放すか|満室で売るか空室で買取か

「空室が増えた古いアパート、満室にしてから売るべきか、このまま手放すべきか」。老朽アパートの値段は、家賃から出す見方と土地の値段から出す見方のどちらで評価されるかで決まり、満室にする意味があるかはその見極めのあとで変わります。

当社は、空室の残る一棟を現況のまま自ら引き取る側です。ただし当社は不動産の買主で、入居者の立退き交渉を代わりに行うことはできません。この物件が買い取れるかどうかだけ、先に聞く(無料)

目次(7章)

先にこの物件の買取価格のめどだけ知りたい方へ。

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この先は当社の買取窓口「買取くん」です。

管理会社から「そろそろ大規模修繕が必要です」と言われても、その金額を出す気になれない方は少なくありません。親から相続した木造アパートで空室が半分あり、家賃では修繕費が出ない。入居者は数世帯だけ残っていて、退去を待っても動かない。売却の相談をしたら「満室にしてから出したほうが高い値が付きますよ」と言われたが、その満室にする方法が思いつかない。

老朽アパートの価格は、収益還元と土地値の2つの物差しのどちらかで決まる

木造アパートの外に置かれた物置の前で、男性が伸びた雑草を刈っている
古びた木造アパートの脇で伸びた草を刈り込む人

満室にするかどうかを考える前に、「この物件は収益物件として売る出口なのか、土地として売る出口なのか」を決めてください。ここを決めないまま募集を強化したり、部分的にリフォームしたりすると、お金と時間を使ったあとで「結局、土地値でしか値が付かなかった」という順番になりかねません。利回りの相場は、その答えが出てから見れば足ります。

満室に戻してから売ったほうが手取りが多くなる物件と、空室のまま渡したほうがよい物件があります。分かれ目は、募集とリフォームにかけた費用を家賃で取り戻せるかどうかです。

取引態様:買主(当社が自ら買い取ります)/媒介(当社で買い取れない物件は、仲介で売却をお手伝いします)

この記事で「相場利回り」を出さない理由

「木造アパートなら表面利回り◯%で売れる」という数字は載せていません。

1つ目の理由は、老朽アパートの利回りは物件ごとの条件で大きく変わることです。

2つ目の理由は、老朽アパートの多くは、そもそも利回りで値が決まらないからです。土地値の物差しで見られる場合、家賃収入をいくら積み上げても価格には反映されにくくなります。逆に言えば、利回りの話をしている段階と、土地値の話をしている段階では、増やすべき努力の中身が正反対になります。

一方で、法令や省令で確定している数値は、判断材料として省きません。法定耐用年数、住宅用地特例の面積の枠、滅失登記の期限、相続登記の期限。これらはこの記事の中で条文とあわせて示します。相場のように見えて実は誰も検証できない数字と、確定している数値は、分けて扱います。

一棟物件の売却で手取りを落とす原因は、利回りの読み違いではありません。募集とリフォームに費用を投じたが入居が埋まらなかったこと、立退き交渉が想定した期間で終わらなかったこと。この2つの見通しを、先に立ててください。

2つの物差し:収益還元と土地値

価格を決める2つの物差し

観点収益還元(インカム)土地値(開発余地)
価格の計算方法純収益を投資家が求める利回りで割る土地値から解体費や対応費用などを引く
買主がお金を払う対象この建物が今後も生む家賃建物を除いた後の土地
売主と買主の認識売主が考えやすい物差し買主が見ていることが多い物差し

一棟物件の価格は、大きく次の2つの考え方で計算されます。

A:収益還元(インカム)で見る。 買主は「この建物が今後も家賃を生む」ことにお金を払います。

B:土地値(開発余地)で見る。 建物には価値を置かず、土地としていくらで売れるかを起点に、そこから建物の解体費、残っている入居者への対応費用、その間の保有コスト、そして不確実性を引いた金額を出す方法です。買主は「建物を除いた後の土地」にお金を払います。

老朽アパートの売却で起きやすい誤解は、売主はAで考えていて、買主はBで見ているというすれ違いです。この2つは金額が大きく違うことがあり、しかも「どちらの物差しになるか」は物件側の条件でほぼ決まります。

物差しの切り替わりを整理する

条件収益還元(A)で値が付きやすい土地値(B)に寄る
構造・築年法定耐用年数の範囲内法定耐用年数を超えている
入居率空室が少なく、募集で埋まっている空室が多く、長期空室が固定化
家賃水準周辺相場と乖離が小さい相場より大幅に低い長期入居が残る
修繕直近の大規模修繕が済んでいる屋根・外壁・給排水の更新が未実施
接道・再建築再建築可、同規模が建つ再建築に制限、既存不適格
容積率建て替えで拡張余地がある現況で使い切り、または超過
賃貸需要駅近・需要が継続している賃貸用空き家が多い地域

この表は「どちらが得か」の表ではありません。「買主がどの物差しを使うか」を予測する表です。 Bに寄っている物件で満室化を目指すのは、投じた費用が価格に返ってこない可能性が高い、という意味になります。

相続した一棟物件の場合、先に確認すること

売却前に確認すべきこと

  • 登記名義の確認

    被相続人のままでは所有権を買主へ移せない

  • 相続登記の期限

    取得を知った日から3年以内等の期限がある

  • 建物と土地の名義

    別になっている場合、両方の整理が必要

  • 共有かどうかの確認

    共有になっている場合、全員の合意が必要

老朽アパートの売却は、相続をきっかけに検討が始まることがあります。売却の前に、次の3点を確認してください。

登記名義。 一棟物件では、名義の問題が家賃の流れに隠れます。管理会社からの送金先が親の口座のままになっている、確定申告を誰の名前で出すか決まっていない——そういう状態でも、毎月の入金だけは続きます。だから後回しになります。しかし登記名義が被相続人のままの状態は、売却の前に整理しておきたい点です。 賃貸不動産が譲渡されると賃貸人の地位も譲受人に移る(民法第605条の2)ので、名義の整理は入居者との関係の引継ぎにも関わります。そしてここには期限が重なります。相続登記の申請は、2024年4月1日から義務化されました。期限は、相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内です。施行日より前に相続したことを知った不動産も、この義務の対象に含まれ、その場合の期限は2027年(令和9年)3月31日です(相続登記の申請義務化について(法務省))。空室が増えて収支が細っているアパートほど「急ぐ話ではない」と判断されがちですが、この期限は収支の良し悪しとは無関係に進みます。

一棟物件では、建物と土地の名義が別になっていることがあります。土地は祖父名義、建物は父名義、という形です。この場合、両方の相続関係を整理する必要があります。相続人が多いと、戸籍の収集と遺産分割協議に時間がかかります。

なお、相続放棄を検討している方から「放棄すればアパートの管理から解放されるのか」と聞かれることがありますが、放棄しても管理の義務が直ちに消えるとは限りません(放棄の時に相続財産を現に占有している人の保存の義務は民法第940条にあります)。この点は誤解が多いので、相続放棄しても実家の管理義務は消えない記事を先に確認してください。入居者がいる建物では、この論点はさらに重くなります。

共有かどうか。 相続人が複数で共有になっている場合、共有物の管理に関する事項は、持分の価格の過半数で決めるのが原則です(民法第252条)。共有者の一部が売却に反対している状態では、当社は一棟全体を買い取れません。 持分だけを売る選択はありますが、その場合の価格の考え方と後の展開は別の話になります。

賃貸借契約の引き継ぎ状況。 親が個人で管理していたアパートでは、書類が揃っていないことがあります。

  • 賃貸借契約書が全室分あるか
  • 敷金の額と、預かっているのか使ってしまったのか
  • 賃料の改定を口約束で行っていないか
  • 更新料の扱いがどうなっているか
  • 保証会社に加入しているか、連帯保証人がいるか

書類がない部分は、買主にとって判断の材料が無い部分です。 契約書が見つからない室があるなら、その事実を先に伝えてください。「探したが見つからなかった」という状態も、情報のひとつです。

税金の論点。 売却にかかる税金の扱いは、物件ごとに違います。

なお、被相続人が居住していた家屋を売った場合の特例(いわゆる空き家の3,000万円控除)は、アパートのような貸付用の建物には基本的に適用されません。 要件のひとつに「相続の時から譲渡の時まで事業・貸付け・居住の用に供されていないこと」があります。対象の家屋が「昭和56年5月31日以前に建築されたこと」も要件です。要件の正確な内容は国税庁の「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」で確認してください。

この記事の税務・法務に関する記載は一般的な情報提供であり、個別の事案についての判断ではありません。適用の可否や具体的な税額については税務署または税理士、登記については司法書士、借家契約や立退きについては弁護士、境界については土地家屋調査士に、それぞれご確認ください。

「老朽アパートの価格は、収益還元と土地値の2つの物差しのどちらかで決まる」について、そのまま聞けます。

老朽アパートが収益還元から土地値へ切り替わる6つの条件と、持ち続けた場合の負担

共有者である家族が、アパートの鉄骨の外階段の錆と共用灯の傷みを見て回っている
落ち葉の散る秋のアパートで錆びた外階段を見る二人

以下に、AとBのどちらになるかを分ける条件を、確認できる順に並べます。

条件1:構造と築年、そして法定耐用年数

建物の法定耐用年数は、構造と用途ごとに決まっています。制度の概要は国税庁の「減価償却のあらまし」、住宅用の建物の構造ごとの年数は国税庁の「主な減価償却資産の耐用年数表」で確認できます。

構造(住宅用)法定耐用年数
木造・合成樹脂造22年
木骨モルタル造20年
金属造(骨格材の肉厚3mm以下)19年
金属造(同3mm超4mm以下)27年
金属造(同4mm超)34年
れんが造・石造・ブロック造38年
鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造47年

木造アパートは22年、軽量鉄骨(肉厚3mm以下)は19年です。 築30年の木造アパートは、税務上の耐用年数をすでに8年超過している状態にあたります。中古建物の償却年数を簡便法で求める場合、法定耐用年数を全部経過した建物は「法定耐用年数×20%」(1年未満切捨て、最低2年)となるため、木造なら22年×20%=4年です(国税庁「中古資産の耐用年数」)。

条件2:入居率と、残っている入居者の属性

満室に近いほどAの物差しが効きます。逆に、空室が多く、しかも空室が長期化している場合は、家賃収入の持続性が疑われ、Bに寄ります。

さらに実務で重いのは、残っている入居者が「何人か」ではなく「どういう契約か」です。

  • 普通借家契約か、定期借家契約か
  • 家賃が周辺水準よりかなり低いまま長期入居していないか
  • 賃料の滞納がないか
  • 契約書が残っているか、更新の記録があるか
  • 高齢の単身入居者で、転居先の確保が難しい見込みがないか

普通借家契約は、貸主側から終了させるのに正当事由が必要です。契約期間が満了しても、それだけでは終わりません。「築古だから建て替えたい」という理由だけで、当然に明渡しを求められるわけではないという点は、必ず前提に置いてください。根拠となる条文は後の「入居者が残る老朽アパートの整理」の節で示します。

条件3:接道と再建築の可否

土地値の物差しになる場合、決定的なのはここです。

建築基準法は原則として、幅員4メートル以上の道路に2メートル以上接していることを建築の条件としています(条文は建築基準法(e-Gov法令検索)の第42条・第43条で読めます)。ここを満たさない土地は、第43条第2項の認定や許可を受けない限り、更地にしても建物を建て直せません。

老朽アパートは、建築当時の基準や制度で建てられているため、現在の基準ではもう同じものが建たないことがあります。建てた当時の規定に合っていた建物は、その後に規定が変わってもそのまま使い続けられます(建築基準法第3条第2項)が、建て直すときは今の基準が当てはまります。この場合、「解体して新築アパートを建てる」という出口が使えず、買主の想定が「戸建て用地」や「隣地への売却」に限定されます。

建て直せるかで変わる、売り先の広さ

観点今の基準で建て直せる既存不適格で建て直せない
買い手の使い道壊して新築アパートを建てる戸建て用地か、隣の土地の持ち主
買い手の数収益目的の買い手まで広がる使い道が限られ、少ない
先にすること接道の長さと道の幅を図面で見る所在地の建築主管課で建て直せるかを聞く

再建築の可否は、最終的に物件所在地の建築主管課で確認してください。相談の入口としては再建築不可物件はなぜ売りにくいのかの記事も参考になります。

条件4:容積率と現況の使い方

土地の面積に対して、現在の建物がどれだけ容積を使っているか。用途地域と容積率に照らして、建て替えれば今より大きな建物が建つ土地であれば、建て替えという使い道が開けます。

逆に、今の建物のほうが容積を使い切っている(あるいは超過している)土地では、建て替えのメリットが薄くなります。

条件5:耐震性と大規模修繕の残り

国土交通省は、昭和56年以前に建築された建物を、耐震基準が強化される前のいわゆる「旧耐震基準」で建てられたものとしています。国土交通省は、こうした建物について、まず耐震診断で耐震性を把握し、不十分なら耐震改修や建替えを検討するよう呼びかけています。

そして老朽アパートで金額を左右するのが、次に来る修繕の内容と時期です。屋根の葺き替え、外壁の全面塗装、鉄骨の外階段の交換、給排水管の更新、浄化槽の改修。これらは1戸ごとの内装リフォームとは桁が違います。買主は「買った直後にいくら出るか」を計算して価格を決めます。

条件6:周辺の賃貸需要

同じ築年・同じ構造でも、駅からの距離と地域の人口動態で結論が変わります。

総務省統計局の住宅・土地統計調査では、空き家数・空き家率と、その内訳(賃貸用の空き家がどれだけあるか)が5年ごとに公表されています。地域の空き家の状況を確かめる材料になります。

周辺の土地・建物の実際の取引価格は、国土交通省の不動産情報ライブラリ(不動産価格の検索)で見られます。収益物件としての需要がある地域なのか、土地として売れている地域なのかを、まずここで感触をつかんでください。

7. 保有し続ける場合、毎年いくら出ていくか

保有し続ける場合の年間コスト

  • 固定資産税・都市計画税

    住宅用地特例が効いている状態の金額

  • 建物の火災保険

    築年が進むと保険料が上がる等の場合がある

  • 管理委託料と原状回復費

    退去のたびに費用が出る

  • 修繕積立の実質

    必要になった時点で一括で出ていく

  • 空室の機会損失

    空いている室は収入ゼロで税や管理の対象

  • 入居者対応のリスク

    漏水や設備故障、近隣トラブルなど

  • 建物起因の事故のリスク

    外階段の腐食など、所有者責任が問われる

「まだ家賃が入っているから」という理由で判断を先送りする方もいます。ただ、老朽アパートの収支は、次の項目を全部書き出すと見え方が変わります。

固定資産税・都市計画税。 納税通知書に記載があります。住宅用地特例が効いている状態の金額であることを確認してください。

建物の火災保険。 入居者がいる建物を無保険で持つのは、リスクの取り方として重いです。

管理委託料と原状回復費。 退去のたびに費用が出ます。

修繕積立の実質。 屋根・外壁・給排水・外階段の更新費は、必要になった時点で一括で出ていきます。

空室の機会損失。 空いている室は収入ゼロで、税と保険と管理の対象です。

入居者対応のリスク。 漏水、設備故障、近隣トラブル。夜間の連絡が来ることもあります。遠方にお住まいの場合、この負担は金額に換算しにくい形で重くのしかかります。

建物起因の事故のリスク。 外階段の腐食、屋根材の飛散、ブロック塀の倒壊。人が住んでいるぶん、空き家より当事者が近くにいます。工作物の所有者としての責任(民法第717条)が問われる可能性があります。

これらを合計すると、この一棟を持ち続ける1年ぶんの費用が出ます。金額を出したうえで「それでも持ち続ける」と決めるなら、それは合理的な判断です。危ういのは、空室が増えていく建物の費用を数えないまま、年を重ねることです。

なお、賃貸経営が赤字で借入の返済に影響が出ている場合は、話の順序が変わります。返済が滞ってからの選択肢は狭くなるため、住宅ローン滞納から差し押さえまでの流れの記事に書いた時系列を、先に確認してください。事業用ローンでも、期限の利益喪失から先の流れの考え方は共通します。

8. 一棟物件の売却で後悔しやすい4つのパターン

売却で後悔しやすい4つのパターン

  • リフォームしたが埋まらない

    原因が設備ではなく需要や賃料水準だった

  • 賃料を下げて満室にした

    収益が変わらず、出口が遠のいた

  • 退去を待つうちに劣化が進んだ

    危険な状態になり、結局まとまった修繕費が出た

  • 自分で立退きを進め関係悪化

    相手が弁護士に相談し交渉が硬直した

順番を間違えやすいケースには、次の4つの型があります。

1つ目は、リフォームしたのに埋まらなかったパターン。 「きれいにすれば決まる」と考えて2室を全面改修した。しかし決まらなかった。原因が設備ではなく、地域の賃貸需要か、募集賃料の水準だったという場合です。投じた費用は、収益還元で評価される物件でなければ価格に返ってきません。順序としては、まず「この地域で今、同規模の物件が決まっているか」を確認してからです。

2つ目は、賃料を下げて満室にしたパターン。 満室にはなった。ところが下げた賃料で計算した収益は、以前の空室ありの状態とほとんど変わらなかった。しかも新しい普通借家契約が増え、建て替えや土地売却という出口が遠くなった。「満室」は目的ではなく、手段です。

3つ目は、退去を待つうちに劣化が進んだパターン。 募集を止めて自然退去を待った。5年経って残り1世帯になったが、その間に外階段が危険な状態になり、屋根から漏水が始まった。修繕せずに人を住ませ続けることはできず、結局まとまった修繕費を出すことになった。

4つ目は、立退きを自分で進めて関係が悪化したパターン。 「取り壊すので出てください」と手紙を出し、期限を切った。相手が弁護士に相談し、交渉が硬直した。この分野は、最初の一通の書き方で結果が変わります。進めるなら、最初から弁護士に依頼してください。

「老朽アパートが収益還元から土地値へ切り替わる6つの条件と、持ち続けた場合の負担」について、そのまま聞けます。

老朽アパートを満室にしてから売るか、現況のまま売るかを手取りで比べる手順

1. 満室にしてから売る場合、実際に何をいくら払うのか

満室に近づけるための工程

  1. 1

    空室の現況確認

    空室数や期間、埋まらない原因を確認する。

  2. 2

    原状回復と設備更新

    壁紙や床、水回りなどの設備を更新する。

  3. 3

    共用部と外観の改善

    外階段や外壁、ポストなどの印象を良くする。

  4. 4

    募集条件の見直し

    賃料や敷金・礼金、広告料などの条件を調整。

  5. 5

    埋まるまでの期間

    決まるまでの期間中も税や管理費の支払いが続く。

「満室にしてから売ったほうが高い」は、条件が揃えば正しい話です。ただし、その条件と費用を先に確認してください。

満室に近づける工程は、おおむね次のようになります。

第1段階:空室の現況確認。 何室が空いているか、いつから空いているか、なぜ埋まらないのか。募集賃料が高いのか、設備が古いのか、そもそも地域の需要が薄いのか。ここを混同すると、対策がずれます。

第2段階:原状回復と設備更新。 壁紙、床、水回り、給湯器、エアコン、洗濯機置場、インターネット環境。築30年を超えた木造アパートで「今の入居者が求める最低ライン」に持っていくには、1室あたりで相応の費用がかかります。

第3段階:共用部と外観。 外階段の錆、外壁の汚れ、ポストの破損、駐輪場、雑草。

第4段階:募集条件の見直し。 賃料、敷金・礼金、フリーレント、広告料。ここを緩めれば決まりやすくなりますが、収益還元で評価する場合、下げた賃料はそのまま計算に入ります。

第5段階:埋まるまでの期間。 1室が決まるまでの期間は、地域と時期で変わります。この間も固定資産税と管理費、そして修繕費の支払いは続きます。

2. 原状回復・設備更新の費用は、こう積み上げて出す

この記事では原状回復費の単価を「相場」として書きません。そのかわり、自分で試算できる形にしておきます。1室あたりの費用は、次の4つの合計で出ます。

費目数量の取り方単価の取り方
内装(クロス・床)壁と天井のクロス㎡数、床の㎡数を図面か実測で拾う内装業者に「㎡単価」で出してもらう
設備の機器代給湯器・エアコン・コンロ・洗面台・便器などの台数型番ごとの本体価格+設置費
水回りの補修ユニットバス交換か、部分補修か交換と補修で桁が変わるため両方の見積を取る
クリーニング・鍵交換室数1室単位で見積もってもらう

見積の取り方には順序があります。同じ仕様書を渡して3社から取ること、そして「入居が決まる最低ライン」と「上限まで直す案」の2パターンで出してもらうことです。仕様がそろっていない見積を並べても比較になりません。金額の差が仕様の差なのか、単価の差なのかが分からないまま、安いほうを選ぶことになります。

共用部と外観については、外壁塗装や外階段の交換は「延べ面積」や「段数・長さ」で数量が出ます。ここも塗装業者・鉄工所からそれぞれ数量を明示した見積をもらってください。「一式」だけで書かれた見積は、後から追加が出やすい形です。

3. 満室化を選ぶ前に、必ず計算するもの

満室化で手取りが増えるかどうかは、次の引き算で判断してください。

  • ① 満室想定での売却価格:埋まった後の家賃を前提にした価格
  • ② 現況(空室あり)での売却価格:今の入居状況を前提にした価格
  • ③ 原状回復・設備更新の費用:空室すべてを募集可能な状態にする費用
  • ④ 共用部・外観の補修費:外階段、外壁、共用灯など
  • ⑤ 募集にかかる費用:広告料、仲介手数料、フリーレント分
  • ⑥ 満室になるまでの保有コスト:固定資産税、都市計画税、保険、管理費
  • ⑦ 埋まらなかった場合の追加期間:想定より延びた分の⑥

満室化に意味があるのは、①−②が③+④+⑤+⑥を上回るときだけです。 そして⑦は事前に分かりません。ここが、この選択の実質的なリスクです。

もうひとつ。入れた入居者の質が、後の出口を狭めることがあります。埋めることを優先して審査を緩めると、滞納リスクを抱えた状態で売却することになります。買主はそこを見ます。「満室」という言葉だけでは価格は決まりません。

満室化に意味があるかの引き算

  1. 1

    売値の差

    満室にした後の価格から、今の価格を引く

  2. 2

    費用の合計

    回復・共用部・募集・埋まるまでの保有

  3. 3

    差と費用を比べる

    差の方が大きいときだけ満室化する

  4. 4

    読めない分

    埋まらずに延びる期間は前もって分からない

4. 満室化と現況買取を、手取りで並べる

手取りの計算構造の比較

観点満室にしてから売る空室のまま買い取ってもらう
手取りの計算起点満室想定の売却価格買取価格
差し引かれる費用原状回復費、補修費、募集費用、保有コスト売却時の諸費用、譲渡所得にかかる税
不確実性の負担満室になるまでの期間が不明で費用が嵩む不確実性がなく、金額は契約時点で確定
入居者の扱い新しい入居者を入れ、将来の出口を狭める契約が増えないため将来の整理がしやすい
共有物件での合意修繕や募集条件の決定に全員の合意が必要代金を持分で分ける形になり合意しやすい

金額を並べる前に、計算の構造を揃えてください。 同じ物件でも、どこまでを費用に含めるかで結論が変わります。

満室にしてから売る場合の手取り:

``満室想定の売却価格− 原状回復・設備更新費(空室分すべて)− 共用部・外観の補修費− 募集費用(広告料・仲介手数料・フリーレント)− 満室になるまでの保有コスト(税・保険・管理)− 売却時の仲介手数料− 売却時の登記・印紙などの諸費用− 譲渡所得にかかる税= 手取り(ただし満室になる前提が崩れると変動)``

空室のまま買い取ってもらう場合の手取り:

``買取価格− 売却時の登記・印紙などの諸費用− 譲渡所得にかかる税= 手取り``

差を見るときの3つの視点:

視点1:不確実性を誰が抱えるか。 満室化の計算式には「満室になるまでの期間」が入っています。この期間は事前に分かりません。埋まらなければ、費用だけが積み上がります。買取の計算式には、この不確実性がありません。

視点2:入居者の存在をどう扱うか。 満室化を目指す場合、新しい入居者を入れます。これは将来の出口を狭める行為でもあります。数年後に建て替えや土地としての売却を考えるなら、契約が増えるほど整理は難しくなります。期間の満了で契約が終わる定期借家契約(借地借家法第38条)を使う方法もあります。

視点3:判断できる人が何人いるか。 相続で共有になっている一棟物件では、管理に関する事項を持分の価格の過半数で決めることになり(民法第252条)、「誰が修繕費を出すか」で話が止まることがあります。売却であれば代金を持分に応じて分ける形になります。持分だけを動かす選択については共有持分は自分の分だけ売れる記事に整理しています。

5. 分岐の整理

条件ごとに、左に満室にしてから売る場合、右に現況のまま買い取ってもらう場合を並べます。

  • 空室が1〜2室で、募集すれば埋まる地域:有力/手間を優先するなら
  • 空室が多く、長期空室が固定化:費用を回収できない可能性/こちらが現実的
  • 直近の大規模修繕が済んでいる:進めやすい/価格に反映される
  • 屋根・外壁・給排水の更新が未実施:修繕費が先に出る/不確実性は買主側
  • 再建築可で、建て替え余地がある:収益物件として売れる/土地値ベースになる
  • 再建築に制限がある:買主が限られる/条件を踏まえた価格
  • 修繕・募集の資金を用意できる:選択できる/立て替えは不要
  • 資金の余力がない:実行できない/立て替えは不要
  • 所有者が1人、または合意済み:進めやすい/進めやすい
  • 相続人が複数で費用負担の合意が難しい:止まりやすい/合意は1回で済む
  • 入居者全員が定期借家、または退去合意済み:出口が読める/出口が読める
  • 普通借家の長期入居者が残る:期間が読めない/対応費用が価格に入る
  • 期限のある事情がある:時間が足りないことが多い/時期を自分で決められる
  • アスベストの可能性が高い建物:費用と工期が読めない/不確実性は買主側

この一覧の見方は「どちらが得か」ではありません。「不確実性を自分で抱えるか、価格を下げて相手に渡すか」の選択です。 満室化がうまく回れば、手取りは増えます。ただし、埋まらなかった期間の費用と、入れた入居者が後の出口を狭めるリスクは、すべて所有者に乗ります。

入居者が残る老朽アパートの整理と、解体して土地で売る場合の手順

和室の畳の上に置かれた、古い木箱と無地の風呂敷
障子越しの光が差す和室に置かれた古い木の箱

老朽アパートの売却で、いちばん時間がかかりやすいのがここです。順に整理します。

1. 「退去を待つ」という選択の実態

退去を待つ間に起きること

  • 収入の減少

    空いた室を募集しなければ収入だけが落ちる

  • 保有コストの継続

    空室のまま固定資産税と修繕費を払い続ける

  • 最後の1世帯が残る

    高齢単身者が残ることが多く数年続くことも

  • 建物の劣化

    空室が増えた建物は傷みが早く危険が生じる

自然退去を待つ方もいます。ただし次の点を織り込んでください。

待っている間、空室は増えるが、収入は減ります。 空いた室を募集しなければ、収入だけが落ちていきます。募集すれば、また新しい普通借家契約が発生します。「退去を待つために募集を止める」と、空室のまま固定資産税と修繕費を払い続ける期間が始まります。

残る入居者が、最後の1世帯とは限りません。転居先の確保が難しい入居者が残れば、「あと1世帯」の状態が続くこともあります。

建物の劣化は待ってくれません。人が住んでいる建物で危険が生じた場合、貸主としての責任が問われる可能性があります。

2. 立退き交渉を自分でやる場合の注意

貸主から契約の更新を拒絶したり解約を申し入れたりするには、正当の事由が必要です。根拠は借地借家法第28条です(条文は借地借家法(e-Gov法令検索)で読めます)。同条は、正当事由の判断にあたって、建物の使用を必要とする事情のほか、賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況、建物の現況、そして建物の明渡しの条件として財産上の給付をする旨の申出を考慮する、という枠組みを置いています。

つまり、建物の老朽化や耐震性は事由の一要素になり得ますが、それ単独で足りるとは限らず、立退料の提示を含めた総合判断になる、というのが条文の構造です。

ここで重要なのは、この交渉は法律の話であって、値段の交渉ではないという点です。

3. 立退料は「何か月分」で決まるのか

立退料を「賃料の◯か月分」と考えたくなるかもしれません。ただし、借地借家法28条が挙げているのは「財産上の給付の申出」という考慮要素までで、金額の算定式は書かれていません。ですから、この記事でも月数を相場として示すことはしません。

かわりに、実務で積み上げられる中身を並べます。自分の物件で試算する場合は、この項目を1世帯ずつ埋めてください。

  • 移転先の初期費用:敷金・礼金・仲介手数料・保証会社の初回料
  • 引越費用:世帯人数と荷量、エアコンの移設
  • 賃料差額の補償:現在の賃料と移転先の賃料の差×一定期間分
  • 移転に伴う実費:電話・インターネットの移設、住所変更の手続
  • 合意の対価:期限までに明け渡すことへの上乗せ
  • (店舗・事務所が入る場合):休業補償、内装費の未償却分

金額の幅を生むのは、正当事由がどれだけ強いか(建物の危険性が客観的に示せるか)、相手が転居先を確保できるか、そして期限をどこまで急ぐかです。周辺相場より大幅に安い賃料で長く住んでいる入居者ほど、移転後の賃料差額が大きくなり、積み上げの合計は上がりやすいという関係にあります。

そして、やってはいけないことがあります。

  • 家賃の受取を拒否して退去に追い込もうとする
  • 設備の修繕を意図的に放置する
  • 繰り返し訪問して退去を求める
  • 「取り壊すから出てください」と一方的に通知して期限を切る

これらは入居者との関係をこじらせ、交渉をいっそう難しくします。交渉を進めるなら、弁護士に依頼してください。

4. 入居者がいるまま売る、という選択

もうひとつの出口が、入居者が住んでいる状態のまま所有者だけが替わる形、いわゆるオーナーチェンジです。

この場合、入居者の契約はそのまま次の所有者に引き継がれます。入居者に退去してもらう必要はなく、通知と敷金の承継、賃料の入金先変更などの実務が発生します。段取りと価格の決まり方は入居者がいるまま収益物件を売る記事にまとめました。

老朽アパートで空室が多い場合でも、オーナーチェンジは選択肢になり得ます。「満室に戻す」のではなく、「今の状態のまま、その状態を前提に評価してもらう」という発想です。価格は、その状態を前提にしたものになります。

入居者が残る一棟の、3つの進め方

進め方入居者はどうなるか所有者にかかるもの
退去を待つ少しずつ空くが、長く住む高齢の単身者が残り、「あと1世帯」が数年続くこともある待つあいだ収入は減り、固定資産税と修繕費は出続ける
立退きを交渉する貸主から終わらせるには正当事由が要る。相手が同意しなければ裁判所の判断になる立退料の積み上げ(移転先の初期費用・引越費用・賃料差額など)と、弁護士への依頼
入居者がいるまま売る契約はそのまま次の所有者に引き継がれ、退去は要らない手間と費用の投入はゼロ。そのぶん価格は控えめになる

5. 建物を解体して土地で売る場合の注意

全室が空になれば、解体して土地として売る選択が出てきます。ここでも、順序の問題があります。

第一に、解体は入居者が全員退去してから。

第二に、更地にすると住宅用地特例が外れる。 住宅が建っている土地には、固定資産税・都市計画税の住宅用地特例が適用されます。根拠は地方税法第349条の3の2(都市計画税は第702条の3)です(条文は e-Gov法令検索の地方税法で読めます)。枠組みは次のとおりです。

区分面積の枠固定資産税の課税標準
小規模住宅用地住宅1戸あたり200㎡までの部分価格の6分の1
一般住宅用地上記を超える部分価格の3分の1

共同住宅の場合、この200㎡の枠が「住居の数」倍になります。 6戸のアパートなら200㎡×6戸=1,200㎡までが小規模住宅用地の枠です。敷地が300㎡のアパートであれば、敷地全体が6分の1の枠に収まっている計算になります。

つまり、6戸のアパートを解体すると、300㎡の敷地全体が、小規模住宅用地の特例(価格の6分の1)から外れる可能性があります。戸建てを解体した場合(200㎡までが6分の1、超過分は3分の1)と比べて、共同住宅は特例の枠が広いぶん、失われる軽減も大きく出るという構造です。実際の金額は評価額と自治体の税率、負担調整措置で変わるため、納税通知書と課税明細書を持って市区町村の資産税課で確認してください。

「更地にしてゆっくり売る」という選択は、税負担が上がった状態で待つことを意味します。ここは必ず計算に入れてください。

6. 勧告・補助・滅失登記の順番を確かめる

第三に、建物を残していても特例が外れる場合がある。 全室が空になり、使われない状態が続いている一棟は、空家等対策の推進に関する特別措置法の対象になり得ます。同法第22条により、市町村は「特定空家等」に助言・指導から勧告・命令・代執行まで進められ、その前段階の「管理不全空家等」への指導・勧告(同法第13条)もできます(制度の概要は国土交通省の空き家対策のページ)。

住宅用地特例の対象から外れるのは、この「特定空家等」または「管理不全空家等」として市町村から勧告を受けた場合です(地方税法第349条の3の2第1項)。 空き家であれば自動的に外れるわけではなく、また指導の段階では外れません。このほか、構造上住宅と認められない状態や、管理を怠っていて今後人が住む見込みがないと認められる状態も、特例の対象となる「住宅」に当たらないとされています(国土交通省の資料が紹介する総務省の通知)。全室が空になり、外階段が錆び、雑草が伸びた木造アパートは、その対象になり得ますが、実際にどう扱われるかは市町村の判断です。「建物を残しておけば税が安い」という前提は、いまは条件付きだと考えてください。判断が気になる状態であれば、所在地の空き家担当課に現況を伝えて確認するのが確実です。

第四に、解体費は先に出す必要がある。 解体の補助制度の有無と今年度の受付状況、申請の順序は、物件所在地の市区町村の窓口で確認してください。

第五に、滅失登記を忘れない。 建物を取り壊したら、不動産登記法第57条により、その滅失の日から1か月以内に滅失登記を申請することとされています。

解体して土地で売るときの、順番と期限

  1. 着工の前

    入居者が全員退去している

    1世帯でも残っていれば着工できない

  2. 着工の前

    補助制度を使うなら申請する

    多くは着工前の申請が要件。先に契約・着工すると対象外になる

  3. 工事

    解体費を払う

    補助の交付は工事のあとの後払い。費用は先に出す

  4. 取り壊した日から1か月以内

    滅失登記を申請する

    不動産登記法第57条

  5. 更地のあいだ

    住宅用地特例が外れた税で持つ

    ゆっくり売るほど、上がった税負担のまま待つことになる

「入居者が残る老朽アパートの整理と、解体して土地で売る場合の手順」について、そのまま聞けます。

老朽アパートを当社が現況のまま買い取る場合の価格と流れ、買い取れないケース

隣家の庭木の枝がブロック塀を越えて、古い木造アパートの共用通路の上まで張り出している越境物
塀を越えて古い木造アパートの通路へ張り出す雪の枝

空室のまま売る場合、価格から何が引かれるのか

現況のまま売る場合の価格を考えるときに、見ておきたい項目を表にまとめます。

差し引く項目内容不確実性の大きさ
解体費建物本体、付帯物、廃棄物処分中(搬入経路で変動)
アスベスト対応事前調査、含有時の除去大(調査前は読めない)
残置物処分空室内の家財、共用部の私物中
入居者への対応費用移転先の確保、引越費、明渡しに要する期間大
保有コスト解体・再販までの税・保険・管理中
地中埋設物・浄化槽・井戸掘るまで分からない部分大
境界・越境の整理測量、隣地との協議中
出口が読めないリスク再建築の可否、需要の薄さ物件次第

この表で不確実性が「大」になっているのは「入居者への対応費用」と「アスベスト」と「地中埋設物」の3つです。 いずれも、事前に情報が出ていれば見込む余裕分を小さくできます。

だから、不利に思える情報ほど先に出しておくほうが得です。入居者と口約束で家賃を下げている、契約書が見つからない室がある、以前に増築している、庭に浄化槽が埋まっている。こうした事実は、後から発覚したときのほうが金額に大きく響きます。

解体費の見当を自分で付けるには

解体費も「坪いくら」という一律の数字は載せません。かわりに、見積書がどう組み立てられているかを示します(費目:数量の考え方/金額が動く要因)。

  • 建物本体の解体:延床面積(坪または㎡)×構造別の単価/構造によって単価が変わる
  • 廃棄物の運搬・処分:発生量(トン)×処分単価/分別の手間、処分場までの距離
  • 仮設・養生・警備:建物の外周と道路条件/隣地との距離、通学路かどうか
  • 付帯工事:ブロック塀、カーポート、物置、樹木、浄化槽、井戸の数量/個別に拾わないと後から追加になる
  • 手壊し部分:重機が入らない範囲の面積/前面道路が狭いと比率が上がる
  • アスベスト対応:事前調査費+含有時の除去面積/含有の有無が判明するまで確定しない
  • 届出・諸経費:一式/自治体への手続や届出

解体費が大きく動く4つの所

  • 構造

    木造より鉄骨、鉄骨よりRCが高い

  • 道の広さ

    重機が入らないと手で壊す分が増える

  • 付帯物

    塀・物置・浄化槽を先に数えないと後で増える

  • アスベスト

    調べるまで額が決まらない

見当を付けるコツは2つあります。1つは、延床面積と構造を伝えて2〜3社から数量明細付きの見積を取ること。単価は業者が出してくれます。もう1つは、市区町村の解体補助制度の要綱を見ることです。補助の上限額や対象工事の書き方から、その地域で想定されている工事規模が読み取れます。

解体費そのものの見方は空き家の解体費用の記事に詳しく書いています。一棟物件でも、金額を動かす要因の構造は同じです。

当社が買い取る場合の流れ

当社が買い取る場合の流れ

  1. 1

    ご相談

    物件の基本情報や家賃の一覧などをお伺いする。

  2. 2

    机上での概算

    公開情報や周辺事例から価格水準をお伝えする。

  3. 3

    現地調査

    建物の状態や共用部、接道、空室内部を確認する。

  4. 4

    買取価格と契約条件の提示

    金額や引渡し時期、残置物処分の条件を書面で確定。

  5. 5

    売買契約から決済・引渡し

    契約を結び、代金支払いと所有権移転登記を行う。

当社が買主として直接購入する場合、工程は次のようになります。

第1段階:ご相談。 一括査定ではありません。ご相談の内容を、営業目的で他社に渡すことはありません。

第2段階:机上での概算。 ご相談から買取価格のご提示までは、目安30分です。

第3段階:現地調査。 現地を見てご提示した金額を、後から理由なく下げることはしません。

第4段階:買取価格と契約条件の提示。 査定は無料で、売却の義務はありません。お引き受けできない場合は、その理由をお伝えします。

第5段階:売買契約。 ご相談からご契約までは目安1〜2週間です。

第6段階:決済と引渡し。 お引き渡しは早ければ2週間以内で、お引き渡しと同時にご入金します。

現況のまま買い取ってもらう場合と、満室化して仲介で売る場合を比べるときは、この記事でここまで並べてきた項目を見てください。屋根や給排水の更新にかかる費用、解体費、残っている世帯に明け渡してもらうまでの期間とそのための費用、その間も出ていく税と保険、そして再建築の可否や賃貸需要の薄さから来る出口の読みにくさ。満室化を選べば所有者側に乗るこれらを、買った側がまとめて引き受けるため、価格はその分だけ下がります。裏返せば、差額の内訳を項目ごとに示せない買取価格は、根拠を確かめようがありません。金額だけを提示してくる相手には、何をいくらで見込んだのかを必ず聞いてください。

満室に戻せる見込みがあるなら、買取は選ばなくて構いません。その条件は買取を頼むデメリットの記事にあります。

当社が買い取れない、または他の方法をお勧めするケース

一棟物件では、当社が買えない条件がはっきりしています。主に権利関係で決まります。

買い取りが難しいのは、次のような場合です。

  • 親から相続したアパートで、相続人の一部と連絡が取れず、誰が売主になるのかが決まっていない
  • 兄弟などで共有しているアパートで、共有者の一部が一棟の売却に反対しており、持分だけを売る希望もない

アパートの敷地そのものに争いが残っている場合も同じです。隣地との境界や越境をめぐる紛争が続いていて当事者の間で整理がついていないとき、あるいは敷地へ入る道に通行の権利がなく承諾も得られないときは、買い取れません。

上に挙げた事情は、いずれも金額の話より先に権利関係を確定させないと前へ進みません。入居者がいる一棟では、賃貸人の地位を誰から誰へ引き継ぐのかが決まらないためです。その確定作業は司法書士・弁護士・土地家屋調査士の領域です。お引き受けできない場合は、その理由をお伝えします。

土地が借地の上に建つアパートである場合は、話の構造が変わります。底地と借地権の出口の記事を先にお読みください。

逆に、「分岐の整理」の一覧で満室化の側の条件がそろっている物件(空室が1〜2室で、その地域で同規模の賃貸が現に決まっているなど)は、収益物件として市場に出す選択が有力です。

「老朽アパートを当社が現況のまま買い取る場合の価格と流れ、買い取れないケース」について、そのまま聞けます。

老朽アパートは、収益で売るか土地で売るかを先に見極めてから手放し方を決める

  • 老朽アパート・一棟物件の出口は、最初のひとつで決まります。この物件が収益還元で値が付くのか、土地値から費用を引いて値が付くのか。どちらの物差しで評価されるかによって、増やすべき努力の中身が正反対になります。
  • 構造と築年(木造の法定耐用年数は22年)、入居率、修繕の残り、接道と再建築の可否、地域の賃貸需要、そして容積率。本文で挙げた6つの条件で見当がつきます。物差しが決まると、他の判断がぶら下がってきます。
  • 満室化に意味があるのは、価格の上昇分が費用を上回るときだけです。入居者が残っている場合の正当事由と立退料、更地にしたときや勧告を受けたときの住宅用地特例、相続した一棟の登記と契約書類は、それぞれの節で書いたとおりです。書類のそろい方も、判断の材料になります。

最後に、当社の立場です。当社は買主として直接買い取ります。現況のまま買い取る価格と満室化して売る想定価格との差の中身は、「当社が買い取る場合の流れ」の節で挙げた項目です。この不確実性の引き受けぶんが、価格の差です。 差の理由を、空室期間・明渡し・調査の項目に分けて説明できるかを聞いてください。

査定は無料で、売却の義務はありません。満室にする意味があるかどうかは、その物件が家賃で評価されるのか土地で評価されるのかで変わります。先にどちらの物差しかを見極めてください。

査定は無料・売却の義務なし
0120-829-594受付時間10:00〜19:00(水・日曜定休)

通話料無料・全国対応

この先は、当社の買取窓口「買取くん」のページです(運営は同じ株式会社リアテクスです)。

老朽アパートの売却について、よくある質問

Q1. 空室が半分ありますが、それでも買い取ってもらえますか

当社はこれまで、築50年以上・築60年以上の一棟アパート・マンションも買い取ってきました。空室が多い状態は、収益還元での評価は下がりますが、建物を除いた後の土地としての出口を考えやすくなるという面もあります。

判断の分かれ目は空室率ではなく、残っている入居者の契約内容と、土地の再建築の可否です。全室が空になっていれば話は単純ですが、入居者が残っている場合は、その契約内容が判断の中心になります。ご売却の際は、一般には、登記識別情報または権利証・本人確認書類・印鑑証明書・固定資産税の納税通知書をご用意いただきます。

Q2. 満室にしてから売ったほうが高い値が付くと言われました。本当ですか

「収益物件として評価される条件が揃っている物件」では、満室のほうが価格が上がるのは事実です。純収益が増えるためです。

ただし、その前提が成り立たない物件では、修繕費と募集費を投じても価格に返ってこないことがあります。法定耐用年数を超えている、地域に賃貸需要が薄い、再建築に制限がある——このいずれかに当てはまる場合は、慎重に計算してください。

まずこの地域で同規模の賃貸が現に決まっているかを確かめ、そのうえで本文「満室化を選ぶ前に、必ず計算するもの」の引き算をしてください。地域の答えが出る前に工事を発注するのは順番が逆です。

Q3. 入居者が数世帯残っています。退去してもらってから相談すべきですか

その必要はありません。むしろ、退去してもらう前にご相談いただいたほうが、選択肢を並べやすくなります。

理由は2つあります。ひとつは、立退きを進める前なら、入居者がいるまま売る形も含めて比べられるためです。もうひとつは、退去を待つあいだにも空室期間の保有コストが出ていくためです。

また、立退き交渉をご自身で始めてしまうと、後の整理が難しくなることがあります。一度こじれた関係は、所有者が替わっても引き継がれます。始める前に、選択肢を並べてから決めてください。

Q4. 入居者に売却を知られたくないのですが、可能ですか

ご相談の内容を、営業目的で他社に渡すことはありません。

ただし、売買が成立して所有者が替われば、賃料の入金先が変わるため、入居者に新しい所有者のことを知らせる場面はいずれ来ます。 その時期と伝え方は、契約の条件を決める段階で一緒に整理しておくと安心です。

ご不安があれば、どの段階で誰に何を伝えるかを最初に整理しておきましょう。

Q5. 大規模修繕の見積を取ってしまいました。買取の相談もできますか

査定は無料で、売却の義務はありません。修繕の見積があると、比較がしやすくなります。見積の金額を本文の式の「原状回復・設備更新費」「共用部・外観の補修費」に入れれば、修繕して満室化してから売った場合の手取りを試算できます。

計算は本文「満室化と現況買取を、手取りで並べる」の式のとおりです。どちらが多いかは物件によって変わります。

Q6. 建物にアスベストが使われているかどうか、どうすれば分かりますか

解体や改修の工事の前には、石綿が使われているかどうかの事前調査を行う必要があります(石綿障害予防規則第3条)。

制度としては、2022年(令和4年)4月1日から、解体部分の床面積の合計が80㎡以上の建築物の解体工事と、請負金額が税込100万円以上の建築物の改修工事について、石綿の事前調査結果を報告することが義務づけられました(石綿障害予防規則第4条の2)。さらに2023年(令和5年)10月1日以後に着工する工事からは、その事前調査を建築物石綿含有建材調査者などの有資格者が行う必要があります(事前調査結果の報告システム(厚生労働省 石綿総合情報ポータルサイト)、同サイトの建築物石綿含有建材調査者の案内)。

「調べていないから解体費が安い」という見積は、含有が判明した時点で金額が変わります。 ご自身で解体を進める場合は、調査を誰がいつ行うのか、含有が判明した場合の費用の扱いをどうするのかを、契約前に書面で確認してください。

Q7. 借入の返済が残っています。売却できますか

借入の担保として抵当権が付いている場合、売主さまには一般に抵当権の抹消登記の費用をご負担いただきます。

論点になるのは、売却代金が残債を下回る場合です。返済に遅れが出ている場合は、時間の経過とともに選択肢が狭くなります。

残債の額と、直近の返済状況を、最初にお伝えください。順序を組み立てるうえで最も重要な情報です。

Q8. 相続人が3人いて、まだ話がまとまっていません。今相談してもよいですか

問題ありません。共有者の間で意見が割れている一棟ほど、金額が出ていないと議論が進みません。

一棟物件の場合、議論すべき論点が「売るか持つか」だけではありません。誰が管理するのか、修繕費を誰が出すのか、家賃収入をどう分けるのか、確定申告を誰がするのか。この論点は、持ち続ける限り毎年発生します。

査定額と、保有し続けた場合の年間コストを並べれば、遺産分割の具体的な検討材料になります。相続した物件では、相続登記の費用もかかります。

当社の見方

満室に戻してから売るか、いまの姿のまま手放すかで迷われる方に、当社が金額をお出しするときの内訳を書いておきます。

比べていただきたいのは、二つの案の手取りと、そこに至るまでの月数です。原状回復や募集にかかる費用は先に出ていき、戻ってくるのは売れた後になります。読めない期間を抱えたまま持ち続けるか、金額を下げて日を確定させるか、という比べ方になります。

当社が2025年の1年間に買い取った件数は200〜300件です。一棟アパートでは、岐阜県多治見市の築50年以上の物件や、山形県酒田市の築60年以上の物件を買い取り、販売まで終えた例があります。お受けする地域は全国です。

日を確定させる側の目安も書いておきます。価格をお伝えするまでは30分ほど、契約までは1〜2週間ほどで、代金は引渡しの日にお支払いします。現地を見たうえでお出しした金額を、あとから理由なく下げることはしません。満室にしてから売るほうが手取りが残ると見込める一棟や、そもそも手放さずに持っていたほうがよい一棟であれば、買取はお勧めせず、売らないほうがよいと正直にお伝えしています。

この記事について

執筆・編集
藤山 大二郎藤山 大二郎株式会社リアテクス 代表取締役CEO著書『大家なら!今すぐ不動産業を開業しよう! 不動産投資家から起業家へ』(スタンダーズ)で、大家業から不動産業へ踏み出す道筋を書きました。
監修
薩摩 賢幸薩摩 賢幸株式会社リアテクス 取締役COOこの区分の監修を担当しています。この記事は監修者本人が内容を確認しています(2026年10月3日)。記事の公開判断は当社が行っています(代表が定めた手順による)。
公開・更新
公開 更新 内容を見直したときは、この日付と改訂の内容を更新しています。
この記事の事実確認の方法
法令:建築基準法、借地借家法出典:法務省、厚生労働省 石綿総合情報ポータルサイト
記事の作り方
この記事は、当社の担当者が事実確認を行ったうえで公開しています。

監修者の一覧運営会社・記事の作り方

出典(20件・に確認)

更新履歴

  1. 第2版重複していた説明をまとめ、文章を読みやすく整えました(内容の変更はありません)。
  2. 第1版公開

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